ひとがた流し 公演情報 ひとがた流し」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.8
1-4件 / 4件中
  • 満足度★★

    上演時間3時間30分
    役者には敬意を表する。長編小説の膨大な台詞を全て覚えるのだから。それでも、そのセリフを間違えないようにという負担もあったのか、セリフを言うのが精一杯という感じで表情が硬い。役者によっては悲壮感すら漂っていた。その為、セリフが単調になってしまうのは否めない。芝居というより、朗読劇だ。

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    アナウンサーの千波、作家の牧子、元編集者で写真家の妻となった美々は、高校からの幼なじみ。牧子と美々は離婚を経験、それぞれ一人娘を持つ身だ。一方、千波は朝のニュース番組のメインキャスターに抜擢された矢先、不治の病を宣告される。それを契機に、三人それぞれの思いや願い、そして、ささやかな記憶の断片が想い起こされてゆく。・・といった物語だが、序盤の殆どは物語の説明に徹する。その説明も丁寧すぎて既に本を読んでるので飽きる。ここまで表現しなくても良かったような気がする。

    台本を作るに当たって小説の削ぎ落としから始るのだと考えてるワタクシは、小説を舞台化するというのは小説のまんまを表現するのとは違うように思えるのだ。どの部分にスポットを当てるか、その上で本を削ぎ落とし、台本を作り、舞台上に乗せてみて、また削ぎ落とす・・。つまりそういった繰り返しの作業を徹底することによって初めて舞台作品として仕上がるのだと思うのだ。

    演出家はこの作品には愛情を注いで作ったに違いない。そうでなければ3時間30分の公演にチャレンジしようとは思わないはずだ。しかし観客のことを考え、役者のことも考えるなら、観やすい環境と演じやすい環境を整備するのは当たり前のことだと思う。

    次回はこなれて練りあがった端的な作品を観てみたい。
  • 満足度★★★★

    演劇と小説のカベ
    敢えて原作の言葉を削らずにそのまま生かす表現を選択し、小説から演劇へと表現を昇華させた演出家と、長編小説の膨大な台詞を飲み込んで体現した役者達には敬意で頭が下がります。そして何より、小説をそのまま演劇にしても耐えうる原作の言葉の力強さにも驚かされました。演出・役者・原作の三位一体の魅力 で3時間を超える上演時間は決して長くありませんでした。

    小説と演劇の違いは山ほどありますが、表現形態として文字のみで読者の心を動かすための推敲の結果が原作であります。完成された一つの表現である原作を解体して、解釈を加えて、再構築する。その際に、原作の文章をそのままさらえば、当然小説と演劇の壁が生じて冗長になりかねません。しかしどうでしょう、 この観劇後に感じた独特な魅力の数々は。四季の移り変わりや、風景の描写をも台詞で伝える事はまるで詩の朗読を楽しむ風情があります。非口語的な、要所で感情や心情の吐露までも台詞で伝える言葉の数々は洗練されておりまるでシェークスピア劇を見ている趣きがあります。そして演劇には光があり、音があり、言語化出来な い機微を表わす声や動きがあります。見事に小説と演劇の壁を乗り越えて新しい世界に降り立った作品だなと感じました。

    日常の連続が人生であるという自明の事実を淡々と、しかし観客の共感をつかんで放さない、思い出で紡がれた物語でした。若手の役者が多く登場人物の年齢と見た目の乖離はありますが、思い出や記憶の風景を重ねて見せる作品だからこそ、むしろ自然に見えました。古くからの友人との間ではすんなり時間の流れが 昔に戻るように、そして死後も近しい人達の記憶に生きているように。

    過去に他の劇団公演で見た事のある役者さんもチラホラいて、新しい魅力を発見出来たのも収穫です。

    ネタバレBOX

    劇中の台詞、「のんきな人ね、生きていたくなるわ」が忘れられません。非日常的だけど、こんな台詞言ってみたいなって言葉に溢れており、幸せな観劇空間でした。
  • 満足度★★★★★

    おお、面白いなあ
    上演3時間半。休憩込みで4時間弱の長さ。しかしこの作品に限っては必要な長さ。飽きずに全然観れちゃう。
    作りはリーディングやみきかせの手際に近く一見シンプル。けれど演出がすごくよく練られている。ト書きの処理の仕方なり、言葉の身体の主体の不一致だったり、リアリズムとは違うさりげなくクールな演出は最後まで徹底していた。
    役者もよく本を読みこなし身体に落とし込んでいる。小説ならではの情景描写や丁寧な文語体を、意識的な文語調とさらりとした口語とで織り交ぜつつ発せられてゆく時の感触は他じゃなかなか味わったことがない。とむさんの織り交ぜ方は絶妙すぎてそれだけでもう楽しい。
    この重量この料金でこの観客の少なさはもったいないと思わざるをえないレベルの作品。

  • 満足度★★★★

    演劇/PLAY /遊び
    内容・構成とも良い意味でオーソドックスな小説をリアリズムな演出ではなく、実験的な要素の強い演出を施して舞台化していました。19時を少し過ぎての開演で15分の休憩を挟んで終わったのは23時前、と小劇場ではなかなか見られない長時間の作品でしたが、途中で時間を気にさせることもない密度の高い公演でした。

    40代になった幼馴染みの3人の女性を中心とした物語で、前半は多くの登場人物が現れ軽やかな雰囲気でした。休憩後の後半は長いモノローグやダイアローグが支配的な展開でシリアスなテイストが強くなりますが、過度に重くしたりドラマチックにしたりしないバランス感覚が良かったです。

    同時多発会話や複数の役者が同時に同じ台詞を言うなど現代的な手法が使われている中、取り分け目を引いたのは、他の役者の動き(おそらく半ば即興)を真似しながら台詞を言ったり、コントロールが効かない程度までの動きをするなどの即興的・遊技的な演出でした。そのことによって、演じられる役と演じている役者の間に奇妙な距離感が生じていて、面白い効果をあげていました。
    後半、役者が舞台に入るときに繰り返される動きが、あるシーンに向かって意味が明らかになっていくのが素晴らしかったです。
    真っ白な美術や照明、エレクトロニカ系の音楽を中心とした立体的な音響も良かったです。

    出演者+オペレーターの人数より客の方が少なかったみたいです。他の劇団の公演でチラシを見掛けることもほとんどありませんでした。せっかくの力作なのに勿体ないと思いました。

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