byassistの観てきた!クチコミ一覧

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あいだヶ原のほおずき祭り

あいだヶ原のほおずき祭り

FunIQ

Ito・M・Studio(東京都)

2017/08/07 (月) ~ 2017/08/13 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2017/08/08 (火)

8日ソワレ(100分)を拝見。

ネタバレBOX

盆踊りは「大らかな性の交わりの機会」、ほおずきは「古来からの堕胎薬」という民俗学的な知識はたまたま有していましたので、鴻上尚史さんの『ものがたり降る夜』のような、理知的な視点からの「性の解放」を扱ったテーマかなと考えながら拝見していたら、あにはからんや。
既婚・未婚・恋愛感情の有無さえ問わないフリーセックスに加えて、生者と死者の境さえ曖昧な、いわば内側ではボーダレス、でも対外的には(そうした文化・風土ゆえに)白眼視された閉鎖的なコミュニティがテーマの作品だったようです。
でぇ、内容は理知的というよりもナイトメア…いや、夏の夕刻、縁側でうたた寝している間にでも見たような、善悪の区別も曖昧でどんよりとした、けれど何処か懐かしさも覚える、日本の原風景みたいな夢の世界でした。

集落から出ていった女性や、集落に迷い込んできた亡霊に対して、集落で暮らす登場人物たちは居心地の良さを強調します。だからこそ、ご先祖の霊もココへ帰ってくるんだと。
しかし、「アノ事件」の犠牲者たちの霊は戻って来てはいません。前述の集落を捨てて出ていった女性だけでなく、住民の中にも、このコミュニティーを支配する文化・風土への反感を抱く者がいます。
ボーダレスゆえの不自由。生者であっても死者であっても、ヒトは水のように移ろいやすい存在であるがゆえに、境界という器があって初めて、常態を保てるんじゃないかな?…そんな感慨を抱きながら、舞台を観させて頂きました。

役者陣。
何度か舞台を拝見したことのある石澤希代子さん、木村圭介さん。
ホームの舞台と同じく「献身」的なボケに徹せられた、木村さんの誠実な演技
演じた人物の過去からの生き様さえ透けて見えた、石澤さんの説得力ある演技
個人的には、主役ではないものの、このお二方の演技がとても印象に残りました。

作品・役者陣共に、あのチケット代では申し訳ない程の逸品の舞台でした。

【配役】
水越基…辻貴大さん
白野乙佳…西岡未央さん
梅津直…安川まりさん
白野亮太郎…日比野線さん
高山泰幸…勢古尚行さん
須田正樹…木村圭介さん
白野冨美…和田碧さん
原朱南…石澤希代子さん
キン…​岸野健太さん
庄司理久也…本井博之さん
グランディ氏の穏やかな遺言

グランディ氏の穏やかな遺言

電動夏子安置システム

駅前劇場(東京都)

2017/08/02 (水) ~ 2017/08/06 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2017/08/02 (水)

2日初日のソワレ(110分)を拝見。

電動夏子安置システムさんらしい、きちんと作り込まれた・練りに練ったストーリー。
演じ手も、劇団員・客演の別を問わず、きっちり役柄を好演。
観劇後の「嗚呼、芝居、観たぞぉ~~~!」の充足感、今回もしっかり味わうことが出来ました。

ネタバレBOX

役者陣。
キーパースンな役柄を、(変顔もできるが、今回はそれを封印されて、笑)クールビューティ!に徹して演じられた、犬井のぞみさん
昨年秋の劇26.25団さん『ひずむ月』とは打って変わって、神がかった?役柄を好演の、林佳代さん
そして、今回イチバンの美味しい役柄、「孫娘を名乗る女」役の志賀聖子さん
個人的には、このお三方が印象に残りました。

あと、ただ一点、気になったこと。
終演後の会場や、下北沢駅までの帰路、たまたま耳に入って来たところによると、志賀さんの後に登場した、犬井さん演じる「孫娘1号」に絡むオチ、理解が及ばなかった観客、少なからずおられたようです。
再三再四、孔亮老人の口から、「孫娘に似ている」と、「天国?での係官」役での犬井さんに対して言わせて、伏線は充分張っていたんですが…なかなか難しいもんですね。
デトックス述懐

デトックス述懐

ひとりぼっちのみんな

スタジオ空洞(東京都)

2017/07/27 (木) ~ 2017/07/31 (月)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2017/07/27 (木)

27日ソワレ、初日の舞台を拝見。
でっ、感想は…小難しい理屈なんぞ要りません。
活き活きと役柄を演じ、キャッチ―なテーマ曲にノリノリで踊る様子!
役者の皆さんの愉し気な様子に、芝居を観に来たこと、途中から忘れていました。
演劇LOVE・女の子LOVEな80分♪

呪いならいいのに

呪いならいいのに

たすいち

シアター711(東京都)

2017/07/23 (日) ~ 2017/07/30 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2017/07/24 (月)

24日ソワレ・白組の回を拝見。

ネタバレBOX

「呪い」をかけたり・かけられたりのエピソードがレイヤーのように重なって構成された作品。個々のエピソードが意味合いはあれど、さほど複雑な内容でもなかったので、観客も混乱することなく、スムーズに観ていられたと思うが…もっちょっとエピソードの数を減らして、残したエピソードを深化させても良かったのでは?

まっ、それはさておき、「呪い」という行為・動機のユニークな解釈と、この団体さんの座組み独特のチームワークの冴えもあって、1時間55分程の上演時間、とても愉しめました。
特に、座組みのチームワークに関しては、例えば、たすいち初体験の『キズツクキカイ』にも出ておられた、みやでらみほさん。たすいちの劇団メンバーだとばかり思っていました(笑)。

最後に、印象に残ったこと。
役者さんとしては
長女役の脇領真央(わきりょう・まお)さん。
実年齢はまだお若いのに母親役の坪和あさ美さん。
そして…
終演後、最前列で気持ちのこもった熱い拍手をされていた、女子高生の皆さん。
(良し悪しはともかく)劇団の寿命が1年でも永らえる一番の秘訣は、観客(支持層)の若返り。今宵の彼女たちのように、観劇体験のまだ少ない・またはお初?の若いヒト達に、一人でも多く、たすいちの舞台を観てもらって、劇団のファンになってくれればな、と勝手なことを考えながら、シアター711を後にしました、とさ♪
奇想の前提

奇想の前提

鵺的(ぬえてき)

テアトルBONBON(東京都)

2017/07/21 (金) ~ 2017/07/30 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2017/07/23 (日)

22日ソワレ(110分)を拝見。

ネタバレBOX

江戸川乱歩の『パノラマ島奇譚』他の後日談というか、エピソードとキャラと空気感だけ借用した、全くのオリジナル作品だったな、とは観劇直後の印象。

端正な顔立ちを歪める青山祥子さんに、活き活きと悪に魅入られていく福永マリカさん、善と悪の天才に挟まれた愛すべき凡人・金子鈴幸さんも、実はワタシの正体わぁ!?の佐藤誓さんも…役者陣の佇まいは、まさしく、かってのテレ朝・土曜ワイド劇場の番組改編期特番をほうふつとさせます。
それから
大仰なセットに、最後に気球のゴンドラまで持ち出してきた舞台美術や
過剰なまでに劇的効果(ウケ?)を狙った、音響・照明。
これほどまでに潔く、見世物小屋的・伝奇ロマンな娯楽に徹し切り、尚且つ、丁寧に作り込まれた作品は久方ぶりです。
ヒトにより好みは大いに分れるでしょうが、私自身としては、十二分に愉しめました。
預言者Q太郎の一生

預言者Q太郎の一生

(劇)ヤリナゲ

こまばアゴラ劇場(東京都)

2017/07/14 (金) ~ 2017/07/23 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2017/07/19 (水)

19日のソワレ(80分)を観て来ました。

ネタバレBOX

「マリア」様に「三賢人」とくれば、キリスト生誕の話だと、すぐにピンと来るほどにはミッションスクール出身者です。
ただし、ここでの「三賢人」、言動が、どこか、ダチョウ倶楽部のアノ3人なんです!
でぇ、キリストの再来?「Q太郎」なんですけど、見た目(演・澤原剛生:さわはら・ごうきさん)は、ごく普通の純朴そうな青年で、人柄は、まさしく裸の大将・山下清画伯そのもの!
そして、さらに言えば、この芝居の主人公、実はQ太郎ではなくって、後にQ太郎の妻となる、みちる(永井久喜:ながい・ひさきさん)。

娘の瑛子(金城あさみさん)を連れ立っての墓参り。見たこともない父親なんかに祈れないと愚図る瑛子に一冊の本を渡す、みちる。
そこには、互いにまだ幼かった頃のQ太郎との出逢いから、幾年月を経て、瑛子を身ごもるまでの、みちるの激動の半生が…

観劇後の雑感をばっ。

まず第一に挙げられるのが、主演の永井久喜さん。今年2月の舞台で知った役者さんなんですが、ハイトーンの声質とキョトンとした表情は印象的だが何となく線の細そうな…スンマセン、認識不足でした!
舞台の隅から隅まで八面六臂(はちめんろっぴ)。気が弱くて・流されやすくて・でもどこか図太い、みちるを80分の上演時間中、ほぼ出ずっぱりのフルスロットルで演じ切っておられました。

そして、他の役者さんも永井さん同様、吹っ切れたようにカリカチュアライズされた登場人物を演じることで、テンポのいい、笑いの絶えない、でも、ポツポツと社会風刺や作者の人生観が伺える作品に仕上がっていました。

ここんとこ、商業演劇系のコメディや、シリアスな人間洞察ドラマを観て来た身には、遊び心コロコロな作・演のタッチ、素直に愉しめました、とさ♪

【追記】
ラストのオチとして、キリストよろしく、Q太郎が「復活」するんですけど、ただ墓石から貞子みたいにズルズルと這い出して来て、さてそれから…というところでのエンディングは、ちょっとばかし言葉足らずかなぁっと。
りんごりらっぱんつ at 浮間ベース

りんごりらっぱんつ at 浮間ベース

浮間ベースプロジェクト

浮間ベース(東京都)

2014/11/06 (木) ~ 2014/11/16 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2014/11/11 (火)

11日のソワレ(2時間20分)、観て来ました。

ネタバレBOX

池袋から埼京線で北に下って5駅先の浮間舟渡(うきまふなど)。
この郊外の地にある浮間ベースって建物で1階、2階…ついには、今回、屋上!まで使って、立体的に演劇を展開するのが「浮間プロジェクト」。
でっ、オイラにとっては3公演目、リピートも含めると4回目の観劇となる舞台を、昨日(11日)の夜、観て来ました。

共に上京するはずが、前言を翻して、地元での就職を選んだ、姉のナツミ。
どうやら付き合っている彼氏の意向らしい。
一人、妹のフユミだけが大学に進むため、東京に旅立つのだが…。
深夜に彼氏のもとに向かう途中
不慮の事故で、ナツミが亡くなったことを知らされたフユミは、母親から遺品のノートと、とあるレストランの名刺を渡される。
お姉ちゃん、東京でパティシエになりたかったんだ…
二人が幼かった頃、ケーキ屋さんごっこに興じていた思い出が蘇るフユミ。
それから、ほどなくして、フユミはそのレストランの扉を叩くことになる…

姉の叶わなかった夢をトレースするように妹が追っていくおはなしなんですが、上京してからの様々な出逢いを通して、家族とのつながりや、彼氏のために唐突に人生の幕を閉じた姉への思いから嫌悪感すら抱いていた恋愛に対しても、フユミは理解を深めていきます。
原作は、劇団競泳水着さんの上野友之氏。競泳水着さんも何度か拝見しているんですが、クスッと笑える場面を盛り込みつつも、上記のあらすじでもおわかりの通り、ベースはしっとりとした口調で語られます。

そんな劇団さんのホンを、浮間プロジェクトさんは、1階~屋上の3つの舞台、フル稼働で(内容は公演中ですんで秘密ですけど)大仕掛けに・小技に・お色気までっ(笑)!…結構、賑やかな舞台に仕上げています。

でも、この賑やかさ故に、本筋のストーリーがより味わい深く感じられました。
不思議なモノです。

【補足】
ええっと、私事で恐縮なんですが、若い頃に弟を事故で失った身には、ナツミ・フユミ姉妹の回想シーンあたりで、ちょっくら胸に迫るものがありました。
姉妹役の慶雲さん(フユミ役)・中村佳奈さん(ナツミ役)、好演です。

それから、脇役なんですが、Q本かよさん(☜誤変換ではありません!)。
フユミが働くレストランのセルヴーズ(女性のギャルソン、給仕係)役の彼女、快活なセリフ回しが、ものがたりの良いアクセントになっていたと思います。
そでふりあうも

そでふりあうも

ブラシュカ

シアターブラッツ(東京都)

2017/07/12 (水) ~ 2017/07/17 (月)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2017/07/17 (月)

17日マチネ(1時間45分)を拝見。

ネタバレBOX

幼い頃からの夢を果たせぬまま、不慮の死を遂げた姉に導かれるかのように、小さなフレンチの店でパティシエとして働くことになった、冬美の人間関係を縦糸に
オイラもそうだったんですが(いきなり遠い目…)
自分なりの夢を抱いて上京してきた地方出身者の、理想と現実の狭間でもがくさまを横糸に
紡がれた、1時間45分の青春群像劇。

実は、2014年11月に、本作品の原案である『りんごりらっぱんつ』の浮間ベース公演版を観ている身なので、大方のストーリーは、いわば予習済み。
とはいえ、夏美・冬美の姉妹を演じた役者さんの個性の違いか、それとも演出上の指示か
姉・夏美は、浮間ベース版の「悪い男に関わってしまった薄幸の女性」から、「無邪気な・でも一途な女の子」に
妹・冬美の気持ちも「姉の意志を継ぐという悲痛な決意」から「姉が進むはずだった人生の風景を自分の目で確かめてみたい」という前向きさも加味されたものに
味つけが変わったかな、と感じました。

合わせて、今回のキャストの皆さんになんですが、演技の手触りというか、タッチの優しさには、とても好感が持てました。

期待通り、 良い時間を過ごせました。有難うございます。

【追記】
当日、会場のシアターブラッツが冷房不調のため、運営側から「ヒヤロン」とハンドタオルが観客に配布されました。
こぶしによる打撃で冷却を開始する「ヒヤロン」に苦戦する方(主に若い女性)、ちらほら見受けられはしましたが(苦笑)、こうしたきめの細かい対応、本当に助かります。当日運営さんのナイスプレー!でしたね。
纏(まつ)わるひとびと

纏(まつ)わるひとびと

TOKYOハンバーグ

サンモールスタジオ(東京都)

2017/07/12 (水) ~ 2017/07/19 (水)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2017/07/16 (日)

7月16日ソワレ(100分)を拝見。

ネタバレBOX

題材は、当時、社会に大きな衝撃をもたらした実在の事件。そして、本作品のストーリー上でも、かなりの部分で「報道された事実」がトレースされています。
とはいえ、劇場で上演されるのは、あくまでもフィクションたる舞台作品。以下、純粋に舞台への感想を述べていきます。

父と娘、母となった娘とその子供たち…二代にわたるネグレクトする側・された側のものがたりを
「ドキュメンタリー映画」の製作にあたるスタッフたちのやり取り
劇中劇たる「ドキュメンタリー映画」の各シーン
の2元で描く構成。
最初は、題材となった「実在の事件」のあまりの生々しさを緩和させるためのバッファーかな?と思っていました。
しかし、ラスト近くで、登場人物達の関係性が明らかにされてからは、傍からは…いや、当の相手ですら伺い知れない、ネグレクトした側・された側の傷の疼きの正体を、残された当事者たち(和実と夕香)が追い求めていくという、脚本(滝本祥生さん)・演出(大西弘記さん)の意図、慮ることができました。

ネグレクト、虚栄心、現実逃避、再起、義理の・肉親の親との絆…ヒトの心の弱さ・愛おしさの有り様に、胸がいっぱいになった舞台でした。
愛しのマーレ ~海の家、はじめました~

愛しのマーレ ~海の家、はじめました~

チーム・ギンクラ

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2017/07/12 (水) ~ 2017/07/16 (日)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2017/07/15 (土)

7月15日ソワレの舞台を拝見。

ネタバレBOX

1月の『365枚目のスケッチブック』以来となる、チーム・ギンクラさんの作品。
顔と名前の一致する役者さんも多いので、人数の割には「入りやすい」舞台でした。
(でも、役柄も、当日パンフレットに入れといて欲しいなぁ)

でぇ、海の家を経営する兄弟姉妹の長男坊が、今年の夏の営業準備をしている最中にサーフィン行って・頭ぶつけて記憶喪失になったり
東京で雑誌社のカメラマンをしているらしい、その長男坊の幼馴染が5年ぶりに帰ってきたり
飲食店の悪い評判をネットに上げることで人気を博している、某サイトの覆面調査員が隣町に現れたとか
…と観ているうちに、ストーリーの流れとエンディングは大方読めてしまい、実際、ほぼ予想通りのラストでした。

とはいえ、観客の予想(or 希望)通りのエンディングを迎えるも、本作品のような「王道コメディ」のセオリー。ミステリーものじゃないんだからと、舞台の進行に素直な?視線を送り続けた130分。

観終わっての感想は

とても生真面目に作り込まれたオーソドックスな喜劇の感

出演者一人ひとりにきちんと「ボールを回す」、丁寧な脚本

そして、大方の予想通りとはいえ、決して手放しでHappy♪とは言い切れない、「人生の苦味(本作品では、カメラマン→実は悪評サイトの編集者の、理想と現実の板挟み感)」といったものも残してある

といった具合に、前作と同様、今回もまた、ウェルメイドなホームコメディでした。

最後に役者陣。
前回公演で真っ先に覚えた、可憐な容姿・外見と女性政治家のようなハスキーボイスとのギャップが著しい、雑誌社のカメラマン役・佐藤雅美さんと
海の家を経営する兄弟姉妹のうち、常に温かい眼差しで弟たちや妹を見守っている、長女役の、小柄な中谷真由美さん
のお二方の役柄に、シンパシーを覚えました、とさ♪
シンクロ・ゴッサム・シティ

シンクロ・ゴッサム・シティ

シンクロ少女

シアター711(東京都)

2017/07/14 (金) ~ 2017/07/19 (水)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2017/07/15 (土)

14日ソワレ、初日の舞台を拝見。
なお、初日だからかもしれないが、前説で1時間半といっていた上演時間、実際は2時間を少し過ぎたくらいだった。

ネタバレBOX

まず何よりも、ラストでの登場人物達のダークな「その後」、なかなかに味わい深かった。とりわけ、宮本奈津美さん演ずるキャットウーマンぽいキャラの(舞台では「暗示」にとどまる)最期には…こたえた。
「正義」とか「正しいこと」の揺らぎ、笑ったり・憤慨しながらも、深く考えさせられた2時間だった。

細かなことを言って恐縮だが、外観の全く異なる役者2人で同じ人物の「過去」「現在」を演じさせる手法、前回公演では最後に「あっ!」と言わされたが、二度目ともなると、ちょいと鼻白む思いがした。
『私を知らないで』

『私を知らないで』

くろまく株式会社

ザムザ阿佐谷(東京都)

2017/07/12 (水) ~ 2017/07/17 (月)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2017/07/12 (水)

12日ソワレ、初日の舞台(125分)を拝見。

ネタバレBOX

開演前、視界に飛び込んでくる、舞台下手の大天秤。左右の皿に「ぼく」の両親がそれぞれ腰を下ろしてスタンバっている訳だが、開演後も「ぼく」との心理的距離感の差で左右の皿の高低が変化していく様が興味深かった(このため、両親役・室田渓人、楊木賀央里のお二方がとりわけ印象に残った)。
そして、ラストの、姉(キヨコ)&高野 VS 「ぼく」の関係性の顕在化には、正直、うるっとさせられた。脚・演(松澤くれはさん)、舞台美術(三井優子さん)のクリーンヒットだと思う。

次に、芝居の内容。(原作を読んでいないので、あくまでも推測だが)内外の社会・時事・教育の諸問題を欲張りなまでに盛り込んだストーリー、舞台化にあたっては、相当、交通整理されたのだろうか? てんこ盛りのクドさを感じさせない、すっきりした後味のドラマに仕上がっていたと感じた。

最後に雑感だが、犯罪者となった少女を養子縁組するという、世俗の垢にまみれたオッさんには、あり得ない!話の展開も、アヤ(個人的には、一番心惹かれた登場人物。平本野百合さん好演!)に米国セレブの里親の事例を語らせることで、作中、充分な説得力を有することが出来た。遠くない将来、日本の社会でも彼の地と同様、特段奇異なことにも思われない、ごく自然な行為になればいいな、と強く思えた。
ハイヌウェレの骸

ハイヌウェレの骸

ヅカ★ガール

シアター・バビロンの流れのほとりにて(東京都)

2017/07/05 (水) ~ 2017/07/09 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2017/07/09 (日)

7月9日、鱗チーム、千秋楽の舞台を拝見。

ネタバレBOX

むらさき・るりの姉妹や弥剣ヶ峰の一族が悲劇へと否応なく加速度的に追い立てられていく筋運びに、脚・演の飯塚未生さんを知るきっかけとなった『のばらのばらのばら』の記憶が蘇りました。
もちろん「運命へと誘う夜叉姫」「運命に抗おうとするナユタを初めとする人々」を配した『ハイヌウェレの骸』は、『のばらの…』とは違って、重層的な構成です。しかしながら、実は両作品とも、その底流をなすものは同じではないかと。
様々な紆余曲折が設けられていながらも、登場人物が各々の「結末」に向けて一直線に突き進む、その潔いまでにひたむきな作劇にこそ、飯塚作品の魅力の神髄があるのでは、と勝手ながら、改めて確信した次第です。

それから、本作品の世界観をより豊饒なものに仕立て上げた

きらびやかであったり(白蛇の夜叉姫と、その仔蛇たち)・遊び心満点だったり(旅芸人一座の座長と影法師)の衣装

その場の雰囲気を、幻想的にも・神秘的にも・艶めかしいものにさえ、塗り替えてくれた、精巧な振付

演劇のド素人が言うのもおこがましいのですが、とても高く評価させて頂いたと申し添えておきますね。
ノンフィクション

ノンフィクション

新宿公社

シアター風姿花伝(東京都)

2016/02/25 (木) ~ 2016/02/28 (日)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2016/02/28 (日)

28日、日曜のマチネを拝見。

ネタバレBOX

舞台は、冷戦下の旧・東西ドイツ(&南北朝鮮も?)をイメージした架空の国。
映画評論の売れっ子ライターである主人公の視点を中心に、「ベルリンの壁」の崩壊前、そして崩壊後の現在における、若い(若かった)男女の青春群像劇…といった趣きのストーリー。
舞台セット・音響・照明もあいまって、醸し出す空気感は、ヒロイン役の土佐まりなさん(主人公のかっての恋人)を、過去拝見してきた舞台の中で一番魅力的に映し出し、儚い運命を予感させる女性(演・青木沙織さん)の絶叫には、胸裂ける思いを共有させてくれました。他の女優陣や、主人公の青野竜平さん、友人役の奥田努さん等の男優陣も、シーンに沿った登場人物の心情の変遷を好演。まさしく、欧州の名作映画を観た…気分に浸れた2時間でした。

ここからは、作品への客観的評価というより、あくまでも私的な感慨なんですけど…ベルリンの壁が崩壊したのが1989年、というよりも平成元年の11月。本作品の作者・出演者・スタッフの全員が生まれる前、あるいは、物心つく前の出来事です。でぇ、この頃、既にダメダメ・サラリーマンだったオッさんのオイラ、否応なしに、当時の空気(それ以前の東西冷戦の時代も含めて)肌で知ってるんですよね。そんな骨董品の観客からすると、新宿公社さんの『ノンフィクション』、あくまで架空の国のおはなしだとはいえ、外見だけ・雰囲気だけ、都合よく借りてきただけじゃないの?と、つい意地悪な見方もしてしまいがちだったんです。
時代設定も何もかも異なりますが、軍事政権下・後の韓国社会の若者達を描いた『鳥たちは横断歩道を渡らない』という著名な戯曲があります。その時代をまさに生き抜いた『鳥たちは…』の作者が、もし、この『ノンフィクション』書いたとしたら…ここまでサラリとして・爽やかな観劇後の印象にはならなかっただろうなぁ。平和な時代に生まれ育った方のホンだなぁ…と、ある意味、感慨深いものがありました。

とかなんとか、「あの頃はのぉ~」という、若いヒトにはアンフェアな感想を述べましたが、『ノンフィクション』、昨日が千秋楽でなければ、ちょい自信をもって、お勧めの作品だったかなぁ。
ブスも美人も死ねば土

ブスも美人も死ねば土

美貴ヲの劇

荻窪小劇場(東京都)

2016/06/30 (木) ~ 2016/07/03 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2016/07/01 (金)

7月1日のソワレを拝見。

ネタバレBOX

女系家族・女子校育ち・美大卒の、呪われた?経歴の作家・美貴ヲさんの舞台、私にとっては初見となります。それにしても『ブスも美人も死ねば土』…なんとも身もふたもないタイトルだなぁ(笑)

朝、ギリギリに起きて、通勤電車に揺られ、勤務を定時で終えた後は真っすぐ家に帰って…
彼氏無し歴ウン年の「夢川夢子」をヒロインに、今どきの若いコ達が抱える、SEXの悩みや不安、怒りをカリカチュアライズしたストーリー。際どいセリフや小道具(☜おいおい!)も出て来る、R13指定(☜主催者談)の作品でしたが…上演中、客席の笑いや苦笑が絶えない・絶えない!
テーマに変に引きずられることなく、実にスマートな仕上がりのコメディだと思いました。

役者陣は、小林勇太さんを除いて、皆さん、顔と名前が一致する方ばかり。当たり前っちゃあ当たり前のことなんですけど、下手な方がやったら空回りしそうな芝居を、どなたも実に楽し気に役柄を演じておられたのに、とても好感を持てました。
月経ファンタスティック

月経ファンタスティック

美貴ヲの劇

【閉館】SPACE 梟門(東京都)

2017/06/29 (木) ~ 2017/07/02 (日)公演終了

満足度★★

鑑賞日2017/07/01 (土)

7月1日アダルト回を拝見。

ネタバレBOX

以前に拝見した『ブスも美人も死ねば土』が念頭にあったので、今回の『月経ファンタスティック』(90分)も女性目線オンリーの作劇かな?と予想していたら、案に反して、一番描き切れていた人物がサトモリサトルさん演じる「クズ男」だったのは意外でした(それにしても、この「クズ男」を必ずしも笑い飛ばせない自分には恥じ入るばかりだなぁ~、苦笑)。
あと、「クズ男」を除けば、梁稀純(りゃん・ふぃすん)さん演じる2役のうち、「月経ちゃん」が、おはなしが停滞しかかったときに登場するワンポイントリリーフとして、大変効果的な役割を果たしていたと思います(梁さんに関しては、さらに、合間に登場する、アルトな声質でのリーディング、耳にとても心地よく響いたことも追記します)。

ということで、印象に残った役者さんに触れさせてもらった上で、作品自体への感想なんですが、『ブスも美人も死ねば土』での開き直り感と同等以上のモノを期待していたんですが、今回の作品、どこか躊躇いがあったのかな? 振り切れていないというか、土壇場になるとサラッと身をかわされたような物足りなさを覚えました。
幻月パーライティーナ

幻月パーライティーナ

salty rock

明石スタジオ(東京都)

2017/06/29 (木) ~ 2017/07/02 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2017/06/30 (金)

6月30日ソワレと7月2日マチネを拝見。

ネタバレBOX

プロットにすれば、実にシンプルで青臭いストーリー。
天才モーツァルトに対するサリエリの愛憎半ばする感情を描いた、映画『アマデウス』でもお馴染みの、普遍的なテーマ。
適宜、道化を交えながらも、全体として、一本調子な芝居のテンポ…

にもかかわらず(いや「だからこそ」か)、羨望・不安・理想といった、芝居に対する作者の様々な「想い」がこめられた100分間は、構成・演出・演技・セット・照明・音響の総合力をもって、個々の観客に強烈に迫ってきたようです。
かくゆうワタシも、そんな熱にあてられて、観劇後、誰にも邪魔されずに、人生のほろ苦さにいつまでも浸っていたい…そう思わせてくれた作品でした。

そして2回目。
なまじ話の流れを承知しているだけに、劇中の涙腺刺激ポイントで悉く被弾(笑)。エエ歳こいたオッさんの両の瞳が涙止まらず状態に!
あとで、感性豊かな某・若手女優さんが号泣されたという感想ツイートを目にしましたが、それもむべかるかな、と我が身をもって納得させられました。

演劇とは何の関係もない観客でも、誰もが一度は体験したことがあり、誰もが恐らく共感を覚えたであろう、理想と焦燥との狭間の世界。
『幻月パーライティーナ』、本当に良い作品に出逢えました、とさ♪

【付記】
自分の記録用なんですけど、以下、配役を記しておきます。

あンな邦祐さん…劇作家・土門
窪寺奈々瀬さん…土門の妻
小林カナさん…編集者・小倉ミサキ
長瀬巧さん…小劇団の座長・宜野座
千頭和直輝さん…劇団員(若き日の土門)
まついゆかさん…劇団員(若き日の土門の妻)
大寄正典さん…古株の劇団員・楽谷
フジタタイセイさん…劇団員・白野
伊織夏生さん…劇団員・簾藤(白野に思いを寄せている)
松本真菜実さん…戯曲雑誌の編集長、医者、あるいは「キロク」
松村瀬里香さん…ミサキの後輩編集者、看護師、あるいは「キオク」
人魚の足

人魚の足

劇団子供鉅人

シアター711(東京都)

2017/06/28 (水) ~ 2017/07/03 (月)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2017/07/02 (日)

7月2日ソワレを拝見。

ネタバレBOX

海辺の町に伝わる、幻想的ともいえる、1年前の不幸な出来事をベースに、悲喜こもごものエピソードが同時進行するストーリー。
大いに笑い・大いに切ない気持ちにさせられた2時間のエンターテイメント。小劇場演劇の世界では、近頃、記憶にない伝奇ロマンの貴重な演劇体験だった。

役者陣に関しては…
久しぶりに拝見する小野川晶さんの凛とした存在感は流石。
今宵の葉丸あすかさんには、これまで彼女に抱いていた認識を一新させられ、反対に、オザワミツグさんは、これまで通り、安心して観ていられた。
あと、本舞台が初見となる
(素敵な役柄を演じることによる「役得」は当然あったが)初見の天野はなさんのフレッシュさ
フライヤーのモデルでもある、女性タレント役・河合明日香さんの華やかさ
がとても印象に残った。
たちばなきょうだい、と天使たち

たちばなきょうだい、と天使たち

FunIQ

Ito・M・Studio(東京都)

2017/06/26 (月) ~ 2017/07/02 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2017/06/26 (月)

26日ソワレ、初日の舞台(95分)を拝見。

ネタバレBOX

今回の作品では、本来、作意の作為であるはずのセリフの一つ一つ…とりわけ三兄妹(次男・辻貴大さん、長男・日比野線さん、末っ子長女・綾乃彩さん)や次男夫妻(妻・久世理瀬さん)の間のやり取りが、時折置かれた絶妙な間(ま)とも相まって、演技していることを感じさせませんでした。
また、自分が観た上野さんの直近作(『全 員 彼 女』)でも承知している、女の子同士の会話のナチュラルさも、今回の「天使たち」では、より一層磨きがかかったかなぁ?と受け止めました(個人的には、黒沢佳奈さん演じる「元キャバ嬢」の天真爛漫さがお気に入りデス)。

それにしても…
「キレイな関係?の不倫」を書かせたら、上野友之さんはピカイチだなぁ!
(☝注.コレは褒めているのです)
ざらば

ざらば

新宿公社

【閉館】SPACE 雑遊(東京都)

2017/06/28 (水) ~ 2017/07/02 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2017/06/28 (水)

28日ソワレ、初日の舞台を拝見。

ネタバレBOX

終戦から6年後、日本から遠く離れた北欧の地で起きた富豪一家連続不審死事件のミステリーを縦糸に、様々な世代の人々の意思と輪廻(「不審死事件」の関係者と同じ役者が演じる「別人」が登場します)が交錯していく2時間のものがたり。
時代や場所の異なるシーンが頻繁に切り替わり、尚且つ、役者全員が3役をこなすという、コトバにすれば何とも忙しない舞台だったが、実際、観終わっての感想は「交通整理の行き届いた進行・確かな人物造形」のおかげで、何らの混乱も生ずることなく、「大河ドラマ」を堪能できた。

なお、新宿公社さんは、その旗揚げ公演も拝見しているが、(演劇ド素人が言うのは甚だ僭越ながら)ツメの甘さを感じた同公演と比べると、今回はストーリーは勿論のこと、舞台セット、演出等々、格段に緻密になったと思う。

ところで、証券関係以外の方に、『ざらば』~ザラにある場~の意味、わかったんかなぁ(笑)?

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