一句頂一萬句 -出延津記-
タイニイアリス
タイニイアリス(東京都)
2015/01/09 (金) ~ 2015/01/11 (日)公演終了
満足度★★★★
一萬言に優る表現力
競演 東西南北 AliceFestivalの一環として上海戯劇学院(国立演劇大学)を招聘し公演したもの。この作品は現代中国屈指の若手ベストセラー作家 劉震雲 氏の原作で、若い陳一諾 女史が90分の編劇にした。
本公演は、原語上演で字幕は映し出されない。その代わりに当日パンフに粗筋(プロローグ、エピローグ及び全12場)が記載された資料が配られる。もっとも「下層の庶民の言葉が通じない孤独、やるせない流浪感を描いて」いるのであるから、芝居に集中してみるのも一興かもしれない。
本内容は、原作者、編劇者、そして舞台監督・演者は皆若く、それこそ、新しい世代が身体と心で挑む!という謳い文句に恥じない素晴らしいものであった。
ネタバレBOX
原作者が劉震雲 氏(「温故一九四二」の作者だったと思う)というところが、日本受けしたのだろうか。舞台は同じ中国・河南省という設定で、汽車の中で働いている楊百利が本当と嘘の入り混じった話をするところから始まる。
その物語は、自宅を出奔し、放浪しながら人の善意、慈悲、裏切り、愛憎などいろいろな場面が展開される。その演出は素舞台に椅子、棒、などの小物と衣装(下手に吊るしてある)を場面に応じて着替えるというシンプルなもの。しかし、その表現は、言葉が分からなくとも十分に伝わるという不思議感覚を味わえる。またテンポもよく舞台に集中させる力量はさすがである。
今後もこのような機会が得られることを望んでおります。
Sの悲劇【全日程終了致しました。ご来場有難うございました!】
Sun-mallstudio produce
サンモールスタジオ(東京都)
2015/01/07 (水) ~ 2015/01/12 (月)公演終了
満足度★★★★★
本格的推理演劇…
期待通りの素晴らしい公演である。本格的推理演劇の謳い文句に偽りはなかった。
まだ公演中のため、後日追記
は?
艶∞ポリス
OFF・OFFシアター(東京都)
2015/01/07 (水) ~ 2015/01/11 (日)公演終了
満足度★★★★
悲喜劇のような
”喜劇”ということだが、観方によっては喜劇・悲劇が同居しているような感じだ。いずれにしても人間関係の醜悪な面だけど…。
ネタバレBOX
舞台セットは、上手に売店カウンター、下手に社員の談話控え室、中央が廊下、という作りである。
デパ地下における売り子女性(派遣)の嫉妬など、あぁそうなんだと納得できそうなシチュエーションが面白い。このデフォルメ感が表層的には喜劇。しかし、新人(派遣)が男性の正社員に取り入って正社員になって立場が逆転してからの対応(観方によって)は粛清?のようで、雇用形態への皮肉、批判がチクリと見える。
さて、結末については、観客によっては評価が分かれるかもしれないが…
さて、公演はその女性という同性から観た鋭く、また厭らしい視点が随所に見られて面白い、その反面怖いとも思う。そのグイグイと引っ張っていくテンポのよい演出は見事である。そして、それを上手く体現させるキャスト陣も素晴らしい。
さらに、女性の苛め、噂的な様子をインターネットでリアル中継するところは、現代社会の情報拡散(虚実綯い交ぜ及び誇張)の怖さが見える。面白くも楽しい芝居の中にしっかり問題提起をする。
全体的にアイロニの利いた観応えのある公演であった。
次回の公演も期待しております。
すっとこどっこい大晦日スペシャル
大川興業
ザ・スズナリ(東京都)
2014/12/30 (火) ~ 2014/12/31 (水)公演終了
満足度★★★
初笑い
「大川の大忘年会2014」の「すっとこどっこい大晦日スペシャル」は、大晦日から年を越した深夜1時までの公演。実に多くの芸人が登場し、漫才、一人芝居等を観せてくれた。大川興業以外のゲストは、モロ師岡、清水宏、Wコロン、藤田記子など。会場は「ザ・スズナリ」であったが、隣接する劇場「シアター711」からも観客が途中入場し、一時は「ザ・スズナリ」は通路にまで観客が座り、一緒に笑いに興じた。
年越しカウントダウンは外に出て劇場前にスクリーン映像を見ながらクラッカーと歓声で一体感あり。最高の盛り上がりを見せた。
さすがに高校生以下の子供・学生はいないが、アベック、夫婦連れの姿もチラホラ見受けられる。
ここ2~3年はこんな年越しを、それから初詣へ…2015年も初笑いは満足した。
お笑い裁判の歩き方2014
大川興業
ザ・スズナリ(東京都)
2014/12/30 (火) ~ 2014/12/31 (水)公演終了
満足度★★★
2014年の刑事裁判傍聴記
「大川の大忘年会2014」の一つ「お笑い裁判の歩き方2014」は、阿曽山大噴火 氏の刑事裁判傍聴記をイラストマンガのスライドを交えて面白おかしく聞くというもの。単にそれだけなのだが、なぜか聞き入ってしまい、アッという間に2時間が経つ。
毎月の面白そうな裁判ネタを取り上げて12カ月分を披瀝すらが、一応各月のトピックス的な話題も紹介する。ネタは、有名人などの話ではなく、一般人の起こした事件内容、とそれに関係した人物…裁判官、検察官、弁護士や被告当事者の人物描写が実に見事な笑いを誘う。
もっとも一番笑ったのは…
ネタバレBOX
阿曽山大噴火 氏 本人のこと。2014年は御嶽山の噴火があり、多大な犠牲者が出たが、それを想起させる名前でのメディア露出はできず、本名を使用せざるを得なかったらしい。芸名がアダになったようだ。
tHe End oF EveRyThing
EgHOST
新中野ワニズホール ( Waniz Hall )(東京都)
2014/12/29 (月) ~ 2014/12/29 (月)公演終了
満足度★★★★
楽しめた!
今回のイベント・公演は、劇団の忘年会を観客と一緒に楽しむこと。そして一夜限りの公演…。
会場は、新中野にあるライブハウスで、劇団関係者・友人で満席状態だった。飲みながらリラックスして芝居を楽しんだ。キャストと談笑して、気がついたら結構遅い時間まで居た。劇団関係者の盛り上げようとする心配りが嬉しかった。
さて公演は、特に舞台セットはなく、観客が座っている間を動きながら、少ない動作と台詞で状況説明をする。説明文にある「アインシュタインの相対性理論」「マルクスの資本論」「エンデの“モモ”」をほぼ順番通り説明していくが、これがまた面白く、見応えもあった。
ネタバレBOX
宇宙誕生という壮大な話から、恋愛という極めて身近な話へ繋げてくる。理論は、証明が出来れば納得性が得られる。一方、恋愛はその証明が出来ないし、その必要もない。当人同士がその気持になれば良いのだから…。ここまでが宇宙・地球と人間個人の関係が描かれている。さらに人間の能力には優劣があり、だから生産性(出来・仕上時間の差)が生じるという。短時間で作業が出来る優秀者が、劣者から時間を買い上げ、更に生産性を増す、という”資本論“と“モモの時間貯蓄銀行”が絡んでくる。最後は時間貯蓄も含め愛情で包み込む、というハッピーエンドになる。
面白い着想と話の展開は見事だった。
アンコールも手伝って?…会話劇に酔いしれた。
ただ、狭い客席の間を動き回るため、接触、怪我が気になったが。
楽しいひとときをありがとうございました。
うぶ
INUTOKUSHI
駅前劇場(東京都)
2014/12/19 (金) ~ 2014/12/28 (日)公演終了
満足度★★★
笑いがあるが…
誰とも関わりたくない、一人でいる時のほうが心地よい。そんな無関心な人間が多くなったのだろうか。ある種の自己防衛であるが、逆に人間は一人で生きられないとも…そんなことをしたり顔で言われてもね~。
ネタバレBOX
主人公(女子高生)は愛らしく、外見はコスプレ紛いというギャップ感・奇抜さが印象強い。そして彼女を取り巻く人間関係が面白可笑しく描かれて、ほのぼのとした気持ちになる。タイトル「うぶ」は、人との関わりを持たない、ズバリ”純真で初々しい様子“を現しているのだろうか。ず~と続けられるか不安でもある。傍から見たらブーイングが聞こえてきそうだが…。
さて公演だが、随所に笑いがあるが、全体通じてみると印象が弱い気がする。公演の主張がデフォルメされた演出・演技で霞んだようだ。表層を面白くするのは良いが、テーマとのバランスも大切である。
突き抜けたコメディであれば、この演出・演技は受け入れ易いと思う。
今後の公演を楽しみにしております。
千と千尋の上石神井
(裸)ミチコイスタンブール
OFF・OFFシアター(東京都)
2014/12/26 (金) ~ 2014/12/29 (月)公演終了
満足度★★
消化不良
主人公のような人間は少なからずいると思う。これからどう展開していくのか見守っていたが…。描き方が中途半端に思えて残念である。
ネタバレBOX
学生時代から自我不在、優柔不断、緊張過敏で、先輩から誘われるままにバンドを結成するが、恋人から将来の生活不安を言われ脱退する。そしてサラリーマンになるが、対人関係は上手く築けず、ましてや営業職など勤まらない。失敗の連続で上司の叱責…どう責任を取るのか、という攻めの常套句に悩む毎日。
気弱な人間の対処方法は、人と関わりを持たないこと。自分一人になれる場所が上石神井の神社のようだ。なんともやるせないが、今後に展望があるのか、更なる失意が待っているのか気が揉めた。
バンド仲間に戻れず、サラリーマン生活に疲れ、妻(恋人だった)の浮気…これからの展開を楽しみにしたところで終幕。これからどうなるの?
これからの展開は観客の想像で、ということだろうか。もう少し描き込んでほしかった。
さて舞台セットは、たぶん上石神井にあるバー(上手にカウンターと椅子4脚、下手にボックス席)であるが、場面転換として、中央の壁部分が観音開きになり神社境内(フライヤーの絵は狐か?)が現れる仕組み。なお、終盤は、暗転が多く集中力を欠いた。
今後の公演に期待しております。
ジャングル ~柔和なジャングルの猛者~
IQ5000
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2014/12/19 (金) ~ 2014/12/22 (月)公演終了
満足度★★★★
翔るような
舞台セットは無いに等しいから、キャストの演技力に状況説明がかかっているが、見事に広がりのある世界観をイメージさせてくれた。
ネタバレBOX
タイトルそのもので、ジャンル内をある目的のために駆けめぐる。その集団は色々な思惑が絡む国際組織で、冒頭、そのスケールの大きさを示す名前が列挙(紹介)される。ほぼ素舞台にキャストが駆け回る姿は、さもジャンルを疾風する様である。その間に民族平和、共存共栄、環境保全、資源保護…等という時事ネタ、世界情勢・問題の題材が炙り出され、観客へその問いを投げかけているようだ。
芝居はテンポよく進むが、いつも足が動き(野営の時だけが止まった)、緩急がなく一本調子になっていたと思う。もう少しメリハリを利かせた方が落ち着いて観られる。
なお、前説同様の諸注意は、本編では不要だと思うが。
今後の公演にも期待しております。
体夢-TIME
劇団桟敷童子
すみだパークスタジオ倉(そう) | THEATER-SO(東京都)
2014/12/11 (木) ~ 2014/12/23 (火)公演終了
満足度★★★★★
感じる…時間
普通、時間は過去から未来に向かって流れると思われる。しかし、屁理屈は承知の上で、例えば砂時計は、上部が未来、括れた所が現在、そして下部が過去として見れば、時間の流れは逆転している。
本公演は体夢(タイム)の悲惨な出生から物語が始まるが、9歳の時、15年後と初老期の自分が現れ、同時並行して存在する、という、通常の“時”の概念がない。将来から来た自分が告げる未来の姿とは…。
ネタバレBOX
”絶望“が暗示されながらも今を懸命に生きる…その姿が健気で愛おしい。社会がパンデミックに侵され人類滅亡の寸前…その世は作為の結果か、それとも無作為が原因か。人間の愚かな行動・活動や見てみぬふりをするような無責任な態度に対する警鐘・批判が込められた骨太な作品という印象である。
舞台セットは、奥行きを利用し、緞帳に代わる重層化した仕切りボードを開閉させる。その仕掛けで暗転に代わる状況転換を現し、さらに天井から役者が降下してくるという立体的な演出で、まさしく時空間を描いた。舞台全体が目に見えない“時“と”汚染”という抽象的なことを可視化できたと錯覚させたようだ。
余談だが「指サック人形」は、最近話題の映画「寄生獣」に出てくるVFX映像「ミギー」を模したような…。
今後の公演も楽しみにしております。
「あいのおはなし」
Succeed Project
博品館劇場(東京都)
2014/12/27 (土) ~ 2014/12/30 (火)公演終了
満足度★★★★
厳冬時にあたたかい話
銀座・博品館という、割と収容人数が多い客席のあちこちですすり泣きの
声、声…。哀しく暖かい“あいのはなし”という謳い文句のとおり、心を揺さぶる。
説明にあるように、主人公(アイ)が自らの命を絶とうとしたが、一命をとりとめ、この世とあの世の境にある”プレイハウス“で魂が体験する奇妙な出来事が哀しくもあたたかい。オーソドックスなストーリーだが、改めて“生きる”とは…。
ネタバレBOX
分かりやすいストーリーであるが、あまりにストレート過ぎた気がする。野球で言えば、場面ごとに速球を投げてくるが、豪速球ではない。たまには、捻り・変化球で楽しませてほしかった。打者としての観客(自分)を三振にとり唸らして(より感動させて)ほしいと思った。
父親一人で育ててもらい、小学生の時から良い子を知らず知らず演じてきた主人公の始めて思うように事は運ばない…現実・社会の厳しさに直面して戸惑いはあると思う。父親に心配をかけない、またその父親が再婚を考えていること、などの葛藤はあるにしても、事故か故意か判別出来ないが死に至る気持になるか?
当面の就職活動にしても、誰もが苦労すること。
ストーリーは分かりやすい反面、安直になっていたように思う。
今後の公演も期待しております。
ダキニ城の虜
舞台芸術集団 地下空港
恵比寿・エコー劇場(東京都)
2014/12/16 (火) ~ 2014/12/22 (月)公演終了
満足度★★★★
色々なギャップが楽しい
究極な合理主義、資本至上主義への鋭い批判を描きながら、その演出は、シリアス・コメディと両面の様相を上手くミックスした稀有な感じだ。
また、テーマの着想が面白く、その観せ方にも工夫があり、最後まで飽きさせることがない。ほぼ素舞台を縦横無尽に動き回ることで、巨大ショッピングモールをイメージさせ、動作に緩急を持たせることで、隠蔽・逃避と緊迫している感じがよく表れていた。
芝居の底流にあるテーマとその描き方のギャップが面白いと思った。
一方、人間臭さ(母への思慕)ということが、動機…。
ますます、この芝居の制作思考が自由・柔軟であることに驚いた。
今後の公演にも期待しております。
ハムレット
東京演劇集団風
レパートリーシアターKAZE(東京都)
2014/12/23 (火) ~ 2014/12/25 (木)公演終了
満足度★★★★★
やはり素晴らしい!
シェイクスピア四大悲劇の1つ。時代を経ても、多くの劇団で上演している演目であり、それをどう演出するか、どう演じるかで印象も違う。逆に言えば有名なだけに、演出の良し悪しや役者の技量が一目瞭然となる。
本公演は全国の中学・高校を巡回公演をし、30ステージで若い観客に「ハムレット」の問いを投げかけた。そして、公演を現地の学生とともに作り上げている様子のパネル写真が、東京演劇集団風の本拠地である劇場ラウンジに飾られていた。
この戯曲は、サブタイトルにある“to be or not to be”のセリフが有名であるが、その真意を制作側は上手く伝えられるか、観客はそれを読みとれるかが問題だ。
本公演はわかり易いだけでなく、その観せ方も強く印象付けるものであった。
ネタバレBOX
“to be or not to be”は、殺された父親の亡霊に復讐を示唆されたハムレットが、「神に代わって叔父を制裁するほどの正義が自分にあるのか」と躊躇し、なかなか復讐に踏み切れない…ということらしい。主人公は、何か一つの目標を目指して突き進もうとして、その一点にすべてを賭ける。余裕のない厳しい世界-それが「あれか、これか」の悲劇である。
さて、本公演でも見せ場は、衣装を着たままハムレットが水槽の中に沈み、観客を凝視する。そして数秒(分)間の後、水槽から半身を出し有名なセリフを…迫力満点である。
12月の夜公演で水中(それも氷まで入れる)へ、そして役者の鋭い眼光。水槽という物理的なもの、役者の凄まじい精神演技力、その両方が観客、少なくとも自分の背筋を凍らせた。
実に見事な芝居であった。
次回公演にも期待しております。
シカク
企画演劇集団ボクラ団義
サンモールスタジオ(東京都)
2014/12/18 (木) ~ 2014/12/28 (日)公演終了
満足度★★★★★
ボクラ団義の新たな挑戦…お見事!
タイトル「シカク」…解説では『視覚』と『死角』が作り出す 出演者全回変わりの異形のほぼ四人芝居 『会話』と『静』が織り成すサスペンス超会話劇、という謳い文句。あらすじから犯罪絡みであることは容易に想像できよう。
言葉で紡いでみると、「罪」を犯せば「罰」を受ける、そしてその報いは「死」か「苦」…。生きながら責め苦を味わう恐ろしさ。そんな人間姿が炙り出される秀作。その描き方は、タイトルの文字列変更、つまり「シカク→カクシ」のとおり芝居のいたるところに伏線が隠されている。
ネタバレBOX
ボクラ団義は、「殺陣、ダンスパフォーマンス」、「群像劇」というイメージであった。それが、メイン4名による濃密な会話劇を展開したところに驚きを感じた。
しかし、公演の内容は素晴らしい!。ストーリーの展開で少し強引なところもあったが、総じて飛躍するが現実にありそうな…そんな微妙に納得するような筋書きが、キャストの確かな演技力で描ききれていた。
作・演出 久保田唱 氏の挨拶文では「ちょっと挑戦であるこの公演を番外公演ではなく『本公演』として銘打ってやりたかった。」とあるが、その意気込み、想いは十分表現されていたし、観客としての自分も満足させてもらった。
次回公演はどうなるのか、楽しみであり、期待もしております。
くれない博徒
蜂寅企画
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2014/12/25 (木) ~ 2014/12/28 (日)公演終了
満足度★★★★
大衆演劇…面白い!
中尾知代氏の作・演出は「沈没のくれなゐ」(2012年)「氷のほむら」(2014年)の2公演しか知らないが、本公演も含め時代劇に対する想いとしっかりした取材に好感を持っている。
最近は反社会的勢力に対する取締り強化という背景もあり、昭和時代にあったようなヤクザ映画の上映もなくなっている。しかし、その時代に観た任侠映画を彷彿とさせるような雰囲気のある芝居は面白かった!
ネタバレBOX
2014年11月には日本を代表する男優2人が鬼籍に入った。その2人の代表的な作品は任侠映画(映像イメージは異なる)であり、当時の映画隆盛期にシリーズ化されたものもある。
さて本公演は、主人公の任侠鉄火な女(おりん)の復讐劇である。この復讐モチーフはシェイクスピアの四大悲劇の1つ「リア王」のようであるが…。
王であった時は自分が愚かで弱い存在であることを認めなかったリアは、彷徨して苦しんだ末、末娘の愛に救われ己の愚かさを悟る。リアに最初からその自覚があれば、悲劇は生まれなかった”はず”なのに。本劇中のセリフ「あの日までは…もし、たら、れば、は 博打と色恋にゃあ御法度!」と同様、仮定の話は無意味だろう。
しかし、シェイクスピアを例に、彼は悲劇・喜劇の両戯曲があり、多様な人間を描く「万の心を持つ」(ミリアド・マインデッド)とも言われ、彼の世界は「多声性」(ポリフォニー)に満ちており、価値は1つに定まらない。
多少、意味合いは違うが「くれない博徒」も観客の捉え方は様々であろうが、まだまだ”伸びシロ”が、いや蜂寅企画は中尾氏一人であったと思うので、”才能”というべきだろう(高い所からの言いようで、失礼)。
舞台美術・衣装は拘りが出ており素晴らしい。
今後の公演にも期待しております。
ちなみに、登場人物の「おりん」は「逃亡者おりん」(テレビ東京系列)、八重洲の銀次」は「素浪人月影兵庫」の旅連れ「焼津の半次」(現・テレビ朝日)に名が似ていますが…。
Truth of the snowstorm -トゥルース オブ スノーストーム-
SORAism company
d-倉庫(東京都)
2014/12/10 (水) ~ 2014/12/14 (日)公演終了
満足度★★★
映画ロケの話はどうなったの
説明だけ読むとシリアスな感じを受けるが、実は緩いサスペンスもしくはミステリーコメディといったところ。
謎解きがあり、それなりに楽しめるが、キャストが多くて観客なりに推理しようにも難しいと思う。また猿蟹屋敷に居る…
ネタバレBOX
映画監督が妹を自殺に追い込んだ女性(女優)をロケ中に殺害しようとするストーリー。その復讐が”猿蟹合戦”を模するような仕掛けで観せようとする。プロローグで監督と屋敷に居る”山の神”の約束事が描かれるが、その関連付が冒頭である必要があるのだろうか。山の神なる怪かしを登場させなくとも十分話は面白い。推理ものならば、すべてお見通し(俯瞰)というものがいては興ざめだ。
奇を衒わず、もっと現実感に則した芝居であっても面白いと思う。
今後の公演に期待しております。
First Contact
ハム・トンクス
シアター711(東京都)
2014/12/04 (木) ~ 2014/12/14 (日)公演終了
満足度★★★★★
強烈な気質
茨城県民…特に女性のデフォルメした気質は強烈な印象を与えた。舞台中央に2014年土浦花火大会のポスターが貼られるなど、郷土愛溢れる内容だった。
さて、女性キャストのインパクトある演技は素晴らしかったが、そこには確固たる主張が示される。最近の風潮に照らすと…実に興味深い。
ネタバレBOX
色々な意味で、自己主張することが上手く出来ない…そんな風潮があるような感じがしている。もう少しネガティブに考えると、主張を遠慮もしくは恐れているように思う時がある。
本公演では、男性キャストがその主張が上手く出来ない、優柔不断振りを演じ、その対比として女性の明確な主張(気丈な気質面も含め)が際立った。その意味で演出の妙は成功したと言える。また、方言台詞が強い口調に拍車をかけて迫力満点だった。
表面的にはコメディであるが、内容は深いように思った。
次回公演も楽しみにしております。
花と魚(劇作家協会プログラム)
十七戦地(2026年1月31日に解散)
座・高円寺1(東京都)
2014/12/12 (金) ~ 2014/12/14 (日)公演終了
満足度★★★★★
十七戦地の中ではピカ一
2011年に十七戦地旗揚げ公演として書き下ろされ、同年、第17回劇作家協会新人戯曲賞を受賞した代表作。
本公演の内容はもとより素晴らしいが、2014年という3年後に再演したところを評価する。
ストーリーは解説文にあるが、その内容は東日本大震災の背景をモチーフにしていることは容易に想像できる。人間は”忘却”するという良し悪し両面がある、この特質を持っている。時間とともに風化しそうな問題をしっかり捉えて離さない、そんな柳井氏の強い思いが出ていた秀作である。
ネタバレBOX
村おこしのイベントを控えた住民たちは、怪物の駆除派と保護派で村が二分され対立が激しくなる。そして、村人の一人が襲われるという事件が発生する。
地方都市の経済的は、政府の補助金、地元漁業、そして観光イベントといった現実感あるもの。一方、怪物という少し現実感から離れた生き物...これを自然保護に置き換えれば、原発の話が透けて見える。
同じ土地で育ってきても、その境遇や立場によって考え方は違ってくる。しかし、彼らはその土地を愛しつつも、自らの故郷での産業発展が見込めないことも承知しているようだ。地方ならではの苦労を肌身に感じて育っているかのような、説得力のある会話(せりふ)である。
この二分された住民の主張はそれぞれ理屈が通っており、怪物の駆除か保護かの判断は第三者(民間の野生動物調査員)に委ねる。怪物という危険排除と怪物を保護し、寄り添い、生命の神秘を探る。東京のど真ん中であったら、どう対処するのだろうか。地方という地域事情だからこそ切迫・切実感がある。
とても芝居の中だけの話とは思えない切実感があるのは、都市的な経済発展志向の偏重のようだからである。それは現代社会が消費経済を優先するためには、例えば原発などを確保するため、将来のリスクを貧しい地方に押し付けるという構図に共感してしまうからだろう。
この高円寺・1という小空間の中で、人類はどこに進むのかを問われているようだ。この鋭い投げかけが重く心に響く。壮大なテーマであるが、それを実にコンパクトに描いた秀作である。
次回公演を楽しみにしております。
タイム・フライズ
ミュージカル座
THEATRE1010(東京都)
2014/12/18 (木) ~ 2014/12/23 (火)公演終了
満足度★★★★★
見応え十分!
説明にある「昭和の団塊世代の若者たちと、閉塞感のただ中にいる平成の若者を対比させてジェネレーション・ギャップを描き、自分たちの時代は自分たちの手で創って行こうというメッセージを投げかけた。」は十分描かれたと思う。しかし、制作サイドの思いと同様に、観客側にもジェネレーション・ギャップがあったようだ。休憩時間に母娘の会話が聞こえてきたが、どうしてあの時代の学生はあのように熱くなれたのか…と。
時代背景を描き切るには難しく、観る世代によって受け止め方も違うだろう。しかし、表層的に捉えたとしても青春群像劇の醍醐味は十分味わえる秀作だと思う。
ネタバレBOX
ストーリーは、説明文の通り。
わかり難い点は、過去へタイム・スリップ、また逆に現代へ戻ってくる契機・原因の説明がないこと。しかし、まだ科学的に説明できないこととして、詮索は止めた。
公演の底流にある若者が自立していく成長過程と国家・時代という大きなスケールの両面を上手く描いていた。特に時代(1968年)が沖縄返還前(当時は沖縄からベトナム戦争へ、そして現在でも米軍基地問題は解決していない)であること、1945年広島市への原爆投下によって体内被曝した女性が平和運動の延長として学生運動に身を投じる姿は、若者へのメッセージだけでなく現代に生きる日本人…一人間として魂を揺さぶられた。学生運動という行為の良し悪しは、本公演において問題にしていない、という点も当時では当たり前だったのだろうが、その評価は後世に委ねられた。
舞台は、盆を回転させ躍動感、臨場感を増し、キャストの演技力をより一層引き立てた。申し分ない公演であった。
その河を渡れ
朋ノ会
新宿眼科画廊(東京都)
2014/12/20 (土) ~ 2014/12/24 (水)公演終了
満足度★★★
消化不良かも
壁、舞台中央に置いてあるテーブルなど会場全体が白を基調にしている。また、登場人物4名中2名が研究所勤務で白衣を着ている。白=清潔というイメージの中で、台詞だけで汚い河をイメージするのは難しかった。それ以上に、この公演で訴えたかったことが…。漠然とわかるような気がするが、纏まりがついているのだろうか?
”汚い河”が本当にあるという現実話か、自省という比喩話か今一つ理解できなかった。
ネタバレBOX
300年前からある”汚い河“は、何を契機に出来たのか。自分と瓜二つという、もう一人の自分の存在を否定する。
また自省話であれば、なおさら怖い。白衣・白基調の部屋のイメージから精神を病んだ話かとも思ったが、そうでもないようだ。
自分は、朝鮮半島における南北国境をイメージしてしまった。もとは同じ民族であったが、朝鮮戦争によって国が分断し憎しみ合うようになった。そこには深く悲しい思いがあるだろう。
さて、芝居ラストシーンで主人公の女性がテーブルに乗って独白するが、その姿こそ自分に向き合っての心魂の叫びだと思って観た。瓜二つという自分が演じきれない、もしくは演出しきれず中途半端になったような気がする。本当に訴えたかった内容が描けたのでしょうか。フライヤーの文字のようにもがいているのでは…それも大切です。
次回公演に期待しております。