イノセント・ピープル 公演情報 イノセント・ピープル」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.3
21-33件 / 33件中
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    非常に重いテーマの舞台でしたが、考えさせられる素晴らしい舞台でした。
    人が人を殺す戦争という狂った状況におかれた当事者は、被害者/加害者の感情や差別意識をどうしても拭えないことを舞台から強く感じ、戦争経験者が少なくなった現代だからこそ、客観的に強く反戦・反核の意思を継いでいけるように思えました。

    ネタバレBOX

    放射線量に関する人体実験には衝撃を受けるとともに、原子力発電の恩恵にあずかる現代に生きる私たちも無関係ではいられないとハッとさせられました。
    世界情勢的にも今再演されるべき素晴らしい舞台でした。
  • 実演鑑賞

    「CoRich 舞台芸術!」初のプロデュース公演。まず、長引くコロナ禍で活動が困難になっている舞台芸術業界に少しでも協力したいという思いから立ち上げたと聞いて、「なんて尊い!」と驚きました。小劇場系カンパニーの名作戯曲を探し出し、新しいキャスト・スタッフとともに再演するというコンセプトも、集客などの問題で再演が難しい小劇場界にも、短い上演期間に「見逃した」と悔しい思いを抱いていた観客にも、優しい企画。そんな記念すべき第一弾は、青森県を拠点に活動する劇団、渡辺源四郎商店の店主・畑澤聖悟の戯曲を、社会派なテーマを扱う骨太な作品で知られる劇団チョコレートケーキ主宰の目澤雄介が演出。出演は、山口馬木也、川島海荷、池岡亮介、川田希、森下亮に加え、オーディションから選抜された(700通もの応募だったとか)メンバーも含む、総勢16名。

    ネタバレBOX

    アメリカ、ニューメキシコ州ロスアラモスを舞台に、原子爆弾開発に従事した科学者ブライアン・ウッドら人々を描いた65年の物語です。ヒロシマ・ナガサキに落とされた2発の原子爆弾を作り上げ正当化する側の論理は、我々日本に生まれ育った人間にはない視点で、固まった思考に新しい角度が与えられた感覚がありました。短い場面をつなぎながら幅広い年齢と状況を演じる俳優陣の演劇的身体性も見どころ。米アカデミー賞の作品賞を受賞した原子爆弾開発者の伝記映画「オッペンハイマー」が話題となり、国連の事務総長も「核戦争のリスクはここ数十年間で最も高くなっている」と警鐘を鳴らす昨今、ある意味タイムリーな上演ともいえます。

  • 実演鑑賞

    副題の「〜原爆を作った男たちの65年〜」が正に的確で、1945年8月に日本へ投下された原子爆弾の開発に携わった米国人たちの半世紀以上に渡る物語。史実を織り交ぜて描かれる群像会話劇は、友人や家族の相関を丁寧に見せる人間ドラマ。かつ、日本人作家だからこそ書けたであろう踏み込んだ台詞も多く、良い緊張感を保ちつつ観劇することができました。

    ネタバレBOX

    若き青年たちが原子爆弾の開発・製造に携わった1945年と、太平洋戦争後の20世紀後半の時間を行き来しながら物語は進みます。朝鮮戦争、ベトナム戦争、イラン・イラク戦争など、常に戦争の存在を感じながら過ごす日常は、観劇者である私たちのそれと、ある意味通じるところがあると言えるでしょう。登場人物たちの人物相関は時間経過と共に変化していき、戦争や原爆が各々の人生に大きな陰を落としていきます。

    劇中盤から、登場人物たちによる原爆の肯定や人種差別が、はっきりした口調で語られます。(日本人観劇者には特に強く感じられる)強い言葉の数々は、米国の正統性の主張、そして自身たちの人生肯定を連想させ、かなり踏み込んだ表現になっています。「原爆が太平洋戦争を終結させた」という論調を、日本人劇作家がこの角度から執筆したことは、かなり珍しいし、同時に意義があると言えるでしょう。鋭い台詞の数々に感情的にならず俯瞰的に観劇できるのは、劇作、演出、そして出演者による明確な表現意思が、しっかり客席へ届くから、だと考えます。

    原爆開発時を回想するシーンでは、登場人物たちの内面や心の動きが露見します。ある者は開発を強く後悔したり、またある者は殺傷能力の生体実験に従事したり。命懸けで製造作業に参加し、目の前の使命に没頭し、様々な人間ドラマが展開され、モチーフが原爆である以上に、観客が受け取れる感情は多種多様。極悪な殺人兵器でありながら、ひとつの科学技術が発展していく過程に発生してしまう「陰」から目を逸らさない一作と言えます。

    観終わってみると、タイトルの『イノセント(無垢)・ピープル』の意味を噛み締めたくなります。内容、副題、そしてタイトル。それらを反芻しながら、作品の感想を頭の中で巡らせる公演でした。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    観劇後にタイトルの意味が響く。クライマックスの因果応報に泣けた。アメリカ側の視点、日本側の視点が容赦なく刺さった。いい舞台でした。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    なんか混ぜるな危険な感じのモノを
    原子爆弾という柱を基に集めてみせた力作という
    印象を受けました
    心に響いたなぁ・・・・

    役者さんも上手で
    引き込まれた2時間15分の作品

    出演者さまから
    ポテチがプレゼントされまして
    ありがたく(^-^)

    ネタバレBOX

    映画シャドウ・メーカーズに感じた
    現時点での米国最高頭脳の使い潰ししてでも
    原爆の完成をさせるという感は
    あまし無かったが=4mもの壁に囲まれた中での
    しくじり=即消滅=みたいな研究を主人公がしていた
    というトコは納得でした

    アメリカ人最高!
    という設定での英語ですよ~話してるのは~
    日本人は白い仮面つけて
    我々=主人公サイドの言葉などが理解できない未開人
    という感じの演出は凄いインパクトありました

    原爆でアメリカが戦争を早く終わらせたんだという
    いまだに信じられてる嘘を
    違うんだよーと作中で否定してくれなかったのは残念=旧作だから?
    日本の無条件降伏を受け入れずに
    新型爆弾を使うために終戦を引き延ばした事は
    ポツダムではちゃんと各国語で解説されてましたわ

    7月4日の独立記念日に集まる
    旧友らを時間軸を前後しながらも
    上手に見せてました

    主人公の長男がベトナム戦争で半身不随になるのは
    映画7月4日に生まれてを彷彿したましたな

    作中で一番インパクトあったのは
    致死量の被爆してるのに生き延びてる友人に
    おまえはモルモットだったんだと明かすDrのシーンでした
    ただ現実的にも
    その被爆データ実験での検証で
    対放射線被ばく量を決めているんだというのが
    なかなか響きましたわ

    第二次世界大戦で血液の輸血の交叉耐性を
    実際のユダヤ人とか捕虜で行っていたとかいうの
    同レベルのやばさでしたわね

    白い仮面を外して
    英語で主人公に語られる
    広島被ばく者の実体験とかは
    いまひとつ甘かったかなぁー
    一面死体だらけで
    逃れるにも死体を踏み越えていかないといけない状況で
    踏んだ死体に足がめり込む感触が
    いまだに忘れられないといった
    被爆者体験話の方がもっと重くて今作向きに思えたかしら

    コメディSF調の
    古い家の冷蔵庫内に小さな人々が住んでいて
    だんだんと進化していくのを
    引っ越してきた夫婦がみてるというのがあって
    ある時旦那の方が冷蔵庫内での
    原爆らしい爆発を見て吹っ飛ぶシーンがあり
    コメントに
    アメリカ人って原爆を
    ただ威力の強い爆弾だという認識しか無いんだなぁ
    というのが何とも納得で
    事実とかは自分で真剣に知ろうとしないと
    届かないんだよなぁとかオモエタデスよ

    映画オッペンハイマー作った監督さんも
    自分の息子が核軍縮に興味が無いことを知り
    製作意欲が上がったという話してたしー

    戦争とか兵器とか
    争いとかいろいろと詰め込んだ作品でした

    ラストは主人公の娘の葬式で
    自分のひ孫が
    孫のお腹にいて手を伸ばすシーンで音と暗転が同時で
    終演となる意味深な終わり方でした・・・

    原爆製造のための計算をしていた数学者さんは
    晩年教師を辞した後に
    原爆に関与した罪の重さから猟銃自殺をしてしまい
    そこにいたるまでの日々の苦悩を奥さんが述べて
    キリスト教では自殺は重篤な罪であり
    葬儀も行えないので
    世間的には事故死ということにしたというのも
    重かったなぁ・・・・

    ひたすら明るく戦争肯定派の友人は
    一人息子がイランイラク戦争で用いられた
    劣化ウラン弾での被ばくが元らしい肺炎で若くして亡くなり

    主人公宅のヘルパーさんは
    祖父が住んでた山にあったウランで原爆が作られ
    秘密裏に山に捨てられてた核廃棄物が原因で
    兄弟共に被ばくでの癌で死んだとか
    エピソードが・・・詰め込まれてたデス
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    重い内容でしたが、それ故に深い舞台でした。
    戦争、原爆、被災者、命、差別等について考えさせられ、正しいのかどうかは別として、ひとり一人に信念があり、家族や愛する人がいる事も感じました。
    役者さん達の演技も素晴らしく、ラストに近付くにつれ、客席の緊張感がすごかったです。
    何とも言えない気持ちになる心に残る舞台、観る事が出来て良かったです。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2024/03/16 (土) 14:00

     自分はこのサイトにコメントを書き込んだことはないのだが、この公演についてはコメントしておきたい。いまの日本の演劇界では、ある劇団に書き下ろされた戯曲が、他のカンパニーによって(修了公演などではなく)再演されることはあまりない。そのため、せっかくの力作もすぐに忘れられてしまう。こうした現状を改善すべく、CoRich舞台芸術!プロデュースが「名作リメイク」と銘打って、畑澤聖悟の2010年初演の戯曲を日澤雄介の演出で再演するという素晴らしい企画を立ててくれた。よく集められたと思うほど、キャストもスタッフも豪華である。この企画そのものを応援したく、CoRichの「観てきた!」に書き込みをする次第だ。
     まず日本人劇作家の作品なのに、まるで翻訳劇のように登場人物の大半がアメリカ人であるのが面白い。舞台で口にされる台詞は日本語だが、登場人物は英語を話しているという約束である。ここへ英語が達者でない日本人が入ってくるのだが、その登場の仕方が鮮烈だった。くどくどした言葉の説明なしに、日米関係が提示される。
     劇の内容は「原爆を作った男たちの65年」という副題どおりである。正直なところ、情報を盛り込みすぎで、物語の展開が性急になり、アメリカ側の登場人物の造型も単純化されすぎている印象を受ける。そのため、原爆開発への批判も類型に収まってしまう。だが、このような改善、改稿の余地が見えてきたのも再演されたからこその話だろう。また、ちょうどクリストファー・ノーランの『オッペンハイマー』が話題になっている時期に再演されたのも(評者は未見)時宜にかなっていた。
     公演パンフレットで日澤は「戯曲に真っ向から喧嘩を売ってる感じ」と書いているが、自分には敬意のある演出と見えた。主役を演じる山口馬木也が、65年に及ぶ長い物語の軸をブレずに務める。彼をはじめ、誰も観客に媚びた演技をしないのがいい。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    原爆は作ってはいけなかったのか?

    助演を競い合うコンテストのような豪華な顔ぶれ。
    是非観に行って頂きたい。

    ネタバレBOX

    主演の山口馬木也氏は庵野秀明みたいでカッコイイ。
    日本人を表情のない白いお面(カオナシ)にしたのは巧い。英語を話せる、もしくは意思表示をした事でアメリカ人からお面を外した人間として見える演出。
    水野小論(ころん)さん、堤千穂さん、安川摩吏紗(まりさ)さんは助演女優賞を争う名演。役が効いている。
    内田健介氏が前半結構台詞をトチったのでこっちも冷や冷やした。
    三原一太(いちた)氏は重要な掻き混ぜ役。
    花岡すみれさんは綺麗だった。

    何かノレなかった。何なのか?ずっと考えている。ホンも演出も悪くはない。だがそんなに良いとも思えない、まあそうなるだろうな、という脚本。時間をシャッフルする意味を余り感じない。原爆実験の成功に最高にハッピーな開発者達と、それが引き起こした結果に生涯苛まれる人々との姿、そのタイミングを合わせるべきだったかも。「皆不幸になってしまったので許して下さい。」か・・・。

    演出は恐ろしかった。被爆地を思わせる美術、汚れまくったテーブルクロス、黒い灰に侵されたグラス、瓶の中の灰砂、溶けて歪んだガラス、手榴弾。原爆を落とした奴等がその後ずっと被爆地で生活しているようなニュアンス。邪悪な目線に深い狙いを感じた。(無意識の罪悪感の表現?)時々、回想する主人公の脳裏に映るハッとした顔の少女。真白な服を着ている。この娘が“原爆”の象徴なんだろうな、と勝手に思っていた。だがラストで現れる初めて逢う孫が彼女。妊娠している。その腹に手を伸ばす主人公、暗転、ガチャリと異音。原爆を作った手と産まれてくる自分の末裔を撫でる手は同じもの、といったニュアンス。

    この演出と脚本がどうも噛み合っていないのかも知れない。前半は自分達の成し遂げた事に誇りを持って人生を謳歌する連中の明るい話にした方がいい。(多分、彼等はアメリカという国家を象徴、擬人化している)。だが時が経ち、娘は被爆者と結婚、息子はベトナム戦争で下半身不随。どんどん暗い情勢になり、911にイラク戦争、ネイティヴ・アメリカン問題、輝かしい歴史が泥塗られ否定されていく。誇り高き世界の王様だったアメリカが病み老い衰えていく。ラスト、目を背け続けてきた広島で自分達が殺そうとした連中と会う。そこにいたのは自分(アメリカ)と被爆者(日本)の子孫。その先に何があるのか?そっと手を伸ばす。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    観ていて気分のいいものではありませんでした。
    ですが観るべき演目だと思います。
    観劇レポは下記をご覧ください。
    https://ameblo.jp/minaminokaze55/entry-12844582136.html

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    これは素晴らしい舞台です。物語はもちろんですが,演出,演技,舞台装置,接客,何をとっても全く隙は無かったと思います。最初から最後まで芝居に引き込まれ,2時間15分ですが,目が離せなかったです。いま,この日々に生きていて,この芝居を観る意義を感じるところです。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2024/03/16 (土) 14:00

    畑澤聖悟さんの脚本を劇団チョコレートケーキの日澤雄介さんが演出、
    今上演する意義を改めて強く感じさせる作品。
    観客を引き込む役者陣の熱量がすごい。
    これが”戦争の現実”なのだ。

    ネタバレBOX

       ●~○~●以下ネタバレ注意●~○~●

    舞台中央、横長に広がる階段は茶色くギザギザしたがれきのような装飾。
    手前のテーブルや椅子もすべて倒れたり転がったりしている。
    殺伐としたこのブライアン・ウッドの家に、18年ぶりに昔の仲間が集まって来る。
    口々に「いい家だな!」と言う友人たちにまず強い違和感を覚える。

    ブライアンは科学者で、”プルトニウムが核融合を起こすための研究”をしていた。
    5人の男たちは、町から離れた研究所に隔離されたような生活をしつつ、
    与えられた使命を果たすべく日夜励んでいた。
    全ては「JAPを叩き潰すため」だ・・・。

    ”100%アメリカから見た原爆”が容赦なく描かれる。
    教育の賜物と言うにはあまりにも犠牲が大きいが、
    まさに「イノセント」無垢で純粋な人々ほど教育の効果は絶大だ。
    だが、5人はそれぞれに「新型爆弾の成功」と引き換えに大きなものを喪う。

    終盤のエピソードが衝撃的だった。
    5人のうち余命が長くないと知った医師の男が、仲間のひとりに告白する。
    「昔研究所で爆発事故があった時、本当はお前の被爆量はもっとずっと多かった。
    自分はお前の健康診断データをずっと観察していたのだ。
    データを集めるために多くの人間にプルトニウムを注射してきた」
    身内を危険にさらしてまで戦後長く秘密裡に継続する実験とはなんだ?
    この医師にとって、戦争は終わってなどいない。

    ストーリーは時系列ではなく、5人が研究所で過ごした1945年の出来事を
    何度も挟みつつ、グレッグが90歳になるまでを描いている。
    少し物足りない印象を受けるのは、グレッグの息子が車椅子になって帰還したり
    中佐の息子がベトナム戦争から戻ってから肺炎で死んだり、といった
    ”修羅場”を見せないせいだろうか。
    全ては済んだこととして淡々と場面から観客に知らしめる。
    月並みな後悔かもしれないが、親としてどんな風に受け止めたのか、
    その苦悩が”正義に対する疑念”の始まりではないか。
    だが役者陣は確かにその苦悩を体現しようと熱演だった。

    原爆を挟んで、二つの国が全く違うものを見ている。
    日本の「イノセント・ピープル」も観てみたいと思った。
    自分も含め、国民の多くが純粋で愚かなのはどこの国も同じだ。




  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    全出演者が役割に集中しつつ心を開いて、作品のために力を尽くしているようだった。こういう場に立ち合えたことが嬉しいし、これが芝居の醍醐味だとも思う。

    日本の俳優が日本語でセリフを言って外国人を演じる芝居は珍しくない(シェイクスピア、チェーホフなど)。でもこの作品では、原爆を作ったアメリカ人を日本人が演じ、やがて日本人役も登場する。この仕掛けによって、日本の観客はどこか遠くの物語を外側から眺めるのではなく、自ずと当事者で居続けることになる。

    劇中のアメリカ人は敵国人である日本人を「ジャップ」と呼び、あからさまな差別をする。それを日本の俳優が堂々とやりのけるさまに少々戸惑い、気まずさも感じるのだが、俳優それぞれが役人物として懸命に生きようとする誠実な演技のおかげもあって、私はロスアラモス国立研究所の青春群像劇に入り込んで行った。

    しかし、その没入感は続かない。ある趣向によって次々に水を差されるからだ。観客は家族の物語を、研究仲間たちの人生をただ受け取るだけでは居られない。演出の日澤雄介氏が脚本の畑澤聖悟氏とのパンフレットの対談で語っていた「(戯曲に)真っ向から喧嘩売ってる」とはこのことだろう。

    新型爆弾の研究者の葛藤や家族の別離など、年月を経て大きく変化していく人間模様を親しみを持って見つめ、心を寄せてともに喜び悲しんでいても、キノコ雲の下で起こっていたことが脳裏から離れない。廃墟に見える抽象美術の影響はもちろん大きい。役人物の加齢をメイクや衣裳などの外見で説明するのではなく、俳優の演技で示すことも異化効果になっていたと思う。

    初演の時に固唾をのんで見守ったクライマックスと呼べるであろう終盤の場面は、今回もまた緊張感に満ちた瞬間だった。見ず知らずの大勢の観客と、あの、じりじりとした時間をともにできたことが嬉しい。副題の65年は1945年から2010年までで、2010年の場面は今から14年前、東日本大震災が起こる前だ。遠い昔のように感じる。この芝居が投げかけた問いはより差し迫ったものになってしまった。

    自分が生まれ育った日本が世界唯一の戦争被爆国であることを、あらためて認識する。海兵隊役の内田健介さんがパンフレットに書かれていたように、日本が最初で最後であって欲しい。そう声高に言っていかなければと思う。

    追伸:車椅子で伺ったところ、行き届いた対応をして頂き、スムーズに観劇をすることができました。ありがとうございました。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    原爆を作った人たちの物語。我々と視点は違うもののそれぞれに苦悩があることが伝わる。達者な役者たちの熱が凄まじく最初から最後まで心を震わされた。
    今観なくてはいけない作品だと思った。

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