各団体の採点
とにかく、自分たちの公演(イヴェント)の全てを、全ての人に楽しんで貰うためにはどうしたらいいかということを思いつく限りやり尽くしている感がします。そして、実際に楽しいし、それを感じ取っている人たちが集まってくるからさらにその効果は倍増していると思いました。
公演としては、学童保育(昼間働いている親を持つ小学生が授業のあとに預かって貰える施設。この場合は学校内に併設)を舞台にした、ほぼドキュメンタリーに近い物語を、語りと、人形などを上手く使いながら、ちょっと夢の世界が出てきたりしながら、30を前にした独身の女性教師、学童保育でアルバイトをする大卒のフリーター、そして学童に来ている子どもたちの、それぞれの生き様を、下手をすると稚拙と言われそうなぎりぎりのところにありながらも、分かりやすい言葉で表現することで、誰もが何らかの思いを獲得できるようにするという作りは、ポリシーとも感じられました。
全てにおいて、見た人を楽しませるための仕掛け満載の作品でした。
終演後のちらし寿司も美味でした。
過去を、その美しさや醜さも含め、どのようにビビッドに記憶し、記録していけるか――。それは、芸術にかかわるものにとって、中でも「時間」を扱う演劇にかかわるものにとって、非常に重要なテーマだと思います。この作品にはそのことへのとても真摯な取り組みがあると感じました。
学童保育を舞台にした、ささやかで繊細な人間模様を再現していく舞台は、にぎやかでポップなおふざけや遊びにあふれているのですが、決してアイデアの面白さだけに終始しているわけではありません。
「ある時、ある場所、ある人びとのあいだにしか共有され得ない時間」を扱うという(普遍的テーマ)の前では、その遊びさえ、輝かしい1回性を持つのでしょうし、実際、劇場ではそれを媒介に多くの人が「繋がっている」感が演出されていました。(対面の客席の笑顔の多さにはちょっと驚きました)
人生には美しい瞬間があります。しかし、人はその時、それを自覚することはできません。
ですが、この芝居のラストのような輝きを通じて、その瞬間を思うことはできるのだと思います。
舞台は学童保育の現場。アルバイトのおにーさん(山崎皓司)は、いつも最後まで残っている小学生のよーじ(竹田靖)と仲良し。おにーさんは帰り道が一緒になる小学校のせんせー(中林舞)に淡い恋心を抱いたりも。
ジャンルはまぎれもなく演劇ですが、表現方法がとにかく盛りだくさん!基本は人形劇で、舞台上に並べられたおもちゃや雑貨類を色んなものに見立てていきます。白いスクリーンに映す映像も字幕、動画、生中継など種類が豊富。快快がこれまでの公演で使ってきた手法を総動員したようなアイデアの洪水状態で、その工夫の面白さに唸りました。
出演者は皆さん身体能力の高い方ばかりで、体を使った演技がとてもかっこよかったです。カーテンコールで4人が並んだ時は軽く驚きました。もっと沢山の人が舞台にいたような気がしていたからでしょう。
会場は原宿の中でも特におしゃれな地域にあるギャラリー風の空間でした。玄関前の植木が公演用に装飾されており、入る前からわくわく。カラフルに飾りつけられた広いロビーではドリンク(1drink制)とお手製のちらし寿司が販売されていたり、快快メンバーによる東京みやげ屋が出店していたり。上演会場への階段も足もとはランプで、天井は折り紙で飾られていました。開演前の前説(篠田千明)も観客1人ひとりに「一緒に楽しみましょう!」と言ってくれているように感じました。こんなに歓待されたら単純に嬉しいし、この場に来られたこと自体が楽しくて、貴重なものになります。
快快の公演は演劇鑑賞というより、快快の空間にひたり、ともに遊ぶ感覚ですね。舞台を観るというイベントに食べ物、飲み物、おみやげも用意されていて、心づくしのおもてなしを受けた幸せな心地です。大勢の人を1つの場所に集めるイベントって、本来こうあるべきなのかもしれませんよね。今の観劇環境に慣れきっている私の目を覚ましてくれました。※ロビーではTシャツとちらし寿司を購入しました♪