時をかける206号室 公演情報 時をかける206号室」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.7
1-20件 / 88件中
  • 満足度★★★★★

    5回観劇。とてもハマッた作品でした。

    各々の役者さん達が非常に魅力的で、笑いもシリアスさも感動もありました。
    脚本も久保田唱さんらしい緻密さと、散りばめられた謎が終盤に掛けて一気に解けていく感じが、
    ボクラ団義さんのファンである自分にはタマりませんでした。
    舞台上にお盆をあれだけ作って、それらが最大限に活かされた意欲と表現力は、忘れられません。

    個人的には「忍ブ」が脚本・内容共に最高レベルで好きなのは変わりませんが、
    だからと言ってこの206号室を減点する理由にはならないので、満点を付けさせて頂きます。

  • 満足度★★★★

    舞台の上でお盆が回る?
    面白い舞台セットでいろんな世界が繰り広げられて、面白かったです!

  • 満足度★★★★★

    千秋楽(都合3回め)
    こんな事ってあるんですね。素晴らしかった。生物なので回を重ねる毎に新しい味が出るのはご愛嬌として、ものの見事にピースがはまり千秋楽で完成。個人的にもこれを越える作品には出会えないと感じた。作品に関わられた皆さんに感謝(^^)!! 評価は自信を持っての★★★★★

  • 満足度★★★★

    初日観劇(^^)
    重苦し気ながら圧倒的絶望感に包まれる訳でもなく、不思議な後味。次回楽楽しみな予感♪

  • 満足度★★★★★

    観てきた!
    おろしろかった!

    もう一度観たかった!

  • 満足度★★★★★

    ハマりました
    ひとつひとつが繋がっていく展開、ダイレクトに心にくるその演技に圧倒されました。
    舞台装置、楽曲も、どれも素晴らしく、もっと観たくなり回数を増やしました。
    2回目以降になると、頭の整理ができた状態で観ることができ、1回目に受けた衝撃も凄かったのですが、細かい所にも気付くようになり、改めてその凄さを感じました。
    終演して時間が経ちましたが、楽曲が自然と流れてきたり、思い出したりし、いまだに影響を受けております。

  • 満足度★★★★

    さすが!
    劇団6番シード所属 椎名亜音さん カメレオン女優としての持ち味を遺憾無く発揮した舞台! コメディリリーフとしての役割も完璧だったね ヾ(@⌒ー⌒@)ノ 時をかけた大家さん とっても素敵でした ^_−☆

  • 満足度★★★★★

    3回と言わず、
    3回目の観劇でした。
    1度目では物語を追い、
    2度目には頭を整理した後のふくせんの回収をし、
    そして3度目。
    他の舞台では、そろそろ飽きてしまうかな?などと心配し始める所ですが、時をかける206号室に関しては、まったくそんな心配は無く、心の底からもっと観たいという気持ちが溢れてくる、本当に凄い舞台でした。
    予定上、これが最後の観劇になってしまうため、
    今回は役者さん達の熱のこもった演技を改めて心に刻もうと観ました。
    ひとりひとりが重要な役で、大切な存在。
    よく観ると、少しずつ台詞の間が変わり、より気持ちが受け取りやすくなっていたり、何度観ても複数の可能性を感じる場面があったりと本当に楽しく、まだまだ観たい!という気持ちが止まらない素晴らしい舞台でした。

  • 満足度★★★★★

    時をかけた!
    見終わった後からぞくぞくがとまりませんでした!
    時間があれば何度でも、全ステージ見たいくらいです!

    20人以上のキャストで、全てが絡み合って、全てが綺麗にまとまっている、こんな舞台は初めてです。
    舞台装置も、映像も、もちろん脚本も演出も役者も最高でした。

    最後まで見て、もう一度OPを見たくなる。
    魅力の詰まった素敵な時間をありがとうございました。

  • 満足度★★★★

    分からないなりに楽しめた
    客席に入った瞬間から「なんじゃこりゃ」と思わされる舞台セット。
    それがグルグルと回るのだが 上に乗っている役者さんが振り落とされないか見ていてハラハラ・・(千秋楽まで怪我なく終えられたようでよかった)
    あのセットはすごいな~ 後ろで盆を回している人が見えてしまうのは難点だけど(きっと久保田氏はそれも計算の内なのだろうが)あれを考えて作るのがスゴイ。

    内容は複雑過ぎるかとも思ったが 分かる範囲で楽しめたと思う。
    あれだけの罪を重ねた主人公が最後に救いがあるように見えたのはオイオイ・・・だったがそこはファンタジーなのでアリなのでしょう。

    ネタバレBOX

    二重生活の男を演じていた竹石悟朗さん、今回は本当に腹立たしく思わせていただきました 笑

    大家役の椎名亜音さん、タイミングよく、邪魔にならずかつ存在感のある演技で魅了されてしまいました。ボク団には初客演ということが信じられないくらい馴染んでましたね。

    事実しか書けない小説家役の高田淳さん、追い詰められて壊れていく様子が狂気を感じて目が放せなかったです。

    劇団員ももちろんですが 今最も旬な客演陣を集める力があるのがボク団の集客を伸ばす理由の一つなんだろうなと思いました。
  • 満足度★★★★★

    エネルギーと輝きに満ちた作品
    ボクラ団義vol.16「時をかける206号室」、いろいろ細かな感想は以下で述べますが、総括してとてもとても素敵な作品でした。もちろん初日から十分に完成された作品でしたが(当然のことのようで、千秋楽が終わってから振り返ると初日はまだまだだった、ということは往々あることですが、ボクラ団義さんはそれが無いというのが素晴らしいところのうちの一つだと思います)が、回を重ねるにつれてより一層深まり、勢いと輝きを増してゆくのを間近で観られて、とても充足感のある観劇でした。
    本当はアンケートも記入したかったのですが、多忙かつ言葉がまとめられなかったので、ここで感想を述べます。冗長すぎる文章になってしまったので、もし万が一読もうと思われた方がいらっしゃいましたら、ざっくりかいつまんで読んでください(*_*)

    ネタバレBOX


    ※ほんとに長いです※

    ストーリーの構成がとても複雑で難解で、おそらく初見で全てを理解しきれる観客はいないでしょう。もちろん複数回観劇しないと全く楽しめない作品ではなく初見には初見の楽しさがありますが、謎解きをされてもなお理解が追いつかない部分は多々あり、もう一度観ないとすっきりしない感覚が残る点は、例えば劇団や出演者のファンでない観客にはネックなのかもしれません。
    わたしは客演の役者のファンで、複数回観劇しましたが、何度観ても飽きることのない、毎回新しい感覚や発見を得られる作品というのも、なかなかそう簡単に作れるものではないでしょう。久保田さんのロジカルな物語は、リピーターを離さないなあと思います。もちろん一度きりの観劇で100%満足してすっきりと劇場を後にできる作品、というのも、これまた難しいものなのだと思います。

    オムニバスとも群像劇とも、枠物語とも言えるのでしょうか。
    とある空き部屋の内見に訪れた"男"に、突然現れた"女"が、この部屋で起こった出来事として六つの部屋の物語を語りだす。"男"にはいずれの物語も初耳で、時に同時進行の複雑な語り方に混乱しながらも、本当に起こったこととしてはいささかドラマチックすぎる話に驚いたり聞き入ったりしている。
    観客の視点は、中盤までこの"男"と同じなのだと思います。初見ならなおさら。感じることも、疑問に思うタイミングも。彼の目線と思考がそのまま観客の目線と思考。しかし物語を全て知ってみれば、全てが乖離性同一性障害を患った"男"が過去の体験を元に小説として書いた物語であり、身に覚えがないのではなく、記憶が別人格のものとして切り離されているだけ。そこからはストーリーテラーの"男"と"女"ではなく、ある一室でやりとりを重ねる"父と娘"の物語が始まり、"男"と観客のイコールは無くなっていく。
    "男"を演じる大神さんは普段とは全く異なる受信的な姿勢で、"身に覚えのない自分の衝撃的な重い過去"をひたすら浴びせられ続ける、ひどく消耗の激しい役どころで、精神剥き出しでぶつかっていく姿はとても引き込まれるものでした。
    "女"を演じる今出さんは、相対する大神さんが精神剥き出しなのでそれとのバランスとして、内面的・心理的な描き込みの少なさが気になるところも若干ありましたが、まだ若くてお芝居の経験値もそう多くないのに、これだけの台詞量のストーリーテラーを担い、作品全体を牽引する役目を背負った覚悟とポテンシャル、本当に素晴らしいと思います。

    各部屋の感想を。
    201号室の柏木は、"妻を数ヶ月放ったらかして不倫相手の女と子どもを授かり、行く行くは妻と離婚し不倫相手と結婚しようとしている男"。あえて冷たく書き出してみると本当にひどい状況ですが、演じる竹石さんの醸し出す、なんていうんでしょう、クズ野郎感がとても魅力的で、当事者だったらまあ当然許せないのでしょうけど、観客であるわたしはついうっかり許してしまいそうになる。顔が良いって罪だなあ、と思います(笑) その妻(ミカ)・齋藤さんの強烈なヒス女、不倫中の婚約者(今日子)・明日香さんの馬鹿女、どちらも普段あまり振られないであろう役柄で、ご本人とも全く違うキャラクターなのでしょうがとてもハマっていて、女優さんってすごいなあ、と心底思いました。三者の関係はとっ散らかっているのに、お芝居はきちんと観やすかったです。齋藤さんは二十年ほど後にもミカとしての出番がありましたが、201号室時点での修羅場でとんがっていた角も取れて、年老いて丸くなった様子が、衣装やヘアメイクは少し変わっただけなのにしっかりと現れていて、声のみで芝居をして声のみに感情や情報を乗せることのプロですから、やはり当たり前のようにずば抜けて巧いなあと感嘆しました。

    ミカが柏木の血を引いた今日子の息子・勘太を誘拐して姿を消したあとの今日子と柏木を描いた202号室。最愛の我が子を失い精神をおかしくした今日子・中野さんの、細く小さい身体で爆発寸前の大きな爆弾を抱えたエキセントリックさは、良く知った妻であるはずなのに恐ろしく、そんな妻と二人きりで生きることに疲れきっている、光の灯らない目をした柏木の沖野さん。状況としては悲惨なものであるはずなのに、あまりの悲惨さにむしろコメディに見えてしまう、という具合、絶妙でした。

    "逃げ癖"が出てついに今日子を刺殺した柏木は出所後に小説家となり、編集者の女性と結婚。その二人が住む203号室。小説のネタのために様々な犯罪を重ねてきたことが明るみに出てしまった柏木・高田さんと、元編集の妻・平山さん。この部屋が最もダウナーだと感じました。ダウナー感はおそらく、大家さんが部屋の中に入ってこなくて、ひたすら夫婦ふたりのやりとりが続くところにあるのかなと。言い換えると高田さんと平山さんの、たった二人だけで世界を構築する力が必要だということなのでしょう。朝練などして随分と稽古を重ねたと聞いて(アフタートークで出たスタバver.の台詞合わせの話には笑いました^^)、その積み重ねの成果なのだなあと思いました。

    これ以降は、ひとりになった柏木が、これまでの過去を振り返り、悔いの残る人間たちをモデルとして登場させた、フィクションの世界。
    204号室は、"小説家の妻"と離別することになる最初のきっかけともなった、轢き逃げ事件の被害者の息子をモデルとした、漫才師の青年・亮太を加藤さん。その相方・カズキを図師さん。カズキは202号室の時代に今日子が誘拐してきた子供の将来がモデル。七海さん演じるカズキの恋人・幸子と、吉田さん演じる幸子の兄であるオカマ(本名は勘太)。幸子はミカの娘(柏木との娘ではない)、勘太は柏木と今日子の息子で、ミカが勘太を誘拐して二人を兄妹として育てたという設定になっている。勘太が借りたアパートの一室に、妹と妹の恋人・カズキと、その相方を住まわせている四人の暮らし。漫才コンビやオカマという個性の強いキャラクターがいることもあり、前半は暗く重くなりがちな作品を明るく賑やかな方へ引き上げていましたが、後半はそれぞれの生まれ育ちや家族のことが絡んできて、このチームの最大の見せ場、作品としても山場となる漫才の大会のシーンは、漫才という形をとりながら正直な言葉と本心のぶつかり合いで、とても良いシーンでした。
    吉田さん演じるオカマの勘太は、とにかくオカマが板につきすぎていてハマり役とはこのことか、という具合でしたが、ただ単に"オカマらしい言動"をトレースしただけの、ステレオタイプのモノマネには全く見えないのがすごいなあ、と思います。実の母親ではなく誘拐犯に大人になるまで育てられてしまった、誰にも見つけてもらえない本当の自分から、見つけてくれない社会から逸脱しようとして、オカマであることを選んだのではないでしょうか。ミカが自分の知らない間に幸子に会っていたと知り半狂乱になるシーン、「アタシは言ったあの女に!今の幸子には絶対会わないでって!」と、こんなときでさえ作った言葉遣いが抜けないほど、本当の自分を奥にしまいこんで生きてきたのだなあと思うと悲しすぎる。イロモノをイロモノで終わらせない巧さが光るなあと思いました。
    妹・幸子を演じた七海さん。控えめで口数は少なく、でもカズキへのフォローは欠かさない優しい恋人で、血の繋がらない兄は幸子が実の妹ではないと分かっていながら自らを犠牲にしてまで妹の幸せを願ってくれていることをきちんと知っている、聡い女の子。過去に久保田作品に出演された2本も観ていましたが、確実に進化・成長していてすごいなあと思いました。本公演に出られたことが泣くほど嬉しかった、とお話しされてたのが印象に残っています。また本公演に出演されたら、わたしもとても嬉しいです。
    加藤さんと図師さんは、役柄でなく役者本人も呼吸の合った漫才コンビのようなところがあると思うので(笑)、もはやただの張り手である強烈なツッコミや、ストップモーションでの大神さんとの絡みやその他諸々、コメディリリーフの大家さんと並んで、笑いで息を抜ける、この作品の救いでもあったなあと思います。大会シーンの図師さんは、笑かそうとするのが逆に泣けて、無理して明るく努める様が痛々しく感じる、とても繊細なバランスでコミカルとシリアスを両立させ、その二つの間に段差を感じさせない巧さには驚きました。これまでコミカルな役ばかり観ていたので余計に。
    このシーン、台詞で牽引していくのは主に図師さんですが、触れられたくない"抱えてきた闇"をネタにするカズキに対し本気でキレて、胸ぐらを掴み上げたり怒鳴ったりする亮太の、傷のいっぱいついた心が、シーンをよりいっそう深めていたのだと思います。図師さん/カズキの作った明るさだけでは芝居は締まらなくて、母親を轢き逃げで喪った亮太の痛ましさや、自分を失い抑圧されてきた勘太の怒りや不足感、それら噛み合わない相反するものの衝突は剥き出しの心のぶつかり合いみたいで、きっとあの芝居をするのは、心底楽しいのだろうと思います。

    205号室は、"おじさん"と呼ばれる老いた柏木がモデルの男・中村さんと、"おばさん"と呼ばれる母親のロールを引き受ける女(ラストでモデルがミカだとわかる)・大音さん、204号室でも登場させた轢き逃げ被害者の息子・亮太がモデルの"若い男"・福田さんと、ミカの娘・幸子がモデルの"若い女"・大友さんの、劇団員四人による部屋。血の繋がらない者たちが、家族の温かさを求めて家族ごっこのルームシェアをしている物語。この"血の繋がらない"という言い方がちょっとズルくって、亮太はもちろん他人だし、柏木とミカは夫婦だけど夫婦という間柄には血の繋がりは無いし、ミカの娘である幸子の父親は柏木ではないことは判っているので、柏木との血の繋がりはないのですよね。ちょっとズルい気もしますが、あとで気づいてなるほどなと思ってしまいました。
    それから一瞬だけ、突然脈絡もなく"家族に囲まれるような部屋がいい"という小説家志望の若い女の子(今出さん)が現れる。もちろんモデルは、離別した後に"小説家の妻"との間に生まれたであろう自分の娘。乖離性同一性障害であるということで、"男"は自分が"女"を小説に登場させていたことを色々知らされたあとで気づきますが、顔を見ることも叶わなかった実の娘を、家族の温かさを求める部屋に一瞬だけでも書き加えていたことがわかります。
    明確に筋立てのある204号室とは違って205号室にはストーリーがなく、ただひたすら楽しげな"家族の団らん"として、ゲームに興じている様子だけが描かれていますが、現在の柏木(大神さん)が全てを知ったあと、自分たちの過去を見つめたり、偽りのロールではなく本当の間柄としてお互いを認めたりするラストが加筆される。大友さんの「ねえ、お母さん」と大音さんの「んん?そうね」がまさに万感交到る、といった感じで、やけに掠れた大友さんの声と、あえて気の抜けたような大音さんの柔らかいリアクションが、きゅっと胸を締めつける切なさでした。

    204号室と205号室は、現実の三部屋と比べて救いがあり綺麗で、切なさはありながらもエンディングは幸せなストーリーで、だからこそ引っかかるのが、柏木という罪深い男の"エゴ"です。
    この作品で語られるのは、柏木が書いたフィクションの中の住人である彼らのみであって、例えば、まだ幼い頃に母親を轢き殺された青年の実際は描かれませんし、今日子が誘拐してきた赤ん坊が実際にどんな大人になったのかも分からないし、今日子が案じた"この子が将来何を思うのか"の答えが"たった二日間だけど大切にされた記憶がある"だなんて事実もありません。
    どんなに彼らが幸せになる小説を書いたところで、轢き殺した女性が生き返ることはないし、誘拐という行為で幼い子どもとその家族に落とした暗い陰が晴れることもない。自らの不逞のせいで全うな人生を与えられなかった息子に、漫才師という賑やかな友と、自分を選んでくれる妹という、心安らぐ家族を与えることもできない。想像の中の贖罪に過ぎません。
    でも、そんな柏木でも嫌いになりきれない(創作上の人物を本気で嫌うのもおかしな話ですが)のは、やはり柏木を演じた4+2人の役者の持つ魅力によるものなのだろうなあと思います。
    屈託のない笑顔と甘い声で常識を外れたことを言う竹石さんと、やつれて疲弊しきって生気もないのになぜか惹きつけられる引力のある沖野さんと、おおよそ常人には理解し難い理由でいくつもの犯罪を行ってきた底のない沼のような、駄目人間を極めきったようなどうしようもない存在なのになぜかどうしようもなく愛してしまいたくなる高田さんと、フラットで空っぽ、何ひとつ知らないという観客と同じ地点からスタートした、全てを被る主役の大神さん。リズムゲームのリズムは全く取れないし「流れ」なんていう若者のワードに馴染めない、老いた鈍臭さがチャーミングな中村さんと(老け役については本当に中村さんの右に出る者はそういないなと改めて思いました)、ただひたすらに娘という存在を認め頼り、なにより愛してくれる、幸せな甘さのある雄一さん。六人もの容姿も声音も芝居も違う役者が同じ作品の中で同一人物を演じることが通用する、舞台の面白さや可能性というのも、ここで強く再認識しました。


    "女"が書いた206号室の"娘"と、感想の流れに組み込めなかった部屋の外の人たちについて、ここでまとめて。
    "幸せそうな娘"松嶋さん。優しい父親と暮らし大学へ通い、友達ができたと嬉しそうに報告をする、ごく普通の平凡な、そして平凡だからこその幸せを当たり前と思わない聡明さが魅力の女の子。松嶋さんは笑顔が良く似合うなあと思いますが、千秋楽の三回目のカーテンコールでの涙もとても印象深いです。
    "太った男"内田さん。しばしば体型をイジられますが、それだけで笑いをかっさらえるのは強みだなあと思います。痩せないでほしい。柏木の書く話ですから元カノが他の男との間に生んだ息子に金をせびるようなキャラとして描かれていますが、内田さんのどうしても悪い人間には見えない滲み出る人の良さも、これまた強みなのでしょう。でも、救いようのない悪役も観てみたいですね。
    "刑事"添田さん。本人たちは至って真剣なのにはたから見ればコメディ、な沖野さんと中野さんとのやりとりの絶妙な間合いはさすがだなあと思います。"疲れた夫"を案じ、出来る限り穏便に事件を解決しようと試みる姿に人間らしさと優しさを感じました。
    "編集者"春原さん。ダウナーで緊迫した203号室に高いテンションで入ってくる、その空気の読まなさ、ふたりに引きずられることのない自由なスタンスがとっても面白かったです。どうにかして本林を引き離したい気持ちでいっぱいの柏木の後ろを、そんな気持ちは御構い無しにひっついて回る、悪意のない圧迫感が秀逸だなあと思いました。
    "不動産屋"糸永さん。台詞回しや動きにある独特のゆるっとした空気が大好きです。実直で誠実そうな印象なのに、ちょっと幽霊の真似事で脅されたらすぐに退散してしまうようなところも最高です。斜めに射し込んだ陽光とジリジリと鳴く蝉の声とでリアルに作られた"106号室"に、さらにもうひとつリアルさを足す存在でした。
    "大家"椎名さん。全ての章を同じ世界に存在する同時進行の話であるかのように繋げる役目を持つ、影の立役者でしょう。一番多くの役者と絡む役でどの部屋でもよく馴染み、コメディリリーフとしても120%完璧で、完璧でありながらもとても親しみやすくて、なんとなく忘れてしまうんですが、ボクラ団義初客演なんですよね。椎名さんの大家さん無しではこの作品はうまくいかないのだろうと思いました。

    公演期間の終盤でやっとわかったこと。
    「時をかける206号室」という公演タイトル、"女"が手にしている本のタイトルも同じく「時をかける206号室」としている。ただし柏木が書いたのは第五話、205号室まで。"女"は「言ってないよ、不動産屋さんはここが206号室だとは一言も」などと言うけれど、一番最初に部屋番号について言及したのは"女"の「隣には205号室だって207号室だってある」という台詞。観客は「時をかける206号室」を観に来ているので、何の疑いもなくここが206号室だと思い込んでしまう。
    物語を語り聞かせる"女"は、他でもない小説家・柏木祐介の書いた物語の続きである"206号室"で新たな小説を、そして父親・柏木祐介と、小説ではなく本当の暮らしも書き始めたかったのだろうな、と思った。「もっと重要だったのは、これから見つけるもの」だから。



    本当にひどくまとまりのない感想でしたが、とにかく本当に本当に心底楽しかった作品でした。
    今回で言えば盆なんかはそれこそ文字通り力を合わせなければ成立しないものですし、それだけでなく芝居も裏方も制作も、全員で協力してフル稼働の全力で創り上げた作品の、それによるポジティブなエネルギーの塊のようなもの、その熱をしっかりと感じました。劇団っていいなあ、と思いました。これからも素敵な作品を真剣に全力で作っていける劇団であるように、さらなる活躍を、飛躍を祈っています。
    素晴らしい作品を、ありがとうございました(^○^)!!!!
  • 満足度★★★★★

    圧巻の一言…
    先週と前楽を観劇。
    まさに圧巻の一言…劇場に入場した際に舞台セットに驚愕し、繰り広げられ前説に驚愕し、導入部分のリアルな音響と窓からの木漏れ日の照明、そしてオープニングアクトの舞台装置と映像・楽曲に驚愕と、驚かされる事ばかり。
    そして、複雑に入り組んだ伏線と役者陣の熱演で、あたかも観客が「男」になったような錯覚に陥る没入感でした。

    ネタバレBOX

    六角形の盆が回り、1つの部屋になるギミックが更にそれ自体も回転したり繋がったりと、あの舞台装置はまさに伏線が噛み合う歯車のような動きでもあり、「男」や観客の頭の中の混乱を表しているようであり、実にお見事…。
    あの難解な長台詞を覚えるという単純な部分でも驚かされたり、指先や涙や汗の一滴にまで熱演が伝わってくる役者陣。
    特に、前楽での図師さんとりんりんさんとの場面では、通常ならアクシデントとみられてしまうかも知れない鼻水でさえ、あのキャラクターを体現した絶妙な熱演だったと個人的に感じた。

    注意書のように決して痛快爽快なタイムトラベルものではなかったけれども、あの伏線が1つの真実に辿り着いた時の衝撃は爽快だった…
    複数回観劇すると、あの場面でのあの後ろでの演技はそういう事だったのか!と、まさに驚きと発見ばかりの舞台でした。
    あの舞台ならば、リピート特典を作らなくとも何度でも時間の許す限り観劇したかった。そう思わせてくれる舞台でした。
  • 満足度★★★★★

    複雑な伏線回収の妙
    ボク団らしい複雑な伏線と回収の妙を味わえる脚本、それを実現させる役者陣、絶妙な音響を含めて実に見事な舞台。
    ただ、ストーリーの難易度も高く、理解には苦労する。ボク団初見の方や分かりやすいストーリーを好む方には受け入れられないかもしれない。
    以下、公演中なのでネタバレで。

    ネタバレBOX

    一言でいうと、凄い!と 少しやり過ぎかな?が同居した舞台。
    個人的には、各部屋の話で201,202,203号室は前者、204,205号室が後者です。というのも他の方も書いておられますが、204,205号室はフィクションなのだから、主人公の願いというには話が暗すぎる。
    この2部屋がなくてもとも思うし、204号室はフィクションとせずに見てきた話としたほうがまだしっくり来る気がする。
    そうしないと事実が分からないのでモヤモヤ感が・・・。

    それにしても、今作も役者陣は凄かった。ボク団のメンバーに加え、客演陣も素晴らしく、特に客演陣では基本的には暗い話をコメディチックな空気に変えた大家さん役の椎名亜音さん、最初の妻を演じた斎藤彩夏さん、そしてやはり最後の告白が印象的な漫才師を演じられた図師光博さんが特に印象的でした。

    大変面白い舞台ではありますが、いくつか分からない点も。
    ・最初の妻の子供の話が出てこない?
    ・今日子の子供は誘拐されたまま? 前妻とは誘拐前に離婚した?
    ・ストーリーテラーだった実の娘の存在を知らない?

    私の理解力不足かもしれませんが、1度観ただけでは分からないというのも
    いかがかと思う。

    色々書きましたが、個人的には好きな、なかなか観る事の出来ない舞台でした!
  • 満足度★★★★

    ボク団ファンタジー
    大変面白かったです。舞台セットのギミック、伏線の数々など2時間半があっというまに感じるほど引き込まれました。

    風呂敷の広げ方は相変わらず抜群にうまいですね。
    後半一気に謎が解けていく感じはとても爽快で良いです。
    ただ、風呂敷を広げすぎて最後にグダグダっとなってしまうのもいつも通りな感じ。
    今回で言うと204、205号室が蛇足に感じました。
    特に204号室は伏線の回収を詰め込みすぎて、物語が複雑になってしまった元凶だと思います。
    (事実の話では無いのだから伏線の回収とはまた違うような気もする・・・)

    シリアス中心の展開の中、大家さんの存在がとても大きかった。
    うまいタイミングで笑いが入るので疲れずに観劇できました。

    主役の大神さんは役に合っていないかなと思いました。
    主人公は時系列的に考えるとどう考えても40後半~50代といったところでしょう。
    髭を生やして年配風にはされていましたが、ちょっと無理があります。

    ネタバレBOX

    201~203は半ノンフィクション、204~はフィクション
    それおかしくない?というところも「そこは想像のお話」で逃げてしまえるので、何でもできてしまいますよね(^^;)
    未成年者略取を見逃す警察とか絶対におかしいですし。





    [memo]
    主人公は解離性人格障害。
    201~206は主人公の書いた本の話(オムニバス)で、201~206は時系列。
    201~203は事実を脚色したもの。
    204、205はその後を想像した願望の世界。
    206はヒロインが書いた、理想的な父親(主人公)と娘(ヒロイン)の話。
  • 満足度★★★★★

    時をかける206号室、最高
    凄い!の一言でした。構成、演出、演技、役者陣、セット、何をとっても素晴らしいと感じる作品です!
    複雑な構成で頭をフル回転させて、時間がとても短く感じました。
    小劇場にいることを忘れるほど、舞台の世界に引き込まれ、終わってからの現実感に驚きを隠せませんでした。
    本日千穐楽です。
    当日券キャンセル待ちもあるようですので、是非お時間ある方、観なきゃ損です!!!

    ネタバレBOX

    舞台装置にあっぱれでした。後方席から見渡すと、全体の動きが見えて、盆を回しているところまで観察できました。
    ボクラ団義メンバーはもちろんのこと、ゲストメンバーがいい味を出されていて、演技のレベルがとても高かった!
    本当にどの役者さんも素晴らしかったが、個人的には、事実しか書けない小説家:高田さんとその妻:平山さんの掛け合いと、漫才師コンビの加藤さんずしさんの演技がとても好きなシーンに。
    大家の椎名さんも最高のスパイスでした。
    楽曲のRose in many Colorsも良かったです!
  • 満足度★★★★★

    時をかける206号室リピーター
    確かに複雑な作品、だがこの作品には観る側と役者さんとの
    舞台に対する思いが、あると思う!個性派ネンバー
    イケメンメンバー、脇役の方々、そして先輩役者さんの方々
    新人役者、どれも絡めてこの作品が出来たと思います
    演出家、久保田さんの情熱がメンバーを引っ張り完成した素晴らしい作品!ラスト千秋楽、どうみせるか期待しております!
    最後に大神さんの情熱的な、演技力観る価値ありますよ!

  • 満足度★★★★★

    時をかける206号室リピーター
    先週の観劇から、やっぱりリピーターして更にその観劇を楽しもうと
    リピーターしました!細かな表現力
    空間、どれも期待通り
    リピーターして正解でした!これが舞台だと思いました。
    千秋楽までにもう一度行きたい!

  • 満足度★★★★

    良い作品だけど複雑で懲りすぎ
    皆様書かれてるのと似てしまいますが 
    グルグルセットの舞台演出や それに合わせる役者さんも 役者さんの命がけの演技も 伏線を張りまくりの脚本も 全てがお見事でした☆


    ただ一部ご意見があるように この作品は複雑に懲りすぎているように思います。 
    頭がグルグルするほど 考え続けなければいけないというのは ちょっとどうなのって思います。
    何回も観る前提で作られてるのだろうけど もうちょっとシンプルにできたのでは。


    本妻:斎藤彩夏さんの迫真迫力の演技 
    小説家の妻:平山空さん 
    竹石悟朗さんの演技はもちろんのことだけど キムタクに似てるしカッコ良かった。
    疲れた男:沖野晃司さんはもちろん!そしてこの方 椎名亜音さん!
    他の役者さんも とても良かったです☆ 


    ストーリーテラー役:今出舞さん 何も悪い点はないのですが 
    周りのレベルが高すぎるので あの役は大役だったのでは?という意味で気になりました。

    ネタバレBOX

    お父さんがお金をせびりに来るシーン アフターパンフを観るまでわからなかったです。
    でも理解出来ました。


    私は好きな作品や良い作品には 登場人物に愛着が出るタイプなのですが。
    ここまで良い役者さんが揃ってる割に 役に愛着がわきにくいのは
    やはり考えさせる要素が 強すぎるのだと思います。


    特に男役:大神拓哉さんの熱演っぷりに反し 
    その背景がイマイチ見えてこなかったこと。そこまでして逃げてる理由とか。
     『そうだったのか!』があって そのたびとても気持と良い感覚になるのに→ バラバラのエピソードもストーリーとしては繋がってくのに→それがどうにもピタリと落ちてこない。
    まあこれも 数回見れば 違ってくるのかもしれませんね。


    それから私がわかってなかったらすみません。
     「婚約者の子供を本妻が誘拐し→誘拐された本人が今度は他人の子を誘拐する」
    頭がおかしくなる以前に だれが誘拐したかわかってるのですから いくらでも子供を取り戻すことが出来たのでは?
    誘拐された子供は 誘拐されたまま大人になるってあり得ないですよね(カンタのこと)。
    あっそこは 男の想像なのでしょうか。
    いずれにしても 「男の想像です」とされちゃうと 何でもアリになっちゃいますよね。


    それから 好きな専属ファンの方は良いけど 幅広く観てきてるコリッチ常連者となると 
    どれだけ観たい作品を 『多く楽しく観るか』という予定を組むのに 毎週必死です。
    もちろん良い作品は何度でも観たいですし:そのようにさせて頂きますし:他の常連さんもそうなのですけど。
    やはり 一度でわかるようにしてほしいと思ってしまいます。


    オープニングシーン 
    とても悲しそうな表情をしていたり 全身で苦悩する姿だったり・・・。
    1人1人が 表情で語っていて 
    ストーリーを知らない段階でも とても伝わってくるものがあり そこもスゴイと思いました。 
    まさに一期一会に命をかけて演技している感じでした。


    厳しい事書かせて頂きましたが 価値のある良い作品だと思います☆
  • 満足度★★★★★

    正に時をかける!!
    色々な感情が沢山あって時をかけるように頭の中もかけまわっています!
    超会話劇でセット、音楽も素晴らしいです。そして、カーテンコールで見える素敵なカンパニー。だからあれほどの凄い作品が出来るのだと思います!
    ラスト1回も魂のこもった熱い想いを受けとります!!

  • 満足度★★★★

    見れば見るほど
    これを書いている時点で4回観劇しました。
    初回は案の定、謎を追っかける(一応、男性陣の役どころはネタバレ以前にピンときましたが)感覚で終わったような感じでした。
    それでも、終わった時には「え?もう終わっちゃったの?」という感覚でした。
    2回目の観劇であらすじを知っているが故のOPでのダンスでのそれぞれの関係性がわかり、話もより深みが増したように思いました。
    3回目、個々の細かいところを見ようと思って観ていたらクライマックスあたりで涙が出てきました。
    そして、この後の観劇が千秋楽のみになるのはもったいないと思い、追加した4回目。
    OPからもう涙が出まくっていました。
    あぁ、この人はこの時こんな感情があったから、こんな表情をしているんだなとか、いろいろなセリフで涙を流したりしていました。
    複数見たことで、自分の中でより深みを増した作品になりました。

    ただ、毎回思うのが、複数回観た方が深みを増す作品ばかりなので、複数回見ることを前提にしている人を誘うのには適しているが、そうでない友達には気安く誘えないところがなんだかもったいないので、星4つに。

    ネタバレBOX

    初見では薄い印象だった205号室の住人。
    1時間トークで確か中村さんが言った「お芝居中で話が書き加えられるから」とかいう言葉を聞いて、カチッとピースがハマった感じ。
    いやあそこの住人は観る回数を重ねれば重ねるごとに味わい深くなってくる、気がする。

    4回目観劇時、いろいろと頭の中で整理されてたからか、OPの段階から泣いた。
    OPの二重生活を送る男が笑い顔から突然表情を消して本編に入ってく姿に少しゾクリとし、その後の男の行動にイラッとした。
    二重生活を送る男の妻の、「ねぇ、私も子供が出来たんだよ」(確かこんなセリフ)にゾッとした。
    自分の子供が誘拐されてしまったが故に、他の子供を誘拐してしまった妻のところどころの狂気、そして時折正気に戻りまた狂気に戻る。
    そんな妻を見て疲れた夫が頭を抱えるシーンでホロリとした。
    あぁ、少しはまともになったんだなと思ったりもしたが、「底辺なんだな、自分って」のセリフあたりでまたおかしくなり始め、結果起こしてしまった妻の殺人。
    あぁ、やっぱり狂ってる。
    事実しか書けない小説家は事実を自分の都合のよいように、そしてあたかも事実であるかのように書く小説家だった。
    その妻のセリフ「こんなことしなくても、いい作品書けたよね。信じてた」で自然に涙が出る。
    親らしき人物から脅されている漫才師の笑っていない目を見て胸が詰まる。そして自分ではないのに相方に、相方の母親を交通事故で殺したのは自分の親だった、ごめん、と謝るが、代弁された事に怒りを表すオカマの姿に泣いた。
    偽りの家族として過ごしているルームシェアの4人が住む部屋に家族を感じたいと思う女がやってきた時に、偽りの家族と言われて怒る若い女と肩を落とすおじさんとおばさんの表情の変化に気付いたら泣いていた。
    そして漫才師の漫才を見ていた後に、若い女が「ねぇ、お母さん」って言った後のおばさんの驚いてでも少し切ない顔で「ん?んん~」と返すところでまた泣いた。
    最後の206号室は駄作にならないよい作品が書けるといいなと願ってしまう。
    観れば観るほど、自分の中で深みを増していくそんな作品に思った。
    なんだかいろいろ考えちゃうような、そんな作品。

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