麻美 雪の観てきた!クチコミ一覧

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架空の箱庭療法#3

架空の箱庭療法#3

Nichecraft

吉祥寺Gallery re:tail(東京都)

2015/04/29 (水) ~ 2015/05/03 (日)公演終了

満足度★★★★★

「架空の箱庭療法#3 「アポトーシス」」
 4/30、吉祥寺Gallery re : tail に蓮根わたるさんが出演されている、 Nichecraft の「架空の箱庭療法#3」を観に行って参りました。

 この、「架空の箱庭療法#3」は、基本は展示で、その展示のなかで、日替わりで1日2~3回、10分間その展示されている架空の演劇の部分上演をするというちょっと変わった面白い展示。

 今日までやっている、ちょっと変わった面白い展示とはどういうものかと言うと、「舞台模型と舞台写真で再現する《実在しない演劇作品のカタログ展》」という展示。

 観劇に行くと貰う公演のチラシから想像す芝居のイメージを、舞台模型と舞台で再現した、演劇の予告編。そんなイメージの展示。

 では、その部分上演って何?となると、それは、舞台写真を撮るにあたり、出演されている役者さんは、その作品の登場人物の様々な組み合わせで、エチュード(即興劇の練習、下絵)を行い、舞台模型と舞台写真の中で1つの芝居を作り上げるのですが、その中の一部分を取り出し、観客の前で実際の芝居として上演するというもの。

 終演後に、蓮根さんともお話ししたのですが、蓮根さん自身もこう言う展示とお芝居は初めてだそう。私も、こう言う展示とお芝居の組み合わせは初めてで、とても不思議でとてつもなく面白かったビックリマーク

 どの作品も一回限り。どの回も初日と同時に千穐楽、一期一会の芝居。

 私が観たのは、「アポトーシス」という作品。

 この作品、本来の登場人物は6人。上演されたのは、小説登場人物二人と、自身の作品の二人を殺したくない作家と、登場人物を殺す事を主張する編集者の四人の緊迫する場面。

 編集者の入れたペンにより、翻弄される、小説中の人物さいとう篤史さんの演じる城山と外山弥生さん演じる香織は、小説の中の二人の心情と編集者や作家のペンに翻弄される生身の心情とが交錯する作中人物の悲哀と痛みと叫びを感じさせた。

 湯舟すぴかさんの作家絵崎は、本人が書きたい結末と、編集者の主張する「読者は、こんな結末ではなく、こっちの結末を望んでいる」と提示される自分の望む結末とは正反対の結末と、作中人物を助けたい、殺したくないとの思いの狭間で葛藤し、編集者を殺したいと思うほど、苦悩する作家の姿をリアルに目の前に描き出す。

 蓮根わたるさんの編集者佐倉晴臣は、売れる作品にするためには、作家の甘い親心など眼中になく、例え殺したいと思われるほど憎まれても、手段を選ばず結末を変えようとする編集者を、静かにじわじわと迫りくる怖さを持って存在していた。

 「佐倉晴臣は、サクリファイス(生け贄、生け贄を差し出す)のもじりになってるんですよ」という蓮根さんからの情報の示す通りの人物になっていた。

 実は、この作品上演では登場しなかったが、舞台模型と舞台写真で解る通り、チェスの舞台装置になっている。

 つまり、小説の作中の人物は、チェスの駒に見立てられている。しかし、駒を操るはずの作家絵崎は、編集者佐倉に操られる駒であり、そして、その佐倉と、この作品に登場する役者も実は、この 「架空の箱庭療法#3」を設計し、演出した辻本直樹さんによって、操られる駒なのではないかと思った。

 10分間の上演とは思えないほど、濃く、深く、張りつめた空気が流れる作品の中に惹き込まれ、息をつめるようにして魅入ってしまった素晴らしい作品でした。


                            文:麻美 雪

リチャード三世

リチャード三世

芸術集団れんこんきすた

シアターノルン(東京都)

2015/04/23 (木) ~ 2015/04/26 (日)公演終了

満足度★★★★★

「リチャードⅢ世」
 もう、本当に素晴らしい最高の舞台でした。

 出演された役者さん全員の声がいい!舞台に出ている役者さん全員の声が良いって、なかなかないこと。

 一人一人の色はあるのに、よく通り、言葉の一つ一つがくっきり、はっきりと届き口跡が良くて、聴いていてとても気持ちよく、リチャードⅢ世の世界へとすっとはいって行ける。それが、まず素晴らしい。

 お一方ずつの感想を書きたいのですが、紙面から溢れそうなので、特に印象深かった方について書かせて頂きます。

 セットはなく、真ん中に「愛と哀しみのボレロ」のジョルジュ・ドンが踊った円卓が正方形の木の大きなテーブルのようなった舞台と、両側に置かれた長椅子があるのみ。

 長椅子には、リチャードⅢ世によって殺され、リチャードの罪を弾劾し述べ立てる者たちが座り、リチャードとの回想シーンが舞台の上で展開されるという、声と台詞と身体表現で全てを描き出すという、シンプルな故に難しい舞台。

 舞台が始まる物語前から、その舞台の下で蠢く、黒いマントに気づく。始まる前から、リチャードⅢ世の世界は作られていて、それをずっと目が離せずに観ていた。

 その蠢いていた黒いマントの人物は、 濱野和貴さんのリチャードⅢ世だったのか、中川朝子さんのリチャードⅢ世の影かはたまた実は本物のリチャードⅢ世?のマントの男だったのか。

 短躯で美しくない自分の容貌への激しいコンプレックスから、自分は愛されないという絶望的な自己否定と諦めそこから産みだされた歪んだ孤独が、リチャードⅢ世を稀代の悪役たらしめたのではないか、そんなリチャードⅢ世を濱野和貴さんは、何もない空間に、声と台詞と身体表現だけでまざまざと描き出していて、素晴らしかった。

 シェイクスピアを読むと解るが、シェイクスピアの登場人物はよく喋る。水の流れるように淀みなく、しかも歌うように独特のリズムと抑揚がある。

 よく、「歌は演じるように台詞は歌うように」というが、シェイクスピアの台詞は正にその歌うように喋るのである。

 滔々と流れる如く歌うように暗闇に綴られて行く、濱野和貴さんの台詞はリチャードⅢ世その人の言葉となって、響き聴いていてとても心地好いと同時に、稀代の悪役リチャードⅢ世の仮面の底深くに押し込められた、誰からも愛されなかった絶望と孤独と痛みを感じさせた。

 誰からも愛されないのなら、徹底的な悪役になってやるそんな、リチャードⅢ世の救いようのない孤独と絶望を感じ、リチャードⅢ世もまた、歴史の犠牲者のように思えてならない。この、リチャードⅢ世を観て、リチャードⅢ世に対する見方が少し変わった。

 中川朝子さんのマントの男は、リチャードⅢ世の心の声なのか、影なのか、それとも実は、本当のリチャードⅢ世なのか、目立たないという、 確かな存在感を持って存在していた。

 登場人物の中で、唯一呟くようなあるかなきかの声で話すマントの男。普通、それだけ声を抑えると言葉はほぼ聞き取れなくなるのだが、それが言葉の一つ一つがはっきりと聞き取れ、マントの男の色として響いてくるのが素晴らしかった。

 リチャードⅢ世の母、ヨーク公夫人の朝霞ルイさんの指先と手の動き、表現が美しく、自分が残虐非道なリチャードⅢ世を生んだことに対する悔いと戦きまでも、現していて見惚れてしまった。

 そして最後に木村美佐さんのヘンリー6世の妃、前王妃のマーガレットは、夫ヘンリー6世と我が子をリチャードⅢ世に殺された火のような怨みと烈しさ、夫と我が子を殺された苦しみと、果てることのない悲しみ、それ故に日増しに募るリチャードⅢ世への憎悪を、マーガレットその者として存在していて素晴らしかった。

 出演されている役者さん全てが、その人物その者として存在し、自分が物陰に潜んでその場に居合わせているような感覚に陥った。

 「黒き憑人」も「リチャードⅢ世」も、図らずも、「命」ということについて、深く考えさせられた舞台だった。

 シェイクスピアの悲劇であるものの、シリアス過ぎることもなく、時に笑いも漏れ、面白く惹き付けられて観ている内に過ぎて行った二時間数十分。

 濃く深く最高に面白くて、素晴らしい舞台でした。

                            文:麻美 雪

黒き憑人

黒き憑人

GAIA art entertainment

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2015/04/23 (木) ~ 2015/04/26 (日)公演終了

満足度★★★★★

「黒き憑人」

 「あなたの人生はあと4日で終わります。」そう、言われたらあなたは一体どうしますか?
 
 「あと4日、やり残したこと、思い残しがないように、あなたをお手伝いするのが私の使命。何かやり残したこと、思い残すことはありませんか?」と憑人(死神)に問われたら、あなたは、そして私はどうするだろう。
 
 この舞台を観ている間中、ずっとこの2つの事を考えていた。

 足立優樹さんは、「あと4日」と命の期限を切られた、喧嘩っ早く、我儘で、すぐに物事を投げ出し、自分の事しか考えなかったが、死神の伊座波や暴漢に襲われた乃璃子を助け関わって行くことで、本来のお人好しで優しさと、人の為に動く自分を取り戻し、気持ちが行き違ったままだった父やバンドのメンバー、関わった周りの人々を思いやれるように変わって行く、人気バンドのヴォーカル倉菱礼を丁寧に、繊細にして激しく演じていた。

 実は、「あと4日」の命の期限を切られたのは礼の父であり、礼と気持ちが行き違ったままであることを悔やみ続けていた父の心残りが礼との和解であったことを知った礼が、最後のシーンで父にかけ続けた言葉と姿に、涙が込み上げて、溢れないようにずっと上を向いていた。

 船戸慎士さんの死神は、今までの死神のおどろおどろしいステレオタイプの死神像を軽やかに打ち破り、お茶目ながら、肝心な所では、きっちり強くかっこよく、礼を一番よく理解し、要所要所で、名言をさらっと言いながら、結果的に礼を導いて行く死神伊座波を飄々と演じていた。

 小祝麻里亜さんの乃璃子は父との心の距離に葛藤しながらも、純粋で爽やかな乃璃子だった。

 佐藤和久さんの乃璃子の父、龍之介は、政務と娘への愛情の狭間で悩み、乃璃子への愛情の示し方が解らない、不器用な父の姿を見事に現していた。

 鶴巻美加さんは、三役されたのですが、とても若いのに礼の母の心情が伝わって来て、しみじみした。

 今駒ちひろさんも、三役を演じられたのだが、三役を違う顔で演じられていた。

 最期に、保志乃弓季さんの龍之介の秘書原田は、秘書として、一人の女性としても密やかな想いを抱きつつ、龍之介をサポートして来たのに、龍之介が信頼しているからこそ、良かれと思って秘書ではなく乃璃子のサポート役にしようとしたのを、その意味を取り違えて、乃璃子を誘拐させるという過ちを犯してしまう、切なく強く胸がキュンと痛む一人の女性として描き出していた。

 重い内容になる話を、軽妙に面白く、それでいて「あと4日の人生」と言われた時、自分は何をやり残し、何を思い残したと思うのだろうかと考え、これからどう生きるか、親を始め自分の周りの人、自分と関わった人の事を改めて考えさせられた素晴らしい舞台だった。


                            文:麻美 雪

軋み

軋み

『軋み』上演委員会

d-倉庫(東京都)

2015/04/16 (木) ~ 2015/04/19 (日)公演終了

満足度★★★★★

「軋み」
 今日が千穐楽のこの舞台、これから見に行かれる方もいると思うので、いつものように舞台の詳しい内容は記さず、ざっくとしたストーリーと舞台を観た感想のみを記します。<br><br> 夫は働かないダメダメなニート、妻は人気少女漫画家。そのダメダメな夫と目をかけていた可愛くて、仕事の出来るアシスタントのひとみの浮気を知り、言い争う内に殺してしまった妻。漫画のドラマ化も決まり、映画化の話もあるのに、さあどうするか!

 これだけ読むと、2時間ドラマによくある筋書きっぽいが、さにあらず。この舞台はひと味もふた味も違います。ここから、不思議で怒濤の展開が、マンションの一室のみの舞台の上で展開される。

 鎌倉太郎さん演じる夫が、入って来た途端に、典型的な働かないダメダメなニート夫で、最初は自分が妻を励まし自信を持たせていたのに、妻が力をつけ売れっ子になるに従い、自覚はないにしてもどこか夫に対し上に立ったような態度や物言いをするようになった妻に、寂しさと引け目を感じる内に無気力になり、それも通り越し働かなくても生きて行ける状態に慣れきりつつも、心の片隅で抱え続けているやりきれなさを理由に、ふらふらと妻のアシスタントひとみと浮気する夫なんだろうなと一瞬にして感じさせた。

 そこにいるのは、ダメダメなニート夫潤その人であった。

武藤令子さんは、担当編集者と結託して、漫画を描く為、原作漫画がドラマ化や映画化になる大事な時期だからと、夫を犯人として自首させようとする冒頭は、身勝手で嫌な女に見えていたのに、舞台が進むにつれ、「ああ、この人は売れない頃を支えてくれた夫を、実はずっと愛してるんだ」と解ってくる。

 舞台、冒頭から要所要所で響く、ギリギリと軋む音。それは、妻の由美子にしか聞こえない、自身の心の張りつめた弦が軋む音。その軋みに耐えられなくなり、張りつめた弦が切れた時の由美子の選択と、姿が潔くてカッコイイ。

 編集者を演じた三橋潔さんと、由美子のアシスタントを演じた、芹口康孝さんは、ドラマで見たことがある俳優さん。

 編集者とアシスタント、ふたりの由美子に対する思いは、微妙に違うのだが、由美子の漫画を好きで、由美子の才能と由美子を大事に思っているのが伝わって来る。

 一方、山田昌さんのひとみの元恋人でストーカーと化している仁科は、一番ひとみを理解して、大事に思っているのが伝わって来て、傍迷惑で滑稽なのに憎めない。

 そして、最後に蓮根わたるさん。「基本カメレオン役者なので、「積む教室」とのギャップで、いい意味で裏切りたいと思います。」と仰っていた蓮根さん。

 蓮根さんは、ブロ友の今西哲也さんの主演舞台、「積む教室」の校長先生をされているのを観て、「この役者さん好きだな、もっとこの人の舞台を観てみたい」と思った役者さんです。

 蓮根さんは、 一人で三役演じられたのですが、出て来る度に印象も、雰囲気も、醸し出す色合いも全く違って、カメレオンのように別人になっているのが、すごい!

  冒頭、プロという役で出て来ます。(何のプロかは、是非舞台を観て下さい)淡々としているのが、反ってじわじわとした不気味さと怖さを感じさせ、あみちゃんでは抱腹絶倒、私はこのあみちゃん、ツボにはまってしまい、頭をふと過る度に笑いが込み上げてきて、時々怪しい人になりつつ帰路についた程です。

 その後の宅配便の配達員も、また、表情から何から全く変わり、しかも、蓮根さんが出て来る度に、舞台の空気がふわりと動いて、一瞬変わるのに、舞台を壊すことなく、邪魔をしない、それなのにピリッと小気味良いアクセントになるのが、本当に素晴らしかった。<br><br> 終演後、蓮根さんとゆっくりお話し出来て、とても嬉しかったです

 普通にしたら、シリアスで重いだけの舞台になってしまう内容が、ピリッとスパイスは効いていて、苦味もちゃんとあり、見終わって反芻しているうちに、じわじわとこういうことだったのかと解ること、感じることもあるのだが、観ている間は軽妙な面白さもあって、マンションの一室で起こる人生のビターな喜劇をマジックミラー越しに、目撃しているような感覚になった、最高に面白い舞台でした。

                            文:麻美 雪

漢三人芝居

漢三人芝居

Ruth

サブテレニアン(東京都)

2015/03/27 (金) ~ 2015/03/29 (日)公演終了

満足度★★★★★

Ruth初公演:「漢三人芝居」
 昨日、板橋にあるサブテレニアンで、ブロ友さんのさらみさん(今西哲也さん)、春川真広さん、大高雄一郎さんの3人からなるユニットRuthの初公演「漢三人芝居」を観て参りました。
 
 ちょうど1年前、いろんな舞台で共演して仲の好かった3人でユニットを組みましたと聞いた時から、3人での舞台を観たいなと思っていました。

 劇場を押さえて、企画して、脚本頼んで、きっと初めて尽くしの事が沢山あって、大変だったと思います。

 1年で、初公演を形にするだけでも凄いのに、11日間で創り上げたとは思えないほど、舞台としての完成度もとても高くて素晴らしかった。

 今日が千穐楽なので、内容にはあまり触れないで、感想だけを書かせて頂きます。

 「漢三人芝居」は、4人の脚本家による4本のオムニバスの会話劇。

 セットはなく、会話だけで場(情)景や色、空気、心情を描き出し、コミカルからシリアスまで、4人の脚本家の雰囲気も味わいも違う、振り幅の大きい舞台で、観ながら体の中や感情が蠢き、かき混ぜられる素晴らしい舞台。

 さらみさん(今西哲也さん)は、主演舞台「積む教室」から11日間しか経っておらず、4冊の台詞を覚え、創り上げて行くのは、どれほど大変だったかと思います。
 
 しかも、4本とも全く雰囲気の違う役で、その全てでその人物そのものとして其処に居る。それは、なかなか出来ないこと。声も仕草も、表情も一瞬にして、全く違う人になり、存在していて素晴らしかった。<br><br> どの人物も好きですが、特に2本目の「LIAR×LIAR×LIAR 」のさらみさんは、今まで観たどの役とも違っていて、凄みを感じ、新しいさらみさんの魅力が出ていてとても素敵でした。

 春川真広さんは、さらみさんも大高さんもそうなのですが、やはり、役によって表情を含めた佇まいがガラリと変わって、その人物として、其処に居ることがいつ観ても凄いと思います。

 去年1年、それまでとは雰囲気の異なる人物をいろんな舞台で演じてきた真広さんの1年の集大成とも言えるような、シリアスからコミカルまで振り幅の大きな役を、その人物そのものとして目の前に存在していて素晴らしかったです。

 大高雄一郎さんは、Twitterやツイキャスでは、お話ししていたのですが、観たいと思いながら仕事や予定と重なり、なかなか舞台を観ることが出来ず、今回初めてお芝居を観ることが出来ました。<br><br> 観た途端に、「凄い!」と思いました。さらみさんも真広さんもそうなのですが、出て来た瞬間に、ポンとそこにその人として何事もなかったかのように、そこに普通にいました。

 特に最後の「DREI」のシリアスな大高さんは、繊細に深くその人を目の前に描き出し、佇んでいて本当にかっこ良かった。

 最初の「ゴーストのゴースト」で笑い転げ、 2本目の「LIAR×LIAR×LIAR 」でハラハラ、緊迫し、三本目の「ダンディ」で、ニヤニヤ、ケラケラ笑い、最後の「DREI」は、観ながら「生きる」ということについて深く考えさせられ、ギュッと胸に迫り、涙がぽろぽろ溢れてしまいました。

 人生、笑って、泣いての繰返し。それは生きることでもある。そう考えて、こじつけるなら、この4本は「生きる」ということが共通したテーマとも言えそうです。

 生きる上で味わう感情と五感の全てがギュッと凝縮されたような、密度の濃い贅沢な1時間30分でした。

 笑いと涙、シリアスとコミカル、緊張と緩和、感動、いろんな色、いろんな感情が蠢き、混ざり合い、揺さぶられる素晴らしい舞台でした。    
                             文:麻美 雪

積む教室

積む教室

SPINNIN RONIN

シアターX(東京都)

2015/03/11 (水) ~ 2015/03/15 (日)公演終了

満足度★★★★★

積む教室
 両国は回向院の傍のシアターX(カイ)に、 ブロ友さんのさらみさんこと今西哲也さんが、主演するSPINNIN RONIN:「積む教室」を、観に言って参りました。

 今日が千穐楽なので、詳しい内容は書きませんが、今まで観たことのない形の舞台で、最後まで息をつかせぬ迫力と感動と笑に包まれた素晴らしい舞台でした。

 セットは一切なく、舞台上にあるのは、数客の背凭れのない椅子と、生演奏するパーカッションと二胡奏者の二人のみ。

 全編カンフー、台詞もあるのだが、言葉よりもカンフーの動きで語っているこの舞台、舞台上にセットは一切無いにも関わらず、役者さんの動きで、場景や場面が目の前に立ち現れるその凄さに、圧倒され、感動する素晴らしい舞台でした。

 ひとりひとりの役者さんについて、書きたいのですが、スペースに収まり切れないので、特に印象に残った方について書かせて頂きます。

 蓮根わたるさんの玄武山武術学校校長は、何処か「熱血時代~教師編~」の船越英二さんの校長先生を思わせるような、普段はニコニコと穏やかながら、生徒の性質をしっかりと見てとり、見守りながらも、いざという時には戦い、その穏やかな風貌の下に強さを隠し持っている。

 戦う時のカンフーの動きが、キレがあって綺麗でした。

 飄々とした見た目の下に強さを隠し持っていると言えば、大西まさしさんの西田も、カンフーの動きにキレがあって、しなやか。さらみさん演じる剛田ケンジに関わる内に、西田の中にも変化が訪れ、厳しくも温かく見守る西田の姿にホロリとした。

 女性の中で、山崎恵理さんのカンフーがビシッと決まりながらとても綺麗で、思わず目で動きを追っていた。

 松本稽古さんのようこも、優等生のようこの抱えるトラウマ、武術学校で日々を積みケンジたちと関わってゆく内に、変化しそのトラウマと向き合って行く変化を見事に舞台の上に立ち上らせていた。

 そして、最後にさらみさん(今西哲也さん)。

 出て来て、第一声を聞いた途端、「(いつものさらみさんと)違う。剛田ケンジがいる。」そう思った。

 さらみさんの舞台を観る時にいつも感じるのは、舞台の度に顔も印象もガラリと変わり、いつも役その人になって舞台の上にいるということなのですが、今回の剛田ケンジは、特にその感が強かった。

 声の出し方、声音、話し方、仕草、動き、表情、顔自体が、出て来た瞬間から剛田ケンジそのものだった。

 さらみさんのアクションは、いつも本当に動きが綺麗でキレがあって好きなのですが、今回のカンフーはその中でも特に凄かった。カンフーの時の手の動きが柔らかくしなやかできれいだった。

 が、それだけではなく、何をやっても才能がなく、いじめられ、おどおどして自信なさげなケンジが、唯一好きで堪らないカンフーを武術学校で日々積んで行くことで、少しずつ心身ともに強くなって行く姿を見事に表現されていて、最後のケンジの姿には、感動し胸が熱くなった。

 「ああ、さらみさん本当にケンジをやりたかったんだなぁ。さらみさんがケンジで良かったなぁ。」と思いながら観ていた。

 感動と笑にに包まれた二時間弱の舞台は、この出演者なくしてはこれ程の熱と感動と笑いは起きなかっただろうと思った素晴らしい舞台でした。

文:麻美 雪

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