満足度★★★★
しんみりしたシーンが欲しかったなぁ
12日昼、東京・下北沢駅前劇場で上演された(千秋楽は13日)、劇団危婦人の公演『毒花ーDOKKAー』を観てきた。これは、自分がよく立ち寄る新宿ゴールデン街の店で出会った役者・田中淳之が出演している関係からであるが、誘われた時に主演が小野真弓であることを知ったのも行きたくなった理由の一端であった。
粗筋は、おおよそ下記の通り。
ルポライターの浅宮の元に、大学時代の友人・波々伯部(ホホカベ)了から、家族を助けてほしいとメールが届く。了の実家は代々続く老舗ホテルで、この数年で家族や従業員が次々と変死しているというのだ。
了の実家のホテルに赴いた浅宮は、現地の刑事達やおば3姉妹とのやりとりなどから、了の父親・達樹(既に死亡)の後妻で今はホテルの女将である雅と料理長の桐生寛太が実の兄妹であり、両親を死に追いやった波々伯部家の人々への復讐劇という事件の真相を暴く。
もちろん、ミステリーにありがちな老舗ホテルの相続を狙っていて殺人動機を持ち合わせている様々な人達、まぁ今回の場合は愛人関係だったり不倫だったりとなかなか変化に富んだ面々が多数登場。そのキャラクターと役者の個性がバッチリ決まっていてなかなか楽しい人間模様を垣間見ることが出来た。
個人的にカンが働くというか職業柄というか、配役や舞台に最初に登場するときの行動などから犯人が雅と料理長であることには薄々(苦笑)わかってしまった。となると、その2人の関係がどういうもので動機は何だったのか、その解明過程をどう見せてくれるかに興味があったのだが、笑える部分は多かったのだがしんみり或いは泣かせられる場面が少なかったのにはちょっと残念感。それは、雅と料理長が兄妹だと知る過程や、ラストシーンでの2人からの真相告白に、殺人対象への恨み感というか殺人に至る衝動感というものをジーンと観客に訴えかける何かが欠けている、いや不足していたからだろう。もっとジンと来ていたら、最後に雅が自殺するシーンで泣けたはずである。
そこのところが唯一残念というか不満ではあったが、それは脚本というか原作の問題。
役者の演技という点では、発声練習不足なのか風邪なのかは不明だが声を枯らせて熱演した小野真弓、明るく理知的に役をこなしたウチクリ内倉、どこか陰を感じさせる味な演技を魅せた山﨑雅志という主要メンバーだけでなく、おば3姉妹を演じた丹野晶子や元G☆Girlsのリーダー・椎名歩美、イケメンプレーボーイをスッキリ演じた田中淳之など、達者な演技には楽しませてもらった。
基本六角形の舞台を上手く使った演出にも拍手を贈りたい。