公演情報
「終わりのない」の観てきた!クチコミ一覧
満足度★★★★
おもしろかった。冒頭、ひとが宙づりになって、溺れているような場面から始まる。METの「ラインの黄金」で、やはり舞台の空中をラインの精たちが泳ぐかのような、ワイヤーを使った演出があったが、それを思い出した。意表を突く幕開きだ。その意味も後でわかる。
主人公は、夏の家族キャンプから、突然未来の宇宙船の中にとんでしまう。その場面の驚きと、ありそうだと感じさせるリアリティーの醸成はすばらしい。さらに異なる星、異なる時空へと飛びながら、この出来事の謎が次第に分かっていく。そこは説明なのだが、必要なことだし、物理学者の母親が息子に教える形なので、違和感はない。
砂の惑星にとんでしまうシーンはなんか変な感じがしたが、全体としては、とんでもない大ウソを、平然とリアルに演じる前川マジックが結晶した、見事な舞台だった。
また、気候変動への危機感も織り込んでいる。私は、設定の一つと思ったが、一緒に見た友人は、この現代の課題に真正面から取り組む姿勢に「前川氏、おそるべし」と感動していた。
満足度★★★★
『奇ッ怪』第一弾より断続的に十年、世田パブ+前川知大シリーズ第4弾の今作は和モノを離れ、イキウメの本領たる現代/近未来劇。劇団役者も5名が出演。もっとも今作はギリシャ悲劇がモチーフで、今回は和から洋に軸足を変えたと、ポストトークで聴いた。方面に疎い自分は気づかなかったが、前川氏の水を得た如く流れるセリフを心地よく聴きながら、劇はこれまでなかった領域に踏み込んだと感じた。扱う時空のスケール感(壮大な美術も貢献)とそこに人生を重ね合わせる視点はギリシャ悲劇を下敷きにしなければ生まれ出たなかったのやも。
変化のバロメータと感じた一つは、しばしば安井順平が担う、「不思議」と遭遇した時の「笑」のニュアンスが省かれ、事象そのものを重みをもって展開させていた。
とは言え「不思議」領域に人間が遭遇する瞬間の描写はイキウメの技が光る所。不思議を迎える側である「日常」は、この芝居では主人公の青年の父母と幼馴染みとで訪れたキャンプ場。ここから主人公は後半、時空を次々と遷移する。引き籠りの主人公の設定は、解決すべく提示された課題なのか、彼を用いてある世界を描こうとするのか・・。
この劇では「不思議」は主人公の青年の身にだけ起こる。周囲はコロス的に立ち回るため(一人二役もあり)、事象は実は青年の心的状況の反映とも解釈可能となるが、基点となるキャンプ場は、主人公が戻っていく現実世界の象徴としてある。
ラストには議論があるだろう。割り切りよく離婚していく父母、もはや彼の前にいない中学時代の「彼女」、それぞれ自分の道を行く二人の幼馴染み。町に一人残る主人公が一人で立たざるを得ない状況が「準備」され、彼は自分と世界に向って叫びを上げる。己自身で立つ決意の瞬間に訪れる身震い、不安と怖れ、打ち寄せる己の醜き過去が去来する。
だが孤立した者が荒れ野で上げる咆哮は、全力でそこから逃れたいと願う叫びであり呪いの声。彼の自己評価への捕われから解放するのは自分自身しかいないが、真に立とうとするのは、寄り添う人間がいること(一人でない事)を真に確信した瞬間ではないだろうか。状況が彼を自立させんとしたこの芝居のラストは、今は行方の知れない「彼女」に本当は「もう一度会いたい」と願う心の声を示すことで完結したはずではないか(終幕前「アン(元彼女の名)を探すのか」と幼馴染に訊かれて彼はその意思を否定するのだ)。彼は自分の過ちを抱えて行く、といえば聞こえは良いが、何らかの形で過去と向き合う事へと主人公を向わせないならば、この劇で展開した事象は何であったのか・・との感はいささか残る。
実演鑑賞
満足度★★★
出演陣全員、発声が聞き取りやすくて、最初のキャンプのシーンから
何かが起こりそうでワクワクした。山田裕貴は舞台向いてるかも。
意識が時空を飛び越えることで、不思議な浮遊感は体験できた。
それを舞台で表現できていた。
満足度★★
2020年から、1000年以上経った未来へ、宇宙や空間をまたいで旅をしていく
ハードSF、という紹介でいいのかな? 後述の理由でなんかちょっと無理
だった…。メッセージが前に出過ぎて、もっと足元の大事な問題を流して
しまっているように思えて、気になって仕方なかった。
満足度★★★
今更なのだろうが、前川知大氏ただものではない、との思いを強くした。とてつもない底の知れなさというのだろうか。途中、理解不能のところもあったが、気候変動問題を資本主義を切り口に論じているのには驚いた。日本の演劇では珍しいのではないだろうか。人間はどこから来てどこに向かうのか。異次元の世界を描きつつ、鋭いメッセージを放つ。
満足度★★★★
イキウメの大劇場登場である。昨年の東京芸術劇場では素材は借り物だったが今回は、抽象概念をドラマにしたいかにもイキウメらしい内容だ。これが面白い。
イキウメを見慣れている客は、また、パラレルワールドか、と思うが、今回は大劇場向けに世界も広がって、主人公の「意識」が宇宙を飛ぶファンタジーである。個人に対立するように外に設定されていた異次元の世界は、今回は人間の内面に置かれていて、今までと一味違うドラマが展開する。何よりも新鮮なところがいい。
宇宙遊泳を思わせる宙吊りの冒頭から、水中の溺死の経験と、個人の意識がドラマの軸だと売ってくれてはいるが、中段の量子論から、出口の外にある遊星のシーンになると、論理的にはついていけなくなりそうになる。だが、かつて、野田の芝居が、なんだか解らないけど泣ける、と言われたように、その解りにくいシーンもセリフや衣装につられて見ていれば十分面白い。そしてラストになると、現代の課題に立ち向かう勇気をもらったような気分になる。その証拠に、中年のおばさん(が今一番芝居の見巧者という説もあるが)も多い観客が水を打ったように見入っている。
仲村トオル、村岡希美、それに主演の山田祐貴の客演組がが、イキウメのメンバーの小劇場っぽさを大劇場へと誘導する巧みなキャスティングだ。美術、照明、衣装、効果もいい。堂々とイキウメの世界を押し出して成功している。
野田、ケラ、松尾スズキに次いで、久しぶりに、個性的な創作劇を大劇場で20回を超えて見せられるカンパニーが現れたことを喜びたい。休憩なしの二時間。