劇トクッ!

鈴木裕樹|伝説の「椅子から落ちる歌唱」から、命懸けの『ゲキレンジャー』爆破まで〈中編〉

所持金わずか10万円で岩手から飛び出し、友人の部屋での居候生活から始まった鈴木裕樹の俳優人生。全3回でお届けしている特別連載の第2回では、彼の名を世に知らしめた「二つの大きな転機」に迫ります。

YouTubeでのトークをkeicobaならではの視点で凝縮した本稿。伝説のデビュー作『ミュージカル・テニスの王子様』の舞台裏や、特撮現場『獣拳戦隊ゲキレンジャー』での死線を越えた爆破体験など、彼がいかにして「主役」の座を掴み取っていったのか、その熱狂の記憶を辿ります。

オーディションでの「I LOVE YOU」と、運命の繰り上げ当選

上京してすぐに手に取ったオーディション雑誌で見つけた、ワタナベエンターテインメントの『D-BOYS』オーディション。しかし、実は鈴木氏は最終選考で一度落選しています。

「落ちたな、と思っていたら事務所から『別のオーディションがあるんだけど行ってみないか』と連絡がきて。それが行ってみたら『ミュージカル・テニスの王子様』のオーディションだったんです」

オーディション会場では、ダンス未経験ながら全力で踊り、歌の審査では尾崎豊の『I LOVE YOU』を、少しふざけた誇張モノマネで歌い上げました。「普通にやっても面白くないだろうな」という、かつてのお笑い精神が幸いしたのか、審査員の目に留まり見事合格。テニミュへの合格をきっかけに、D-BOYSへの加入も「逆転合格」的に決まるという、ドラマチックな幕開けでした。

歌が下手すぎて「客が椅子から落ちる」という衝撃の現実

晴れて舞台デビューを飾ったものの、当時の鈴木氏は「演技も歌も、何も分かっていなかった」と告白します。特に歌に関しては、観客からの手厳しい反応が彼を現実へと引き戻しました。

「一生懸命歌っているんですが、あまりにも下手すぎて、客席の椅子からズリ落ちそうになっているお客さんがいたんです。それを見た時に『あ、俺ダメなんだ』とようやく気づいた。それまでは自分が下手だということにすら気づいていなかったんです」

アンケートに書かれた厳しい言葉。周囲との圧倒的な実力差。しかし、できないからといって不安な顔を見せるのはプロではない。せめて笑顔だけは絶やさず演じ切ろう、と本能的に腹を括りました。大石秀一郎という誠実なキャラクターを「笑顔」で乗り切った2年間が、彼の俳優としての基礎体力を形作ったのです。

CGじゃない!『ゲキレンジャー』第1話、死線を越えた爆破シーン

2007年、俳優としての大きな飛躍となったのが『獣拳戦隊ゲキレンジャー』の主演・漢堂ジャン役です。かつてオーディションで惜しいところまで行った戦隊シリーズへの再挑戦。見事に夢を叶えた現場は、過酷かつ刺激的な「一生の財産」となりました。

「女の子を助けて爆発から逃げるシーンがあるんですが、あれ、多くの人がCGだと思っているはずなんです。でも、実は本物の爆破なんですよ」

廃車のわずか1メートル後ろに爆薬が仕掛けられ、クレーンで吊るされた別の車が上から落下してくる。カメラが回る瞬間に全力で走り出し、ドカンという衝撃とともに宙を舞いました。「今見ても、綺麗すぎてCGに見える。あれを20代前半の本人がやっていた」。その緊張感と高揚感は、今でも彼の血肉となっています。

俳優としての階段を一気に駆け上がった鈴木氏。しかし、その先には「ストレートプレイ」という新たな壁と、演技の深淵へと導く師との出会いが待っていました。

次回予告:第3回「演劇の呼吸を体に刻む。365日芝居を続けたい、終わりのない情熱」

最終回となる第3回では、自身の演技観を根底から変えた演出家・青井陽治氏との出会いや、ベテラン俳優・内藤剛志氏から学んだ「座長」の哲学。そしてフリーとして新たな一歩を踏み出す、これからの「野望」について語ります。


※本記事は動画でお話いただいた内容の一部をピックアップし、コンパクトに集約した形になります。記事の元となった動画はこちらからご覧いただけます。
https://youtu.be/cKr8Njg8x8A

鈴木裕樹インタビュー動画 第2回

シリーズ:鈴木裕樹 インタビュー全3回

▶ 第1回|「カリスマ」との決別と、一発拳。俳優・鈴木裕樹を形作った「挫折」の夜

▶ 第2回|伝説の「椅子から落ちる歌唱」から、命懸けの『ゲキレンジャー』爆破まで この記事

▶ 第3回|演劇の呼吸を体に刻む。365日芝居を続けたい、終わりのない情熱

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