人魚の夜 公演情報 人魚の夜」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.2
21-29件 / 29件中
  • 満足度★★★★

    名言
    美しく儚い設定で語られる、これは受容と再生の物語に見える。
    受け入れ難いことを受け入れるとは、わかっているのにこんなにも難しい。
    陸に上がる魚たちは、その思いの強さから荒っぽい方法を取るが
    人間は曖昧な表情で途方にくれている。
    シュールな展開もあるが安定した構成、
    藤川修二さんの熱演と荒井志郎さんの繊細なたたずまいが魅せる。

    ネタバレBOX

    5度の大きい戦争のあと、男しか生まれなくなって
    男たちは魚を嫁にした時期があった…という昔話が語られる。
    魚の嫁たちは雨が降ると陸に上がって男のもとに通った。
    逢いたい気持ちがつのると、魚たちは雨が降るように祈り、それは時に強い台風となる。
    だからこの町は雨の日が多いのだ、と言い伝えられる地方が舞台。

    2年前台風の日に行方不明になった冬子(小瀧万梨子)の靴が発見され
    夫の孝博(荒井志郎)の手により、役所で正式に死亡届の手続きがされようとしている。
    冬子の父で元教師の正彦は、その孝博と二人で暮らしていた。
    少年時代の正彦が慕った合唱部顧問の先生(渋谷はるか)や
    冬子の妹春江(大西玲子)、ある事件から家に出入りしなくなった夏雄(井上裕朗)ら
    正彦をめぐる過去と現在が行きつ戻りつしながら葬儀の日を迎え、別れの日が訪れる…。

    ある日突然理由もわからないまま誰かを喪うという喪失感を共有する人々。
    夫も、父も、兄妹も、みなそれぞれが互いを思いやって暮らしている。

    無理強いをせず、誰かの気持ちが動くのを待つタイプの進展がむしろ新鮮で
    けじめをつけてこの家を出ていこうとする孝博の静かな動きや
    その孝博を慕って世話を焼く春江のかいがいしさ、
    言葉にならない心情が静かな立ち居振る舞いと何気ない日常の会話に溢れている。
    こんなにも豊かな表現を、日頃私たちはきちんと見ているだろうかと思う。
    言語化されたことのみを取り沙汰し、その他の表現をないがしろにしていないだろうか。

    少年期と老年期(この間が全くない)を行き来する正彦役の藤川修二さんが熱演。
    この父はこの後も淡々と生きて行くのだろうが、その寂しさが胸に迫る。
    取り残された夫を演じた新井志郎さんの繊細な台詞とたたずまいが魅力的。
    理由探しと思い出の反芻に明け暮れる夫の日々が思われて切ない。
    「お父さんはこれからどうするんですか?」と尋ねながら涙がにじんでいたシーン、
    再び取り残される父親を思いやる切実な問いかけにもらい泣きしてしまった。

    溌剌とした合唱部の顧問として指導する反面
    「あの先生は魚だ」と噂される小波先生を演じた渋谷はるかさん、
    キレの良い台詞と凛とした姿勢が素晴らしく、不意に見せる妖艶な表情との
    落差がインパクト大。

    夏雄が、死んだ冬子と交わした手紙が良かった。
    率直に結婚の幸せをつづる手紙に対して、葬儀の時にやっと返事をしたためる兄。
    平易な言葉で語られていて、演じる井上裕朗さんの朗読が泣かせる。
    登場人物の言葉の中で、この2通の手紙が最も素直だ。

    少々パターン化してきた感もあるが、青☆組のこの安定感と上品さは貴重だと思う。
    お膳に並んだ湯気の上がる味噌汁や、何度となく淹れられるお茶などが
    シュールな設定の中で日常を際立たせる。
    ちょっときれいにまとまり過ぎな人間関係も、
    “わたおに”みたいな丸出し会話に辟易する私としては心地よく聴ける。

    それにしてもこの上品な作品の中で、ひときわ光る台詞を書く吉田小夏さん、
    「女は魚と同じ、釣ったり買ったり拾ったりするものだ」というこの言葉は
    女を男に入れ替えても、けっこう名言だと思う。



  • 満足度★★★★★

    繊細で自然
    世界観の造り方が、半端なく上品
    時代が行ったりきたりするのに全く違和感なく入ってくるし
    台詞のない芝居でも心の声が聴こえてくるような
    間の使い方が上手い。

    100分の上演なのに2時間半の公演を観たような感じ

    綺麗なのに残酷で、それでいて後味が悪くならない
    とにかく 衝撃を受けた。


    次の公演も行きたい!

  • 満足度★★★★


    チケットプレゼントにて鑑賞。面白い。100分。

    ネタバレBOX

    正彦(藤川修二)…小波先生に女性について習う。夏雄とは疎遠。
    夏雄(井上裕朗)…正彦の長男。村から出て先生をしてた。冬子の葬儀のため帰郷。雨宮の先生。
    孝博(荒井志郎)…冬子の夫。男やもめ。冬子から忘れてもいいよと言われた。
    冬子(小瀧万梨子)…正彦の長女。2年前の台風の際、石鹸を買いに出て海で行方不明に。最近靴が見つかり死亡となった。永遠を探してた。
    春江(大西玲子)…正彦の次女。死んだ母以外のみんなが、勝手に動いちゃう人で、ストレスを抱いていた。
    努(田村元)…春江の夫。役人。ちょっと無感動。
    雨宮(佐々木美奈)…夏雄への想いから妊娠を認めないでいた。
    伊藤(吉田圭佑)…雨宮の婚約者。村岡家の風呂掃除までする気ィつかい。
    小波先生(渋谷はるか)…正彦の先生。合唱部顧問。

    男しか生まれなくなり人魚を嫁に貰い始めるが、水がないとダメな人魚は雨の降る日に通い妻として男の元を訪れる…という伝説の残る、海沿いの村(島?)の話。

    序盤の魚の学校シーンのような幻想的な舞台かなと思ったら違ってた。死んだ冬子や定年退職した正彦含めた男女の話。輪郭をはっきりさせるワケではないけど、色濃い想いの描き方が上手い。雨宮と夏雄の握手シーンとか、冬子から孝博への、私が覚えてるから忘れていいよシーンとか、痺れた。
  • 満足度★★★★★

    堪能しました
    静かなリズムの中で、思いもよらない非日常が提示され溶け込んでいくお芝居で、どこか懐かしく、それでいて底流には逃れられない不安。堪能しました。

  • 満足度★★★★★

    期待を超える感動でした。
    今回も素晴らしい内容でした。
    アゴラに入った瞬間に静かな水音と浮かぶ水滴を眺めていると、すでにもう水中から波を眺めている気分になりました。
    いつも入った瞬間から芝居が始まっている空間も好きです。

    お芝居の内容はもうありすぎて書けません。そして観た人たちそれぞれに振り返り、先を考えてもらいたいな、と思います。
    お時間のある方は足を運んでみてください。

  • 満足度★★★★★

    琴線に触れた
    懐かしい感覚がこみあげてきた。観る人の人生によって湧き上がる感覚がかなり違うだろう。新たな境地に達したようだ。

  • 満足度★★★★★

    大人の寓話 (シリーズ化への挑戦)
    人魚は、買ったり、釣ったり、拾ったりするもんなんですね。
    少年を誘う、恐ろしいほど妖艶なシーンが一日経った今も忘れられません。

    ナマならではの趣向を凝らした、2つの時間軸を自在に遷移する緻密に組み立てられた舞台を時間を忘れて楽しみました。
    タイム・トラベラーが最年長の藤川修二ってところが憎い演出ですね。

    ネタバレBOX

    映画のようなよくわからない冒頭シーンから始まり、最後にまた出てきて、納得させてしまう物語の紡ぎ方は、芝居なのに映画を楽しんでいる気分になりました。一方で、映画と何が違うかという質問に応えるように、今回も会場を満たすお香の香り。味噌汁からの湯気。空間を共有しているリアルさを体で感じることができました。

    観るまでは、シリーズと意識していなかったのですが、人によってはアイデアの渇望と勘違いしてしまうかもしれませんね。敢えて斬新さを「継承」にもってきた勇気に拍手です。

    初めて青組を観にいった友人は、いつものセリフ、「むかしむかしの、未来の昔」 に反応していました。円陣で回りながら進行する「葬儀」。「狐の嫁入り」は「婚礼」。女が生まれなくったという設定も同じ。狐、亀、人魚。挑戦していますね。

    ところで、「狐の嫁入り」の前説てやっていたように煙はすべて無害と事前に通知しておいた方が皆さん安心したかもしれません。お茶を入れるだけで、引きこまれてしまう日常ですが、役者さんにとってはあの量は辛いかもと、芝居とは別のところで少し心配してしまいました。
  • 満足度★★★★★

    青✩組の新たな魅力が輝きを増した!
    心にしみる味わい深い舞台であった。
    出演者ひとりひとりの魅力を引き出し、深く印象付ける
    小夏氏の演出力に敬服。個性豊かな客演諸氏の輝き
    と共に、青✩組の藤川修二全身全霊を打ち込んでの
    熱演、さらに荒井志郎、大西玲子も底力で魅了した。
    いつもの青✩組に寄せる期待にも十分応え、さらに、
    客演との共演で新たな風も吹き、今後の展開が楽しみだ!

  • 満足度★★★★

    人魚が見えてこない
    昔々の未来の話ではありました。

    ネタバレBOX

    温暖化の影響で、東は乾燥してカラカラ天気、西は雨がちな気候となった未来の国において、西に住む一人の男の、粗野な漁師の父親に育てられ、コーラス指導の女先生に憧れていた少年時代と、先生になり、退職した後の、家族や教え子との関係を描いた初老時代が交錯したストーリー。

    温暖化の影響で、台風がとてつもなく大型で強烈で、甚大な被害を及ぼすという前提があるだけで、その非日常を前提とすると、あとはそれに基づいた容易に想像がつく極めて想定内のストーリーで面白みに欠け、不思議さとか、幻想的な雰囲気などは全く感じられませんでした。

    次女は台風の日に波にさらわれ行方不明となり、死亡認定されました。また、父親を尊敬し先生になった長男は、台風の到来を前に女生徒を家に送って行く道すがらのことで変な噂が立ち、父親から断絶され、東に移って先生をしています。

    長男は、雨で立ち往生して、一晩中抱いていてあげたんだろうと思います。

    題名や案内文から人魚らしき存在を予想していましたが、全く人魚は見えてきませんでした。強いて言えば、魚の女が嫁に来たという伝説の件で、魚の腹のところに二本足の生えたような姿は想像してみましたが。

    失踪宣告ではなく、死亡認定されている長女、それでも死を受け入れ難い長女の夫の気持ちは分かります。だとしても、役場の人間だったらせっかく死亡関連の届けを出しに来た夫に対して、不備なところをさっさと訂正させないのかと、心情は心情、事務は事務と思ってしまいました。

    それでも、リフレインのようなシーンの中に、役場に印鑑を忘れて来たというシーンを入れて、四十九日の法要の後に夫が正式に届けを出したということを示す辺りはさすがだなと思いました。

    この土地で脈々と続く家族の話でありながら、長女夫婦に子供がいないなど、この先続いていかないような寂寥感を感じました。

    さり気なくお茶を注ぎ足す行為に日本の家族の風景を見ました。

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