さらば八月の大地 公演情報 さらば八月の大地 」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.2
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  • 満足度★★★★

    演舞場作品としては合格だと思う
    これが、もし、新国立劇場とかでの上演作品なら、緩さが大失点になるのではと思うベタさがありましたが、演舞場で、幕間35分ある芝居では、これで及第点だと思いました。

    山田洋次監督の演出舞台は、「東京物語」に次いでこれが2作目だと思うのですが、心配された程、演劇を度外視した演出ではありませんでした。

    そんな筈もないのに、勘三郎さんが、張の役を演じたのを観た記憶があるかのように、勘九郎さんがお父様を彷彿とさせる名演でした。

    檀さんは、美しく清楚で、歌声も可憐。私の心の中で、双壁スタンスの俳優、馬木也さんと壮太郎さんの共演も、個人的に大変嬉しく、その上、馬木也さんのコメディ部門担当演技が絶品でした。

    今井翼さんの台詞は時として、聴きとりにくい部分もありましたが、あの事務所の中では、大変引き出しの多い俳優さんで、第二の川崎麻世さん的な存在感がありました。

    他にも、広岡さん、有薗さん、木場さん等、様々なジャンルの役者さんの集合体の舞台にも関わらず、お互いの演技に不協和音が出ず、チームワークの良さを感じました。

    山田監督が、スタンディングの拍手に感激され、幾分涙声になっていらしたのは、新鮮な驚きでした。

    満映の理事長役の木場さんのご両親は、満州からの引揚げ者だったそうで、両親にも見せたかったとのしんみり発言に、ちょっと貰い泣きしそうになりました。

    中国人と、日本人が、お互いの映画愛で、簡単に理解し合えてしまう設定には、ややストーリーのベタさを感じなくもないのですが、娯楽舞台なのですから、これはこれで、上出来ではと感じました。

    ただ、最後のシーンは、幾ら何でもやや引っ張り過ぎ。ソ連が攻めて来るかもと、緊迫した状況の別れ方には、とても思えず、最後で、やや白けてしまった印象は拭えませんでした。

    ネタバレBOX

    山田監督の演出だけあって、照明の使い方が、とても美しく印象に残りました。

    暗転中に舞台を隠す、中幕も、満映周辺の景色が、まるで、風景画を観るかのように、見とれるばかりの美しさでした。

    有薗さん扮する、日本人映画監督が撮っている劇中劇の映画の中で、鈴木役を演じる、馬木也さんの撮影シーンがとにかく愉快。
    NLTなどの喜劇体験が功を奏し、こういうコメディ部門も担える役者さんになられて、ファンとしては、嬉しく感じました。

    関東大震災や、東京大空襲などの、真実の報道が、日本では、秘密扱いで、満州の高村理事長から、真実を聞かされ、満映社員が動揺する場面では、今の日本も、またこういう状況にすぐにもなりそうで、暗澹とした思いが生じました。

    最初、反発していた、張と池田が、お互いの映画愛を確認し、だんだんと心を通わせる部分は、もう少し、時系列で、丁寧に描いた方が、共感できたかもしれません。「姿三四郎」の映画を観た共通の話題で、二人が盛り上がる場面は好感が持てましたが、もう少し、主役二人の関係性の変化を脚本に盛り込めば、物語が濃くなったのにと、残念です。

    池田が、最後に二度もタイトルを台詞として口にするのも、やや予定調和的で、興ざめでした。
  • 満足度★★★

    わざわざ中国語にしなくても。。。
     舞台セリフでまでわざわざ中国語にしなくてもよかったのに。。。
    私は中国語が少しわかるので 役者さんに関心しながら見ましたが
    字幕小さいから見えない所も。。。
     ちょっと不親切かな。

     セットや内容は 長いだけあって見応え抜群。
     翼くんの関西弁もなかなか良い。

     映画への情熱にかける様々な人間模様が複雑で 時代の波にのまれながら生きる内容はステキでした!

     

  • 満足度★★

    せっかくの設定を活かしきれず
    脚本:鄭義信さん、演出が初めて舞台の演出を行う山田洋次さんということで、少しは期待していた。
    題材が「映画」ということもあって。

    ネタバレBOX

    しかし、なんだろ、普通のストーリーを普通に見せただけ。
    いや、そうであっても面白いものは面白いのだが、これはそうではない。
    ただストーリーを見ただけ。

    確かに、新橋演舞場という場での「お芝居」は、幕間にお弁当を食べ、笑ったり泣いたりして、「よかったよかった」でいいのだろうが、もう少し「何か」あってもいいのではないかと思う。

    もっと違う見せ方もあったのではないと思うからだ。
    終戦間際の満州・新京という設定を出してきたのだから。

    たぶん同じ作品を映画で見せたのならば、それなりに面白かったのではないかと思った。

    舞台は満州の首都・新京にある満映の撮影所。
    作・演が、この2人だし、もっと反戦色というか厭戦色が強くなるのかと思っていたら、意外とそうでもない。
    中国人からの日本人に対する想いは、満州にいたことがある、山田洋次さんの想いが反映されているのだろうか。

    つまり、中国の人たちから、「日本人でも友だちになれた(日本人にもいい人がいた)」「日本よありがとう。映画を教えてくれて(日本人は大陸で悪いことばかりしてきたわけではない)」的なメッセージがあったように受け取れてしまったのだ。
    戦時中に中国にいた山田洋次さん自身を含む、日本人たちの存在意義の確認というところか。

    しだがって、日本人に面だって楯突くのは、「麻薬中毒の老人」だけ、というのもあざとく見えてしまう。その老人だって、撮影所の人間の父なので、満映の理事長の力で助けることができそうなのだ。
    台詞では「この中にも八路や国民党の手先がいるかもしれないが」とあるのだが、それが見えてこないのだ。従順な中国人映画人だけで。「映画という絆」で結ばれているからそれがないのか。  

    何も自虐的な歴史観に立て、と言っているわけではない。
    「満州国」という歴史の歪な産物の中で、日本人が、満人と呼ばれた中国人とどうぶつかり、どうわかり合い、あるいはわかり合えなかったのか、が物語の軸になるのではないだろう。

    したがって、いつかは自分たち中国人の手で映画を撮るために、日本人の下で我慢を重ね働いている中国人助監督と、初めて満州にやってきた日本人撮影助手との関係は、とても大切な要素だと思う。
    チラシにはわざわざ「国境を越えた絆で映画に夢をかけた人々」なんて文字が躍っているのだから、現実にあった「壁」をどう乗り越えていったのか、あるいは「壁」はどうなくなっていったのか、が重要だったのではないだろうか。

    初めから「映画を作りたい人が集まっているから、つまり夢は同じだから、国境は越えているのだ」というのならば、別にこういう設定の演劇にしなくてもいいだろう。

    にもかかわらず、中国人助監督は言葉で「我慢している」「我慢しろ」と言葉で言うだけで、葛藤が見えてこないし、日本人撮影助手から見た満州の実態は、撮影所の食堂が日本人と満人が、食事内容も差別されているということに驚くぐらいだ。

    せっかく、初めて満州に来た男がどう変わるのか、あるいは中国人たちが、自分たちのアイデンティティを壊しかねない日本人監督との軋轢をどう乗り越えていったのかが、見えてこないのだ。
    中国人の脚本家は、中国人としてはとても受け入れがたい変更を「いつか自分の映画を撮りたいため」に「我慢する」で乗り越えるだけ、というのも悲しい。

    「いつか自分たちの映画を作りたい」という希望は、中国人助監督(中村勘九郎さん)と日本人撮影助手(今井翼さん)の2人は共有しているのだが、そこまでの道程が、単なる結果的な台詞だけ。ラストに、初めて合ったときの印象を言い合うのだが、そこまでに至った経緯が見えてこない。そんなにいい関係になったように見えない。
    なので、ラストの「ぼくたちの映画に乾杯!」みたいな盛り上がりの気分には正直乗れなかった。

    「暗い男」押しの笑いもたいして面白くない。

    中国人女優(檀れいさん)は、この映画で有名になりたい、と思っていて、恋人だった中国人助監督から「映画に出ないでほしい」と言われ、満映の理事長に乗り換えていくのだが、そうしたせっかくの設定もあまり活きていないように感じた。
    この設定ならば、中国人助監督との関係性から、もっと深みを見せることができたのではないだろうか。檀れいさんは、なんとなくぼんやりした印象。歌は聴かせたし、ネイティブな発音は知らないが、中国語の発音がとてもきれいだったが。

    満映の甘粕大尉であろう、理事長の高村(木場勝己さん)も、とてもいい人のように描かれている。「満人のための映画を作りたい」という理想や、映画のためだったら、自分の力を惜しまず使うという非情さも感じられて。しかし、満州国を作り上げた男に対する中国人たちの反抗心のようなものが見えてこないのだ。
    「関東大震災のときには本当に殺したのですか」みたいな台詞もさらりと出てくるのだが。

    上演時間3時間以上もあるのだから、何人かの重要な登場人物を軸に描いていくことで、いろいろな設定を活かせて見せることは可能だっただろう。

    演出は、映画的(演出家の頭の中ではカット割りやアップがされていて)だったように思う。だから空間もエピソードもぽっかりしてしまった。
    大監督にこういうことを言うのはなんだけど、もし、また舞台の演出をすることができるのならば、もっと「今」の演劇を観て勉強すべきではないだろうか。映画の頭を捨てて。
    小劇場を、とまでは言わないが、もっと刺激的で、観客の心をつかむ演劇がたくさんあるのだから。

    ストーリーは、わかりやすい。
    ラストは思い入れたっぷりで、長い。
    若い2人の俳優は、爽やか。
    映画撮影の描写はさすがだ。

    それぐらいだったな。
  • 満足度★★★

    長い
    というか、35分の休憩を入れて3時間25分になるように如何にも合わせた感じでした。

    ネタバレBOX

    満州映画協会撮影所で働く日本人と当時満人と呼ばれていた中国人の話。特に、満人の助監督、重慶出身の脚本家、大阪出身の撮影助手の友情物語。

    迫り来るソ連軍に怯え死を覚悟しながらも、根暗の照明係の男がしっかり者の記録係の女にプロポーズして結婚するなど可笑しくてほろっとさせられる感動的なシーンもありましたが、ラストの別れのシーンなどは運転手が急かせているにも拘わらず、当地を去る者と残る者が延々と別れを惜しんでいて緊迫感が感じられず、如何にも時間稼ぎをしているようでした。

    新婚さんは日本人同士なのに撮影所に残りました。なぜみんなと一緒に逃げなかったのでしょうか。その後どうなったのでしょうか。青酸カリを飲んだのでしょうか。少なくとも残ることを決めた理由ぐらい語らせてほしかったです。

    去った者たちはみんな無事に日本に着いたのでしょうか。そして、若い三人の友情はその後実を結ぶことがあったのでしょうか。

    満人のための映画を標榜していた理事長の下での話ですから決定的な対立は無く、盛り上がりに欠けました。撮影所閉鎖後の方がよほど気になりました。

    檀れいさんのマイクだけやたら大きく音を拾っていたようですが、綺麗な歌声はさすがでした。

    ところで、撮影助手が満州に来てまる二年と言っていましたが、1944年の夏に来て1945年8月に逃げ帰るのですから一年ではないか、あれっ来たのはいつだっけかと頭を抱え込んでしまいました。
  • 満足度★★★★

    満州…
    鄭義信さんの作品だから、というのもあるのだけれどここかしこにチクっとささるセリフが散りばめられてある。今をどう生きるのか!いつの時代も問われることが劇として観るものの心に溶け込んできた。ちょっと舞台転換が長く感じてしまった。生演奏が良かった。

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