会場は地下の小さなカフェで、舞台は小さなダイニングと併設されたキッチン。実際に料理をして食べるシーンもあります。東京、大阪、福岡の3都市を2人芝居でまわるカフェ・ツアーなんて、いいアイデアだと思いました。
両親が死んでから7年間2人きりで生活してきた姉妹が、キューピー人形の姿をした“神様”に導かれて過去を回想していきます。登場人物は“美しい女(三坂恵美)と不細工な女(中村雪絵)”(←当日パンフレットではっきりと役名紹介。どちらが姉でどちらが妹かは明記なし)。片方が人間ではないかもしれないという意外な展開から、さらにそれをも覆す事実が現れます。
チラシの第一印象からきっとコメディなのだろうと思っていたら、全くそうではなく・・・これは残念でした。でも、予想外の出来事が次々に起こって、目の前の人物が誰なのかがわからなくなり、小さな食卓に漂う空気がドラスティックに変わっていく感覚は、とても演劇的で面白かったです。
女優さんも堂々とした演技を見せてくださいました。歌うシーンでは、お2人ともお腹からしっかり声が出ていてお上手でした。
チケットが飛行機の切符のデザインになっており、開演前におしぼりを手渡しでもらったり。これからフライトをする気分を素敵に演出してくださいました。
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※人物名はセリフから聞き取ったので、正確ではないかもしれません。ストーリーも誤読の可能性あり。
最初はたしか、中村さんが姉で三坂さんが妹の演技をしていたように思います。神様と自称するキューピーが出てきたところから、中村さんは“人形がしゃべる夢”を見てるのだと自分に言い聞かせます。夢の中で三坂さんは人間ではなく、“父が隠し持っていたダッチワイフ”ということになっていました。でも本当は、殺された“姉”だったんですね。
両親が事故であっけなく死んだ後、美しい姉(三坂)は仕事に出て、不細工な妹(中村)は美大に進みます。姉は四条畷アキラという作家の小説「裏庭」の熱狂的ファンなのですが、姉が四条畷氏のテープリライター(口述筆記をする人)になったと聞き、姉を刺し殺してしまいます。そして姉の名前をかたって姉に成り代わるのです。
小説「裏庭」に若貴兄弟(?)のようなシャム双生児が登場し、片方が片方に吸収されてしまうエピソードがあると妹が語っていました。妹は吸収されることを恐れて、姉に殺意を抱いた可能性もあります。嫉妬に狂っただけではないことがうかがえました。
5年前を思い出すシーンで、妹は肉をサランラップにくるんで冷蔵庫に入れていたのですが、あれは人間(姉)の肉だったんですね。だから舞台にあるテーブルの上の料理にも、もしかしたら姉の肉が入ってるのかもしれない・・・スプラッター・ホラー度が急にアップ(笑)。
妹がビールで錠剤を山ほど飲み込む演技があったように記憶しています。つまりこの物語は、妹が死ぬ前に見た夢・・・だったのかしら。
最後には、二人ばおりの体勢になり、姉が料理を手でつかんで妹にむりやり食べさせます。グロテスクで正視に耐えませんでした。迫真の演技だけで充分に汚なさも恐ろしさも伝わりますので、具象にするのはやりすぎな気がしました。小さな空間で客席とも至近距離ですしね。そういえば中村さんのメイクも“不細工”にしすぎの感あり。