満足度★★★★★
普段なら観ないタイプの舞台です。
小難しいものでも、心理的な泥沼的なものはまあ観るとしても、
政治の匂いがするものを感じさせるものは避ける傾向です。
しかし、意外にも食いつくように観てしまいました。
“差別”というものをどう考えるのか?この青年の意思を変えることは出来るのか?
犯人の理不尽な主張、その両親の自責の念と我が子への恐れ、
人権派の弁護士の苦悩、被害者家族の悲しみ、障害者と共に生きる者の言葉。
足りないのはその被害に遭った障害者の言葉ではないかと。
もしも、入れるとしたら彼らの"生きたい"を感じさせる言葉、もしくは意思表示
そういうものが必要だったのではないかと思う。それが相当な衝撃を与え、
観る側にある種の説得力を与えるのではないかと思いました。
演出・演技共に上質な作品でした。
満足度★★★★★
鑑賞日2019/02/07 (木)
共感できるからこそもっと奥へと考えが進み…面白い。
自分も同じ思いもあるから余計に。
でもこの世に生まれたからにはみんな天命を全うすべきですよね。
でも事故にあうのも天命なのか…
満足度★★★★
鑑賞日2019/02/09 (土) 18:00
座席1階0列
演出や演技はすごく地味目なのだけど、
その分作品のメッセージがダイレクトに伝わってくるような感じがした。
至極普通の結論に落ち着いた気がする。
ただ、今の世の中ではそれが普通ではなくなったのかな、と思ったりもする。
寛容な世の中であって欲しいですね。
満足度★★
実は全く期待していなかったので、ヒドいものではなかったので思ったよりはマシでした。
この舞台でも犯人の主張ばかりが強調されてしまっていたのが残念でしたね。犯人により排除の対象にされた身体障害者の声も聞こえてこない舞台。まるで匿名で発表された犠牲者のように。これが取っ掛かりとするなら続編が必要だろう。あまりに足りなすぎる!!
話は犯人を弁護する男の目を通して描かれるのだが、作家が若く幼いのか広がりがない、作品を書くに当たって取材したのか疑問だ。また、この弁護士の台詞として死刑についてもふれるのだがココまた不十分と思う。私たちの国家は死刑制度推進派であり近年大量に処刑したのだから、おそらく作家自身もその事実は知っているのだが省略したのだろうが、あちこち足りないところが目立ってしまうモノだった。まあイイトコロはこのような事件を時を経ずして演劇の素材として取り上げた意欲だろうと思う。
満足度★★★★★
考え直してみよう、都合がつくように・・・ 考え直してみよう、結論は変わらないと思うけれど。 それが いっしょうけんめいいきている ことだから。 不寛容も自分自身の一部だから。 漏れ出る呻きに心の詰まる、強く心に迫る縁起である。
満足度★★★★
いくら作者がこれはフィクションと言っても、歴然としたキワモノである。それが成功して珍しく補助席もでる大当たり。テーマが現代社会の倫理を打っていて面白いのである。
こういうものは手の内の作者らしく、主人公の設定を弁護士の去就に据えて、犯人の性格付けもうまく、周囲の人々も、冷酷派、人情派とうまく散らしてサスペンスのある展開になっている。80年代に山崎哲の転移21の犯罪シリーズを思い出した。犯罪は世相を映すから、時代瓦版の演劇には欠かせない。キワモノと言われようと、臆せずにこの罪と罰でもどんどんやって欲しい
残念なのは、力演の俳優さんには申し訳ないが、みなさん演技スタイルが古い。五十年前の新劇三劇団風で、これではひとり犯人役の役者ががんばっても現代の風は吹いてこない。
満足度★★★★
相模原障害者施設殺傷事件を題材にした芝居。「意思疎通もできない障害者は安楽死させるべき」という犯人の思想にも障害者介護の現実の一面に根がある。形だけの障害者の生きる権利と、それを全否定した犯人の思想という対立を、死刑制度の問題と絡めて、より高い次元にどう止揚させるかを問いかける舞台だった。
障害者施設職員の悩ましい本音、犯人の抱いていたコンプレックスなども掘り下げたところに発見があったし、作品が提示した目指すべき社会のイメージに私は感動した。ただ、様々な議論と理屈が十分登場人物の肉体になりきらなかった恨みはある。それは役者の問題だけではないような気がした。そのなかで荻野貴継の被告役の不気味さが一番印象的だった。(2時間10分、休憩10分含む)
満足度★★★★
他劇団からの新作要請に高頻度で応えて安定した評価を得ながら、劇団公演も怠らないという、着実に劇作家キャリアを重ねる古川健氏の劇団「外」舞台を観るのはトムプロ『挽歌』以来になるか。日澤雄介氏以外の演出に委ねた舞台となると(番外公演的なのを除けば)初めて。Pカンパニーの同じく社会的テーマを扱った秀作『白い花を隠す』の小笠原響氏演出は堅実な仕事振りである。
戯曲には「遺産」で顕著に感じられた特徴が今回もあって、実際に起こった出来事に果敢に挑む姿勢は以前に変わらないが、この所、簡潔な台詞のある意味淡々としたやり取りが、構成の妙で(場面の繋ぎも淡々としていたがこれは演出か)事実が語る力強さを持つ。
初日の「硬さ」とはこういうのを言うのか、描かれる人物はよりリアルを掘り下げる事歓迎の面持ちで、肉付き血の通う舞台に変貌する予感というか骨格をしっかり見せてもらった。
相模原事件を扱った芝居だとは知らなかったが、開演後間もなく、タイトルの趣旨も判る。出色は、この事件の犯人の人格に斬り込んでいる所。注文があるとすれば、施設職員の「苦労」だけでなく「喜び」を見せて欲しかった(これは演技の領域、難しい所だが)。
満足度★★★★
鑑賞日2019/02/06 (水) 19:00
座席1階
期待の演目である。あの事件をどう戯曲にするのか。あの古川健がどう切り込むのか。
舞台は、容疑者の弁護士の視点から語られる。死刑廃止を訴えている人権派弁護士という設定だ。接見に行くたびにに繰り返される容疑者、被告人の身勝手な主張に、さすがの人権派もこいつに生きていく資格なんてない、と弁護人を降りる決意をするところまで追い込まれる。
そんな彼が再び弁護団に戻る決意をするのはなぜか。そして、裁判の結末は。
殺された障害者の遺族、障害者施設で働く人たちなど、丁寧な取材をして練った戯曲だと思う。この舞台の主題である差別の本質についてどう結論付けるかは、客席に委ねられる。
個人的には、脳性まひと思われる障害者に寄り添う介護女性の本音に心を揺さぶられた。障害者介助の現実から目をそらせて単に共生とか社会的包摂とか言うだけでは、事件はまた繰り返される。一人一人の覚悟が問われる。