イノセント・ピープル 公演情報 CoRich舞台芸術!プロデュース「イノセント・ピープル」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    原爆は作ってはいけなかったのか?

    助演を競い合うコンテストのような豪華な顔ぶれ。
    是非観に行って頂きたい。

    ネタバレBOX

    主演の山口馬木也氏は庵野秀明みたいでカッコイイ。
    日本人を表情のない白いお面(カオナシ)にしたのは巧い。英語を話せる、もしくは意思表示をした事でアメリカ人からお面を外した人間として見える演出。
    水野小論(ころん)さん、堤千穂さん、安川摩吏紗(まりさ)さんは助演女優賞を争う名演。役が効いている。
    内田健介氏が前半結構台詞をトチったのでこっちも冷や冷やした。
    三原一太(いちた)氏は重要な掻き混ぜ役。
    花岡すみれさんは綺麗だった。

    何かノレなかった。何なのか?ずっと考えている。ホンも演出も悪くはない。だがそんなに良いとも思えない、まあそうなるだろうな、という脚本。時間をシャッフルする意味を余り感じない。原爆実験の成功に最高にハッピーな開発者達と、それが引き起こした結果に生涯苛まれる人々との姿、そのタイミングを合わせるべきだったかも。「皆不幸になってしまったので許して下さい。」か・・・。

    演出は恐ろしかった。被爆地を思わせる美術、汚れまくったテーブルクロス、黒い灰に侵されたグラス、瓶の中の灰砂、溶けて歪んだガラス、手榴弾。原爆を落とした奴等がその後ずっと被爆地で生活しているようなニュアンス。邪悪な目線に深い狙いを感じた。(無意識の罪悪感の表現?)時々、回想する主人公の脳裏に映るハッとした顔の少女。真白な服を着ている。この娘が“原爆”の象徴なんだろうな、と勝手に思っていた。だがラストで現れる初めて逢う孫が彼女。妊娠している。その腹に手を伸ばす主人公、暗転、ガチャリと異音。原爆を作った手と産まれてくる自分の末裔を撫でる手は同じもの、といったニュアンス。

    この演出と脚本がどうも噛み合っていないのかも知れない。前半は自分達の成し遂げた事に誇りを持って人生を謳歌する連中の明るい話にした方がいい。(多分、彼等はアメリカという国家を象徴、擬人化している)。だが時が経ち、娘は被爆者と結婚、息子はベトナム戦争で下半身不随。どんどん暗い情勢になり、911にイラク戦争、ネイティヴ・アメリカン問題、輝かしい歴史が泥塗られ否定されていく。誇り高き世界の王様だったアメリカが病み老い衰えていく。ラスト、目を背け続けてきた広島で自分達が殺そうとした連中と会う。そこにいたのは自分(アメリカ)と被爆者(日本)の子孫。その先に何があるのか?そっと手を伸ばす。

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    2024/03/17 09:52

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