架空の箱庭療法#3 公演情報 Nichecraft「架空の箱庭療法#3」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    「架空の箱庭療法#3 「アポトーシス」」
     4/30、吉祥寺Gallery re : tail に蓮根わたるさんが出演されている、 Nichecraft の「架空の箱庭療法#3」を観に行って参りました。

     この、「架空の箱庭療法#3」は、基本は展示で、その展示のなかで、日替わりで1日2~3回、10分間その展示されている架空の演劇の部分上演をするというちょっと変わった面白い展示。

     今日までやっている、ちょっと変わった面白い展示とはどういうものかと言うと、「舞台模型と舞台写真で再現する《実在しない演劇作品のカタログ展》」という展示。

     観劇に行くと貰う公演のチラシから想像す芝居のイメージを、舞台模型と舞台で再現した、演劇の予告編。そんなイメージの展示。

     では、その部分上演って何?となると、それは、舞台写真を撮るにあたり、出演されている役者さんは、その作品の登場人物の様々な組み合わせで、エチュード(即興劇の練習、下絵)を行い、舞台模型と舞台写真の中で1つの芝居を作り上げるのですが、その中の一部分を取り出し、観客の前で実際の芝居として上演するというもの。

     終演後に、蓮根さんともお話ししたのですが、蓮根さん自身もこう言う展示とお芝居は初めてだそう。私も、こう言う展示とお芝居の組み合わせは初めてで、とても不思議でとてつもなく面白かったビックリマーク

     どの作品も一回限り。どの回も初日と同時に千穐楽、一期一会の芝居。

     私が観たのは、「アポトーシス」という作品。

     この作品、本来の登場人物は6人。上演されたのは、小説登場人物二人と、自身の作品の二人を殺したくない作家と、登場人物を殺す事を主張する編集者の四人の緊迫する場面。

     編集者の入れたペンにより、翻弄される、小説中の人物さいとう篤史さんの演じる城山と外山弥生さん演じる香織は、小説の中の二人の心情と編集者や作家のペンに翻弄される生身の心情とが交錯する作中人物の悲哀と痛みと叫びを感じさせた。

     湯舟すぴかさんの作家絵崎は、本人が書きたい結末と、編集者の主張する「読者は、こんな結末ではなく、こっちの結末を望んでいる」と提示される自分の望む結末とは正反対の結末と、作中人物を助けたい、殺したくないとの思いの狭間で葛藤し、編集者を殺したいと思うほど、苦悩する作家の姿をリアルに目の前に描き出す。

     蓮根わたるさんの編集者佐倉晴臣は、売れる作品にするためには、作家の甘い親心など眼中になく、例え殺したいと思われるほど憎まれても、手段を選ばず結末を変えようとする編集者を、静かにじわじわと迫りくる怖さを持って存在していた。

     「佐倉晴臣は、サクリファイス(生け贄、生け贄を差し出す)のもじりになってるんですよ」という蓮根さんからの情報の示す通りの人物になっていた。

     実は、この作品上演では登場しなかったが、舞台模型と舞台写真で解る通り、チェスの舞台装置になっている。

     つまり、小説の作中の人物は、チェスの駒に見立てられている。しかし、駒を操るはずの作家絵崎は、編集者佐倉に操られる駒であり、そして、その佐倉と、この作品に登場する役者も実は、この 「架空の箱庭療法#3」を設計し、演出した辻本直樹さんによって、操られる駒なのではないかと思った。

     10分間の上演とは思えないほど、濃く、深く、張りつめた空気が流れる作品の中に惹き込まれ、息をつめるようにして魅入ってしまった素晴らしい作品でした。


                                文:麻美 雪

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    2015/05/03 09:38

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