卒業制作 公演情報 卒業制作」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.9
1-11件 / 11件中
  • 満足度★★★★

    しあわせ学級崩壊  「卒業制作」
     於  花まる学習会 王子小劇場  2019年2月6日~10日
     演劇の衝撃は、生身の身体と声を持った俳優から 時間と空間を共有する観客に波動のように伝わる。その衝撃が、快と感じるか、不快と感じるか。許容されるものか否かは。その作品の性質によっても違うし、観客の生理によっても異なる。
    しあわせ学級崩壊の公演を体験したのは初めてだが、確実に私に衝撃を与えた。

    ネタバレBOX

    今回の舞台空間は、舞台空間と客席に一定の物理的な距離を設けることで、安定をもたらす雰囲気の空間ではない。俳優と観客の間は、檻のような金属製のゲージによって強制的(と感じるほど)に区切られている。小さなスタジオの中央の檻を、見下ろす感じで囲む。ただし、この空間の隔離は、俳優のいる「そこ」と観客のいる「ここ」を分けるためではない。登場人物たちが閉じ込められているかのように「見る」「見られる」関係を強いられていることを体感させるための空間演出である。やがて劇の深まりの中、観客は自らを檻の中の人物と同化し、自らもまた「見る」「見られる」関係の中に閉じ込められていることに気付かされる。檻は、私たち自身の周りにあるのだ。俳優たちは、整然とその檻のような空間に入り、劇の進行に合わせて、マイクをとり、台詞と歌とラップが混然とした言葉を話し出す。マイクを使うのは、劇中ほとんど、かなりの音量の音楽(テクノ系のダンスミュージック、舞台の傍らにブースがあり、音楽をコントロールしている)が流れるが。BGMと言う以上に、人物の心情や劇の深まりと音楽がシンクロしていて、一般的な演劇とは一線を画したスタイルの中でも、俳優たちはモノローグ、ダイヤローグを使い分け、心情を表現しつつ、しかも音韻的な音楽の心地よさを保つという、おそらくはかなり高度で緊張の高い表現をこなしている。空間中央に舞台上のステージのような場所があり、そこにはありふれた教室にある4つの机と椅子が置いてある。登場人物は、4人で一組になるように巧妙に重層的に配置されており、3つのグループが錯綜的に関わり合う。3つのグループは、「学校」「家庭」「職場」を象徴的に表現している。いずれも「日常という停滞に倦んでいるが、そこから脱出することができない」「腐っていくことに危機感を持ちつつも麻痺していく」ような日常を過ごしている。メンバーの4という数は、円環、季節の経過、を表現するのだろうか。時間の進行は無限のループを繰り返しているかとも思われる。春夏秋冬の循環。生きること死ぬこと、また生きること。この終わりない環を示すのも4という数だろう。そして、劇には、一人だけその関係性には加われない人物がいる。つまり人物は13人ということになる。ただし、この人物は、現実の関係の中では存在しないが、すべての人物たちと「見る」「見られる」という関係で、強い影響を与えていることがわかってくる。そして、その現実の不在こそが、人物たちの心の傷となり、無限のループと停滞を強いているのだということも。 
    3つのグループの中で、「学校」にいる女子校生たちが、劇の中心になりこの無限のループから「卒業」をするための、苦しみを表現する。この4人を演じた女優たちがぞれぞれの立場で対話をする静かなシーンはそれまでの大音量に満ちた場面とは対比的に描かれて鮮やかだ。彼女たちが、「終わりを引き受ける決意」をすることで、何かが変わる予兆が示される。ただし、それはハッピーエンドではない。終わりという限界を受け入れることは、自分たちが檻に閉じ込められているという不自由さを強く意識することにもつながるからだ。3つのグループはそれぞれの収束を表現するが。観客全員が、何かを引き受ける苦痛とは無縁ではないことを味わう終わり方だと感じられる。
    感銘をうけたのは、マイクを使ったMCのようなセリフも静かな独白も対話も、一貫したスタイルで、人物の心情と関係を表現していることだ。この一貫性があるからこそ、一見音の洪水のような空間の中でも確固とした演劇表現が成立したのだと思う。それは、この演劇空間を作り上げた僻みひなたの演劇表現への信頼がなせる、内なる秩序の力なのではないだろうか。
  • 満足度★★★★★

    これまでの作品で役者は演算器だった
    コントローラーのボタンで動き出す音源だった
    今回の作品ではどちらかというと役者がそこにいて
    それに合わせて僻みさんが音を作り出しているような
    それくらいの印象の違いがあった(メスイキちゃんもこういう印象だった)
    ミメイ、エマ、マユカ、メグルの場面が凄い好きで
    梢栄さんは完全にロックスターだし
    きずきさんの眼光の鋭さと奥深さに吸い込まれそうだし
    野村さんの笑顔の見え方の違いの悲しさだったり
    鈴木さんの慣れへの逡巡と恐怖に身がきつくなる
    4人の最後の場面、本当に泣ける

    スタンディング回も含めて本当に良かった
    言葉の感覚が自分と凄いフィットしていて馴染みが深くて
    慣れて慣れてもう特別な人たちと作品でリズムでテンポで
    CDでいつでも部屋に現せるようになったし
    でも次も絶対に絶対に楽しみにしている

  • 満足度★★★

    鑑賞日2019/02/09 (土) 14:30

     本劇団は初見。ハウス系ミュージックを爆音で流し、役者はマイクを使ってセリフをラップ調でしゃべる、というのは、この劇団の基本形らしい。物語らしい物語を展開するわけではなく、何となく状況からストーリーが分かる部分もあるのだが、最後まで分からないものも残る。新しいものを作ろうとしていることは分かるが、理解を超えてる部分もあるのだが、終演後、大拍手を送る観客が結構多いのに少々驚いた。

  • 満足度★★★★

    ラップのライブに行っているような感覚の舞台。大音響の中で聞き取れないセリフも多かったですが、雰囲気を楽しむことができました。

  • 満足度★★★★

    鑑賞日2019/02/10 (日)

    10日マチネ(100分)を拝見。

    ネタバレBOX

    あの家族のようなヒト達は何者?
    あの作業員達は? ヒダ先生の悲惨な状態の死体を目撃したの? ヨシヤは女子高生のストーカー?
    その女子高生達、何故、制服が夏服組・冬服組に分かれているの? 夏服の二人はひょっとして既にヨシヤに…!

    手元にある台本に目を通す前に、この文章を入力しているが、わからないことだらけw
    自分には『非国民的演劇』以上に理解の届きにくい作品だったが、それでも、途中からヒダ先生(何らかの事故、それとも自殺で肉体は作業員達の仕事場?に放置、魂だけがハンディカメラの中で存在し続けている)、ラストではっきりとカナデの置かれた状況(肉体は既にヒダ先生に絞殺されており、魂だけが現世に残っている)は把握できた。
    まあ理解はさておき、情緒的には激しく胸に迫って来る100分間の「演劇」だった。

    さて、従来作以上に音楽と台詞・所作が互いを昇華させた本作を観終えて、しあわせ学級崩壊 さん、今まさにグイグイと上昇気流に乗っている最中なんだろうなと実感。
    前作『ロミオとジュリエット』のように観客がストーリーを把握しているモノではなく、五感でストーリーを感じ取ってくれ、というスタンスで、さあ、ここから先、どこまで行ってしまうのか、楽しみでもあり・怖くもあり…そんな期待と不安を抱かせてくれた今回の公演だった。

    役者陣に関しては
    『モンストロ・メモリ』の鵜飼役で知ったヒダウツツ役の小島明之さんの表情
    ウエチエマ役の梢栄さんの叫ぶような台詞廻し
    ミタテヒズミ役の永田佑衣さんのクールな激情
    そして、キリシマカナデ役・福井夏さんの畳み掛けるような口調
    が個人的には印象に残った。

    【追記】
    幾度かの上演時間再延長の連絡、前日の上演案内、終演後の御礼、とメールでの細かな気配り。
    前日の天候(降雪)を意識されたのか、開場前の待ち客を階段内に準備された椅子に案内、さらには使い捨てカイロまで用意されているとは!
    会場案内もキビキビ&丁寧になされておられるし、小劇場というよりも企業ブースやパビリオンレベルの制作・当日運営のホスピタリティに感銘を受けた。ここで改めて、ありがとうございました!と礼を言いたい。
  • 満足度★★★★

    チラシに公演の雰囲気がでていたので良い公演だと思う。うるさかったけど。

  • 満足度★★★★

    鑑賞日2019/02/07 (木) 14:30

    価格2,500円

    対面客席の間に設営された金属の柵(?)で囲まれた檻のような演技スペースで繰り広げられるのは卒業式を目前にしたとある高等学校での出来事……?
    大音量のビートに会話やモノローグを乗せるお馴染みにして独特なスタイル、ビートのカンバスを言葉のコラージュで埋めてゆくような感覚……と思ったところでハタと思い当たったのは70年代前半のマイルス・デイヴィスの来日ステージ。
    リズムセクションの繰り返しの中、「次、ギターね」「今度はサックス」などとその場でミュージシャンにソロの指示を出し時には自分でも演奏するマイルスが弟子に指示を出しながら壁画のような大きな絵を描いている職人の親方のイメージだったことを思い出し、リズムのカンバスを即興演奏で埋めてゆくところがこの団体の手法に通ずるのではないかと。
    そしてそのような独特の「リーディング・オン・ビート(あるいはラップ系リーディング?)」スタイルゆえ、ストーリーの要とも言える「アレ」や「ソレ」を終盤まで隠し通せるのかも?
    そうして迎えるラストもまたσ(^-^)の好きなパターンの1つで、往年の人気特撮ドラマの最終話も連想。
    考えようによっては「金網デスマッチ・バトルロイヤル演劇」かもなぁ?(笑)

    ネタバレBOX

    連想したのはウルトラQ最終回の「あけてくれ!」

    しかし芝居を観ながら「登場人物は実は既に全員死んでいて、生前の業により辛いことを延々繰り返している地獄が描かれているのではないか?」と深読みすることがよくあり、その大半は誤読なんだが、いざそういう内容の芝居を観てみると逆に案外気付かないモンだね。
  • 満足度★★★★

     若いころに悩むべき正当な問題にキッチリ向き合い、チャンと正解を選んでいる(追記第1回2月9日17時16分)

    ネタバレBOX

    賢い作家の作品だが、未だ、演劇界での経験が浅い。その為演劇的な見せ方にイマイチ経験不足を感じた。然し乍ら、この若さでこの本質的解に至りつく頭脳は評価できる。
     舞台美術がちょっと変わっている。恰も鵺のような身体と精神を外側から支えでもするかのように、床から天井まで届く檻がまるで骨ででもあるかのように、出演者総てを閉じ込め周囲に張り巡らされている。客席はこの檻を挟むように設えられ、檻の格子を通して見える向こうの席がこちらの姿を映す鏡のよういな錯覚を起こさせるから面白い。檻の中には60㎝ほどの高さで1辺2間ほどのほぼ正方形の平台の上に学校で用いられる安っぽい机と椅子が4つずつ置かれている。平台下手と上手に椅子が各々数脚置かれており、片側の檻と壁の間にシンセサイザーと音響担当が居てマイクを通して発語される科白と競うような音響が流れ出てくる。序盤は殆ど自動律の反復が延々と繰り返されるが、時折“我々は何処から来て何処へ行くのか”といった本質的問いが為され、この問いが自動律を抜ける外壁、そう言って悪ければ、遠い反照のような構図を示してくれる。
  • 満足度★★★★

    迫力と雰囲気を楽しみました。

    ネタバレBOX

    檻の中で、卒業間近の女子高生やクラスメート、その他の関係者やそうでない人たちも含めてマイクを手に大声で叫びながら、清算をキーワードにもがき、堂々巡りをし、女子高生は愛し愛された先生に殺されたことが分かり、その先生もその後自殺したのかもしれないなどと少し明かされはしたものの、人々たちは依然『出口なし』の状態の中にいるという話。

    大音量とマイクを使って叫ぶパフォーマンスの世界に浸りました。
  • 満足度★★★★

    ラップによる乗り地で、謡曲に通じるところが面白い。

  • 満足度★★★

    鑑賞日2019/02/07 (木) 14:30

    この劇団の作品を見るのは「非国民的演劇」に続き2回目。前回もハードル高かったが、今回も私の頭は玉砕。我々が危険な場所に閉じ込められていて、そこから抜け出せずにもがいていることはわかった。抽象的で難しい表現をする劇団で、しかも平日の昼間なのに、客席は満員。着実に支持を増やしてるのは確実。今後、どう成長していくのか注目を続けたい。

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