ミスターの観てきた!クチコミ一覧

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こうもり

こうもり

新国立劇場

新国立劇場 オペラ劇場(東京都)

2015/04/21 (火) ~ 2015/04/26 (日)公演終了

満足度★★★★★

小野絢子のダンスと演技を堪能
21日午後、新国立劇場バレエ公演『こうもり』初日を観に行った。このバレエは、ヨハン・シュトラウスが作ったオペレッタをダグラス・ガムレイがバレエ用に編曲にしたものにローラン・プティあ振り付けした作品である。初日の配役は、以下の通り。

ベラ     小野絢子
ヨハン    エルマン・コルネホ
ウルリック  福岡雄大

以上3名はプログラムに名前と写真が明示されたもの。
この他の出演者であるメイド・グランカフェのギャルソン・フレンチカンカンの踊り子・チャルダッシュ・警察署長に関しては、入場直後に手渡された配役表に出演日不明記で記載されたいた。どうやらプログラムの作成時には配役が決めかねられていたものと拝察。出演者にも観客にも配慮の足りない公演?のような先入観が頭のなかを過ぎった。

さて、肝心の舞台であるが、この作品の振付には芝居的な要素やコミカルな踊りなどがふんだんに取り入れられていて、ダンサーのダンス力の他に演技力も試される。そうした面を総合して観た限り、主役ベラを演じた小野絢子とウルリックの福岡雄大の出来は素晴らしいものであった。ヨハンを演じたコルネホも頑張っていたが、舞台後半での演技が少々雑になった印象。まぁ、これはこの作品自体、後半が雑な編曲と振付がなされているように思える点から、ダンサーにとっては損な役だったかもしれない。
とはいえ、常にこまめな動きを求められるソリスト陣は、総じて及第点を与えて良いと思う。
また、フレンチカンカンやチャルダッシュは新国立劇場のダンサー達が粒ぞろいであることを観衆に見せつけた点で、高く評価したい。

少々簡素化し過ぎのような舞台装置と、軽く流したような音楽(アレッサンドロ・フェラーリ指揮東京フィル)には若干の不満はあるのだが・・・・

次回の新国立劇場バレエ公演『白鳥の湖』は、千秋楽を鑑賞の予定。久しぶりに長田の踊りを楽しみたい。

朝劇 下北沢「リブ・リブ・リブ」

朝劇 下北沢「リブ・リブ・リブ」

朝劇

VIZZ (ヴィズ) (東京都世田谷区北沢2-23-12 Mビル1F)(東京都)

2014/05/25 (日) ~ 2015/07/20 (月)公演終了

満足度★★★★★

朝から演劇の充実した週末
先日、大人の麦茶という劇団の公演で受け取ったチラシから知った、下北沢で土曜と日曜の朝9時から上演しているという朝劇。土曜と日曜で演目が違い、ロングラン中だそうである。これは面白いと思い、昨夜観劇がてら都内に宿泊したのを機会に土曜の朝劇を観てきた。会場となったのは、下北沢にあるカフェレストランVIZZという店。ちなみに、チケット代金にはドリンクと朝食代が含まれているというありがたいものであった。

さて、肝心の劇の内容だが、下北沢にあるカフェを舞台に、その店長・常連客・常連客を演じたい男と、上京してきたその男の妹という4人が繰り広げるある日常の一場面。笑いを誘う演技に満ち、ちょっとほのぼのさせる男の妹の本音語りなど、朝みる舞台としては十分な軽さと面白さを兼ね備えた公演だと言えるだろう。そう感じさせたのは、役者4人の好演にほかならない。開演時間になってごくごく自然に店内で始まる店長と常連客との会話から、「あれ、もうこれ本番がスタートしてるの?」と思わせるところは憎い演出だ。
時間が許せばリピーターとして何度観ても飽きることは無いだろう。この朝劇、下北沢以外では現在渋谷でも行わているらしく、近々新宿でもスタートするとか。朝から舞台をみるという生活が当たり前になったら、それはそれで演劇ファンとしては嬉しいところだ。

春雨の降る夜に

春雨の降る夜に

ユーキース・エンタテインメント

浅草三日月座(東京都)

2015/03/09 (月) ~ 2015/03/15 (日)公演終了

満足度★★★★

人間と霊の複雑かつ楽しい関係
9日夜、浅草三日月座で上演された四宮由佳プロデュース公演vol.3『春雨の降る夜に』を観てきた。この三日月座というのは実際にキャバレー?として使われている(た)ハコで、この日の舞台内容が閉鎖されたキャバレーの入った古いビルというでの出来事というのに合わせた会場選定であったようだ。出かけたのは、出演者の1人に知人の若林美保がいたからであったが、製作がユーキース・エンタテインメントでもあったから。過去の経験からいって、田中優樹が代表のこの会社が関わる舞台にハズレが無いという安心感というか信頼感があったからでもある。

さて、物語の舞台は古いビルの中にある閉店して長い年月を経たキャバレーの店内。使っていないにもかかわらず、人の気配がしたり電気がついていたりというのに不安を感じた女オーナーの佐藤が、知り合いの刑事に真相の究明を相談したのが話の始まり。この古キャバレーには仲の良い2人の自縛霊が住み着いていたり、ホテル代を節約したいカップルが忍び込んで楽しんでいたりという実態があきらかになり、オーナーは除霊師を雇ってキャバレーの除霊に乗り出そうとしたことで事態が動き出す。除霊師の背後霊を通してキャバレーの自縛霊の1人がオーナーの親友であったこと、自縛霊の2人が実は親子であったことが明らかになると同時に、このビルの相続権を取り戻そうとオーナーに近づいた元オーナーの親類2人(オーナー経営の会社のスタッフと店への不法侵入者)に、現オーナーが夫に近づいたのは、自縛霊になっている親友を交通事故に合わせた犯人がその夫であり復讐のためであった事を告白する。

現実の人編関係に霊魂の人間関係まで絡んだ面白い設定。しかも、霊の姿や話し声は現実の人間には聞こえにというのが、舞台内容を想像以上に膨らませる要因となっていて、その着眼点には恐い入りました。
実際は90歳を超えながら若さと美貌を保っている現オーナー佐藤役を演じた若林美保は台詞も多い重要な役をこなしつつ、刑事とのコミカルな演技もみせてくれた。親友だった今は自縛霊のマユ役四宮由佳と実は彼女の子供だった同じく自縛霊のミユ役朝倉千賀は、セクシードレスがお似合いの正にキャバ嬢役にハマっていて良かったですね。刑事とその後輩の巡査との漫才のようなやりとりもなかなか見応えのあるあるものだった。残念だったのは、彼女に近づいた元オーナーの親類2人の役柄というか設定が中途半端であったことと、取り戻すための画策というものが殆どなかったので、身元が明らかになった時のインパクトが弱かったこと。あと30分ほど時間をかけてこの2人に何かをさせたら、全体のストーリーに起伏と締りが出来たのではないかと思う。

青ひげ公の城

青ひげ公の城

非シス人-Narcissist-

サンモールスタジオ(東京都)

2015/02/05 (木) ~ 2015/02/09 (月)公演終了

満足度★★★★

完成度の高い舞台でした
6日夜、新宿のサンモールスタジオで上演中の非シス人公演『青ひげ公の城』を観てきた。非シス人を観るのは今回で3回め。いずれも知人である若林美保の出演舞台という関係からである。

さて、今回上演の寺山修司原作『青ひげ公の城』、今回で3回めの上演ということで、全体として演出の完成度が今まで観てきた中で一番しっかりしていて、混沌とした内容を理路整然的確に役者を動かし観ていて気持ちのよいものだった。
話としては、前提としてバルトークの作曲したオペラ『青ひげ公の城』の粗筋を知っていたほうがわかりやすいだろう。オペラの台本は、ハンガリー生まれのユダヤ人作家バラージュ・バーラ(本名バウエル・ヘルベルト)が書いたもので、ある城の主・青ひげ公の7人目の妻となる女性と公との2人の会話からなるもの。これを知らないと、非シス人の舞台で竹下優子の演じる山本百合子がなぜ青ひげ公の7人目の妻なのかが釈然としないかもしれない。寺山は、この青ひげ公の話を舞台公演の楽屋話に置き換えた。7人目の妻役を演じるために劇場にやってきた山本百合子であるが、監督から6番目の妻たちの演じる場面が終わるまで楽屋での待機を命じられる。しかし、楽屋を抜け出して劇場にいる他の役者たちの演じるシーンやプライベートを覗き見し、その混沌とした有り様に困惑する。しかし、彼女には青ひげ公の7人目の妻役を演じるためにだけにこの劇場にやってきたのではない事情もあった。ここで行方不明になった兄の消息を尋ねるということが。これは劇場の衣装係から兄は演劇の中で殺された事を教えられるわけだが、その死いやこの劇場で起こっていることすべてが現実か非現実かその境界線が崩れていく。
この境界線の崩れも、実は原作の元となっているオペラでも提示されるわけで、本舞台と合わせてオペラも鑑賞することをお勧めしたい。
で、粗筋はとにかく、舞台としては洗練されていましたなぁ。特に際立ったのは、第1の夫人役・憩居かなみと第3の夫人役・岡田静。それに、演出を手がけ第2の夫人役も演じた間天憑の魅せる妖しげな存在感。また、竹下をはじめ複数の役者が挿入歌を歌ったわけだが、歌という面では四人の楽屋番のアンサンブルが見事。ただ、毎回言うようだが洗練せれているとはいえダンスシーンの必然性には、今回も疑問を持った。というより、ダンスを入れるならちょっと違った形で劇進行に合わせた内容にしてほしいのだ。どうもそこのところは自分との感性の違いだろうね。観客席から出演者が舞台に出て行くという使い古された手法、今回は生きていたように思う。何だかんだ言って、この劇のキーパーソンは小川知子演じる衣装係なのかもしれない。彼女が、この舞台で提示される現実と非現実の門番だったりするのかも。
若林美保は第4の夫人役で出演。歌と踊り、それに自吊りパーフォーマンス(第4夫人の運命を暗示する狙い)で存在感を示していた。
とにもかくにも、今まで観た非シス人公演の中では一番気に入った。これは、また数年後再演して欲しい演目である。

毒花ーDOKKA-

毒花ーDOKKA-

危婦人

駅前劇場(東京都)

2015/01/08 (木) ~ 2015/01/13 (火)公演終了

満足度★★★★

しんみりしたシーンが欲しかったなぁ
12日昼、東京・下北沢駅前劇場で上演された(千秋楽は13日)、劇団危婦人の公演『毒花ーDOKKAー』を観てきた。これは、自分がよく立ち寄る新宿ゴールデン街の店で出会った役者・田中淳之が出演している関係からであるが、誘われた時に主演が小野真弓であることを知ったのも行きたくなった理由の一端であった。

粗筋は、おおよそ下記の通り。
ルポライターの浅宮の元に、大学時代の友人・波々伯部(ホホカベ)了から、家族を助けてほしいとメールが届く。了の実家は代々続く老舗ホテルで、この数年で家族や従業員が次々と変死しているというのだ。
了の実家のホテルに赴いた浅宮は、現地の刑事達やおば3姉妹とのやりとりなどから、了の父親・達樹(既に死亡)の後妻で今はホテルの女将である雅と料理長の桐生寛太が実の兄妹であり、両親を死に追いやった波々伯部家の人々への復讐劇という事件の真相を暴く。

もちろん、ミステリーにありがちな老舗ホテルの相続を狙っていて殺人動機を持ち合わせている様々な人達、まぁ今回の場合は愛人関係だったり不倫だったりとなかなか変化に富んだ面々が多数登場。そのキャラクターと役者の個性がバッチリ決まっていてなかなか楽しい人間模様を垣間見ることが出来た。

個人的にカンが働くというか職業柄というか、配役や舞台に最初に登場するときの行動などから犯人が雅と料理長であることには薄々(苦笑)わかってしまった。となると、その2人の関係がどういうもので動機は何だったのか、その解明過程をどう見せてくれるかに興味があったのだが、笑える部分は多かったのだがしんみり或いは泣かせられる場面が少なかったのにはちょっと残念感。それは、雅と料理長が兄妹だと知る過程や、ラストシーンでの2人からの真相告白に、殺人対象への恨み感というか殺人に至る衝動感というものをジーンと観客に訴えかける何かが欠けている、いや不足していたからだろう。もっとジンと来ていたら、最後に雅が自殺するシーンで泣けたはずである。

そこのところが唯一残念というか不満ではあったが、それは脚本というか原作の問題。
役者の演技という点では、発声練習不足なのか風邪なのかは不明だが声を枯らせて熱演した小野真弓、明るく理知的に役をこなしたウチクリ内倉、どこか陰を感じさせる味な演技を魅せた山﨑雅志という主要メンバーだけでなく、おば3姉妹を演じた丹野晶子や元G☆Girlsのリーダー・椎名歩美、イケメンプレーボーイをスッキリ演じた田中淳之など、達者な演技には楽しませてもらった。
基本六角形の舞台を上手く使った演出にも拍手を贈りたい。

体夢-TIME

体夢-TIME

劇団桟敷童子

すみだパークスタジオ倉(そう) | THEATER-SO(東京都)

2014/12/11 (木) ~ 2014/12/23 (火)公演終了

満足度★★★★

芯に流れる劇団魂は不変
長年のファンの方が開演早々帰られたりもして賛否両論渦巻いているという劇団桟敷童子の公演に出かけてきた。これは、知り合った役者もりちえが所属している関係からであるが、劇団としてもなかなか実力のある団体で一度観ると次作もみたくなるという衝動に駆られるからでもある。

粗筋は・・・と書こうとしたが、これがなかなか難しい。人々にレイプされ死んだ女性から生まれた体夢という少年が、未来から時を逆戻りして現れた自分の未来の姿である青二才と狂人2人とともに、世の中にはびこっていた奇病を退治する。というか奇病を抑えこむ不思議なチカラを持っていた体夢が、様々な体験を経て奇病を収めていく。しかし、しかし、奇病というのは人間性の回帰であり、結局は輪廻のごとく繰り返し現れては消えていくものなのであった・・・・というような。そうか、ここからもういつもの桟敷童子の公演とちょっと違うかも。

さて、舞台はというと、いつもの様に桟敷童子色の演技で気持ちは舞台に引きつけられる。のではあるが、話の内容からか、演出の関係からか、時折舞台に流れる心地よい時間というか空間というかリズムというか、そういうものが壊される。それは出演者が突然全体舞踏というような踊りをしたり、スローモーションになったり、客から笑いを取るセリフだったり。まぁ、話が堅苦しくて気を緩めるシーンが無いので意図的に客から笑いをとったり、進行上スローモーションが効果的だったりする箇所もあるわけだが、どれも使い古されてきた手法だけに「桟敷童子もこういう手法を取り入れるんだねぇ」という思いを持ったのは確か。特に全体での踊りというのは、舞台転換や役者の着替え時間が必要という場合にのみ認めるという自分にとってはちょっとガッカリだったかも。しかし、それを除いたら桟敷童子らしさの芯のようなものは確実に舞台を支配していた。
役者の的確適度なテンションとその維持、舞台を左右奥行き高低と3次元にくまなく使い切る動きには、いつもながら感心させられた。
特に、体夢を演じた大手忍はなかなかの演技達者。客演の劇団円の2人の存在感もバッチリ。いやぁ、この2人、アジのある役を演じきっていましたなぁ。もりちえはというと、後半の娼婦役の印象がなかなか強かった。
それにしても、この劇団、今回も誰を主役に作品を演じても舞台をつくり上げることが出来る演技の上手い役者が揃っているなぁと感心させられたのだった。

最後に、今回の舞台、賛否両論が渦巻くというのは分かる。おそらく、全体を流れる筋書きがもっと太く、そして陳腐な演出がなければ否の部分はかなり少なくなるのではないだろうか。今回の公演が、今後更に躍進するための方向転換というか微妙な舵切りになり得たかどうかは、次作以降の舞台ではっきりするだろう。さらなる洗練された演出を期待している。

名醫先生

名醫先生

パンドラの匣

劇場HOPE(東京都)

2014/12/02 (火) ~ 2014/12/07 (日)公演終了

満足度★★

前半より後半が好演でした

7日12時に中野のポケットスクエアにある劇場HOPEで上演された、劇団パンドラの匣第4回公演『名醫先生』を観てきた。これは、知人である若林美保が出演していた関係からである。

作品はニール・サイモンの作による2幕11場からなるオムニバス作品。個々の作品の登場人物は違っているが、全体を通して作家(ストーリーテーラー)の語る話として微妙な統一感を持っていて、各場で観客に軽い謎を残して終わるのが味わい深い。問題は、そうした味わい深さを出せるかどうか。全ては役者の技量と演出にかかっているわけだが・・・・

第1幕は6場からなる。
1場ー作家による独白
2場ー「くしゃみ」
3場ー「家庭教師」
4場ー「手術」
5場ー「色魔」
6場ー「晩秋」


個々の場面で人間の根源として考えさせられる問題を時に笑い(人間への嘲笑というべきか)を交えて演じられるわけだが、どうも演技に深みが感じられず話の中に入り込めない。入り込めないうちに、一つの場が終わってしまう。観客の中には時に笑い声を上げて観ている方もおられたが、確かに薄い笑いは浮かぶのだが・・・。役者の熱演としては「くしゃみ」「手術」「色魔」が良かったが、演出のせいなのかどうも表面的な演技ばかりのような気がして、休憩時間になって正直ホッとした。

ところがである。休憩後の第2幕は、第1幕とは異なり役者の演技の深みが増し、舞台に集中しやすくなった。はて、何がきっかけなのだろう。それは、第2幕の冒頭の1場の演出を佐藤一也が担当したからかもしれない(他の場面の演出はすべて佐藤雅子)
第2幕
1場ー「水死芸人」
2場ー「オーディション」
3場ー「弱きもの、その名は」
4場ー「教育」
5場ー作家の独白

このうち2場の「オーディション」と3場の「弱きもの、その名は」が出色であった。特に女優陣(中島佐知子・美里琉李・若林美保)の熱演が光っていた。

舞台は黒一色で、椅子や机となる大道具がいくつかあるだけ。照明も特に細工なし。
役者の力量を試すというか養うために行った公演というならよいだろうが、本公演という意識なら、更なる精進を希望したい。オムニバス作品は、実は難しいのだよ。

眠れる森の美女

眠れる森の美女

新国立劇場

新国立劇場 オペラ劇場(東京都)

2014/11/08 (土) ~ 2014/11/16 (日)公演終了

満足度★★★★

米沢の踊りを堪能
8日、新国立劇場のバレエ公演『眠れる森の美女』初日を観てきた。

初日の主な配役は、
オーロラ姫   米沢唯
デジレ王子   ワディム・ムンタギロフ
リラの精     瀬島五月
カラボス     本島美和


去年辺りからだろうか、観に行く日の主役を踊るのが小野絢子の事が多かったが、今回は米沢の踊りを堪能。小野よりも骨太の踊りという印象で、個人的には小野よりも好みのタイプの踊り手であった。
相手役のムンタギロフはシーズンゲストダンサーで、思ったより身長があってテクニックも完璧。
瀬島は本公演におけるゲスト・ダンサーで、最終日にはオーロラ姫を踊る。小野や米沢、それに長田に比べると年長で、踊りはしっかりしているが表情に年齢を感じさせるというか貧相な感じで、出来ればもう少し華やかな表情を作れる踊り手にリラの精は踊って欲しかった。
それに対して、カラボスの本島はなかなかの熱演。いやぁ、見た目もなかなか悪役を上手く演じていた。

初日ということもあって、不慣れな部分も見受けられ、2幕は森の妖精数人が今にも転倒しそうであったが、3幕では1名が転倒というハプニングも。ちなみに、3幕の赤ずきん役五月女遥はなかなk上手い踊りと演技を魅せた。

指揮はギャヴァン・サザーランド、演奏は東京フィル。音楽は可もなく不可もなくという印象。バレエ音楽演奏に、通常のオーケストラコンサートの時のように音楽の深みを求めるのは筋違いだろう。あくまで踊り手が踊りやすいことが第一条件だ。

ロケット・マン

ロケット・マン

劇団鋼鉄村松

テアトルBONBON(東京都)

2014/11/06 (木) ~ 2014/11/09 (日)公演終了

満足度★★★

前半より後半が気に入った!
7日午後、中野のテアトルBONBONで上演された劇団鋼鉄村松公演『ロケットマン』を観てきた。
まず、この舞台を観に行ったきっかけを簡単に記しておきたい。いつもなら舞台を観に行くきっかけは、出演者に知人がいるというのが大きな要因なのだが、今回はちょっと違う。浅草リトルシアターという劇場で行われた舞台を見に行った折、プログラムに挟み込まれたチラシの1枚に劇団激嬢ユニットバス旗揚げ公演というのがあって、面白そうなので観に行った。この公演で、正規の団員が急病となり代役として舞台に立っていたのが小山まりあという役者。激嬢ユニットバスのメンバーはなかなか実力と個性を持った役者たちだったが、この小山まりあはユニットバスの面々とはちょっと違った資質での存在感を感じさせられ、観終わった後非常に印象に残った役者だった。これは、彼女の舞台をさらに観て、その存在感の核心を見極めなくては。そう思って機会あるごとに検索して知ったのが、今回の鋼鉄村松の舞台であった。

さて、舞台はロケットマンと呼ばれる宇宙飛行士カーフを巡る人間模様。この人間模様という言葉はなかなか曲者で、含むところの意味合いが曖昧かもしれない。ロケットマンではウラシマ効果という理論を巧みに利用し、過去・現在・未来という流れの人間関係にある次元における横の人間の繋がりというものに同時に目を向けている。人間関係、この場合家族・血縁関係と、宇宙飛行士という仕事関係の2面からのアプローチがみられ、これらが巧みに絡められて人間の愛情と居場所とはという本質的な問題に迫っている。

舞台が始まった当初は笑いやドタバタなどで観客の気持ちを舞台に惹きつけようとする演出が表に出すぎていて、これはいただけないなぁと思ったのだが、中盤以降、舞台の密度が徐々に高まっていき、気持ちも自然に舞台にのめり込んでいった。そのきっかけは、主人公カーフが無表情になっていくのと同時に、女優陣によって舞台にメリハリが付けられていったこと。そう、カーフの無表情さの中に実は感情の高まりの凝縮を感じ、芸達者な女優陣が実に上手く生身の人間の感情を吐出しているのだ。特に日高ゆいは「8割世界看板女優」という肩書が偽りでない演技(その表情はなかなか秀逸)をみせたし、小山まりあは口元や手の小刻みな震え老婆の声色と、思っていた通りの細かな芸を駆使して役を演じきっていた。
観るものにとって後半の感情の高まりは涙を誘われると思うのだは、個人的には冒頭30分ほどのドタバタ的なイメージを最後まで引きずってしまい涙するまでには至らなかったのが残念といえば残念。この劇団の実力確認には、まだ数回の鑑賞が必要のようだ。

名作古典検証会

名作古典検証会

劇団東京蝉ヌード

新宿ゴールデン街劇場(東京都)

2014/05/02 (金) ~ 2014/05/04 (日)公演終了

満足度★★★

セリフ主体の静的な演劇
外国&日本作品の古典小品集5作品の舞台。過剰な演出もなく、落ち着いて観ることの出来るセリフ主体の舞台。舞台劇と朗読劇の中間的な印象を受けた。

海猫街・改訂版

海猫街・改訂版

劇団桟敷童子

すみだパークスタジオ倉(そう) | THEATER-SO(東京都)

2014/04/21 (月) ~ 2014/05/03 (土)公演終了

満足度★★★★★

魂の熱演
個性豊かな劇団が熱演をみせる!!

ネタバレBOX

劇団にとって、『海猫街』は8年ぶりの再演らしい。前回は第61回文化庁芸術祭優秀作品となっており、今回も平成26年度文化庁文化芸術振興費補助金の助成を受けている、小劇場系としては本格の公演。
会場に入ると、舞台上は多くの丸太を組んだ立体的な構造に仕立てられていて、シーンごとに実に上手く活用されていたのには関心。それはともかく、上演前から大道具で圧倒・感心させられた。
話は北海道の海猫が多く集まる辺鄙な集落。ここに、政府お墨付きの大企業が港を作るかとうかの視察に来るというので、部落民たちは全員で企業幹部の接待をしようと張り切る。しかし、やってきた企業幹部の本心は、港を作るのではなく、集落近くに埋蔵されている石炭が目当て。しかし時は遅く、企業が部落民の反対で石炭採掘を諦めた引き上げた後の部落は、嵐などで傷めつけられ徐々に民は一人また一人と部落を離れ、最後には海に出た龍次を待つ瑞枝とイサナ二人だけに。そして二人もついに息を引き取り、海猫だけが舞っている土地となっていく。
企業幹部の接待に端を発して、海賊末裔と奴隷末裔の対立が浮き彫りになったり、軍二・龍次・瑞枝の三角関係が持ち上がったり、白髪白肌のイサナの存在が部落の存亡を左右するようになったりと、次々と展開する出来事に、観客は巻き込まれ、涙する。号泣するような強烈な山場があるのではなく、全体を通してなぜか目が潤む場面が続き、舞台に釘付けになってしまうエネルギーの凄まじさには感服するばかり。

存在感のあったのはイサナの椎名りお、堂園千草の板垣桃子、それに婆の鈴木めぐみ。一歩下がって軍次の桑原、龍次の深津、片腕源蔵の原口あたり。蟹奴のもりちえが奏でる三味線の音は、一服の清涼剤として時々の舞台のシーンに色を添えていた。

こうしたストーリー、難しいのは結末をどうするかであるが、瑞枝とイサナに焦点をあて、時間の経過を静かに感じさせてフェイドアウト的に締めくくっていたのは上手い処理だろう。

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