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花と魚(第17回劇作家協会新人戯曲賞受賞作品)

花と魚(第17回劇作家協会新人戯曲賞受賞作品)

十七戦地

王子小劇場(東京都)

2013/09/12 (木) ~ 2013/09/17 (火)公演終了

満足度★★★★

演劇的なSF作品
 最後はかなり性急な感はありますが、核心にじわじわと迫ってゆくストーリー展開の手腕は非常に巧みで素晴らしいと思います。照明、音楽の使い方も場の緊張感を高める上でたいへん効果的であったし、役者さんの力量の高さに加えあてがき的な要素もあったとは思いますが、登場人物と役者さんのイメージがとてもよくマッチしていたのもよかったです。
 ただ、他の舞台を観てもよくあることですが、方言のセリフははっきりとした発声をしないと聞き取りにくいところが出てくるのですが今回もそれがあったのは少し残念。

つかまえてごらんなさい、箸で

つかまえてごらんなさい、箸で

GORE GORE GIRLS

王子小劇場(東京都)

2013/11/01 (金) ~ 2013/11/04 (月)公演終了

満足度★★★★

笑えるような笑えないような絶妙感
 絶妙な間合いで繰り出され心にグサグサ刺さる笑えるような笑えないようなセリフのやり取りの連続が紡ぎ出す物語は巧妙に作られていながらもなんともいえぬ独特の雰囲気を放っていて実におもしろかった。
 ただ、最後の場面は、女性のたくましさのようなものは伝わってきましたが、微妙な感じの印象が残りました。


虚人の世界

虚人の世界

公益社団法人日本劇団協議会

劇場MOMO(東京都)

2013/07/19 (金) ~ 2013/07/28 (日)公演終了

満足度★★★★

好き嫌いが分かれると思いますが。
 この類の作品は作者自身があまりにのめりこみ過ぎて必要以上に観念的になったり話が拡散したりして複雑で難解なものになってしまいがちですが、人の世界と"虚"人の世界の対比を軸とした丁寧な物語展開のおかげで最初思っていたよりは話について行くこと自体は難しくなかったようです。
 ただその分、目には見えない"虚"人の世界を限られた舞台の上でいかにリアルに感じ取れるようなものにみせていくかという点で、演出陣、俳優陣にかかる負担は大変で相当なものがあったでしょうが、今回拝見して皆さんの並々ならぬ意気込みが伝わってくる作品になっていたと思います。

龍馬が翔ぶ

龍馬が翔ぶ

神田時来組

中目黒キンケロ・シアター(東京都)

2013/07/24 (水) ~ 2013/07/28 (日)公演終了

満足度★★★★

熱演が伝わってくる娯楽作品
 タイトルの前に付けられたネオ知覚時代劇という意味が最初よく
分かりませんでしたが、舞台を観ていくうちにそれに込められた
意味がなんとなくですが分かってくるような気がしました。
 内容は説明にあるように現代と江戸時代が交錯するドタバタ爆笑
時代劇ですが、登場人物のイメージに合うように配役がされ役者
の皆さんの熱演もあり、肩肘張らずに気楽に楽しめる娯楽作品に
なっていたと思います。

ネタバレBOX

 ただ、喜劇というためもあるのでしょうが、江戸時代に比べ
現代の方の村長選挙に出馬予定だった政治家秘書中野慎二さん
の話の顛末があっけなくさらりとしたものになってしまったのは
ちょっと残念なような気もしました。
こんこんと、

こんこんと、

green flowers

シアター711(東京都)

2014/04/16 (水) ~ 2014/04/20 (日)公演終了

満足度★★★★

人の縁
 タイトルからは少しずれがあったり最後は加速がかかりバタバタ感があったものの、いろいろなタイプの登場人物がうまく設定配置され、彼らのなにげない会話の中に、複雑な家族関係やそれぞれが抱える事情や心の痛みといったものが直接的あるいは間接的に上手に表現されており、また、作者自身のことやカンパニーの内輪のことをいっているのかと思わせるようなセリフもあり、その軽妙なやりとりがおもしろく、演技力のある役者陣と自然でありながら巧みな演出に支えられて、約1時間40分飽きさせない作りの作品になっていたと思います。

ネタバレBOX

 笹塚さんの正体は途中から予想がつきましたが、ジュンさんと詩月さんの関係までは予想はつきませんでした。
 家族の物語ということでいえば、鄭義信さん、早船聡さん、田村孝裕さんらの描く作品世界に通じるものがあるかなという印象も残りました。

 また、小劇場では芝居に精一杯で観客側にまで配慮が届かないところが多いのですが、客席に適度な段差があり座席も千鳥に配置され観劇しやすくなっていました。なかなか観客側に心配りのある優しいカンパニーでもあると思いました。


きゅうりの花

きゅうりの花

ハイリンド

小劇場B1(東京都)

2014/04/02 (水) ~ 2014/04/07 (月)公演終了

満足度★★★★

テンポのよいリズム感のある舞台
 コメディ系の作品ですが起承転結がはっきりとしているというわけではありませんのでストーリー性重視の方にはなにか物足りなさが残るかもしれません。しかしながら、それぞれ悩みや問題を抱えている登場人物たちが絡み合っていく様を笑いを交えながら自然な感じで普段の生活にあるような会話の中で展開させてゆくその手法はとても見事でありまたそれをうまく活かすような演出がされていました。コメディ系の作品では、会話のリズムや間の取り方がとても大切になってくるのですが、ハイリンドのメンバーや客演の皆さんはこの間の取り方が実に絶妙で、ちょっとしたしぐさや表情の変化で微妙なその場の雰囲気や人物感情をうまく表現されていたと思います。

ネタバレBOX

 下北沢 小劇場B1は初めていった劇場なのですが、今回の作品では会場全体を上から眺めるといわば直角二等辺三角形の斜辺方向に舞台が、等辺の二つの方向に客席が配置されていてなかなかユニークでおもしろい舞台設置だと思いました。

「廃墟の鯨」

「廃墟の鯨」

椿組

花園神社(東京都)

2014/07/12 (土) ~ 2014/07/23 (水)公演終了

満足度★★★★

躍動感に溢れ疾走感のあるみずみずしい野外劇
 ストーリー的にやや粗さはあるものの、作り込まれた舞台上でリズミカルでテンポのあるセリフや音楽を効果的に織り込んで見事に展開された、随所に笑いの要素も交えながら、躍動感に溢れ疾走感のあるまさにライブ感満載の群像劇になっていたと思います。

ネタバレBOX

 例えば、緊張感漂う場面でも、不自然な登場をするヤクザの親分役の辻さんがこのままだと出番が少ないと言い、そんなのありかと言ったその子分役 嵯峨野を演じる粟野さん(文学座)に向かって「だってアングラなんだもの、新劇やないんやで」とさらっと言い、粟野さんが苦笑いするシーンなどは、いろいろなバックグラウンドをもつ役者さん達が集まるこの野外劇だからこそできるなかなか遊び心に溢れた場面だと思いました。
愛人刑事

愛人刑事

★☆北区AKT STAGE

北とぴあ ペガサスホール(東京都)

2013/12/12 (木) ~ 2013/12/15 (日)公演終了

満足度★★★★

ストーリー性とドラマ性が加味され魅力的な仕上がりの 作品に
 普通ではないデフォルメされた設定での登場人物の深い描写や強引とも言える展開などいつものつか作品の特色を残しながらも、今回は(謎解きも含めた)ストーリー性とドラマ性がうまく加味され(脚本の渡辺さんの力量によるところが大きいとおもいますが)次から次へとセリフが押し寄せるというよりどちらかというと穏やかにじっくりと魅せてくれる仕上がりになっており、つか作品はどうも苦手という方でも(あまりクセは強くないので)十分楽しめる作品になっていると思います。


ネタバレBOX

 強いて言えば、だいぶ前に観た穏やかというか静かな「蒲田行進曲」(錦織一清、草彅剛、小西真奈美他の出演)にその感触が似ているような気がしました。
 また、今回はいつもよりも広めに舞台と中央通路が設定されているので、ダイナミックな迫力ある演技が楽しめるようにもなっています。

ヴェローナの二紳士

ヴェローナの二紳士

ハイリンド

吉祥寺シアター(東京都)

2013/07/08 (月) ~ 2013/07/15 (月)公演終了

満足度★★★★

淡白なシェイクスピア?
 後の数々の名作につながっていくシェイクスピアの片鱗が垣間見れるような作品です。今の観点からすると、話の展開に不自然さや強引なところもあります。例えば、終盤で、ヴァレンタインがプローティアスに仲直りの友情の証として、本人の同意もなく、シルヴィアを譲ろうとし、それを見ていた変装したジュリアが卒倒する場面などはいきなりこんなのアリ?と思ってしまいます。一貫性のなさこそがまさにシェイクスピアらしさということでしょうか。
 が、新訳をひっさげてのスーピーディーな台詞回し、吉祥寺シアターの劇場空間をうまく使ったきびきびとした演出もあって、喜劇としてみればあっててもいいのかなと思える飽きのこない作品に仕上がっていたと思います。
 ただ、スピード感を重視しすぎたこともあるのでしょうが、もう少しじっくり観たいかなというところもあっという間に進んでしまいあっさりし過ぎている場面が多々見受けられたのは、もったいなかったかなという気がしました。
 また、最初のキャッチボールから始まる意味不明?の場面は最後の場面につながりますので、それは観てのお楽しみということで。

ハイキングフォーヒューマンライフ2014

ハイキングフォーヒューマンライフ2014

劇団PATHOS PACK (パトス パック)

「劇」小劇場(東京都)

2014/08/06 (水) ~ 2014/08/10 (日)公演終了

満足度★★★★

バランスがよくとれている作品
 一方的に思いや考えを押し付けたりまた観客の想像力に完全に丸投げすることもなくそのぎりぎりのところで話が展開されていてバランス感にすぐれた作品になっていたと思います。

東京ノート

東京ノート

劇団俳協

TACCS1179(東京都)

2013/11/27 (水) ~ 2013/12/01 (日)公演終了

満足度★★★★

観るものの想像力をかきたててくれる演出
 舞台を3方向から観れるような客席の配置になっていて客席の位置によって会話中の表情がみられる役者さんがいればみられない役者さんもいるといった具合に、絵画を観るような感覚で舞台が観られるのと同時に観る側の想像力をかきたててくれる演出が特徴的でまた魅力的でもありました。
 淡々と流れる会話(説明が少なくある意味あまり親切でないかもしれませんが)の中にも、その人の価値観や考え方、人間性が現れるセリフがさりげなく入り込んでいて、人のありようは時々刻々変化してゆく立体的なものであり、時間も含めいろいろな方向や切り口からみないとその時その時の姿がみえてこない、そのような印象の残る作品でした。

ネタバレBOX

 客席への出入り口と舞台での役者さんの出入り口が共通なので、遅れて客席に入ってくる観客の方と出番の役者さんを最初のうちは間違えたりしてあれっと思っていましたがそのうちに慣れてきて、確かに美術館のロビーにいるのかなという感覚が不思議と沸いてきました。

夜と森のミュンヒハウゼン

夜と森のミュンヒハウゼン

サスペンデッズ

吉祥寺シアター(東京都)

2015/01/24 (土) ~ 2015/02/01 (日)公演終了

満足度★★★★

人の心の闇の深い広がり
 一筋縄ではいかないやっかいな代物である人の心の闇の深さや広がりといったものを実にうまく扱っていた作品だと思います。

ネタバレBOX

 女主人公が心の底に潜り夢と現実が交差しながら展開する凝った構成や登場人物の配置配役(アユミとサキ、クロ以外は対をなす一人二役など)が表層と深層を行き来する人の心の複雑さを表しているようにも感じられました。
 同様に人の心の奥底を扱った最近の作品としては、趣きは異なりますが、、例えば、モダンスイマーズの最新作「悲しみよ、消えないでくれ」は、雪深い山荘を舞台に死を巡って現実に追われ生きている人間の欺瞞や醜さが露呈してゆく様が実に緻密にうまく描かれていたのが深く印象に残っています。




深海大戦争

深海大戦争

パラドックス定数

上野ストアハウス(東京都)

2016/04/05 (火) ~ 2016/04/10 (日)公演終了

満足度★★★★

神vs.知性
 大義としての神を手にした抹香鯨一族と武器としての知性を手にした大王烏賊一族との北極海での最終決戦の結末はいかに。進化を大きなテーマのひとつに展開される物語(異種間だけでなく有機物と無機物の間でも共通言語で意思疎通できることが当然暗黙の前提になっていますが)ですが、キャラクターがより魅力的になり緩急が効いた台本と照明効果が抜群で、シェイクスピアの史劇的な雰囲気も漂う、見事なリターンマッチの作品になっていたと思います。
 上演時間は約1時間45分。

帝国のクッキング

帝国のクッキング

劇団東京晴々

上野ストアハウス(東京都)

2013/11/29 (金) ~ 2013/12/01 (日)公演終了

満足度★★★★

料理のありかたを再考させてくれる舞台作品
 食料が配給制になる直前の、家庭では料理は女性が行うものという時代の料理をめぐるお話で、料理に対する姿勢や考え方がそれぞれ異なる登場人物たちがうまく描かれていたように思います。
 また、はっきりとした場面転換の時はきちっと暗転して音楽でつなぎ、ちょっと場面を変える時は軽く照明を落としすぐつけるといった演出も話の展開の流れをスムーズにしていて効果的だったと思います。

ネタバレBOX

いろいろワケありと噂を立てられていた行商の香川さんの役どころがなかなかよかったと思います。
新説・とりかへばや物語

新説・とりかへばや物語

カムヰヤッセン

【閉館】SPACE 雑遊(東京都)

2013/12/13 (金) ~ 2013/12/23 (月)公演終了

満足度★★★★

現代的な視点で見事に再構築された舞台作品
 子育て、人材育成、ジェンダーなどの盛りだくさんのモチーフを内在させながら、女の執念、運命などドラマ性を織り込み、なぜ師匠は女性の弟子を頑なに拒否し続けたのかの謎が解き明かされてゆく物語は、現代的な視点で見事に再構築された舞台作品になっていたと思います。

ネタバレBOX

(遠山の)金さんや(津田)梅子の母親を登場させるなど極上のエンターテインメント作品にもなっていると思います。

火男の火

火男の火

「火男の火」製作委員会

紀伊國屋ホール(東京都)

2013/08/03 (土) ~ 2013/08/06 (火)公演終了

満足度★★★

骨太な作品です。
 熱演は伝わってくるのですが役者さんの演技力にばらつきがあり登場人物の個性が微妙に表現しきれていない印象が感じられました。
 ただ、作品自体は、人によって相当好き嫌いが分かれると思いますが、報われることのない境地にありながらも胸にくすぶるなにかに火をつけようと懸命にもがく主人公を含めた人々の姿と運命の非情さを描いた骨太な作品で、人間の深部をえぐりだしてゆくストレートな描き方やラストへ向けての話の展開の仕方などはなかなかよくできていると思いました。

匂衣(におい) ~The blind and the dog~〈当日券あり!〉

匂衣(におい) ~The blind and the dog~〈当日券あり!〉

劇団印象-indian elephant-

シアター711(東京都)

2014/10/22 (水) ~ 2014/10/26 (日)公演終了

満足度★★★

コミュニケーションの階層性
 舞台の高さの問題や演出面で、例えば、あそこでなぜ踊りだすのかといった疑問が残るところはありました。しかし、シンプルな物語構成の中で、匂衣と記憶の介在を前面に押し出して、いわばコミュニケーションレベルの階層性といったものを観る者に強く意識させてくれる見事な舞台作品だったと思います。

ネタバレBOX

 内容からいえばしゃがみこんでの演技がかなりの見せ場ということになるのですが、その肝心なところの演技(特に舞台前方での演技)が後方の席からだと舞台の高さが低すぎるため埋没してほとんどみえなくなっていました。いくらよい演技でも観客にみえなければなんの意味もありません。




癒し刑

癒し刑

ガラス玉遊戯

王子小劇場(東京都)

2013/08/21 (水) ~ 2013/08/25 (日)公演終了

満足度★★★

心のコントロール
予告の文面からすると紆余曲折があり劇的な展開が予想されましたが比較的静かな流れの中で進んでゆく物語。
 人の心のコントロールが今回のテーマですが、ストーリーのバランスはよく登場人物の設定もしっかりしていて台本としては良くできており、配役もうまく合っていた印象を受けました。
 ただ演出面では場面転換にもっとメリハリをつけるとか音楽を使用するとかあってもよかったのではないかと思います。

めいとーでん~鬼切之編~

めいとーでん~鬼切之編~

COTA-rs

シアターサンモール(東京都)

2013/08/07 (水) ~ 2013/08/11 (日)公演終了

満足度★★★

鬼切と蜘蛛切
 日本刀の擬人化ということがが最初わからなかったのですが、
舞台を観てようやくどういうものかわかってきました。
 今回は、刀剣展で集められた名刀達の助けを借りながら鬼切が
生き別れの弟の蜘蛛切の行方を時空を超えながら捜し求めるという
物語で、物語そのものはなかなかよくできていると感じました。
 ただ観客側になるべくわかりやすくていねいにという配慮が
ありすぎたためでしょうか、セリフがどうしても説明口調になり
それに引きずられて演技も単調になりがちになってしまって
いたのは舞台作品としてはちょっともったいなかったなと思います。

蝶を夢む

蝶を夢む

風雷紡

シアター711(東京都)

2013/08/11 (日) ~ 2013/08/18 (日)公演終了

満足度★★★

独特の物語様式
 話の展開が事件の経緯を辿りながらもセリフでくどくどとは説明せず間接的にじわじわと話の核心に迫ってゆく形式をとっているため、人間関係は分かるのだが初見の場合人物背景が少し分かりづらいかもしれません。また、そのため、登場人物の扱いにばらつきがでてきてしまい(例えば、刑事、探偵は登場するにはするのですが、特に探偵はほとんど活躍せず、その存在意義が不明になるなど)、話としてもミステリーや謎解きの要素はほとんどなくなってしまっています。
 こうした物語様式なので演出面は工夫が凝らされており、例えば、最後のほうで大切な蝶を窓から外に解き放つ場面などは象徴的でそれだけで多くを語っていたと思います。
 こうした物語は、ある程度その様式に慣れてくればとても心地よく魅力的なものになってくるのかもしれません。

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