燦々 公演情報 燦々」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.3
1-10件 / 10件中
  • 満足度★★★★★

    鑑賞日2016/11/05 (土)

    江戸の絵師の話である……というか、葛飾北斎の娘 お栄を軸に描く、父と娘、師匠と弟子、妻と夫、女と男、そして人間の話であった。シンプルな舞台の上で、竹竿と白く透ける不織布を使って江戸の人々の暮らしを生き生きと描き出していく。町に生きる人間の息遣いが聞こえる。

    長田育恵さんの脚本の確かさはもちろん、それを立体的に立ち上げていく扇田拓也さんの演出がまたとても好みだった。いま私が観たかったのは、こういう芝居かもしれない……観終わると同時にそんなことを思った。

  • 満足度★★★

    前作のソビエト崩壊直後のロシアから本作の江戸へ、軽々と時間と場所を飛び越える演劇の醍醐味を感じつつ、西洋の手法で描いた北斎の絵画発見というタイムリーなニュースもあり、まさに追い風な演目でした。竹と紙(不織布)を使った見立ての美術での場面転換だったり、落語の手法での所作だったりと、観客の想像力を信用したシンプルな演出は好感が持てました。最後の紙がひらひらと舞う場面は非常に美しかった。個人的には転換場面はもう少し短くても良かった気が。「描きたい」というシンプルな欲求は「覚悟」なんていう仰々しい言葉を軽々と超越しており、そういう欲求こそが才能というものなのかなと思いました。ただ、お栄の造形があまりにもあっけらかんと子供っぽくて、女故の懊悩とか北斎への劣等感とかが感じられなかったのが残念でした。 主演女優の三浦透子さんは初舞台とのこと。初々しい台詞回しは好感が持てましたが、他の俳優さんたちと力の差がありすぎて少々つらかったです。とにかく劇団として時間をかけて丁寧に作られた作品だと感じました。本日千穐楽ですが次はどんな場所に連れて行ってくれるのか非常に楽しみです。

  • 満足度★★★★

    文才ある人って羨ましい

  • 満足度★★★★★

    申し分なし。
    主宰で作家の長田氏は文字で挑む人、その相手はその時々の題材で、山男が山に挑むように目ぼしい相手を攻略するべく準備し、そして「作品」という登頂碑を打ち立てる。むろんそこに「彼女流」が貫徹されなければそもそも作品にはならず、単なる「征服」とは性質は違うが、「得意分野」に安住する事がないアマチュア性と言うか、「商品を売る」人ではない探求の人という印象を、戯曲の文体から(勝手ながら)持っていた。
     だが今作は(誤解かもしれないが)江戸言葉の世界が彼女のホームグラウンドであるかのような、滑らかなリズムがあり、主題も、それを浮上させる構成も明確で、細部までイメージされた図面通りに言葉を自在に当てはめているといった風。
     だがそれでも今作の演劇的なポテンシャルを高めていたのは間違いなく俳優の貢献だ。主役の葛飾応為を演じた三浦透子、初見で名も初めてだが登場の瞬間から釘づけである。美貌に、ではなく声、沸く血潮、目に見える真実の姿を曲げず、おもねらず受け止め、父の薫陶を受けた絵への情熱だけがほとばしり出る。そんな「情熱」の彼女は決して笑わず、いわんや気遣いなどせず、人の言葉に流されないが納得すれば聞き入れ、感じた通り行動する若き女である。つげ漫画に登場する少女の造作に似た、横から見るとつんと反った鼻先をつき出す猪突猛進の姿勢は「困難」に遭いながらも貫かれ、揺らぎがない。その事を台詞の説明でなく、全身で表現する俳優に魅入った。
     父・葛飾北斎の加納幸和も手練の演技。取り巻きも持ち味を生かして頑張っている。
     素舞台に竹の棒と衝立状の板で境界を作り、多様に場面を作る。のみならず小道具、装置の一部に変化する。コロスの動きのアンサンブルもよし。モノ金は無くとも遊びには事欠かない、江戸流がそんな所、また転換でのお遊びにも見え、引き戸を開閉する所作も如才なく、緩急とリズムの美が全編貫かれた。これは型、所作をこなす役者の身体なくして実現できない。
    てがみ座の舞台として観たから余計、強く印象づけられたかも知れないが・・
     十分に語り切れない。

  • 満足度★★★★★

    無題1967(16-257)
    19:00の回(曇~雨)。

    18:40会場着(全席指定)、座席はB列からで2列目でした。

    18:57(前説、アナウンス、130分)、19:03開演~21:11終演。

    王子小劇場で初めて「てがみ座」を観てから(2011/4)5年半。劇団員の方の客演作もできるだけ観に行き、今年は前作(3月)と本作で2本、会場、演出ともだいぶ違った作風。

    絵を観に行くというと、国内のものでは特定の作家さん(ホキ美術館の写実画、マンガ原画展、また観たい池口史子さんは洋画だけど)は観ますが
    「浮世絵」の原画をじっくり観たことはなく、常設展で展示されていてもほとんど素通り。

    会場の広い空間にたなびく薄い白布、具体性を抑えた清楚な美術が私の乏しい想像力ですら刺激する。

    北斎は名前しかしらず、最近のニュースで「シーボルトが持ち帰った絵」というのを聞いてフーンと思っていたらちゃんと本作の中にも出できました。観劇後、書店に北斎コーナーがあったので手にとって見るとナルホドーと感ずるものがありました。

    11月22日、両国に「すみだ北斎美術館」がオープンするそうで、シアターXに行ったときにでも観に行こうと思う。

    広い舞台、日芸の中ホール(江古田)、伝承ホール(渋谷)、スペース・ゼロ(新宿)なども広い空間で様式美と強く息づくものを感じる。

    舞台上の役者さんの動きを観ていながら、コンテンポラリーダンスに近いものを感じる。

    てがみ座の作品には、群集が駆け足に近い歩きで時の流れを作るシーンが出てきますが、今観に行っている神奈川県の高校演劇発表会(11/19-20が県大会)、神奈川総合高校「この国をさがして」にも同じようなシーンがでてきます。単に役者が右に左に移動するのではなく「この国」が大きく動いてきた軌跡を描いていました。

    まさに「人に歴史あり」

    次は1年先...初演から今に至る間に少しは賢治の世界に触れることができましたが、まだまだこれから。

  • 満足度★★★★★

    才能があって努力家
    お栄ちゃんの青春物語でした。

    ネタバレBOX

    北斎の娘お栄が父から葛飾応為という号を名乗ることを許されるまでの、オリジナリティを見付けようと研鑽する日々を描いた話。

    蕎麦屋夫婦の情とお栄の心遣いのシーンはグッときました。素晴らしかったです。慕っている先輩花魁が病気になったことで、馴染み客を奪う形で身請けされる花魁の心の葛藤シーンも、お栄が現実の明暗でなく心の明暗を描こうとしたことにシーボルトの使者が感心して、日本の底力を信じ切るシーンも素敵でした。

    で、花魁は誰がやっているのだろうと気になりましたが、当日パンフレットを見直して渓斎英泉役の人だと知って驚きました。

    本編中の竹の棒を使って部屋を仕切ったり、大筆などに利用するのは小道具使いとして良かったと思いますが、スタート時の籠に見立てたり、舟を漕ぐようなシーンは、竹の棒を使うアイデアって凄いだろうって感じがビンビン響いてきて、演出家のドヤ顔が浮かび気恥ずかしくなりました。
  • 満足度★★★★

    シンプルだから
    何度かググッと心を揺さぶられました。また竹と不織布の使い方がとても素敵でワクワクしました。アフタートークでも話されていた「お客様に想像させる」という演劇的要素をすごく感じました。

  • 満足度★★★★

    絵に生きた父と娘
    紙と木と布を使ったシンプルでいて、広がりのある演出がすごく面白く、活気のある江戸の町、意欲に燃えた女絵師を表現していました。
    舞台ならではの面白さが詰まった演出でした。
    偉大な父を持った娘が、女としての制約の強かった江戸時代に絵師として生きようとした姿が生き生きと描かれていました。

  • 江戸のレンブラント
     お栄が応為と名乗るまでの物語で、観客にvividなイメージを喚起させる演出手法などを駆使していろいろな意味での光と影(光と闇)を描こうとする意欲に溢れてはいる。が、すでにfamiliarな題材で(『眩』との対比ということもあり)、戯曲における人物造形や内面描写の点で己の画風を追求模索し自問自答するお栄の心境のような印象が残る舞台。
    上演時間は休憩なしの約2時間10分。

    ネタバレBOX

     また、今回も、葛飾父娘以外は役者の方は一人何役もされており、
    その中でも元梅沢劇団の速水さん扮する花魁は別格でいろいろな面で
    突出していましたが、その分、かえってそこだけ浮いてしまっている
    印象も受けました。
     この舞台以外にも応為を扱った作品は、矢代さんの『北斎漫画』、
    杉浦さんの『百日紅』、カナダの作家キャサリン・ゴヴィエルさんの
    『北斎と応為』(原題『The Ghost Brush』)などいろいろありますが、
    最近の作品ではこの春に出版された朝井まかてさんの小説『眩-くらら-』は
    その後の「吉原格子先之図」(本の表紙を飾っています)に到る六十代までの
    応為を扱っており画に対する応為の一途さを見事に描き上げた力作です。
  • 満足度★★★★

    体と心は不可分
    葛飾北斎の娘で同じく絵師のお栄を軸に、江戸時代の庶民を描く長田育恵さんの新作。竹の棒と紙(布?)と演技で、抽象空間が活気のある日本橋に。静かに交わる男女の姿から、体と心は不可分だと確かめられた。気づいたらほろり、ほろりと涙が流れていた。
    感想:http://shinobutakano.com/2016/11/08/3627/

    ネタバレBOX

    豪華な衣装とヘアメイクのおいらん(速水映人)が登場して驚いた。とても効果的だった。

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