満足度★★★★★
良質のプレーンオムレツのような芝居
演出家が料理人で、戯曲がレシピで、個々の役者の力量が料理の素材と喩えるならば、この芝居は良質のプレーンオムレツのような芝居です。ステーキのような豪華さやスイーツのようなとろけるおいしさは無いので、なかなか評判にはなりにくいのでしょうが、紛れもなく良質の役者人の演技力、それをうまく調理している演出家の演出力は、質の高いレシピだからこそ味わえる醍醐味です。ドキュメンタリーの内容としては、それぞれ本人が語るよりも役者が語ることで、感情的になりすぎずに整理された内容になっている。アンケートには思わず「役者と言うのは生と死の代弁者なのですね。」と格好つけたコメントを書いてしまった。こういう芝居もあるのだなあ、という驚きとともに、役者の演技力、演出家の演出力に驚かされた芝居だった。
ドキュメンタリーの力
まさにその力をまざまざと見せつけられた。それは自殺に関わる様々な人々に取材した生の言葉をそのまま伝えてくれたこと。そのため、普段ニュースで聞く「自殺」というもののぼんやりとした輪郭をこれでもかという程くっきりと浮かび上がらせて見せてくれたこと。さらに役者陣が彼らの感情を丁寧に追い説得力ある演技力で見せてくれたこと。私には演劇作品というよりほぼドキュメンタリーという印象である。新しい演劇の一ジャンルとして新鮮ではあったがフィクションである一般的な芝居と並列的に:評価することはできないので星は付けないこととする。
少々気になった点を付け加える。途中、妊婦が二人登場したがこのシーンは何を意味していたのか。死に対する生命の誕生を描いた、にしては短いシーンだった。バーベキューのシーンは肉を焼く臭いが舞台の雰囲気に合わない気がした。
満足度★★★★★
そうなのだ
自殺を否定することも肯定することもせず、事実だけを伝えてくる。
電車の運転手や樹海での後始末をする警官の姿などする側ではなく、される側の視点も拾い上げている。(舞台美術もしっくりしている。)
本作はこの芝居に携わった側と観客である我々の双方にとっても深く考えさせられる作品であり、自身でもどうあるかはわからない。
明日からどう生きていくのであろうか。
満足度★★★★★
どうしたら
ドキュメンタリー映画を観ることが好きです。
今回ドキュメンタリーシアターというものがどういうものなのかとても気になりました。
映画なら話をするのは実際にその言葉を発する人で、だけど舞台だから話をするのは役者さん。
台詞は全て膨大なインタビューで誰かが語った言葉であること。
インタビューは劇作家だけでなく、役者も一緒になって行ってたりすること。
役者さん達の演技によりただ文字で見るよりも訴えかけてくるものがあり、でも目の前でその言葉を言ってる人がその思いを抱えてる当人じゃないことによる安心感みたいなものもあったのでした。
実際にその思いを抱えてる人は別にいるのだけど
満足度★★★★★
観客も当事者
取材事実を科白にした作品なので、言葉の持つリアリティーと一次情報に纏わりついているその周りの空気のようなものまでが、的確な演出と端的な演技で舞台化された作品である。
満足度★★★★
秀作と認めぬ訳には。高自殺率のこの国で・・
1-2ワークス観劇は、同じドキュメンタリー・シアター『息をひそめて』以来2度目と思っていたら、どこかで聞いたな「ドキュメンタリー・・」と思い出したのが数年前に観た『トーク・トゥ・テロリスト』、見返せば演出=古城十忍と。1-2ワークス「絡み」の観劇はドキュメントばかり3作目になるわけであった。
最初に不評をこぼせば、『トークトゥ‥』を観た時(翻訳テキストという事もあってか)話を追えなかったと共に、占部房子のあまりに激しい演技の方向性(=役との同一化)に無理を感じた。シリア内戦がタイムリーに苛烈だった『息をひそめて』にも感じた「違和感」を考え合わせると、演じる主体、作る主体の<当事者性>の問題に突き当たる。難題ではあるが、爆撃や逃避行の<大変さ>は幾ら追求しても追いつかない限界がある。その「追いつかなさ」を語る事でしか、<大変さ>は立ち上がらせる事は出来ないのではないか‥。ある事実と我々(の日常)との関係、距離感の告白こそが社会的トピックに飛びついては離れる浮薄さに気づかせるものではないか・・そんな事を考えめぐらしたものだった。
が、今作は私達がその渦中にある事象をめぐる、インタビュー集である。誠によく書けている、と言いそうになるが「よく集めた」が正しい訳である。もっとも、取材と作品の関係は多様でフィクションかドキュメントかという二分法など意味がない。逆にドキュメントと銘打つ「意図」を探る目で舞台と向き合うよう促される。
今回は過去の「ドキュメント」とは打って変わって「近い」。役者の立つ位置が近いのか、語る中身が近いのか・・よく見えて判りやすい。素直でオーソドックスでストレートな演技をもって、客席側のインタビュアーとのダイアローグが繰り広げられるのが印象深い。隙をさらすような演技だが、多量、かつ重さのある情報がその媒体を通じて、水を飲むが如く入って来る。子を慈しむ親に似たり、自らは損をかぶる(?)芝居。観た者は次の日、まるで端から知っていた事のように知識を身につけていて、舞台の事は忘れている・・きっと茶飯事なのだ。
自殺を「個人」でなく社会的要因において理解する問題群と取材対象がきっちりと網羅されたテキスト。リストカッター、アルコール依存症者グループ、鬱の彼女を持つ青年、といった人物が「自身をコントロールする困難」を体現し、まさに「個人」(自分自身)に帰せられない「何か他の要因」が背面にしっかり象られていく。
2015年版ならではの話題として、過払い金云々のCMや学生奨学金、また現在は多重債務等の経済的要因による自殺が減ってきている事など、アップデイトされた情報が盛られていたことも、再演ながら<現在劇>の成立した理由だと思う。
満足度★★★★★
真っ直ぐに飛んでくる台詞。
インタビューに答えているという形式なので、
台詞がインタビュアーである客席に向かって真っ直ぐ飛んでくる。
「どうしてそんなこと聞くんですか?」と言われた時は
「あ・・・ごめんなさい」と思ってしまいました。
いろんなエピソードの配置具合がいいので、2時間を長く感じない構成でした。
自殺したいと思ったことはなく、でもそれは自殺する勇気もないからで。
この先なにかに思い悩んだときに、この作品を見たことを思い返すかもしれないです。
満足度★★★★
最終日観劇
自殺がテーマ。観客をインタビュアーに見立て展開する「ドキュメンタリー芝居」というものらしい。
白い樹木が林立している舞台上に棺桶のような物体、樹海のようなステージに様々な要因でそれに至ろうとする者、捜索で関わった者等、舞台上にはエピソード毎に演者も変わる。
聞いててシンドくなる話もあったが血の通った前向きな舞台だった。テーマに沿ったと思われるムービングも分かりやすく、見応えがあった。
満足度★★★★★
見事に観客をインタビュアーに仕立てていたと感じられました
「自殺」を真正面から赤裸々に見据えた、日本で初めての「ドキュメンタリー演劇」――。でありました=納得です
自殺考える人って多いんだなぁって思いました
”自殺”というキーワードで思い出すのは、故中島らもさんの明るい悩みの相談室での回答です。「人生には必ず1度は生きてて良かったと思える楽しい出来事があります。それは明日かもしれませんし、死ぬ直前かもしれません。ですから、とりあえず今日は御飯食べて寝ててください。」というものでした。 今でも、よく覚えています(^^)
自殺は肯定します、でも人に迷惑かけるような死に方は困るよなぁと思った約2時間。
ちょうど見ている”BONES”がS8#13で、自分の葬式を登場人物達が語っていて参考になりました。ちなみに自分は”ジェイムスン教授”方式が希望で、まぁ火葬する場合は「君はどこに落ちたい」方式でしょうか(^^;)?
ついで自殺方法なら、日本海溝に沈んでいって水深100m以上をリアルに見て死にたいなぁ(宇宙飛行士よりも少ないグランブルー目撃者となってみたいですね~)
満足度★★★★★
自殺を取り巻く状況が赤裸々に...
この劇団の公演はやはり素晴らしかった。この公演は「自殺」にまつわる体験談を積み重ねる...取材を通して得た、当事者でなければ語れない貴重な発言を役者の体を通して紹介していく。その生身の証言が本当に観る者の心に響く。「ドキュメンタリーシアター」という手法は、観客に向かって語りかける、それは「自殺」を考えた当事者の思いがそこにあるからだろう。
さて、この劇団の演出であろう、ストップモーションから始まり...自殺しようとする者の逡巡が現されており、ラストは...
満足度★★★★★
取材力と説得力と表現力
まず感じたのは取材力がすごいこと、自殺に関する内容なので関係者の口も重いはずなのに、である。実話なので説得力があり強烈な問題提起がある。ドキュメンタリー仕立てと観客に向かって語りかける口調により、記憶に残る個性的な劇作品に仕上げている表現力も見事だ。
満足度★★★★★
いろんな人に観て貰いたい作品です!
「ドキュメンタリー演劇」なんて初めて観たけど、良かった。
すごくテンポが良くて、引き込まれる。
あと、音楽がいい。
強弱の付け方がうまいし、あってる。
観劇前に、なぜ、こんなに評価がいいのかと思っていたけれど、納得の作品だった。
満足度★★★★★
これは有りですよね!
俗にいう「演劇」の定義からすると逸脱しているのかもしれません。
”物語”が戯曲の形式で存在するわけではないので。
しかし、役者の生の力を媒体として語られる内容は、オムニバス形式ながら、きちんと物語(ドキュメンタリー)を伝えてくれるし、何よりも彼等がその人々に魂の部分から成りきれているのが”力”の原動力になっています。
「病んでいる」のは彼等なのでしょうか?社会なのでしょうか?
この機会に真剣に想いを共にしてみては如何でしょう?
冒頭と終わりのステージングが要か不要かは意見が分かれるところだと思いますが…。
何かしら”作品”らしき表現が必要かと思われたのでしょうが…。
満足度★★★★★
初めて観るドキュメンタリーな演劇
『自殺』と言ってもその出来事は、当事者だけでなく周囲にも深い影を落としてしまう。
それを取り上げて、自殺という出来事に関わる人々を魂が乗り移ったかのように演じている役者さんたちの演技が素晴らしかったので
いろいろ考えさせれれました。
満足度★★★★★
ポジティヴ思考の作品
回りに自殺を考えるほど追いつめられている人がいたら、自分がその立場になったらどうしたらいいのか、その状況打破のきっかけにはなるかもしれないアイデアを、作品内でしっかり伝えていることが救いでした。
私に関して言うと、まだまだ生きて、面白い作品をたくさん見たいです。
満足度★★★★★
インパクト大
ワンツーワークスのドキュメンタリーシアターは「息をひそめてーシリア革命の真実ー」を観ている。だから,ある程度は予想はしたものの,予想を上回る衝撃があったなぁ。真実の物語が凄いうえに,役者さんのスキルが高いもんだから,なおさら迫力が増してくる。自分がついつい客観的に冷たく見ていた他人の「自殺」というものについて,やっぱり考えさせられてしまう。日々の暮らしの中で日が経つにつれて薄れていく思いかもしれないが,今はちょっと考えている。やっぱり凄い芝居を観たんだよなぁ。ワンツーワークスでは必ずアフターイベントが設けられている。今回は,バックステージツアー。楽屋って,やっぱ狭いんだね。これもまた観劇の収穫であった。
満足度★★★★★
自殺」のドキュメンタリーとは
どんな風な舞台になるのか楽しみにして居ました。想像以上にインパクトがあり目が離せませんでした。素晴らしかったです。役者さんの技量の高さを感じました。