淵、そこで立ち止まり、またあるいは引き返すための具体的な方策について 公演情報 淵、そこで立ち止まり、またあるいは引き返すための具体的な方策について」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.3
1-13件 / 13件中
  • 満足度★★★

    カムヰヤッセンはいつ以来かな?と思って調べてみたら2010年に観たのが最後らしい。
    随分と間が空いた、というか観たことあるというレベルですね。
    それはちょっと勿体なかったな、と思うくらいの良いお芝居でした。
    深刻な内容なのに過激な言葉も過激な演出も一切無く、ただ染み渡ってゆきました。
    俳優としての北川さんが良いなぁ。
    昨日観た作品との地続きな部分とか、これからグルグル考えます。

  • 満足度★★★★★

    誰も観たことのない犬の鳴き声。困窮しつつ借金のない暮らし。要介護度の軽さ。

    そういういくつかの違和感と3人の刑事の取り調べの様子が、本当は何があったのか、ということへの興味をそらさず、それが解かれていく時間の生々しい痛みだけでなく、物語としての(こう言ってよければ)面白さ感じさせた。

    ナイフで人を殺すより、借金を重ねて踏み倒す方が容易だろう、という意味のことを一人の刑事が言った。

    それができなかった母と息子の繊細なやり取りを、3人が交互に語る終盤の場面。痛みと優しさが胸にしみた。

    どうしようもない現実。それでも、その淵を渡らずに済むためには……。

    答えを出すのではなく、あなたもそして私自身もそれぞれに立ち止まり引き返せますように、という祈りのような何か。

    身につまされる、などという安易な共感ではなく、もう少し丁寧に考えてみたい気がする舞台であった。

  • 満足度★★★★

    鑑賞日2017/02/16 (木) 19:30

    価格3,000円

    48時間の勾留期間に介護殺人の被疑者の取り調べを行う3人の刑事たち……。
    その人間臭さはあたかも昭和の(特にNHKの?)事件よりも社会背景や人物に重点を置く刑事ドラマの如し。(もちろんミステリー要素もあるのだけれど)

    理屈で考えれば被疑者に同情の余地はないのだが、何とも言われぬ切なさに支配され「理屈ではそうじゃないとワカっているのに心がそれを受け入れずに別の方向に動いてしまうこのアンビバレンツをどうしてくれよう?」状態(笑)

    切羽詰った被疑者のしたことにどこか共感(?)を抱いてしまうことから鴎外の「高瀬舟」を連想したり、刑事が「もしかすると自分も“そちら側”ではないか?」と悩むことにリチャード・タッグル監督、クリント・イーストウッド主演の映画「タイトロープ」(1984年)を思い出したり。

    あと、「もう一人」の「見せ方」も良かったなぁ。

  • 満足度★★★★

    濃密な会話劇を三人芝居で。これで活動休止となってしまうのが本当に勿体無い。3人とも良かった。でも、全員参加も観たかった。いつの日かカムヰヤッセン揃い踏みでの活動再開公演を期待して待っています。

  • 満足度★★★★

    存外、シリアスな仕上がり。現在、老人問題が徐々に深刻になりつつある感じ。重厚なつくりも良いのですが、カムヰヤッセンって、小規模にやったほうが印象に残っているんです...

  • 満足度★★★★★

    ストーリーの柱は、死んだ母親と犯人とされる息子の話。その息子を取り調べる3人の刑事。
    その歪な関係性と、それぞれが背負うプライベートの影。
    緻密に絡み合う出来事の数々が48時間の時を刻むと同時に解けてゆく。
    登場する役者は刑事役の3人だけ。
    居ないはずの母親も息子も、ぼんやりと姿が見えるように思えるのは、
    良くできた物語とそれを巧みに演じる役者の技量なのか。
    巧みに惹き込まれる世界観が心地よい。
    好き嫌いはあろうかと思うが、自分的には素晴らしく上質な芝居に出合った気分だ。

    この劇団、この上演で活動休止らしい。しかし個々の創作は続けれらるとのこと。
    其処に期待したい。

  • 満足度★★★★★

    舞台にいる役者は3人ですが、登場人物は4人です。介護に疲れた息子が・・・と言ういま時よくありそうな(あってはならないのですが)お話でしたが、映像ではできない(やらない)お芝居らしいお芝居でした。3人の刑事たちそれぞれの生活や人生や性格のせいで、犯人に対する接し方、思いが違っていて、取り調べをしていくうちに「介護疲れ」というだけではくくれない深淵が見えて来ます。しかし、銀行のATMのたとえは強引な気がしました。

  • 満足度★★★★★

    鑑賞日2017/02/18 (土)

    この種のテーマはまま取り上げられるので、悲しいかな帰結までなんとなく見えてしまい、テーマだけではもう泣けないし、そこを掘られるとさらに冷めてしまう。
    自分が年取ったことを感じる瞬間です。
    とはいえ、まだまだお若い作者がこのテーマに挑戦したことに、敬意を表します。
    そして、独白のリリシズムが違和感なく楽しめる美しい舞台でした。
    何よりの収穫は、役者としての北川さんを堪能できたこと。ここに五つ星。過去の北川さん出演作を物販でさがしたが、なくて残念でした。


    ネタバレBOX

    90分とは思えない充実ぶり。会話主体の前半と独白が比率を高める後半がいささか分断した印象。
  • 満足度★★★★★

     仲の良い母子家庭で38歳になる息子が母を殺した。花5つ星

    ネタバレBOX

    犯人も母殺害に関しては早くから犯行を認めているが、頗るつきに優しく見えるこの息子が、母を殺害する動機が腑に落ちない。担当する刑事は3人。その誰もが、この点に疑義を抱いているが、登場する役者は3名。総て刑事役である。だが、犯人役として4人目の役者はそもそも存在していないのだ。その代りと言ってはなんだが、犯人の代役として登場するのは、車椅子である。母を殺害した後、心中しようとした男は、足と言わず、腕と言わず、自分で刺して自殺を図った。その所為で取り調べは退院直後の48時間である。警察での留置期限は、通常丸2日と法で定められているからである。
     物語はこの48時間の間に行われた犯人と刑事との、また刑事同士取り調べ方法を巡る対立を通しての若手刑事の成長物語でもあるが、実際の取り調べ場面では、刑事2人、犯人1人の構図が最後まで貫かれ、浮いた役者1人が犯人の科白を語る形を採る。が、決して車椅子には座らない。この非在こそが腑に落ちないこと、即ち訳の分からないことXの象徴だからである。別の言葉を用いれば謎ということもできよう。いずれにせよ、刑事たちは真実に至る為に、この尋問と裏付け捜査を進めている訳である。
     さて、車椅子には犯人が座っていると想定される中で、劇は進行する訳だが、この非在への集中によって緊張感が途切れることが一切ない。何となれば、この非在こそ、想像力を投影する場そのものであるからである。この演出の素晴らしさは、最初から在った設定で、矢張りこの非在を巡って作劇されたという話も合点がゆく。
     更にこの”場”へのアプローチの仕方が刑事間で問題視されるのだ。というのも3人の刑事のうちの1人が、取り調べ中、己の事件解釈を犯人に強要し、調書をデッチアゲている点があり、先輩刑事が、注意しても中々己の非を認めたがらない。散々、諭しても理解しないので、一番の先輩に当たる刑事が、誘導強要している事例をカマを掛ける形で仕込んで見せ、その結果を証明してみせることで、若手を論破する挙に出る。こんな方法を採りたくないので、それまで抑えていたのだ。何となれば、精神的に傷を負わせることは、暴力的な怪我を負わせるより遥かに重い傷を、肉体にではなく魂に負わせるものであることを先輩は知っているからである。いずれにせよ、後輩刑事も、その後の様々な先輩たちからの働きかけに己の未熟を漸くにして知り、成長してゆく。こんなサブストーリーも見事に織り込まれ、改心した刑事の説得によって初めて犯人も腑に落ちる説明に至るのだが、犯人が、頼ろうとした社会的救済システムでの窓口対応の杜撰さや、認知症に陥ってさえ、残り続ける人としての母に誇りと存在の間の奈落、その奈落を、母を理解するが故に、共に爪を引っ掻けながらずり落ちてゆかざるを得ない状況に追い込まれた、心有る人間(犯人)の苦悩を描いて秀逸である。
  • 満足度★★★★★

    三人による一人芝居。一人芝居って難しいですよね。架空の相手に対してリアクション取らなきゃならなくて。独白するときは、誰に向かっていってるのかも重要だったりすると思うし。

    ネタバレBOX

    あんな取り調べ官は居ないだろうなあと違和感が。TVタックル的に議論を盛り上げるために必要なのかも。でも聞いてて途中でいやになったりも。でもこれが、犯人の役の人が向かいに座っていてなにか演技してくれれば、そういう違和感もなくなるのかも。芝居の趣旨とは違うかもしれないけど。

    犯人像はイメージできなくはないけど、劇を通して浮かび上がるという感じはなかったかも。類型的ってゆーか、そういう感じもなきにしもあらずで。

    それでも五点つけさせていただくのは、途中眠くなることもなく、というか集中して観ることができて、最後ほろりとさせてくれれば五点ってゆー、個人的な採点方法のためであります。
  • 満足度★★★

    こういう劇はもっともっと切迫感、緊張感に満ちていないと釣り込まれない。

    ネタバレBOX

    要介護の母を殺した疑いが濃厚な中年容疑者を相手に取り調べを行う三人の刑事。うち一人は容疑者と似た境遇にあるゆえに描写する意義もあるかと思うが、残る二人の刑事のバックボーンを少なからぬ時間を割いてあそこまで詳細に描く必要は果たしてあったのだろうか?
    私には、余分にも思えるあの二人の人物描写が劇を弛緩させているように思えてならなかった。
    主人公の容疑者の心模様はしっかり描かれていただけに、ノイズによって劇が緊張を欠いてしまったのはまことに残念。
  • 満足度★★★★

    開演時間を守るような導入にしても
    単純な感じにとれる舞台セットにしても
    3人芝居ながら上手に4人目をかもし出し
    なかなか琴線に触れるテーマを上手に表現していたなぁと思えました
    誰にでも起こりそうな感じでの
    話の展開は引き込まれたなぁと・・・・
    100分ほどの尺であります

    ネタバレBOX

    平たく言うと~
    認知症となった母の介護に疲れた息子が心中し
    生き残った息子を取り調べる警官3人もまた
    さまざまな生活事情を抱えながらも生きているんだという話
    少々ズレたかな・・でもまぁこんな感じ

    生活保護を受けようとするがハネられ
    生活に困窮しながらも
    世間様に迷惑をかけまいと心中という結果を選ぶ被疑者家族・・・
    他に道=手段や相談も出来たのでは・・とは
    後になって言えること
    視野狭窄に陥った人間には選択肢は少ないよなぁとも納得
    借りていたアパートをきれいに掃除して
    なけなしの所持金だけ持って死地にいたる母子のくだりは感涙ものでした・・・

    開演時間に主宰が開演するまでの時間つなぎと
    そうみせての本編導入への語りへと繋げる手法は見事であったが
    その境目がわかり易かったかなぁと
    (喫煙?がバレて学校にて謹慎させられる話とか)

    被疑者は透明人間=足の怪我で車椅子使用=無人の車椅子に語りかける手法です
    ですが時々被疑者の語りをメインの芝居場よりもズレたとこにて
    場外にいる役者に語らせるという手法も理解はし易かった

    自分は11時開演の回を見ましたが
    14時からのクラシックコンサートに行けたので
    開演時間としては嬉しいと感じました

    主宰曰く
    昨今は週末=土日の夜の回は観客入りが悪いそうです
    ふ~むとラーニング(^-^)

    あと劇中BGMでバグパイプの音が珍しかったですわ

    取調室と事件現場等がシーンのメインでした

    事件調書をとるので被疑者からの状況や動機の自供をとるのですが
    48時間以内の調書作成としないと
    脳内オリジナルストーリーが作られるという背景があり
    なんとか時間内に事件の真相を調書にまとめたい3人の刑事と
    透明人間な尊属殺人被疑者・・・

    事件は河川敷の木のそばに車椅子に乗った老婦人の刺殺体と
    自刃にて手足に傷を負った中年男性が倒れているのを通行人が見つけて
    殺人事件として被疑者=片山が怪我を粗方修復されての
    尋問開始で物語は進んでいきます
    口の堅い片山に刑事の一人=辻は事件のストーリーを作り上げ
    自分の思考の通りに調書をとるのですが
    同僚の小島は強く言えないのだが
    上司?ベテランらしい北川刑事は事件の真相を48時間内に突き止め
    調書をまとめるのでした・・・

    認知症の進む母親のために仕事を辞め
    収入も無くなり生活保護も受けられず心中することになる過程が
    ほんに感涙ものでした

    3人の刑事たちにも
    北川は高校生になった娘の素行が悪くなって・・
    辻は子供が生まれての出産ブルー・・(?)
    小島は片山と同じく母親の介護にあたっているという
    生活事情が語られていきます

    奇声を上げる母親が
    まとな思考時の相談で
    家に吼える室内犬がいるのでと近所に謝るようにしようとしたり
    周囲に認知症だからと哀れんでみられる事に耐えられないからと
    秘密にしていた事も事件の要因であり
    自分なら言えるだろうかと考えさせられる脚本になってました

    母には500万円の保険金がかけられていたが
    借金は無くギャンブルなどもしていなかったなど
    背景も丁寧に描かれていました

    背景のモニターに事件の発生日時や
    取調べの残り時間などが表示されます

    ラストは事件の判決日の表示で
    判決は・・・オープエンド~観客に判断をまかせる余韻のある〆かたでした
  • 満足度★★★★

    2010年の「やわらかいヒビ」以降、断続的ながらカムヰヤッセンを観続けており、活動休止公演という事実がとても寂しい。意味深長な作品名ではあるが、作品を通して活動休止の理由が推し量れることもなく、少しだけ垣間見えた堅さが初日を感じさせる以外は安定したカムヰクオリティ。役者・北川大輔の肩肘張らない演技がとても良く、雄弁で美しい照明効果とともに印象に残る。再び全員揃っての復活公演を待ちたいと思う。

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