Ten Commandments 公演情報 ミナモザ「Ten Commandments」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    世の中には容易には解決できない、立場を決することもできない命題があります。
    「原子力」を通して、人間の夢や欲望、性質に迫ろうとしたこの作品もまた、こうした命題に果敢に挑んだものだと思います。

    主人公の女性は、言葉を失った劇作家。言葉を紡ぐことで生まれてしまう欺瞞、取り返しのつかない事態への抵抗や恐怖のために口を噤む彼女は、しかし、未来へ向けた手紙を書き綴っています。作・演出の瀬戸山美咲さんの表現者としての葛藤がそのままに投影されたと思われるこの女性のありようは、あまりにも真摯で、見方をかえれば、ナイーブにすぎるともいえるでしょう。加えて、「みえない雲」やレオ・シラード「十戒」を引用した手紙の朗読を軸に展開する舞台は、ともすれば「意見表明」的で単調にもなりがちです。

    にもかかわらず、印象的なのは、登場人物らが発する「声」はとてもよく聞こえてきたということです。それは選ばれ、書かれた言葉の精度の高さでもあったでしょうし、この世界に向き合った俳優のあり方にもよるものでしょう。また、宇宙を感じさせる青い床面、舞台上から発せられる音響など、空間設計も魅力的で、ここで語られていることをより広い視点でとらえる助けになりました。

    発語、表現は、いつでも慎重に行われるべきですが、それだけでは表現は成り立たないとも強く感じます。今作に表れた繊細さと、それを作品にした潔さ、図太さ、この両極を揺れることなしに、創造はないのだな……とあらためて感じました。

    0

    2018/06/05 13:53

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大