満足度★★★★★
うむ
親子で鍋を囲み、母が去るシーンが美しく悲しい。あのシーンがピークであり、幕でいいのに…と思いながら観ていた。観終えて分かった。父の涙からのあのシーンが確かに感情の頂点。でも、もっとぬくもりを残したかった訳ですね。後味が格段に違う。昭和の匂いがプンプンする、ノスタルジックな作品なのに、現代という驚き。人を愛し、大切に思えばこそのすれ違いが切なくも温かい。あのゆったりとした父が、母(妻)の病状を聞かされた時の目と、他界した息子の嫁とのやり取りの涙は、心をえぐられる。特筆すべきは、俳優としても出演しているmogmosの歌う『カントリー・ロード』の素晴らしさ。沁みる。「人生は、いつもちょっとだけ間に合わない」というサビの歌詞がヤバイ! グッとくる。 終演後にロビーでCD販売していて、迷わず購入。あなたも是非。
満足度★★★
2点の引っかかりが残念
まず冒頭の男性3人の会話が「笠智衆トリオ」のようで頬が弛む。
その後の会話も言い回しや間合いが小津映画風で、そう言えば一風変わった装置はローポジションのカメラアングルの演劇的な表現とも思える。
物語も「東京物語」をベースにしておりいかにも昭和…と浸っていたが、途中であまり必然性が感じられない固有名詞が唐突に出てくることから現代の設定と知る。
これが大いなる違和感。
なんでそうやって時代を特定させてしまうのだろう?
時代設定は観客の判断に任せれば普遍性も出るだろうし、そもそも本作は(先入観もあり)現代らしからぬハナシなのになぜここ数年程度のことに限定するのか理解に苦しむ。
理解に苦しむと言えばもう1点、他の役はリアルな衣装なのに巡査役だけ制帽らしきものだけで記号化したのも不可解。
制服にしないにせよ、あのシャツはないだろう。
内容は装置の使い方なども含めて悪くないのにこの2点が引っかかる。
そんな些細なことに拘らずに全体を見れば、とおっしゃる方がいらっしゃるかもしれないが、堅牢なダムも蟻の一穴から崩れる…まではいかないにしても鰯の小骨が喉に刺さったような、ごく小さな棘が指先に刺さったような、そんな感覚。
一方、2人の甥とキャッチボールをする叔父の見せ方や相似形な長男、長女、三男などは個人的にツボを突かれる。
なお、メイン舞台となるアレの床部分のデコボコはけっこう固いそうで。昇り降りも含めて健康的だこと。(笑)
満足度★★★★
家族の普遍と時代の変遷
たまたま小津安二郎の「東京物語」をBSで観ていて、
それとは異なる舞台だからこそ描きうる精緻さもしっかり感じることができました。
映画に描かれた想いの肌触りが舞台の空気に新たな感触として広がっていて、映画が紡がれた時代と演劇に描かれる今の視座から描かれる家族の姿の異なりに、この国の家族という概念の変遷を感じたことでした
満足度★★★★
静寂
入場してまず思ったのが舞台のセットが素敵だということ。空間の使い方がいいなと。
そして本編ではも間というか静かさを大事にしているんだなと。セリフを次々と繰り出すわけではなく、行間や心情をこちらで思うことのできる間。あれはいいなぁ。そしてタイトル違わずとても「家族」について考えさせられる。やっぱり家族ってのはいいよねと終演後に間違いなく思うでしょう。
満足度★★★★
みてきた
ウィザードオブおづ(おづの魔法)ですね。
ばあさんのパジャマの柄が、私の実家で織っていた布地の柄と似ていたので泣いてしまいそうでした。
満足度★★★
時代感覚にズレが...
小津安二郎監督の映画「東京物語」の雰囲気は出ていた。特に台詞は鷹揚があまりなく、ゆっくりと話す。映画では広島県尾道市から両親が子供たちを訪ねて来るというもの。両親キャストはその口調(方言)を真似ていたようだが、第二の故郷が尾道市である自分には違和感があった。また台詞の「間」がやはり気になるほど...間延びしていた。
全体的に映画を意識したため、昭和時代が色濃くなり、平成版「東京物語」としての斬新さ、面白さを欠いたようだ。
満足度★★★
久しぶりのマコンドー
3年前に観たのを最後に敬遠していたが、新メンバーと客演陣が素敵なので興味を持ち久しぶりに観劇。家族をテーマにした涙腺をくすぐる作品。主人公・紀子を演じる趣里さんを初めて観たが、折れそうに細いのにしっかり声が出る所作の美しい素敵な役者さんでした。役者みなさんがステキ、物腰や所作が美しく、絶妙なポイントで流れる歌にもヤラレタ。原作の映画をきちんとは知らなくとも旧き佳き・・・を感じたものの映画を知っていた方が面白いのだろう、とは思った。
満足度★★★
映像と舞台の「間」の歪み
小津映画を元にしてる為か全体的に緩やかな流れ。設定は現代だけど言葉使いや接する態度がたおやか。映像で見ている分の時間的な「間」はさほど苦にならないけど、この舞台についてはその「間」があまり生かされてないような気がした。
高台の舞台セットなので前方より後方席から見たかったかな。赤いヤカンはここでも目立つ。
約2時間10分。
満足度★★★★
小津ワールド
“小津安二郎に捧ぐ”とあるように、映画「東京物語」を彷彿とさせるシーンが多かった。
笠智衆そっくりの話し方と、たっぷりの間、それに現代には不自然なほど丁寧な
「~ですわ」「~ですの」という言い回しが再現され、まさに小津ワールド。
日頃はぞんざいに扱いながら、ひとたび失えば痛切な哀しみに襲われる
家族の普遍性が、“渡鬼”を超上品にしたような日常の中に描かれる。
作者はこれを伝えるために、この作品を作ったのかと思わせるラストが切なく
とても温かな気持ちになる。
亡くなった夫を忘れることを拒否し、それでも次第に忘れていく自分を許せない紀子の姿は
3.11を前に、「死んだ人を忘れること」を鋭く問いかけてくるようだ。
MOGMOSさんの歌とギターが流れたあの場面で、一気に涙腺決壊。
ひとつ疑問なのは、どうみても会話のテンポや古風な言い回しが昭和レトロなのに
なぜ“スカイツリー”のある現代に置き換えなければならなかったのだろう、ということ。
昭和のままで、いつの時代も変わらないんだなと思わせても良かったような気がした。