広い世界のほとりに 公演情報 広い世界のほとりに」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.8
1-4件 / 4件中
  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    「広い世界のほとりに、独り佇みもの思えば、恋も名誉も無に沈む」19世紀のロマン主義詩人ジョン・キーツ。
    この世界、実は何も無いと気付いた詩人が吐いた溜息。だが何かあるのでは?無の中にまだ何かあるのでは?足掻いた英国の劇作家サイモン・スティーヴンスの書き殴った戯曲が今作。果たして何か有ったのだろうか?それは観劇した者それぞれの胸の内。
    開演前にはモリッシーの曲が流れている。

    ホームズ家の三世代家族の人間模様。個人で独立して工務店をやっているピーター(江崎泰介氏)、妻のアリス(落合るみさん)。リタイアしたが時々手伝ってくれるピーターの父親チャーリー(金尾哲夫氏)、妻のエレン(姉崎公美さん)夫妻は近くに住んでいる。ピーターの息子、18のアレックス(笹井達規氏)、15のクリストファー(福田匡伸氏)。
    アレックスはドイツ人の彼女、サラ(賀原美空〈みく〉)が出来て家に泊まらせる。クリストファーは一目で彼女に夢中になる。アレックスとサラは二人で家を出てロンドンで暮らそうと考える。何気なく家族の生活に落ちた小さな石ころが波紋となり、遂には家族の存在の核にまで届き揺さぶっていく。

    休憩10分込みで2時間50分。
    ハッキリ言って前半は退屈。だが休憩後の後半がまるで違う作品のように面白い。これを味わわないのは実に勿体ない。落合るみさんがどんどんどんどん良い女になっていく。恋バナの時の表情なんか少女のよう。どこの国もこの年代の女性がキーパーソンなんだな。
    主人公ピーターに家の修繕の依頼をする妊婦スーザン(舞山裕子さん)もいい味。ピーターの誰にも言えない心の痛みをずっと静かに聞いてあげる。
    観客も世界もいつしかピーターのどうしようもない心象風景に同期していく。
    杉山至氏の舞台美術に照明の田中祐太氏が投げ掛ける光。影の形を練って作った造形なのだろう。伸びる影のフォルムが見事な演出となっている。登場人物達の心情を伝える光と影の演出。
    この戯曲の本国での評価は各世代の纏った痛切なリアリティーなんだと思う。それぞれの抱えたやり切れなさ。
    是非観に行って頂きたい。

    ネタバレBOX

    「私の前で汚い言葉を使わないで!」
    妻に夫が手を上げた、ただそれだけで大事件になる英国文化。日本人の感覚だと別に大したことではない不思議。逆に英国ではドラッグなんて朝ティーを飲む感覚でガキ共皆やっているのに日本だと社会生命の抹殺。金尾哲夫氏の酒がないとどうにもやり切れない悲哀。

    冒頭はバスに乗っている二人、笹井達規氏と賀原美空さん。このシーンのニュアンスがよく伝わらなかった。導入としては失敗。前半は居眠り客が多かった。弟の事故死の後、アレックスは帰郷しなかったのか?そこもよく分からない。

    ロンドンの屑ジャンキー、ポール役の赤江隼平氏、家を全焼させてしまい刑務所行き。
    ジョン役須々田浩伎(すすたひろき)氏も印象に残る。過失がないとはいえ息子を車で撥ねて殺してしまった男。母親にとってその絶対に相容れない筈の男に惹かれていく不思議。

    英国マンチェスターのストックポートが舞台。やはりスミスやOASISの曲を流したい。前半は音楽で賑やかにやるべきだったかも。個人的には曲で空気を醸成した方が良かった。

    Oasis 『I'm Outta Time』

    もし俺が落ちていくんだとして、君は拍手を送ってくれるだろうか?それとも皆の後ろに隠れてしまうのか?
    だって離れなきゃならなくなったとしても、ずっと俺の心の中に君は居続けるんだ
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    2時間30分以上の大作で途中休憩有。作者の出身であるイギリスのストックポートの街を舞台にしており、ある家族の苦悩と再生を描いている。役者陣は実に繊細で見事な演技を見せてくれる。各人の心の機微が伝わり、感情移入しやすい。ただ、舞台設定が英国でやや文化の違いもあり、また演出上汚い言葉遣いも散見されるので、少し違和感を覚える場面もある。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2024/10/03 (木) 14:00

    座席1階

    あうるすぽっとという比較的大きな舞台を使って、頻繁に行われる場面転換を舞台の各所にスポットライトを当てることでうまくカバー。さらに、出番の役者とはける役者のつながりも、例えばビールを飲むという行為を同時に行わせることでスムーズな動きとして描いた。演出はよかったのだが、この物語の筋立てにはあまり共感できなかった。特にラストシーンはとても性急に感じた。

    劇団昴の役者たちの責任ではなく、劇作のサイモン・スティーブンズの描き方なのだろう。タイトルとのつながりもよく分からない。イェルマとかラビット・ホールとか、とてもいい海外作品を選んできた過去作に比べると、ちょっと物足りない気がした。

    3世代の家族の物語。祖父と祖母、父と母はそれぞれ夫婦関係に微妙なすきま風が吹いている。10代の2人の息子のうち、兄に彼女ができて家に連れてくる。その彼女に事前に会った弟が一目ぼれして横恋慕しようとする。当然、彼女は拒否する。こうした微妙な人間関係の亀裂が、ある事件を境にとても大きくなる。どこの国にもありがちな、家族関係のほころび。父と母は不倫ではないけれど他の異性に引き込まれる場面があるのだが、この展開にもちょっと理解に苦しむ筋立てがあった。

    途中の休憩は、舞台美術に手を入れる大きな場面転換があるためだ。これがなければ、一気に行ってしまった方がスッキリする。
    演出はとてもよかった。ただ、劇作には言いたいことがいっぱい。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    サイモン・スティーヴンスという作家の作品を初めて観たが、これは少々変わった作品のように感じた。全体として一貫したストーリー展開はあるのだが、個々の部分では違和感のある会話や場面があり、不合理で理解しがたいところがある。広い舞台を活かして舞台の位置で場面を分ける演出などは良いが、あまり労働者階級の家族に見えるようにはしておらず、少々矛盾や混乱を抱えた台本をあえてそのまま舞台にのせて観客に示しているような印象。

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