純愛、不倫、あるいは単一性の中にあるダイバーシティについて
アマヤドリ
シアター風姿花伝(東京都)
2022/02/18 (金) ~ 2022/02/27 (日)公演終了
実演鑑賞
鑑賞日2022/02/20 (日)
価格3,830円
20日16時開演回を拝見。
恒例の人物相関図と睨めっこしつつの103分間。個々の登場人物のバックボーンを承知した上での観劇だったが、ふんわりとした理解のまま、最後の群舞を迎えてしまった。今回ばかりは、自分にはちょい難解でした(作品への理解が届いていないので、今回は☆の格付けは辞退)。
なお、昭和のオッさんの旧守的な道徳観に沿った見方で恐縮だが、パートナーのやまぶきや姉の弓道のように、アロマンティックやポリアモリーといった自己を正当化する概念の盾を持たない、いわば徒手空拳のハイカットのか弱さには大いにシンパシーを感じたことを付記しておきたい。
【追記】
さて、公演を終えたので、遠慮せずに本音を言うと、本作品、万事、設定ありきで、生身の役者が演じているのに、ハイカット、さわやか、ぴけ、微炭酸の4人を除く登場人物が、大変賢い・思想先行(感情の揺らぎゼロ)の機械かロボットみたいに感じられた。
演劇というよりも、ロールプレイングによる”お勉強成果の発表会”という趣きかなぁ。
てのひらのさかな
しむじゃっく
シアターシャイン(東京都)
2022/02/17 (木) ~ 2022/02/21 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2022/02/18 (金)
価格3,000円
18日19時半開演回(75分)を拝見。
幼児教育に関するドラマ、ぐらいの認識で観劇に臨んだが…指先ひと摘みぐらいの期待が、両の手のひらでも受け止め切れない程の数々の思慮深いテーマとして返って来た!
手放しでのハッピーエンドではないものの、考え方の異なる二人の先生の間で生まれた、理解と信頼の温もりがラストシーンから伝わって来た75分。
二番街の囚人
地人会新社
赤坂RED/THEATER(東京都)
2022/02/10 (木) ~ 2022/02/20 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2022/02/15 (火)
価格7,220円
15日18時半開演回を拝見。
開演前から場内に流れていたオスカーピーターソン・トリオのメロディーで始まった本作は、第一幕50分、途中休憩15分を挟んでの、第二幕85分の上演時間計135分。
最初は、騒がしい旦那に世話を焼く女房の愉快なコメディーだと思っていたら…
詳細は伏せるが、時間を持て余す旦那が陰謀論に取り憑かれたり、度重なる不幸に見舞われた旦那の身の振り方を心配して、旦那の身内の、かしましい姉達やしっかり者の兄がやって来たりと、板の上は、まさに、しっちゃかめっちゃか!
1971年、ニクソン大統領の頃に書かれた作品なのに、まるで、昨日か今日、書き下ろしたばかりの新作かと錯覚させられる程、現代にも通じる諸問題が描かれた本戯曲。しかし、ラストを飾るのは…(以下、「ネタバレbox」に続く)
女歌舞伎 さんせう太夫~母恋い地獄めぐり~
Project Nyx
ザ・スズナリ(東京都)
2022/02/06 (日) ~ 2022/02/13 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2022/02/13 (日)
価格5,130円
13日14時開演の千穐楽の舞台を拝見。
初見となるProject Nyx(プロジェクト・ニクス)の女歌舞伎。
泣かせる設定、泣かせるセリフ、泣かせる歌唱に三味線、泣かせる”ヒトカタ”(=等身大の人形)…と、女優陣の艶やかだったり粋だったりな装いが相まって、「安寿と厨子王」のエピソードを知らない若い観客でも理屈抜きに愉しめたのではないか。
140分弱の見世物芝居、大層良いモノを魅せてもらった。
宮城野(東京公演)
劇団あおきりみかん
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2022/02/11 (金) ~ 2022/02/13 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2022/02/11 (金)
価格3,500円
シアターグリーン BOX in BOX THEATERでの『ワード・ロープ』(2019年3月)以来となる、劇団あおきりみかんさんの舞台を、11日19時半開演回、山口眞梨さん×近藤彰吾さんのC班で拝見。
岡場所の娼婦・宮城野(演・山口)と、浮世絵師・喜多川歌麿の弟子・矢太郎(同・近藤)との会話劇は、2人の話が"綺麗事"から「実は…」と二転三転・四転・五転!
だが、最後の最後には、情の深さに感銘を受ける70分だった。
ところで、雷鳴とか・声を反響させたりとか・心理的動揺を表したりとかの効果音、どこか聞き覚えがあるなぁと思っていたら、演劇企画集団THE・ガジラの舞台でお馴染みの鐘下辰男(かねした・たつお)さんが演出と知り、納得。
APOFES2022
APOCシアター
APOCシアター(東京都)
2022/01/15 (土) ~ 2022/02/06 (日)公演終了
映像鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2022/02/06 (日)
価格1,000円
6日16時開演回、石澤希代子さんの「震える私の心の音」(41分)を動画配信で視聴。
2013年10月、今は無き新宿ゴールデン街劇場での「中野の処女がイクッ」から存じ上げている、石澤希代子という役者さんの集大成というか、一世一代の演技を”魅”せて頂き、感無量…。
嗚呼、それにしても、直に舞台に立ち会えなかったことを百万遍後悔!
ロング・タイム・ノー・シー
ナイーブスカンパニー
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2022/02/02 (水) ~ 2022/02/06 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2022/02/05 (土)
価格3,800円
5日17時開演の、吉東理…鹿野裕介さん、岩下音…月海舞由さんの回(100分)を拝見。
「ラヴ・レターズ」形式の朗読劇は、二人共、当初は自覚していなかった”秘密”の設定があまりに狙い過ぎかなとも感じたが、お二人の情感こもった語り口がリアルな佇まいをカバー。
おかげで、シンプルな舞台空間から、豊潤な時間を得ることが出来た。
ボクはハナウタをうたう。
art18BUNCH企画
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2022/02/03 (木) ~ 2022/02/07 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2022/02/03 (木)
価格3,500円
3日18時開演回(120分)を拝見。
自分探し…いや、自分見っけ!のおはなしかなぁ?と(自信は無いが)勝手に解釈。
サンテグジュペリのテイストや、(個人的には)ひとむかし前の学生演劇の香りに、勝手に懐かしささえ覚えながら観させてもらった。
まぁ、いずれにせよ、出演者全員、フルスロットルで駆け抜けた120分強の舞台は、観客のカラダを・ココロを、熱くガンガン揺さぶったんではなかろうか。
終演後もなかなか余熱が冷めない、思いの外、魅力に富んだ舞台だった。
おつかれ山さん
ことのはbox
シアター風姿花伝(東京都)
2022/01/26 (水) ~ 2022/02/01 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2022/01/28 (金)
価格4,200円
28日19時開演のTeam葉の公演(90分)を拝見。
前半
タイトルの暢気な語感通りの、万事全力投球の教師を中心とした日常コメディーだと思っていたら…
後半
まるで別の作品に変わったかのような畳み掛けるような急展開に、度肝を抜かれた。
潔い程に予定調和をトコトン粉砕した結末が滅法面白かった!
だからビリーは東京で
モダンスイマーズ
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2022/01/08 (土) ~ 2022/01/30 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2022/01/26 (水)
価格3,220円
26日18時半開演回(105分)を拝見。
評判の良さに惹かれて、東京芸術劇場シアターイーストへ足を運んだが、ここ2、3年のコロナ禍で、雌伏を強いられ、あるいは、途半ばで夢破れた演劇人の無念の思いを、笑いと熱情とで表現した105分は、評判をはるかに超えた出来栄えだった。
それにしても、作者は、作品中の劇団と同じく、私たち観客にではなく、自身等を含めた、演劇に関わる・かって関わったことのある”同志”に向けての
懐かしい思い出を蘇らせる牧歌として
打ちのめされた魂を安らげるレクイエムとして
この脚本を書かれたのかな?
その調べは劇場からの帰路、永らく胸に響き続けた。
セミへブン
劇団しようよ
小劇場 楽園(東京都)
2022/01/21 (金) ~ 2022/01/23 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2022/01/22 (土)
価格3,500円
22日17時開演回(98分)を拝見。
人生は泥濘(ぬかるみ)の途。
屑人間にも三分の理どころか、胸の奥底から湧き上がって来る程の情の温かさ…
昔、聴いていた、関西ローカルの深夜ラジオみたいな味わいの舞台。
決して万人ウケする作品じゃないが、心に沁みたのは、自分の年齢のせいかなぁ?
終演後、かけそばでも食べに寄りたくなりましたw
ガラテアの審判
feblaboプロデュース
新宿シアター・ミラクル(東京都)
2022/01/20 (木) ~ 2022/01/26 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2022/01/21 (金)
価格3,300円
21日20時開演回(115分)を拝見。
AI技術の発達により人間同等の知性・感情を有するようになったアンドロイドが犯した世界初の殺害事件。
被告となったアンドロイドの処遇を巡って、擁護・糾弾の対立が過熱する世論を背景に、公判前整理手続の段階から丁寧に描いた法廷劇は、まさしく、重厚な"人間"ドラマ。
2時間弱の上演時間中、あますところなく、これこそ演劇だ!という舞台を堪能させてもらった。
感謝!
カミノヒダリテ
劇団俳優座
俳優座スタジオ(東京都)
2022/01/07 (金) ~ 2022/01/16 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2022/01/08 (土)
価格5,000円
8日19時開演回を拝見(80分)。
米国南部の伝統的な宗教観・道徳観を「これでもカッ!」という程、おちょくった怪作だが、私たち日本人にはピンと来ない背景ゆえ、翻訳の田中荘太郎さんが、ラスト一つ手前に”ジーンとさせるシーン”を設定。
パペット「タイロン」が暴走する、映画『エクソシスト』もどきのダークファンタジー(怖い!と受け止めたご婦人の観客もおられた)が、最後の最後で、感動作に大転換!
まぁ、「よくも俳優座さんが上演を許可したよなぁ」と苦笑いしながら観ていたが、たまには、こうしたヤンチャで元気な演劇もいいんじゃないかなぁ。素直に面白かった!
個人的にはお勧めです♪
「ストロング」
坂井水産
RAFT(東京都)
2021/12/29 (水) ~ 2021/12/30 (木)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2021/12/30 (木)
価格3,000円
30日18時開演の大千穐楽(75分)を拝見。
ゴジラ好きの赤井…赤澤涼太さん
”ヘドラ”中山…加藤なぎささん
赤井の友人・坂井…家田三成さん
ト書き…浅倉洋介さん
の陣容。
脚本・演出で綿密に設定された演劇もいいけど、役者が自由に振舞える”ハンドルの遊び”がある演劇もいいもんだなぁ、と大笑いしながら観させてもらった。
東中野RAFTでの、坂井水産『坂井水産Presents 稽古初日VOL.1「ストロング」』で、今年の観劇締めくくりが出来てヨカッタ・良かった♪の2021年。
【追記】
なお、料金は投げ銭(カンパ制)だったので、野暮は承知で?自分が包んだ額を表示。
毒の島には近づかない
ハトノス
現代座会館(東京都)
2021/12/23 (木) ~ 2021/12/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2021/12/26 (日)
価格3,000円
26日15時開演の大千穐楽の回を拝見。
>竹原市の忠海港から船で約15分。周囲約4kmの大久野島(おおくのしま)は、かつて毒ガス工場があったことから「地図から消された島」と呼ばれていました。現在は国立公園に指定され、約500~600羽ものうさぎが棲息することで知られており、国内外を問わず多くの観光客が癒しを求めて訪れています(観光スポット紹介より)。
戦争の痕跡が残る”平和な島”を舞台に、過度な熱情や主義主張の押しつけではなく、眼前に広がる、ありのままの歴史・光景・心情を、努めて穏やかな視線で見つめ続けた90分。
あくまでも私個人の話だが、都内の演劇ではついぞ体験したことの無い、静かな迫力が伝わって来る舞台だった。
江戸川縄歩Ⅱ
美貴ヲの劇
映像配信/ダウンロード(東京都)
2021/12/25 (土) ~ 2022/01/11 (火)公演終了
映像鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2021/12/26 (日)
価格2,000円
26日に動画配信(1°24′23″)を視聴。
本作、テレビ朝日系「土曜ワイド劇場」の枠で放送されていた、故・天知茂主演の『江戸川乱歩の美女シリーズ』(1977~1985年)をリスペクトした演出、新たな嘘、新たな謎の新作短編集とのこと。
内容は、役者全員による前説の後、百々ともこさん演ずる、実に愛くるしい小林少年が狂言回しの
「煙の中の美女~黒蜥蜴~」
「額縁の中の美女~心理試験~」
「記憶の中の女~赤い部屋~」
「煙の中の女、再び~黒蜥蜴~」
の4部構成。
でっ、その胡散臭く・仰々しく・わざとらしい、昭和の空気感満載のテイストは、リアルタイムで視ていた私もニヤニヤ頷く、まさしく天知茂版『美女シリーズ』の再来のような出来映えだった(特に「記憶の中の女~赤い部屋~」で、小林少年を除く全員が…のラストシーンは大爆笑させてもらった)。
歳末の慌ただしい時期に、とてつもなく懐かしいモノを視せて頂き、昭和のオジサンは大感謝!
心からお礼を申し上げたいひとときを過ごせた。
セーラー服を溶かさないで
CACHU!NUTS
イズモギャラリー(東京都)
2021/12/22 (水) ~ 2021/12/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2021/12/24 (金)
価格3,000円
24日19時開演回(69分)を拝見。
26日までやっているので詳細は伏せるが、バカバカしさ全開で、決して"いいハナシ"ではないはずなのに、何故か、ノスタルジーと今の生活へのほろ苦さをペーソスをもって痛感させられる"いいハナシ風?"演劇を観た錯覚に囚われた。
ただ、そのおかげで、ニコニコ顔で夏目坂を下っていける、良い時間を過ごせたことには、とっても感謝!
『水』/『青いポスト』
アマヤドリ
新宿シアタートップス(東京都)
2021/12/16 (木) ~ 2021/12/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2021/12/17 (金)
価格3,500円
『青いポスト』17日19時半開演回(139分)を拝見。
2017年の初演舞台を観ているのに…
ストーリー、大方覚えていたのに…
初演の王子小劇場より、はるかに客席から間近な新宿シアタートップスの舞台のせいか、伝わってくる熱量が半端なく、とりわけ、ラストの群舞⁈には震える程、感動した。
海王星
パルコ・プロデュース
PARCO劇場(東京都)
2021/12/06 (月) ~ 2021/12/30 (木)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2021/12/16 (木)
価格13,000円
16日18時開演回(途中休憩20分)175分の舞台を拝見。
終演後、少なからぬ観客のスタンディングオベーション、席に腰を降ろして首を傾げながら眺めるという、実に貴重な体験をさせてもらった。
出演者は皆さん好演。
個人的には、清水くるみさん、伊原六花さんの若いお二人が強く印象に残った。
あと、久しぶりに聴いた中尾ミエさんの歌唱には目元ウルウルw(ところで、大谷亮介さん、ノドの具合が少しお悪いのかな?杞憂ならいいのだが…)。
役者さん達の他、演出・劇伴・セット・照明もすべからく熱がこもっていたとは思うも、なんせ原作の戯曲の感覚が古い・中身が薄い。
いくら新鮮な酒であっても、朽ち果てた革袋に入れたのでは勿体ないなと感じた。
溺れるように走る街
吉祥寺GORILLA
劇場HOPE(東京都)
2021/12/09 (木) ~ 2021/12/12 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2021/12/12 (日)
価格3,500円
12日16時開演の大千穐楽の舞台を拝見。
深夜のラジオ番組がメインの舞台だということで、ノスタルジーに寄せた内容かと思いきや、これでもか!という位、作者の繊細な優しい視線に満ち満ちた90分だった。
沙弥加を苦しめる原因である、姉・真理の脳梗塞に
番組のハガキ職人と中堅芸人の妻とが同じ職場だったり
番組のディレクター&真里
構成作家&ミキサー
AD&漫才コンビ「ダブルマインド」の小林
の3組のカップル
などなど
往年の大映テレビドラマも顔負けの設定てんこ盛りには、流石に苦笑せざるを得なかった。
だが、そのてんこ盛りの設定故に「どの役者さんが良かった!」と僭越なことが言えない位、個々の役者の演じた、それぞれのキャラクターに対する思い入れが深まったのかもしれない。
ということで、作者の思惑に素直に乗って観劇させてもらったご褒美に、終演後も永らく、心の琴線でジングルを奏で続ける、余韻たっぷりの作品となった。
【追記】
作品の出来映えとしては、前公演の『誰か決めて』の方が圧倒的に上なんだが、あくまでも個人的好みを優先して、本作を2021年の私的・観劇ベスト10に入れようと思う。