
忘れて滅ぼす
アムリタ
荻窪小劇場(東京都)
2015/03/26 (木) ~ 2015/03/31 (火)公演終了
満足度★★★★
恋人たちのリーインカーネーションin三途の“池”
2つの恋愛…いや愛情エピソードに導かれた古典的恋愛譚コラージュはやがて「恋人たちのリーインカーネーションin三途の“池”」に。
古典的恋愛譚が時に近付き時に離れるのが象徴的で、天井や壁に反映される水紋も美しい。
“愛の原点回帰”で締め括るのがまたニクい。

クズになれない
小西耕一 ひとり芝居
RAFT(東京都)
2015/03/19 (木) ~ 2015/03/22 (日)公演終了
満足度★★★★
ニヤニヤのちじんわり
小劇場あるある(なのか?「ありそー!」止まりか?)ネタ満載なところに屈折した家族ネタも加味してニヤニヤのちじんわり。
どこまでが創作でどこまでが事実かを妄想してしまうが、それもまた愉しい。

合言葉はパールホワイト
トツゲキ倶楽部
シアターKASSAI【閉館】(東京都)
2015/03/12 (木) ~ 2015/03/15 (日)公演終了
満足度★★★★
近未来SFと思いきや
16年ほど未来、滅多に人が入れない地域に入る「もぐり屋」のもとに「呼ばれているので自分も入りたい」という女性が訪れ…な物語。
近未来SFと思いながら観ていたが、終盤の台詞(と映像)から瞬時にイマと地続きなものと気付いた時の衝撃たるや。

ROMEO & JULIET
劇団ひるやすみ
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2015/03/14 (土) ~ 2015/03/22 (日)公演終了
満足度★★★★★
あれこれ上出来なるも…
16世紀のヴェローナから現代の池袋へという設定の変換、高校生言葉などへの台詞の“翻訳”、人物の置き換え、それに伴う笑いなどいずれも上出来で、更にあの物語を芯にしてそれを包む層を設けた構造と結末の捻りも巧み。
楽曲についても謳っているラップ(観客のクラッピングを誘うアカペラまである!)はもちろん、歌詞を替えて使われる既製曲の選曲もセンスが感じられるし、歌唱も正統派のロミオを筆頭に見事、と音楽面も充実。
惜しむらくは、柿喰う客の女体シェイクスピアシリーズやレティクル座の「童貞キューピッド」など近い趣向の作品をいくつか先に観てしまっていたこと。
それらを知らずにいきなりこれを観たら度肝を抜かれたろう。
もちろんこの件について創り手側に責任は一切なく、あくまでこちら側の責に帰するもの(?)であるが…。
ただ、コロンブスの卵や「男たちの旅路 第2部第一話・廃車置場」での吉岡司令補の言の如く、他者に先んじて行うことが貴重なんだな。

セルロイド
ハツビロコウ
【閉館】SPACE 雑遊(東京都)
2015/03/18 (水) ~ 2015/03/22 (日)公演終了
満足度★★★★
観る客を選ぶ作品で「万人にオススメ」とは言い難い
冒頭からいきなり緊迫した場面で、人物は皆病んでいるらしく、言うことも食い違って何が真実で何が幻想・妄想なのか見極め辛いし、全体としてかなりヤなハナシで後味も決して良くないのに演劇表現として面白く眼を逸らすことが出来なかった。
いくつかの場面は後半で再び演じられた時にその背景などがワカるようになっているし、照明も特徴的なものがあるし、砂地ではお馴染みの(?)日常音の使い方はあるし、構図の良い場面は多いし…。
ただ、観る客を選ぶ作品で「万人にオススメ」とは言い難い。(笑)

蜜柑星人~或いは終末的箱庭療法~
劇団えーてぃーふぃーるど
参宮橋TRANCE MISSION(東京都)
2015/03/12 (木) ~ 2015/03/15 (日)公演終了
満足度★★★★★
あれこれバランスも良くて完成度高し
箱庭療法を施されている記憶を失っているらしき青年は家族を殺した過去があるようで…な物語。
序盤から夢野久作の「ドグラ・マグラ」風味でミステリアスな雰囲気が立ち込めて引き込まれる。
そうして謎とミスリード要素、謎解明のヒント(←後から気付く:例えば医師の助手が「あんな格好」をして(させられて)いるのとか)をちりばめての70分、ダークで救われない結末なのにダンスや音楽の使い方も巧いし舞台美術もセンスが良いし結果的に引き込まれっ放し。
青年の家族を殺したのは誰か、とか誰のための箱庭療法か、とかもよく出来ているし、あれこれバランスも良くて完成度高し。
いや、恐れ入りましたぁ。

銀河鉄道の夜
虹創旅団
阿佐ヶ谷アルシェ(東京都)
2015/03/11 (水) ~ 2015/03/15 (日)公演終了
満足度★★★
イイところと好みでないところが混在
ジョバンニとカムパネルラを固定、あとの役は4人が演じ分けるスタイル。
往年の惑星ピスタチオを想起させる演技なども取り入れ、シンプルな装置で演ずるのはむしろ的確?
車窓を模した装置を使って見せる鳥取りのシーンや電飾、折紙の使い方など、なかなかに巧み。
その一方で上演時間の9割くらい音楽を流しているのは興醒め。
しかもバックグラウンドとしては大きめの音量なので、役者がそれに負けまいと声を張り上げることになる。
冒頭場面(音楽は流れていない)で会場サイズに不似合いな発声をするな、と感じたのはその影響ではないか?
ということで、イイところと好みでないところが混在していたワケだが、次も(題材不問で)観に行ってみようかと思っている。

ドブ恋4
劇団K助
千本桜ホール(東京都)
2015/03/04 (水) ~ 2015/03/15 (日)公演終了
満足度★★★★
ダニチーム
恋愛における「ありそー!」ネタ満載のスケッチ集。
当事者だったらコワいであろうネタを他人事として観て笑う後ろめたさと言ったら!(爆)
そんなワケで基本的には下衆なハナシなのに、本公演のノリに近いウェルメイド系(?)で締めるのは巧い。
そう言えば本公演でも過去と現在をクロスさせて見せる手法を使ったことがあったっけ。

家族
オーストラ・マコンドー
吉祥寺シアター(東京都)
2015/03/05 (木) ~ 2015/03/15 (日)公演終了
満足度★★★
2点の引っかかりが残念
まず冒頭の男性3人の会話が「笠智衆トリオ」のようで頬が弛む。
その後の会話も言い回しや間合いが小津映画風で、そう言えば一風変わった装置はローポジションのカメラアングルの演劇的な表現とも思える。
物語も「東京物語」をベースにしておりいかにも昭和…と浸っていたが、途中であまり必然性が感じられない固有名詞が唐突に出てくることから現代の設定と知る。
これが大いなる違和感。
なんでそうやって時代を特定させてしまうのだろう?
時代設定は観客の判断に任せれば普遍性も出るだろうし、そもそも本作は(先入観もあり)現代らしからぬハナシなのになぜここ数年程度のことに限定するのか理解に苦しむ。
理解に苦しむと言えばもう1点、他の役はリアルな衣装なのに巡査役だけ制帽らしきものだけで記号化したのも不可解。
制服にしないにせよ、あのシャツはないだろう。
内容は装置の使い方なども含めて悪くないのにこの2点が引っかかる。
そんな些細なことに拘らずに全体を見れば、とおっしゃる方がいらっしゃるかもしれないが、堅牢なダムも蟻の一穴から崩れる…まではいかないにしても鰯の小骨が喉に刺さったような、ごく小さな棘が指先に刺さったような、そんな感覚。
一方、2人の甥とキャッチボールをする叔父の見せ方や相似形な長男、長女、三男などは個人的にツボを突かれる。
なお、メイン舞台となるアレの床部分のデコボコはけっこう固いそうで。昇り降りも含めて健康的だこと。(笑)

ROCK
劇団ロオル
明石スタジオ(東京都)
2015/02/27 (金) ~ 2015/03/01 (日)公演終了
満足度★★★★
耽美系+少女マンガあるいは宝塚系の世界?
近未来、優れた資質の女性を集めた施設内では「吸血症」のウワサが流れていて…な物語。
女性のみの出演(作・演出も)で耽美系+少女マンガあるいは宝塚系の世界?
また、演劇実験室∴紅王國に通ずる雰囲気(あそこほど緻密ではないが)もあって魅かれる。
ただ、終盤の怒濤の展開が性急かつ説明不足な感無きにしも非ずで、漠然と察することはできるものの今ひとつクリアに見えてこなかったのが惜しい。
ま、説明台詞が増えてスピード感(ひいては緊迫感)が減ずるよりはマシか?
あと、十字架型の舞台も良かった。

相棒の棒
Peachboys
シアター711(東京都)
2015/02/24 (火) ~ 2015/03/01 (日)公演終了
満足度★★★★
艶笑譚シリーズ第4弾
童貞を捧げるのは本当に好きになった相手…というイイ歳をした純情三人組の艶笑譚シリーズ第4弾。
昼に観た某作と違ってテーマを前面に押し出すと言うかテーマなどないと言うか(爆)ひたすら起こることに笑っているうちに迎える結末、時間泥棒か!?(笑)
作・演出の白坂さんは「いつも同じで…」などとおっしゃっていたが、なんのなんのご謙遜、元ネタは30年以上前(から未だにシリーズ継続中)のものから時事問題まで幅が広く、それに伴いストーリーは今までにないほどスケールアップ、衣装もよく作ったよなぁ…。
アッパレ!

その1「午前5時、立岩展望台にて」
北川企画
小劇場 楽園(東京都)
2015/02/18 (水) ~ 2015/02/22 (日)公演終了
満足度★★★★
どこからどこまでがホント?
ヘッセの「車輪の下」に少年期から今に至る自らを絡めてメタフィクション風味で仕上げた95分。
予習をしなかったためどこからどこまでが自伝部分なのか、自伝部分もどこまで事実なのか想像・推理する面白さあり。
また、小道具の“アレ”の使い方もイイ。

學園使徒ノクト
---
インディペンデントシアターOji(東京都)
2015/02/15 (日) ~ 2015/02/22 (日)公演終了
満足度★★★★★
完成度が大幅アップ
物語的には学園青春ラブコメ系で始めてやがて戦争や国家間理解に言及、芝居的には年長トリオが土台&2本の柱となって作ったしっかりした枠の中で若手が伸び伸び演ずるという、両面での手堅い構造が見事。
それに冒頭部分を筆頭とした特徴的な台詞回しや白塗りメイク、G蝕K劇団のそれをカラフルにしたような装置など昭和ド真ん中のアングラ芝居を想起させる様式美が加わり、完成度が大幅アップと言おうか洗練されたと言おうか。
一方で初めてここを観た時の「アタシのアンテナ終末論」(12年12月:第2回公演)のような爆発的なモノを含んだ混沌と爆音が懐かしいような気がしないでもない。
なので今後は今回のような幅広い層にウケそうな広角打法的なものをメインに、コアなファン向けの(笑)騒がしいものを番外的に上演というのがイイな。
あるいは公演期間中の1ステージか2ステージを“爆音・混沌バージョン”で上演するとか。(半分真顔)
なお、落としどころには理想論的な甘さがあるが現実がキナ臭い昨今、虚構世界くらいは綺麗にまとまって欲しいし、幕切れにはハリウッド製娯楽アクション映画か日本映画全盛期の娯楽時代劇のような爽快感があるのでよしとしよう。
あと、歌詞や一部の台詞を投影する字幕も格段に見やすくなっていたのも良かったし、手前両脇の騙し絵的な階段も好み。
さて、これだけのモノを見せていただくと、次回はかなりハードルが上がるが、果たして…?

シキサイ
裏庭巣箱
スタジオ空洞(東京都)
2015/02/12 (木) ~ 2015/02/15 (日)公演終了
満足度★★★★
観客それぞれの心にストーリーを生じさせる作品
重篤な症状で入院している女性を中心に据えた作品。
ストーリーを語るのではなく「観客それぞれの心にストーリーを生じさせる」的な?
その意味でダンス・パフォーマンスにも通ずると言えよう。台詞などがある分、具体的ではあるのだが。
よって「さぁ、楽しませて貰おうか」と受身で見ていてはよくワカらないのではないかしらん?
σ(^-^)は「アレはそういうことの表現か?」と想像力をめぐらせながら観て「アタマの体操」を楽しんだのだけれども。
そんな風な抽象的表現もありつて、読み解くヒントもちゃんとちりばめて(=ルールをきちんと提示して)「ワカる客にはワカる」ようにしているのが巧み。
ある意味では作家と客の「智恵競べ」かも?
なお、女性を取り巻いている「白い人」たちが何なのかを序盤で観客に悟らせる方法や終盤での「死」の表現、ラストの蓄光の淡い光などが特に印象的。

GIMMICK!
CLOUD9プロデュース
ギャラリーLE DECO(東京都)
2015/02/04 (水) ~ 2015/02/08 (日)公演終了
満足度★★★★★
全く違和を感じさせない伏線とその回収が鮮やか
自主映画の撮影グループ、調査研究に訪れた教授と助手、廃墟マニアなどが偶然会した廃屋で起こる恐ろしい出来事…。
序盤はコミカルながら次第に「御約束」的なホラーに移行して、さらに…という構成が見事。
一通り物語を見せてからの後半は謂わば「謎解き」で、起きたことの裏を見せて観客を納得させる…というか笑わせる。
実は前半に伏線があれこれ張られていて次々にそれを回収してゆくのだが、その伏線が物語の進行に全く違和を感じさせないのが鮮やか。
最後の1シーンも画竜点睛を打つ感じ。

オレンジ新撰組 リターンズ
劇団6番シード
シアターKASSAI【閉館】(東京都)
2014/05/02 (金) ~ 2014/05/11 (日)公演終了
満足度★★★★
概ね良好な長編化
モテたいがために新撰組のフリをしようという男たちの物語。
前半はコメディで後半は熱血という構造で短編原作を巧く長編に仕立て直しているが、個人的な好みから言えば中盤の凹む部分(=クライマックスでの爆発力を蓄える部分)がもう少し短い方がいいような。
一方、初演にもあったが、現代語の「幕末訳」も「言い得て妙」で愉快。
なお、ハシゴをモチーフとした装置もイイ。

幻日の欠片
(有)オフィス パラノイア
「劇」小劇場(東京都)
2014/05/02 (金) ~ 2014/05/06 (火)公演終了
満足度★★★★
三部作完結
太平洋戦争末期の特攻隊員と周辺の人々を描く三部作の完結編。
当日パンフレットにもあるように戦争賛美でも反戦でもなく中立の立場で当時の人々を描き、判断は観客に委ねるスタイル。
三部作の中でも特に淡々と語るのが新鮮?
勝手にメッセージを受け取った気がした。

12人の怒れる・・・
G/9-Project
神奈川県立青少年センター(神奈川県)
2015/02/06 (金) ~ 2015/02/13 (金)公演終了
合理的疑問が生じたため無星
かの傑作「12人の怒れる男」を、三審制度が廃止され陪審員制となった日本に翻案、父親を刺殺したとされる被告の青年が有罪か無罪かを男女各6人の陪審員が議論する物語。
半数が女性であることから一部の設定が変わっていたり、役割分担が変更されたりで「そう変えましたか」「それはあの人が言うのね」など原作を知っていればこその楽しみ方(「七人の侍」を知っていて「荒野の7人」を観た時のような)ができた。
がしかし、四方囲みの客席にしたのはいただけない。
現場見取り図を陪審員たちが見る場面、今まで観てきたものは大きなそれを掲示することで観客にも見せていたのに対して本作ではファイルされた資料を見る演出になっており、観客には見せないのだ。
やはり最大三方囲みにして掲示すべきだろう。
また、大熱演の方から時々トチる方まで役者の力量にかなりの差があったが、この値段ならやむなしか?
ところでチラシも当日パンフレットも「作・演出:仲尾玲二」となっており、レジナルド・ローズの名前がないのはいかがなものか?
この程度の翻案であれば「原作:レジナルド・ローズ「12人の怒れる男」」とした上で「作」ではなく「脚色(あるいは潤色とか脚本とか)」にすべきではないのか?(「作」の前にもう一文字あるならともかく)
以上の合理的疑問が生じたので評決は無罪…いや、評価は無星。
なお、当日受付にあったチケットに添付された予約票には私の苗字が誤記されており(よって受付担当者がまごついている間に私が見つけた)、下の名前を受付担当者に誤読された。(記載はカタカナ)
客の名前をこのように間違えるとは失敬な。
接客ということについてよく考えて、今後はこのようなことが決してないようにしていただきたい。
【追記】
公演ページの説明には「1954年、レジナルド・ローズの手により生み出された名作、『12人の怒れる男』にヒントを得、座付き作家・仲尾玲二により新たに書き下ろされた最新作!」とあるが、「ヒントを得」て「新たに書き下ろ」す予定だった「完全新作」が、何らかの事情により書き下ろせなかったのだろうか?

暗く暖かな日々
小松台東
OFF OFFシアター(東京都)
2015/02/03 (火) ~ 2015/02/08 (日)公演終了
満足度★★★★
あたたかさ(と優しさ)に触れてきた
別居していた父が一緒に住むつもりで十数年ぶりに帰ってきて困惑する息子と娘、特に娘は強い拒絶を示し…な、謂わば小松台東版「父帰る」?
前半はピリピリした緊張感を程好いユーモアで緩和し、切なさを経て優しさを漂わせ終わる構成が絶妙。
特に終盤で、当人は全く意識せずにやっていることに関しての指摘があるところ(ネタバレ回避だとこんな表現になってしまう)、好きだし、巧い。
しかもそれを少し後に応用(二次利用?(笑))するもんなぁ。
また、中心となる親子三人もさることながら、ワキに配された人物の個性がそれぞれに豊かで「物語に色を添えている」のもイイ。
家族ネタに弱いことを差し引いてもいいモン観たなぁ…。
なお、タイトルにある「暗く」は感じなかった。

フサエ、100歳まであと3年
小松台東
OFF OFFシアター(東京都)
2014/05/08 (木) ~ 2014/05/13 (火)公演終了
満足度★★★★
従来のような甘口ではなくほろ苦さも加わった
前々回までは今にして思えば「甘口」で、懐かしさや共感のある人情もの、な味わいだったのが前回はほろ苦さが加わり、さらに今回は各人物の背負う「人生」も色濃く描かれるようになったと思う。
観ていて登場人物の背負うものを追体験するような感覚があり、時として胃が締め付けられるような気がした。