Ten Commandments 公演情報 Ten Commandments」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.4
1-19件 / 19件中
  • 満足度★★★★

    これもコメント忘れ・・思い出し投稿。
    久々にミナモザ名義での瀬戸山美咲作品を鑑賞。米国で原子力開発に関わる事になった科学者の一人が残したTEN COMMANDMENTS(十戒)の文言を紹介するだけでも十分、含蓄がある内容。十戒の文は上方に映写され、舞台の方は台詞が少なく思わせぶり。
    話は変わるがサブテレニアンの「ホット・パーティクル」を今年観られず惜しかった。
    また話が飛ぶが先日のserial number「アトム・・」は、この科学者像を重ねられる人物がもし参入すれば全く成り立たなくなる戯曲であった。

  • 満足度★★

    今の日本で原子力を扱った作品を書くにあたって、書くことの葛藤それ自体を作品に反映することは作家として誠実な態度なのかもしれない。だがそれは表現者ならば、いや、言葉を発する誰もが持つべき葛藤であって、それ自体を作品の主題に据えた瞬間に、興味の中心は「書く私」になってしまう。よく言えばナイーブ、ともすればナルシスティック。それでも一応は「見られる」作品になっていた点にベテランの力量を見たが、作品としては評価できない。

  • 満足度★★★

    「原子力」という、現在日本に住む多くの人が興味を持ち、語るべき主題を持って来たことがまず素晴らしいと思いました。内容としては、“その近さと遠さ”を迷いも含めて率直に提示していて、その正直さは好感の持てるものでした。ただもう少しこの題材が作家の腹に落ち、「書ける」と思ってからあたってもいい作品だったのかな?と感じられ、クリエイション途中のものを観ている印象。俳優達は魅力的でした。

  • 満足度★★★

    世の中には容易には解決できない、立場を決することもできない命題があります。
    「原子力」を通して、人間の夢や欲望、性質に迫ろうとしたこの作品もまた、こうした命題に果敢に挑んだものだと思います。

    主人公の女性は、言葉を失った劇作家。言葉を紡ぐことで生まれてしまう欺瞞、取り返しのつかない事態への抵抗や恐怖のために口を噤む彼女は、しかし、未来へ向けた手紙を書き綴っています。作・演出の瀬戸山美咲さんの表現者としての葛藤がそのままに投影されたと思われるこの女性のありようは、あまりにも真摯で、見方をかえれば、ナイーブにすぎるともいえるでしょう。加えて、「みえない雲」やレオ・シラード「十戒」を引用した手紙の朗読を軸に展開する舞台は、ともすれば「意見表明」的で単調にもなりがちです。

    にもかかわらず、印象的なのは、登場人物らが発する「声」はとてもよく聞こえてきたということです。それは選ばれ、書かれた言葉の精度の高さでもあったでしょうし、この世界に向き合った俳優のあり方にもよるものでしょう。また、宇宙を感じさせる青い床面、舞台上から発せられる音響など、空間設計も魅力的で、ここで語られていることをより広い視点でとらえる助けになりました。

    発語、表現は、いつでも慎重に行われるべきですが、それだけでは表現は成り立たないとも強く感じます。今作に表れた繊細さと、それを作品にした潔さ、図太さ、この両極を揺れることなしに、創造はないのだな……とあらためて感じました。

  • 満足度★★★★

     青く光る鏡面の床に白いイスとテーブル。上手奥には音響卓とオペレーターがいて、白い衣装の男女が登場する抽象空間です。作・演出の瀬戸山美咲さんご本人であろう女性劇作家(占部房子)とその夫(浅倉洋介)の家、または彼女の脳内あるいは宇宙空間であるようにも受け取れました。

     原子力とそれを研究する人、作った人、使った人について調べ、思考の海に深く潜るうちに、瀬戸山さんは言葉を扱う劇作家であるご自身の責任を問うことになったのだと思います。その苦闘の過程がさらけ出されました。瀬戸山さんがたどり着いた絶望的な境地と、そこから這い上がる姿を観て涙が絞り出され、終演後はしばらく席を立てませんでした。瀬戸山さんの勇気に感銘を受けました。ありがとうございました。

     私は過去にミナモザ『ホットパーティクル』(2011年9月)を拝見したことがあり、今回も冒頭あたりから“セルフ・ドキュメンタリー”であることがわかったので、その心構えで観ることができました。手紙を読み続ける時間が長く、朗読劇のように見えるのは改善の余地ありではないでしょうか。この上演を土台に新しい“物語”を立ち上げる機会を見計らってもらえればと期待します。

     主人公を演じた占部房子さんは瀬戸山さんの苦悩を自身のこととして受けとめ、心を尽くして全身で演じてくださっていたように思います。浅倉洋介さんは包容力のある物静かな夫役で、柔和ながらずっしりとした存在感に説得力がありました。私が知らなかった浅倉さんの一面を発見できました。

    ネタバレBOX

     科学者レオ・シラードが1940年にまとめた「十戒(Ten Commandments)」を紹介し、アインシュタインへの手紙、生まれてくるかもしれない子供への手紙、まだ出会っていない未来の妻への手紙(本折最強さとしさんが読む)などが読まれました。俳優は手に紙を持っており、朗読の形式です。個人的には、演劇作品の上演として完成度が高いとは思えませんでした。

     「原爆を落とした人が悪いのか、作った人が悪いのか、いや、悪いのは言葉だ」という結論に目を覚まさせられた心地でした。爆弾の化学式は記号(=言葉)でしょうし、研究も投下命令も人間の言葉で行われます。人間が獲得した言葉こそが、人間がまき散らす害悪、犯した罪の発端であるという認識を、常に持っていなければと思いました。

     最後には、何年間も言葉を発していなかった女性劇作家が、とうとう夫に話しかけます。生まれたのはたわいない日常会話で、岸田國士戯曲のようにとてつもない優しさを湛えたものでした。こういう言葉で他者と交わっていきたいものですね。
     
     前説で山森大輔さんが左手に付けていた腕時計がおしゃれでした。
  • 満足度★★★★

    鑑賞日2018/03/29 (木) 14:00

    価格3,500円

    ストーリーを語るのではなく、思想や体験、調べた結果などを伝える演劇、その意味でとり・みきのエッセイマンガ「愛のさかあがり」などにも通ずるのではないか?
    そしてこの少し前に初めて観た「ハムレットマシーン(OM-2版)」にも近く(あれより簡単)タイミングが良かったな、と。
    また、オープニングと対をなす……と言うか同じ状況で1か所だけ異なる(=好転している)ラストで観客を安心させて無事着地させるのもイイ。
    なお、「ハムレットマシーン」を連想したお客さんは他にも複数いらしたと伺い「やっぱり!」(笑)
    どちらも「かつて〇〇であった××」なんて人物が出てくるしね。

  • 満足度★★★

    正面から原子力に取り組んでテーマ性が強いが、それがアートにうまく転化できていた気がする。俳優さんたちが上手だと思った。

  • 満足度★★★

    人類の次の地球の支配者にも引き継がなければならない放射性廃棄物、考えさせられます。

    ネタバレBOX

    原発事故がきっかけでしゃべれなくなった女性が、原子爆弾を開発した科学者のことを調べ熟考するうちに、日常を生きるというごく普通のことの重要性を再認識してしゃべれるようになった話。

    なんでしゃべれなくなったのかも不思議ですが、良く分からないけどしゃべれるようになりました。

    ソフトバンクの白戸家はシラード博士の名前由来で、孫正義さんが太陽光発電を推進するのは、原爆を開発したものの使用には反対したシラード博士の影響によるものではないかとふと考えながら観ていました。

    とは言っても、みんな白い衣装というのはありがちでうんざりしました。
  • 満足度★★★★

    日本語字幕のある日に観劇。
    聞こえない私にとっては字幕とともに観劇できるものが非常に少ないので、貴重な観劇チャンスでもある。
    決してわかりやすいとは言えないストーリーだが、だからこそ自分に投影して考えるような作品だと思った。

  • 満足度★★★

    ちょっと頭が疲れた。

  • 満足度★★★★

    何も横文字でタイトルにすることはないようにも思えるある科学者の「十戒」を素材にしている。その科学者はアインシュタインと共に原爆(原子力の利用開発)の開発推進をしたレオ・シラードと言うユダヤ人で、その動機はナチスドイツに原爆の先行を許さないため、と言う事で、実験成功後はナチスの崩壊もあって日本への原爆投下には反対した。野に下った後は、ミステリやSFも書いたと言うが、寡聞にして知らなかった。
    しかし、ここでは奇人風につたえられるジラード本人の活動よりも、彼が書いたという「十戒」の中に、現在の原子力と向き合う(大きく言えば)人類の課題があると、劇作家は読んだのであろう。舞台は白でまとめられた一室、占部房子の劇作家が、原発事故以後言葉を失って夫と生活している。夫との言葉のない生活や、つきあいのある技術系学生たち、アインシュタインなどの先人に向かって書く手紙、などがコラージュされていて、「十戒」が検証される。もともとの「十戒」が、矛盾に満ちていて、そこが現在の巨大社会に向かう人間の現在と交差している。原子力に限らず、人間が発明発見をしておきながら制御できなくなっているものが多くなっている今、このテーマは興味深い。かつてのように人間が制御にあたって使える単純な大衆的な倫理(乱暴に例を挙げればキリスト教のような)を失っている中で、劇作家は言葉を失ってしまうのである。この状況に向かうにはどうすればいいのか。もちろんそういう課題に簡単に答えが見つかるはずもない。

    ネタバレBOX

    人間の倫理は言葉で表現されるのだから、まずは発語回復と言う事で、ドラマは終わるのだが、その回復の先は見えてこない。占部房子は小劇場では欠かせないなかなかいい女優で、ここでもこの作品の柱の役割を勤めている。一緒に見た知人は演出演技を含めて、間の取り方がよかったと評していた。
    非常にアップツーデートなテーマに挑んでいる社会派ドラマでこういう試みは評価できる。まもなく、新国立でこちらは著名な「1984」が演じられる由で、人間の未来社会への展望がここでも検証されることになるだろう。
  • 満足度★★★★

    朗読劇もしくは詩劇といった抒情性が感じられる。舞台セットや演出等はそれを意識して制作しているようだ。そこには社会と個人のあり方と関わりに鋭く問題を投げかけているようだ。その意味で、内容はもちろん観せ方は、脳内への詩劇ならぬ刺激になった。
    (上演時間1時間30分)

    ネタバレBOX

    セットは、水中を思わせるような水色を基調(水底の雰囲気)にしたガラスの上に家庭用の白いテーブル、対面にこちらも白い椅子といったシンプルな配置である。周りは基本暗幕でそこに吊り細工のようなもの。上手側に舞台技術のセット・操作者が剥き出しで居る。また客席側に小テーブルがありコーヒーメーカーとカップが置かれている。全体的に薄暗いが、対照的に役者(操作者の上着も)の衣装は白く、場内(舞台)にコントラストを与える。

    物語は、劇作家の心中を吐露するような対話の形式で進めていく。夫婦の会話では大震災後に喋れなくなった妻(劇作家であろうか?)が、原子力(原爆)は人を殺すが、劇作家としての言葉も物理的か精神的な違いはあるが人を殺すことがあると…。

    心情は手紙という媒体を利用して展開する。ちなみに現代的に考えればSNS等の利用を思うが、手紙という紙(文字→言葉)媒体が作家らしい。その内容は78年前に遡り、10の自戒または訓を読み聞かせる。登場するのはアインシュタインやレオ・シラードという科(物理)学者の名前である。そして広島・長崎への原爆投下におけるアメリカ側での議論経過が披瀝されていく。熱くなりそうな議論、それを敢えて抑制するよう淡々と進めることによって本質が浮き彫りになる。原爆投下の是非を日本の学生の論議仕立てにしているようだが、アメリカと日本、自国側の立場で物事を考えた時に真実等の見方が異なる。例えば日本の原爆投下に対する思いは理解しやすいが、戦争という状況下にあってアメリカ側の早く戦争を終結させたいという考えもよく聞くところ。「科学には国境はないが、科学者 には祖国がある」といったのは、生化学者であり細菌学者のパスツールだったか。物事を多角・多様性を持って見る大切さが十分伝わる。ラスト、妻が喋れるようになり劇作家に復活(言葉)出来た様な…。これが過去(現在の原発問題「みえない雲」に象徴されるのも含め)を振り返り未来を見つめるという暗示のように思える。

    全体の雰囲気はモノトーン、そしてゆったりとしたテンポである。音楽もメロディだけを奏でるといった落ち着いたものと不穏なものをシーンに応じて流す。それが抒情性を感じさせる効果でもあるようだ。

    次回公演を楽しみにしております。
  • 満足度★★★

    鑑賞日2018/03/22 (木) 19:00

     同じ瀬戸山の『ホットパーティクル』と対をなす作品と言ってもよい。明らかに原子炉内部を示唆する舞台に、白い衣装の役者陣が登場し、瀬戸山の分身とも言える占部が失語した女を演じる。夫・浅倉は作業員らしい。その他の登場人物も、誰とは分からなくても原爆や原子力に関わる人々らしいことが分かる。静かな芝居だが、エンディングは少し希望が見える。

  • 満足度★★★★

     文化系の物理学レベルでよく健闘している作品。夫婦役を演じる二人の演技が良い。(追記2018.3.28)

    ネタバレBOX

     核物理学に携わる科学者たち。キューリー夫人のポロニウム及びラジウム発見から説き始め、相対性理論を唱えたアインシュタインを代表とする物理学者らを巻き込んだ核兵器開発経緯を通して(タイトルの大文字でそれぞれの単語が書かれている)“十戒”を俎上に載せる。無論、モーセのそれではない。レオ・シラードのものである。ブタペスト生まれの彼もユダヤ人であったが、ナチスが原爆を作ってしまう前にとアインシュタインらと共にアメリカ大統領に請願書を出した。
    然し、太平洋戦争末期日本への原爆投下にシラードは最後まで反対した。∵ナチスは原爆を持つ前に降伏し初期の目的は既に達成されていたこと。原爆を都市に落とせばその人的被害は途方もない規模になること、そしてその被害は人的被害に留まらずありとあらゆる生命に対してであること。その絶大な威力を見た他国が開発に乗り出し開発競争の結果、地球全体の危機を招くことなどが反対の理由であった。慧眼と言わねばなるまい。
    その彼の提起した十戒が、今作で何度も語られ科学者というものの持つ純粋な好奇心の発露の莫大なエネルギーポテンシャルの可能性と、それらを通して稔った果実を利用する者達の利害故の功罪を予め気付かせるべき提言として提示されている。物語は、表現する者として自らを開花させた主人公が、己の表現手段である言葉を封印し、連れ合いである夫とも6年に亘って口をきかない状態を通して、3.11人災及び人災後にも除染技術。廃炉技術などがトレンドとなることで、自殺率が異様に高いポスドクであっても研究職に従事できるなど好奇心を萎ませないですむと目論見を立てられることが、未だこのジャンルで研究者が存続していることの条件として在ることを本当は隠しているのであろう。
     但し、ディベートシーンでは、作家が正しく文化系であることを露骨に晒す結果になってしまっている。内実がトウシロウレベルの議論に終始しているからである。更に、アメリカが日本に2度タイプの異なる原爆を投下し、人道に悖る罪を犯していることについても、言葉に責任を負わせるという形で処理してしまっている。問題にされかねないという懸念を理解せぬ訳ではないが、表現する者の覚悟としては聊か情けない。∵言葉を用いる主体があるのであり、その主体は判断を下す。その時言葉を用いるのである。その思考過程に於いても、また言葉を用いて命令を下す場合にも。
     周知のとおりマンハッタン計画には、莫大な金がつぎ込まれた。而も秘密研究であったから、その内実を知る者は政治を担当する者の中でもごく僅かであり、他は軍上層部、そして研究に携わった研究者らであった。もし使わずに戦争が終結したなら、戦後、それまでマンハッタン計画を推し進め、実際に予算をつぎ込ませた大統領など政権幹部は、国民からの訴追を免れない。原爆投下判断は、これだけではないが、余り知られていない大切な要素である。それかこれか、原爆を投下する前、アメリカは、日本のエネルギー動脈、鉄道などの運搬手段、最も重要な幹線道路などは、破壊していない。戦争遂行能力を残して置く為である。
     これらの事実から浮かんでくるファクトとは何か? 無論、原爆を使わなければ、アメリカ軍の被害は甚大なものになった云々という嘘である。更にウラン使用の広島型、プルトニウム使用の長崎型とタイプの異なる原爆を投下し、人体に与える影響をABCC等を使って調べ続けられていたことも日本人の常識である。また、日本の戦争遂行に関与した科学者が、被災地に乗り込み183冊の大学ノートに詳細な記録を書き込み、僅か数か月の間に英訳して、罪の減刑を狙いアメリカに送付したことも知らねばなるまい。因みに冷戦時代に、仮想敵国の何処にどの程度の威力を持つ原(水)爆をどれくらい落とせば敵の戦闘能力を破砕できるかを計算する際、基礎資料とされたのは、日本の学校で無惨な死を遂げた子供たちのデータであった。これだけのことをされながら、核被害を言葉の問題だけに矮小化することは、自分には矢張り納得できない。現在も福島県立医科大で暗躍する山下 俊一は、ABCC、放影研などを経て現職に就き、福島の被ばく状況を矮小化し続けている。主として言葉によって。そして嘘を吐き続けようとする意志及び利害判断に基づいて。

  • 満足度★★

    75分。

    ネタバレBOX

    原発事故後失語症というかはなすことを拒否するようになった?女(卜部房子)や原子力研究をしてた人の手記や手紙を読み上げるスタイルが、イマイチ馴染めない。面白味が感じられなく正直眠い。
  • 満足度★★★★★

    ‪本日のマチネを観劇してきました。‬
    ‪原子力をモチーフに過去と未来について考えさせてくれる舞台。白を基調とした舞台演出がとても印象的で、白という色に込められた様々な想いや意味が伝わってきました。こまばアゴラ劇場にて31日までやっていますのでぜひ!

  • 満足度★★★

    ■約85分■
    芯を食わないまま終わってしまった印象。

  • 満足度★★★

    「真摯と誠実」
    真摯に向き合えすぎれば辛くなる。
    しかし「モノを創る人」である以上真摯に向き合わなくてはならないこともある。
    「十戒」に瀬戸山美咲さんが触れたときに、この作品で語られる感覚がわき起こったのではないだろうか。

    (以下ネタバレBOXにいろいろと…)

    ネタバレBOX

    『Ten Commandments』=『十戒』。凄いタイトルだ。
    それは主人公=作・演出の瀬戸山美咲さんを縛る言葉でもあったのではないか。

    モノを創り出す人にとって、自分だけではどうしようもないことに真摯に向き合おうとすることはとても苦しくて辛いことではないかと思う。
    私はモノを創る人ではないが、そこにはとても共感する。自分で自分の逃げ道を塞いでしまっているのだろう。わかっているが真摯であればあるほど逃げることはできずに、自分の中に入り込んでしまう。

    レオ・シラードの「十戒」に瀬戸山美咲さんが触れたときに、この感覚がわき起こったのではないだろうか。
    「原子力」の問題等々を考えるときには、原爆についても頭に入れなくてはならない。
    それらに向き合おうとしたときに「十戒」に出会い、戸惑ったのではないかと思う。

    その戸惑いがこの作品を生み出したと思うのだ。

    主人公の女性は、「原子力」に端を発する諸々に向き合いすぎて、言葉を発するのがイヤになってしまう(言葉を発することができなくなってしまう)。
    この女性(劇作家であった)と作・演出の瀬戸山美咲さんは重なってくる。
    「言葉にする」ということは「伝える」ということであり、伝えるのは「自分の考え」である。
    したがって、自分の中できちんとまとまっていないことを迂闊には言えない気分になってくる。特に原子力問題は、大きすぎて。

    発言することの「責任」という意味もあろうかと思うが、その責任は「社会へ」というよりはまず「自分へ」ということではないか。
    劇作家という言葉を仕事にする人にとっての「発する言葉」「伝える言葉」を(自分自身で)考えると、とても大きな重圧を感じてしまうのだろう。
    それは(何度も繰り返すが)「真摯」に向き合っているからではないか。

    例えば「原子力」についての言葉を発することを止めてしまうと、それにまつわる「日常生活」に関する言葉も止まっていまう。
    つまり、この主人公(=瀬戸山美咲さん)には「原子力」(とその問題)は「日常」と直結していることがわかる。「直結して考えたい」ということが根底にあるから、さらに向き合いすぎて苦しくなってしまう。

    そんな彼女は現在だけでなく、過去に遡り自分を縛り上げる。すでに死んでいるアインシュタインやレオ・シラードに手紙を書く。
    あるいは、過去の自分に対する他人の声が聞こえてくる。実際には本人には聞こえなくても(そんなことを言っていたのかどうかも不明だが)まるで「マイクで拡声した」ように響いてしまう状況にさえなってくる。

    この物語は「書簡」の朗読がメインなのだが、「やり取り」ではなく、一方通行の送ることのない届かない手紙を書いている。「対話」であればこの迷宮から抜け出すこともできたのかもしれない。
    「書く」ことが自分の考えの整理になるからだろうか。劇作家の彼女にとっては会話ではなく「筆記」がその手助けだったのか。であれば、「演劇」はさらにその手助けになるような気がするのだが、そこまでの道のりは遠いだろうし、演劇は彼女1人の考えだけで創ることができるものではないからでもあろう。

    現実(アゴラでの公演)に戻ってみるとこの作品は、主人公の女性=瀬戸山美咲さんであるように思えるのだから、実際には「演劇」のところまで彼女はやってきているのだろう。
    瀬戸山美咲さんはどう生活を取り戻していったのだろうか。やはり主人公と同じだったのだろうか。
    あるいはまだ取り戻す途上なのか。

    主人公の彼女をそうした世界から救い出してくれそうなのは、日常であり愛なのだろう。
    ラストにそれが示される。それが彼女の求めている「答え」ではないのだが。
    このラストは(あえて言えば)とても「普通」なのだが、それしかないと感じる。
    その「普通」をきちんと示したことは、誠実であったと思う。「真摯と誠実」。これがこの作品で感じられた。

    主人公を演じた占部房子さんが適役すぎて、痛々しくって、観ていてツラくなった。それだけ良かったのだ。

    福島がフクシマとなった3.11以降に原子力を学ぼうとする人たちの技術者倫理の授業にこの作品は端を発しているらしいので、その授業では、たぶんレオ・シラードの「十戒」に触れられていて、瀬戸山美咲さんもそこに自分の想いが重なったのではないかと思うのだが。

    この作品で描かれたより「もう一歩先」も是非観てみたい!
  • 満足度★★★★

    シラードの十の戒め。原子力(&言葉)は、生かすも殺すも使い方次第ってことかしらね。

この公演に関するtwitter

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  1. The Ten Commandments (MAASAI: Bible) https://t.co/90Dbzylbfa https://t.co/5GNpsA2Yl6

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  2. ➡️The Ten Commandments Past and Present: An Interview with David L. Baker ➡️https://t.co/rZrp0AuMgs No Lie: Americ… https://t.co/EzRQXSxj2J

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  3. @YayAnonymity @ikhlasikhan1993 @marmuzah @thesalafist99 @oblmir @MailOnline Exactly my point. And when you try to… https://t.co/TH7ANjA0zl

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  4. “and accordingly point us to the glad comfort of the red blood of Jesus who bought us, and finally make our hearts… https://t.co/dJdsiHtpKq

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  5. “Then the Holy Spirit descended on the same day that the Law had been given long before; for He was to lighten our… https://t.co/GA365aAjH3

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  6. 9. Take care of me when I get old ; you, too, will grow old.  ♯The Ten Commandments https://t.co/grh8c7rDpe

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  7. No Lie: Americans Still Ascribe to the Ten Commandments https://t.co/0nNYyIxvVD

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  8. 'THE TEN COMMANDMENTS' https://t.co/Zm8C5sbNqC

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  9. @DonParks01 @DavidPiepho @GregAbbott_TX Why would you think anyone cares if you say "god" or pray to yourself in an… https://t.co/A6KxAmoIPy

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  10. Director @DarrenAronofsky lays down the Ten Commandments of in @DarrenAronofsky's 2018 Keynote. Wa… https://t.co/m6nuog9JkM #IndieFilm #SXSW

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  11. Alabama Aims To Display Ten Commandments In Public Schools | https://t.co/d7QgwI7DDn

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  12. Exactly old man, after all there would have to be an 'antisemitic' Jeremy Corbyn / Alan Sugar contestable issue her… https://t.co/10oSxSTIAS

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  13. I added a video to a @YouTube playlist https://t.co/WGNxPmvHHn Ten Commandments Song for kids

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  14. @DearAuntCrabby Burning down the house, constitution, bill of rights, he already trashed the Ten Commandments and i… https://t.co/uY0xTGVp9H

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  16. Be sure to empty all Ten Commandments into his chest. For only holy redneck terrorism can usher in the second coming of the coathanger.

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  23. The Ten Commandments of Social Media for 2018 https://t.co/f3s9dvh8rw

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  25. Looking for a new to ... A Better Ten Commandments won't disappoint! https://t.co/5e61771xZx #book #read #history #science #philosophy

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  39. It's not like the ten commandments were written in stone! oh, wait... https://t.co/Gyd2hKRIz9 #indie #amwriting

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  44. 93: The Ten Commandments https://t.co/5pgm5Ee852 via @lesfeldickbible

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  45. The Pharisees did the exact same thing to the Ten Commandments. 600+ in fact. Some would defend that the new laws… https://t.co/wpPMds2upS

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