小劇場の制作机に積もる付箋。出演者からのLINE通知が止まらない夜。当日精算の現金が積み上がる受付。──それは、長らく小劇場のチケット運営の「当たり前」だった。
こりっちチケット!を実際に使っている主催者・制作・俳優・プロデューサーの皆さんから、アンケートの形で声をもらっている。「劇的に何かが変わった」という派手な話は、ほとんど出てこない。代わりに集まっているのは、地味だけれど確かな、稽古場と劇場の景色の変化を伝える小さな証言だった。本稿はその声を、編集部が主題ごとに編み直したものである。

「配席トラブル」という言葉が、消えた
もっとも繰り返し聞かれた声のひとつが、票券管理にまつわる変化だった。
座席の重複など配席トラブルがなくなった。
──主催者/101〜200席
たった一文だが、この一文の手前にあった「数年来の苦労」が透けて見える。座席の重複、入力ミス、当日になってからの調整。これらを「事前に印刷できる予約一覧表とチケット整理札」が引き受けるようになったと、別の制作担当者は語る。
予約一覧表やチケット整理札が、入力の間違いなく印刷できる。配席ミスや票券管理がスムーズに行えるようになった。関係者予約の管理もしやすくなった。
──制作/51〜100席
個人宛に複数の券種を組み合わせた申込が来たときも、「以前は備考欄に書いて受付担当者に申し送りしていた」が、今はひとりひとりの券種別に直接入力ができる(主催者/101〜200席)──そんな細やかな証言もあった。配席という、観客から見えない「裏側の精度」が静かに底上げされている。
URLを送るだけで、関係者対応が終わる
小劇場のチケット販売の半分以上は、出演者やスタッフの「知り合い」が買ってくれる割合が比較的に高い。だからこそ、制作チームの仕事の多くは、関係者からの「ねえ、◯日まだ空いてる?」に応え続ける作業に費やされてきた。
アンケートで圧倒的に多くの回答者が「良かった点」として挙げたのが、キャスト別の取扱窓口(個別URL)だった。
キャスト別の取扱窓口を事前決済でも準備できるようになり、キャストなどの直接の知り合いにも事前決済を促すことがやりやすくなった。
──プロデューサー/101〜200席
関係者管理がURLを送るだけで、空席の確認や予約まで完了する。
──主催者/101〜200席
制作と出演者のあいだに「URLという一枚のクッション」が入ることで、稽古場でのやり取りが、制作のスマホの通知音に支配されない時間を取り戻していく。実際、こんな声もあった。
一度フォームを作ってしまえば、公演まではイレギュラー対応だけで済む。来場者へのメールも送りやすい。
──制作/51〜100席
「公演まではイレギュラー対応だけで済む」──これは、小劇場の制作経験がある人なら、その重みが分かる一文だ。
「現金しか使えないんですか?」が、消えていく
事前決済とキャッシュレス対応にまつわる声は、もっとも多く集まった主題だった。事前決済による無断キャンセルの抑止、当日精算の手間の軽減、特典の余りや当日キャンセルによる空席の減少。
事前精算の導入で、特典の余りや当日キャンセルによる空席が減った。
──主催者/51〜100席
そして、今回のアンケートで個人的にもっとも印象的だった一文を引いておきたい。
当日、受付で「現金しか使えないんですか?」と言われることが、なくなります。
──制作/51〜100席
この声は、サービスへの評価そのものが手放しに高かった回答者から出たものではない。それでもこの一文が出てきたという事実が、決済方法の選択肢を広げることが「お客さまをお迎えする最初の体験」に直接効いていることを物語っている。
俳優からも、こんな声があった。
当日の案内方法にバリエーションが増えた。予約数の向上は感じなかったが、お客様の中には電子決済を喜んでいる方が多かった。
──俳優/101〜200席
「予約数の向上は感じなかった」と正直に書きながらも、それでも「お客様が喜んでいた」と書ける。──こうした手触りこそ、アンケートが拾えた本物の声だと思う。
当日、受付が走らない
当日精算がメインではなく、事前決済にすることにより当日の運営が円滑になった、という複数の声が集まった。
事前決済ができるようになったことで、当日の受付がスムーズになった。
──制作/51〜100席
受付スタッフが走り回らなくなる。お客さまの名前を予約リストから探して、現金を受け取って、お釣りを渡す──その30分の戦場が最小限に。受付スタッフが、お客さまと一言交わせる余裕が生まれる。これも、数字には出ないが、観劇体験のはじまりを静かに支える変化だ。
「演劇に特化していること」の意味
もうひとつ、見過ごせない声があった。事務所所属の俳優を抱える団体ならではの視点である。
個人情報を扱うシステムなので、こりっちチケット!という名前の認知度や信頼性を引き継げているのが、大事なポイントかなと思います。管理もわかりやすく、当日運営がバタつくのが嫌なので、事前決済と電子チケットがあるのが有難いです。事務所所属の役者さんがいるのでマネージャー権限があるのも嬉しい。各機能が演劇に特化しているので、やりたいことが一つで収まっていて使いやすい。
──制作/51〜100席
「演劇に特化している」という設計思想は、汎用的なチケットサービスには真似のできない部分かもしれない。出演者ごとの個別販路、マネージャー権限、招待・先行・指定席・自由席の柔軟な組み合わせ──これらは、小劇場の現場が長年「Excelとメモ帳とLINE」で運用してきた領域に、ようやく言語が与えられたようなものだ。
実名で語る ── JACROW・中村ノブアキ氏
ここまで匿名で紹介してきた声に加え、実名でのコメントもいただいた。社会派の作劇で知られる劇団JACROWを率いる中村ノブアキ氏からは、現場で日々「こりっちチケット!」を使う立場ならではの、具体的なポイントが二つ挙がった。
JACROW・中村ノブアキ氏 /主催者・101〜200席規模
「個人宛に複数申込があったとき、ひとりひとりの券種別に入力ができること。以前は備考欄に書いて受付担当者に申し送りしていたので。」
「クレカ決済ができること。手数料が大手チケットサイトに比べ割安なこと。」
「以前は備考欄に書いて受付担当者に申し送りしていた」──この一文に、現場と真摯に向き合い続けてきた方の手から生まれる、具体の重みがある。一人のお客さまが「自分の分は当日精算、家族の分は事前カード決済、招待が一枚」というふうに券種をまたいで申し込むケースは、現場ではごく日常的だ。それを備考欄ではなく、システム上で正規の入力として処理できる。地味だが、受付の精度を一段引き上げる変化である。
もう一点、手数料についての指摘も鋭い。クレジットカード決済は、お客さまにとっての利便性であると同時に、団体にとっては手数料というコストでもある。その「割安さ」を実感として書いてくださっていることは、運営側の重要な評価指標として受け止めたい。
一方で、声には課題も含まれていた
もちろん、すべての声がポジティブだったわけではない。アンケートには、改善要望や率直な戸惑いも含まれていた。編集部としても、ここを隠してしまえば、この記事は「広告」になってしまう。代表的なものを挙げておきたい。
- 予約一覧画面で、フィルタ設定や並べ替えの状態を保持してほしい(対応済み)
- マネージャーと出演者の双方で予約状況を参照できるようにしてほしい
- 本番に近いプレビューやデモができると、初めての利用者にとって安心(対応済み)
- 来場者の年齢・性別構成や購入日時のグラフなど、マーケティングに使えるデータ集計が見たい(購入日時のグラフのみ対応済み)
- プレイガイド取扱分のチケット割当が、以前よりわかりにくくなった
- システム使用料についての改善要望
こうした声を拾えるのも、長く使われ、実際の現場で揉まれてきたサービスだからこそだろう。次の改善サイクルに、そのまま引き渡すべき宿題である。一部はすぐに開発を行い対応済みの部分は赤字で記載。
こりっちチケット!について
こりっちチケット!は、演劇公演に特化した予約・チケット販売システムです。事前決済(クレジットカード/PayPay)、QRコードによる入場、出演者ごとの個別販路(取扱窓口)、関係者管理、指定席・自由席の柔軟な設定など、演劇の現場が求めてきた機能を一つのシステムにまとめました。学生劇団向けの無料利用枠もご用意しています。
公式サイト:https://ticket.corich.co/
取材協力:こりっちチケット利用者の皆さま(匿名)
本記事は、各回答者の許諾の範囲内で、役割と劇場規模のみを付記してコメントを掲載しています。