治天ノ君 公演情報 治天ノ君」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.9
1-20件 / 32件中
  • 満足度★★★★★

    驚きと感動
    素晴らしい。

    ネタバレBOX

    数年前に拝見した時とは劇風が変わっていて驚いた。
    評判がいいことも納得。紹介してくれた友人に感謝したい。
  • 満足度★★★★★

    素晴らしい
    素晴らしい内容だった。そこに描かれていたのは歴史ではなく"人間"だった。みんな自分らしく生きようとしていた。役者はそれを演じきっていた。そして静かで心地よい感動が残った。

  • 満足度★★★★★

    完全なるリアル
    劇団チョコレートケーキの公演を観るのはこれで4回目ですが、毎回「最高傑作」と思わされます。しかし、次回この作品を超えるのはかなり難しいのではないかと思わされるほど、完璧な作品を観てしまったように感じます。目の前には、明治~昭和の時代が確実に在り、現在とは異なる時代の空気が常に張り詰めていました。神格を備えた明治天皇が、人間としての感情に苦悩した大正天皇が、そして再び力強い神の国を目指そうとした昭和天皇が目の前にいました。これはもはや演劇でなく、そこに自分が在ると錯覚する完全なリアル。脚本も演出も役者さん達の演技もどれも完璧なものでしたが、中でも松本紀保さんの「気品」が群を抜いて素晴らしかったです。そして特筆したいのは、美術や衣装の美しさ。細部までこだわった時代考証、特に玉座の妖しさはいつになくフェティッシュでとても私好みでした。

    ネタバレBOX

    松本さん、別の公演で観たときの何百倍も素晴らしかったです。血筋の活きる演出でした。
  • 満足度★★★★★

    文句無し
    前回公演を「絶対観に行く」と言いながら行けなかったので今作は予定を空けて万全に鑑賞。噂にたぐわぬ良作だった。この規模の劇場であの臨場感を感じられたのは何より良かった。当日パンフレットにはフィクションと記載してあったがよく資料を読んで書かれていた所も好感で私の中で今年一番の作品となりました。

  • 満足度★★★★★

    大きく正しい
    2時間10分、全然長くありませんでした。

    ネタバレBOX

    みどりの日(昭和の日)、建国記念日。
    大正天皇の日がないことにいままでなにも気づかず過ごして来ました。
    大正について、もっと、知りたくなりました。

    この題材を取り上げて、創ってくださった、チョコレートケーキのみなさんに大きく感謝したいです。
    有難うございました!
  • 満足度★★★★★

    傑作
    フィクションだけど、ノンフィクション。
    そう感じるほど精巧に順序立てて物語が進んでいくあたり、流石です。
    大河ドラマを観ているような気分になりました。

    笑い要素なしでこの公演時間…
    普通なら耐えられないんですが、開演後すぐに話に引き込まれて、
    あっという間の2時間でした。
    傑作です。

  • 満足度★★★★★

    スゴかった。
    話もさることながら
    役者一人一人の上手さ、熱さ
    どれをとっても
    今年の最上級でした。

  • 満足度★★★★★

    なぜ今「大正天皇」か
    文句無しに今年のベスト3に入る作品。
    大正天皇の皇后を狂言回しに3代の天皇が描かれる構成、
    厳選された台詞、例によって役が憑依したかのような隙の無い演技、
    大きな世界観を持ちながら繊細な感情を丁寧に掬う演出、全てが素晴らしい。
    なぜ今「大正天皇」なのかと思っていたが、その答えがあまりに鮮やかに示されて
    自分の知識の無さに打ちのめされつつ劇場を後にした。
    登場人物一人ひとりの誠実さや無念さが押し寄せて、まだ冷静になれない。
    政治的なことより、大正天皇という人物に寄り添ってみたいという
    何か作者の温かい気持ちが作品にあふれているのを感じる。


    ネタバレBOX

    劇場に入ると踏んでいいのかどうか一瞬ためらうような
    赤いじゅうたんがひとすじ敷かれており、
    その先は舞台下手側、3段ほど上がった所にしつらえた玉座に続いている。
    ドレープを寄せた厚いカーテンが下がるだけのシンプルな舞台。
    厳かな光に玉座が浮び上る。

    冒頭ここに座るのは明治天皇(谷仲恵輔)である。
    天皇は畏怖されるべき存在で人情など不要、と説く明治天皇にとって
    純粋で優しい大正天皇は“資質が及ばない、その次の天皇までのつなぎ”と映る。
    大正天皇(西尾友樹)の進取の気性を愛し、彼を支える有栖川宮(菊池豪)、
    四竈(岡本篤)、首相の原敬(青木柳葉魚)たち。
    そして皇后節子(松本紀保)は最後まで彼を敬い、寄り添う。
    しかし時の政治家牧野(金成均)、大隈(佐瀬弘幸)らは大正天皇の能力を認めながらも、
    今この国に必要なのは先帝、明治天皇が唱えた天皇像だという考えに傾いていく。
    そして生来病弱だった大正天皇が脳病を患ったのを機に一気にその動きは加速、
    大正天皇の意思を無視して皇太子ヒロヒト(浅井伸治)が
    摂政(天皇に成り変わって公務を取り行う役職)となることを強行する。
    やがて時代は「殖産興業」「富国強兵」という
    明治のスローガンが復活したかのように転がり始める…。

    「治天ノ君」がフィクションであることを踏まえながらも
    史実の行間をよくぞここまで豊かに創造したと感嘆する。
    誰ひとりとして無駄な台詞はなく、責任ある立場とそれ相応の複雑な心理を抱えている。
    中でも大正天皇の何と魅力的な人間像だろう。
    結婚の際、皇后節子に「仲の良い夫婦とはどのようなものか」と問い
    「一緒に笑い、一緒に泣き、一緒に怒る」ものと聞いてその通りにしようと答える。
    大正天皇が明治天皇に向かって言う
    「わたくしは不詳の息子でありますが、たゆまず努力します」
    という言葉は「父と呼ぶな」と言われて育った孤独な人生そのものだ。
    奢らず人に教えを請い、素直に人の意見に耳を傾ける大正天皇は
    現在の“新しい皇室”を先取りするかのような人物として描かれている。

    一握りの閣僚が「自分が泥をかぶっても大日本帝国を導かねばならぬ」などと言うのが
    “臣民”にとっていい迷惑であったことは、歴史の結果を見れば明らかだ。
    時代の流れと閣僚たちの思惑に翻弄された47年の生涯は
    あまりに口惜しく無念の連続であり、それが病の元凶だったのではないかとさえ思う。

    その大正天皇を側で見守り続けた皇后節子が、地の文を語るというかたちが秀逸。
    節子による「~だった。~なのだ。~であった。」という書き言葉の語りが
    硬質な物語に相応しく、冷静に状況を見つめていた彼女のスタンスにも合っている。
    摂政となり、さらに喪中にも関わらず明治60年祭を催して
    急ぎ“大正時代”を消去しようとする息子ヒロヒトに節子が語りかける。
    「あなたは父上を二度葬るおつもりですか」と。
    実際の死と、歴史上の死とをめぐる、決定的な親子の決別の場面だ。
    決して激せず、常に美しいことばと発音で優雅に話すこの賢明な皇后を演じる
    松本紀保さん、単語の最後の響きにまで神経の行き届いた発音と
    生来の気品あるたたずまいが素晴らしく、舞台全体をけん引する。

    大正天皇を演じた西尾友樹さん、脳病(多分脳いっ血の後遺症とも言われる)を
    患ってのちの言語の障害など、難しい表現が痛々しいほど上手い。
    皇后との会話など初々しい場面も素晴らしく、のちの悲劇的展開が一層哀しく際立つ。
    己を知りつつさだめを受け入れてひたむきに努力する、日本一孤独な男が素晴らしい。

    後に侍従として仕えた四竈を演じた岡本篤さん、“誠実”と言う言葉が似合いすぎ。
    不自由な口で軍歌を歌う大正天皇に合わせて歌うところ、思い出しても涙がこぼれる。
    これほど万感の思いがこもったお辞儀を、久しぶりに見た気がする。

    明治天皇役の谷仲恵輔さん、これまで拝見したどの舞台よりも(と言っても4~5回だけど)
    その声がコントロールされ、役と台詞に活かされていたと思う。
    あの時代を象徴する素晴らしい明治天皇だった。
    立ち姿、お辞儀をはじめ全ての人の所作が美しく、重厚な舞台だった。

    「現人神」だの「天皇機関説」だの「象徴」だのと様々に言われて来たが
    結局はその時々よって“利用法”が変わってきたということなのだろう。
    現人神をも利用して国を動かす、げに政治家とは怖ろしく野蛮な人種だ。
    「アベノミクス」とか言ってケムに巻かれていると、いつのまにか
    「ウミノモクズ」となってしまいそうな気がする。

    くり返す歴史の辻に立って、演劇の力というものを考える時
    必ず思い出す1本になるであろう舞台だった。
    制作に関わる全ての人々に感謝と敬意を表したいと思う。
    ありがとうございました。


  • 満足度★★★★★

    期待を超えて
    毎回、この劇団さんには素晴らしいお芝居を観せていただき、今回も期待に違わぬ良い作品でした。
    大正時代という短く、あまり馴染みの無い時代がいかに形作られ、また時の天皇が歴史の闇に葬り去られていく様がよくわかります。フィクションであるとはいえ説得力があり、リアリティを感じさせます。とてもシンプルな舞台装置ですが、役者さんの演技力によって、そこが激動の明治~大正~昭和へと時間が変化するのは圧巻でした。
    客層が年齢層高めだったのですが、できれば若い人にこそ観て欲しい作品です。

    ネタバレBOX

    昨今の土下座ブームはいささか食傷気味でしたが、原敬の土下座は心打たれるものがありました。病に蝕まれながらも懸命に天皇たらんとする嘉仁の姿に、泣けてきました。

    作品の内容とは関係ないですが、E-15という席は一人すっぽり収まる場所にあり、私としては快適でした。花道の直ぐ脇でもあり、良い席をいただいて感謝です。
  • 満足度★★★★★

    苦労人の大正天皇
    大正時代の話と聞いて、自分の知識の中でぱっと思いついたイメージというのが、はいからさんが通る、竹久夢二、日本と西洋の混合文化、関東大震災、位の低レベルさ。今回の舞台の作品も、フィクションのはずなのにノンフィクションの舞台を見ているかのような錯覚。

    大正天皇と節子(さだこ)皇后の品位を見失わない生き方、現人神、時流に変化する政事、それを受け入れる運命。若き日の極々普通のやりとりが後になれば儚く見える。
    終盤の展開からあの荘厳な君が代を聞くと日本人と自覚する反面、自分はきちんと生きているのか、とも思う。大正天皇の誕生日を初めて知った。
    デリケートな題材で、思想とか信条は置いといて、近代日本人の感情が伝わる華美さは控えめだがいい舞台だった。

    ネタバレBOX

    明治、大正、昭和、と時代を経た天皇がそれぞれ登場するが、父、息子、孫、と単純に当てはめられない肉親関係。まだ20代の皇太子から退位させられる経緯が実際に起こったやり取りのようにも見え、このやり取りの後に自分達が生まれてくるのかと思うと、いつのまにか歴史の引き継ぎの中にいるんだと思いと、どこか妙に生々しく感じられた。

    紀保さん演じる節子皇后、「わたくし」という言葉がこれほど似合う女優さんも貴重だし、これまでの彼女の舞台を見た中では一番適した配役に見えた。元々、伝統文化の素養はある方とはいえ、皇后、皇太后の演じ分けが美しく優しい声色に品があった。また男性陣の所作も厳粛かつ綺麗。昔の男女は人前やいついかなる場面でもピシッとしてたもんなー。

    不満と言えば、劇場内入り口から赤絨毯が敷かれて、そこを通っての着席だったが、構造上仕方ないとはいえ、役者さんが演じる場を汚したくないので、出来れば直前までなんか保護カーペット敷いて欲しかったかな。上演台本は既に売り切れてた。残念。
  • 満足度★★★★★

    静寂…
    ラスト 暗転の後の 静寂

    あの静寂が 効きました

    大正天皇というひとを 侮蔑の色で語るひとが多い中 大声ではないけれど「じつは」という声があることは知っていました

    この作品は フィクションなんですよね ですからこの作品を答え、または結論にすることはできないけれど 私は観たあと誰かと語り合うより、観た後、何より自分自身と対峙したい。

    あの 静寂

    が 答えのような気がします

  • 満足度★★★★★

    カンペキだった。
    どこにも突っ込みようがない脚本、
    見事な演技、すべて芝居はカンペキでした。
    さすが、チョコレートケーキ。

    雨なので今日はやめようかと思ったが
    ミドルエイジさんの感想を見てしまったので
    無理して足を運んだ。

    内容とは関係ないが、席が自由席でなかったのを知らなかったので、
    ちょっと残念だった。

    チョコレートケーキは後ろで熱気に触れられないのは惜しい。

    ネタバレBOX

    いつもの熱気を押さえるように、
    松本嬢の演技がきいていた。
    それにしても、前にも小さい劇場で彼女の出ている芝居を
    見た記憶がある。

    オオバコでぞんざいに扱われる大衆演劇よりも、
    熱気を感じられる小劇場に活動の場を移しているのかも。
    と見る前には思った。しかし、これほど皇族を演じるのに
    ふさわしい人はいないかもしれないと見ながら思った。
    上品な演技と口調は、そのへんの女優では役不足だ。

    天皇が3人も出て、君が代が歌われ、しかも天皇陛下万歳!という
    台詞まであるのにどこも違和感がない。
    いかに天皇がふだん描かれている世界は右に寄って
    書かれているのか、と改めて思うと同時に、
    チョコレートケーキの素晴らしさを再認識した。

    平日の昼間とあって、演劇関係者とか有名な先生が多くいたようだ。
    やはりチョコレートケーキは今、絶対見ておかなければならない劇団だ。

  • 満足度★★★★★

    震える逸作
    歴史か塗り替えられる悲劇、家族の悲劇、個人の悲劇が織りなす、神でなければならなかった普通の優しい男、大正天皇の物語。呼吸がどうかなりそうなぐらい泣いた。重厚なシナリオの説得力と納得感。震えた。

    ネタバレBOX

    西尾友樹が恰好いい。凄い。それしかない!という演技。良かった。優しさ、実直さ、真摯さ、そして弱さ。宿命から逃げなかった男の表面にあらわれない芯の強さ、暖かさが滲み出してた。好演。

    松本紀保も素晴らしい。あの品の良さはなんだ。育ちか、育ちなのか。物語を推進する難しい役柄をきっちりこなしている。時間軸飛ばしたり空間飛ばしたりするナレーションは相当切り替えが難しいはず。

    岡本篤の実直な侍従武官四竈も良かった。原敬に突っかかるシーンから軍艦マーチまで完全に涙腺崩壊してた。声だしたらまずいと思って嗚咽堪えて泣いてたら余計涙出てきた。終演後酷い頭痛するぐらい。

    谷中恵輔の明治天皇。浅井伸治の昭和天皇。雰囲気が素晴らしかった。他のキャストもきちっとハマっていて、本当にバランス良く世界観を作ってた。玉座の演出、お召し列車演出も好き。この作品のおかげで8月31日が気になる日になった。価値観揺さぶられた逸作。
  • 満足度★★★★★

    現代の時代状況への強烈な問いかけ!多くの人に観て欲しい作品。
    現在の社会状況に、この作品の問いかける意味は大きい。

    現首相は「美しい国」「日本を取り戻す」と声高に叫んでいるが、
    そこでイメージされているのは、「強い日本」のイメージ。
    まさに戦前「明治の日本」であり、「昭和の日本」の姿だ。
    その間に挟まれた大正時代。
    それは、大正デモクラシーや大正ロマンに代表されるように、
    ほんの一時自由が花咲きかけた時代だった。

    その時代の天皇の話。

    作品から、大正天皇が、大正時代が、歴史から消され、忘れられた理由が見えてくる。
    「取り戻す」べきは、明治や昭和の「強い日本」ではなく、弱くても自由な大正の気風なのではないか。

    作品のラストでは、目の前の芝居が、今現在の社会状況とぴたりと重なって見えた。
    私は作り事の芝居を観ているのではなかった。社会の中で自分が置かれている状況そのものを自覚させられていたのだ。こんな感覚を覚えた舞台は初めてだ。

    ブレヒトのような演出(異化効果など)がなされていた訳ではないが、ブレヒトが叙事的演劇として観客に感じさせたかったものは、私がこの作品のラストで感じたものなのだろう。
    理屈では分かっていたが、初めてそれを体感した。

    *箇条書きのように書きなぐっているので、後日整える予定。

    ネタバレBOX

    私は大正天皇についての知識がないので、
    大正天皇がこの物語のような人物だったのかどうかは検証できない。
    ただ、観客の姿勢としては、大正天皇が本当に善人だったのか、大正という時代が本当に自由なだけだったのかなど、この作品で描かれているものを史実としては信じ込まないという留意は必要だろう。
    視点を変えて歴史を見れば、明治から昭和へと続く発展過程の一段階として大正を捉えることも当然できるのだから。
    それでも、そもそもこれは創作物語でり、事実がどうであったかよりも、
    この作品で劇団チョコレートケーキが問いかけようとしている内容にこそ意味がある。
    これは、過去を扱いつつも、現在を問うている作品なのだ。

    この物語の中で、天皇は、体が弱いが、自由を愛し、権威を振りかざすことのない、心優しい人物として描かれる。
    それは、強さと威厳を誇る父:明治天皇や、父と同じ資質を持つ息子:昭和天皇とは全く異なる資質のものだった。物語の中では、その天皇の資質が、施政にも影響し、大正時代の自由な気風を作り出したとなっている。

    だが、それは天皇の威厳を損なうものにもなりかねない。天皇は臣民には手の届かない神であり、人間であってはいけないのだ。

    それでも、原敬などは、その大正天皇の人間性に大いに敬意を持つ。
    牧野伸顕も初めはその人間性に惹かれたものの、第一次大戦で多くの国が欧米列強に力で征服させられていった様を見て、日本も強くならねばならない。「自由より力を」という気持ちになっていく。ちょうどその時期に、大正天皇に脳の病気が発症する。そして症状はどんどん悪化し、もはや天皇の威厳は保たれないと牧野は判断し、皇太子裕仁を摂政(実質上の統治者)にしようと考える。だが、大正天皇は承知しない。牧野は皇太子と組んで、大正天皇の脳の病気のことを新聞に発表する。それも、幼少期より脳の病気を患っていたということにし、歴史までおも書き替えてしまう。それは国民の記憶を書き替えることでもある。最終的には、皇太子が「父である大正天皇は摂政になるということを許可した」と言い張り、母皇后から「本当にそれでいいのですね」と釘をさされるも、「それでいいもなにも、陛下が許可したことだ」と言い、摂政に就任する(1921年11月25日)。

    その数年後(1926年12月25日)、大正天皇が崩御する。崩御から半年も経たない内に、本来ならば喪に服しているべきなのにも拘わらず、明治60年祭(←正式名称不明)を行う。意図的に大正天皇、大正時代の記憶を消し、明治の「強さ」を昭和で復活させようとしている。(顕著な例は、1927年11月3日に、明治天皇誕生日が明治節として祭日に復帰。その一方で、大正天皇誕生日は平日に。)明治60年祭の直前、昭和天皇裕仁の前に現れた母(元皇后)は「大正天皇を二度殺すことになるのですよ」というようなことを言う。それは、一度生命が死した者を歴史からも抹消するという意味なのか、嘘を付いて摂政になったことを一度目の殺しとし、歴史から葬ることを二度目の殺しと考えているのか、、、いずれにせよ、「歴史からも父を葬り、父や母とは全く違う道を歩むので良いのですね?」という問いかけである。

    これは、物語内で昭和天皇が問われていることであるとともに、現代日本社会が(つまり、観客が)、「優しさや自由を捨てて、強い国を本当に目指すのですね」と問われているようにも感じられる。

    ラストシーンは、昭和天皇が、大正時代を葬り、昭和時代を踏み出すシーンで終わる。
    このシーンが、私には今現在の社会と重なって見えた。単に重なったというだけではない。
    舞台を観ながら、昭和天皇の姿を観ながら、自分の置かれている社会状況について考えていた。
    「本当に、自由を捨てて、強い国になろうとするのか、この国は?」と。
    その入口に、もう私は、私たちは立たされてしまっているのだと。
    戦慄を覚えた。
    舞台作品を観て、こんな感覚に襲われたのは初めてだ。素晴らしかった。

    この時代にこそ必要な表現だ。

    他にも印象的だったシーンを書く。

    劇中、大隈重信は大正天皇との会話で、「なぜ明治維新が天皇を担ぎ出したかと言えば、欧米から日本を守るため、幕府に代わって日本を統率するには、臣民の誰もが崇める神棚が必要だったからだ。その手段として天皇を利用した。だが、時代が経て天皇を崇めるのが当然という世代の政治家が現れると、天皇を崇めることが目的となり、手段と目的が反転してしまう。つまり、国を統治するために、神棚としての天皇が必要だったのに、天皇制を崇め守ることが目的となり、そのために国民が犠牲になる。」という趣旨のことを言う。まさしくそのように歴史は進んだ。

    役者さんたちも本当に素晴らしかった。全員素晴らしいのだが、
    特に松本紀保さん(貞明皇后節子役)は、淡々とした演技で、最初はそれほど印象的ではなかったのだが、芝居の最後には、その存在感に圧倒されていた。彼女の静かな振る舞いと、穏やかでありながら、強い信念を持った問いかけが、芝居全体を支配していた。大正天皇を支えた妻であると同時に、芝居を底辺で支えていた演技であり、彼女の言葉こそが、最終的には観客への問いかけにもなっていた。驚くべきことだ。
    また、いつも思うが、チョコレートケーキの劇団員、西尾友樹さん、浅井伸治さん、岡本篤さんは特に良い。
    西尾さんはヒトラーを演じた時も思ったが、繊細な人物を演じる時の揺らぎのようなものが絶妙だ。

    基本的には絶賛なのだが、一つだけもったいないと思ったのは、皇后節子と昭和天皇が話をする時の二人が、親子に見えなかったということ。<『治天ノ君』関連年表>には「節子、昭和天皇裕仁を出産」とあるので、実の親子のようだ。だが、そう見えなかった。史実としても、二人には確執があったようだが、いくらいがみ合っていても、母と子の関係は、愛情であれ、憎悪であれ、もう少し情が見え隠れするような気がする。それが感じられなかったのはもったいなかった。

    そうは言っても、作品全体としては、本当に素晴らしかったです。
    ありがとうございました。
  • 満足度★★★★★

    DVD化熱望!
    演劇みてこんなに長時間鼻水垂れるぐらい泣いたのは初めてでした。後半一時間ずっと泣いてた気がする。こんなにも観る者の心が揺さぶられるお芝居、簡単には出逢えないと思います。DVD化はしないんでしょうか?
    むしろ、映画化してほしいです。

    劇団名から、もう少しポップなのかな?と想像してたのですがなんのその。
    いい意味で裏切られました。超本格派の社会派お芝居。

    こんなにも良い本と、それに魂を宿す良い俳優陣。
    音響、照明、衣装、全てが素敵。
    劇団全体の熱量がほんとものすごかった!
    今年一どころか、演劇観てこんなにも心が震えて泣いたのは初めてでした。

    このお芝居を観られたことに感謝。また必ず観に行きます。

  • 満足度★★★★★

    厳か
    観終わった瞬間のこの複雑な気持ちはなんだろう。

    各々の登場人物の人としての生き方が深くかつ明確にセリフと演技に織り込まれていて、それが大正という時代と天皇という厳かさを背景にしているので、いろんな意味で圧倒されたからなのだろうと思っている。

    まあ、こんな示唆深い作品をもし学生の頃、もっというと中学生ぐらいで観ていたら人生変わっていたんじゃないだろうか?それがくやしい。くやしくてたまらない。

    (おまけ)
    台本頂きましたが、500円は安すぎる気がする。ちゃんと製本されてあの枚数だと、手間賃もでないのでは・・・。

    ネタバレBOX

    まず、観終わった瞬間感じたのは「絶望」。2つの意味で絶望した。

    1つめは各登場人物がそれぞれ軸を持って素晴らしい生き方をしていることに対して。
    人物像が含みのあるセリフと、気持がこもった芝居に落ちているので、深い。
    自分と照らし合わせたときに、自分の人としての浅さに絶望した。
    出てくる登場人物のように、確固たる価値観を持っているか、と問われると答えられない。

    もう1つの絶望は、(芝居そのものの感想から外れるが)物事の捉え方。
    話とその表現が、これだけ深く、それでいてシンプルに伝えられるこのチームの才能に対する嫉妬なのかもしれない。

    とはいえ、芝居としては、ポジティブないい話。登場人物すべてから感銘を受けた。これが複雑な感情になってしまった要因。

    明治天皇の威厳も強烈。あれは一つの目指すべき姿だと思う。
    また、皇后の存在感はすごい。

    原のまっすぐさや大隈の政治家としての自信は一つの生き方を示してくれている。大隈の神棚の話は、的を射すぎているぐらいぐさっときた。

    大正天皇夫婦のありようが温かなものを感じる。
    かたや、昭和天皇の考え方も理解できる。

    深い。ほんとに深い。
    すべてはまだ頭の中で整理しきれていないのだろうが・・・。


  • 満足度★★★★★

    さすが
    ノンフィクションと断っているが、史実なのだろう。
    近代日本の2代目天皇の人間性がにじみ出ていた。
    いつも感心させられることであるが、どれだけ資料を読み込んでいるのか。
    それを脚本、演出し、役者もそれにこたえている。

    さすが、チョコレートチョコである。

  • 満足度★★★★★

    二代目
    大正天皇の人となりを知りました。昭和天皇への見方が少し変わりました。

    ネタバレBOX

    皇太子(後の昭和天皇)を大正天皇の摂政に就かせようとする動きに皇太子本人が積極的に関与していたのでしょうか、昭和天皇に対する見方が少し変わりました。本当だったとしたら、昭和天皇自らが初代回帰、即ち明治の勇ましさへ回帰しようとしていたことになり、戦争への道に進んだのも納得できます。

    丸めてポカリの大正天皇と、軍部にいいようにやられましたとばかりにマッカーサーと並んで写真を撮り、地方への行幸でニコニコしていた印象の強い昭和天皇のイメージが変わりました。

    三代目の徳川家光然り、金正恩然り、昭和天皇然り、初代回帰を目指しての頑張り、暴走は共通ということになります。そして、徳川秀光、金正日、大正天皇は治世の期間も短く、つくづく二代目だなと思います。

    天皇機関説で、誰が天皇でも一緒かなと思っていましたが、やはりその個性は否定し切れないと思いました。一緒に怒って、一緒に笑って、一緒に悲しむ、大正天皇はそんな夫婦像を目指したアットホームな人でした。大正天皇が健康で長生きしてくれていたら昭和も変わっていたかもしれません。非常に悔やまれます。

    原首相の暗殺死も摂政問題に影響したことも分かりました。歴史の妙、巡り合わせが悪かったですね。

    大正天皇の姿はほとんど記憶にありませんが、明治天皇、昭和天皇は良く特徴をつかんでいたと思います。大正天皇のお妃役の松本紀保さんも歌舞伎界というちょっと近付き難い世界の出身であり、高貴さを醸し出していました。皆さん素晴らしかったです。
  • 満足度★★★★★

    とても良かったです。
    劇団初見でした。歴史ものは社会が大の苦手だったので嫌煙しがちだったのですが、観に行って本当に良かったです。
    別冊付録として年表や語句説明の書かれたものがパンフレットと一緒に置いてあってとてもわかりやすかったです。
    出演者の方々の演技が本当に上手くてどんどんストーリーに引き込まれていきました。とくに貞明皇后節子役の松本紀保さんが素晴らしかったです。
    ストーリーも余計なものはいっさいなくシンプルでわかりやすいのに深く、気がついたら涙がでていました。とても素晴らしい舞台でした。それ以外言いようがありません。

  • 満足度★★★★★

    素晴らしかつた
    過去の時代のフィクションであるとは言え、現代と未来に対し、深い意味と価値を感じ、必要性さえ感じた。かと言って、硬い作品と言うのではなく、心を深く揺すられる名作でした。
    やはり、チョコレートケーキの作品は、見逃してはいけないと痛感。

    ネタバレBOX

    花道のような赤カーペット、玉座、何本かのカーテン、一見物足りない美術のようだが、演出、役者陣の演技力、衣装、照明と、本の魅力をより色濃く、浮かび上がらせていて、素晴らしかった。

    思わず、軍艦マーチで、号泣してしまい、、、あの曲で涙が溢れるとは思いもしなかったです。

    劇団員の浅井伸治さん、岡本篤さん、西尾友樹さんの確かな演技力が、空気をより濃厚にしてくれます。
    質の高い客演陣で、大満足でした。特に松本紀保さんが魅力的でした。
    質の高い客演陣を選べるのも、劇団の実力だと思います。

    古川さんの素晴らしい脚本を、色濃く質を高める日澤さんの演出、最強コンビです。

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