Ten Commandments 公演情報 ミナモザ「Ten Commandments」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    朗読劇もしくは詩劇といった抒情性が感じられる。舞台セットや演出等はそれを意識して制作しているようだ。そこには社会と個人のあり方と関わりに鋭く問題を投げかけているようだ。その意味で、内容はもちろん観せ方は、脳内への詩劇ならぬ刺激になった。
    (上演時間1時間30分)

    ネタバレBOX

    セットは、水中を思わせるような水色を基調(水底の雰囲気)にしたガラスの上に家庭用の白いテーブル、対面にこちらも白い椅子といったシンプルな配置である。周りは基本暗幕でそこに吊り細工のようなもの。上手側に舞台技術のセット・操作者が剥き出しで居る。また客席側に小テーブルがありコーヒーメーカーとカップが置かれている。全体的に薄暗いが、対照的に役者(操作者の上着も)の衣装は白く、場内(舞台)にコントラストを与える。

    物語は、劇作家の心中を吐露するような対話の形式で進めていく。夫婦の会話では大震災後に喋れなくなった妻(劇作家であろうか?)が、原子力(原爆)は人を殺すが、劇作家としての言葉も物理的か精神的な違いはあるが人を殺すことがあると…。

    心情は手紙という媒体を利用して展開する。ちなみに現代的に考えればSNS等の利用を思うが、手紙という紙(文字→言葉)媒体が作家らしい。その内容は78年前に遡り、10の自戒または訓を読み聞かせる。登場するのはアインシュタインやレオ・シラードという科(物理)学者の名前である。そして広島・長崎への原爆投下におけるアメリカ側での議論経過が披瀝されていく。熱くなりそうな議論、それを敢えて抑制するよう淡々と進めることによって本質が浮き彫りになる。原爆投下の是非を日本の学生の論議仕立てにしているようだが、アメリカと日本、自国側の立場で物事を考えた時に真実等の見方が異なる。例えば日本の原爆投下に対する思いは理解しやすいが、戦争という状況下にあってアメリカ側の早く戦争を終結させたいという考えもよく聞くところ。「科学には国境はないが、科学者 には祖国がある」といったのは、生化学者であり細菌学者のパスツールだったか。物事を多角・多様性を持って見る大切さが十分伝わる。ラスト、妻が喋れるようになり劇作家に復活(言葉)出来た様な…。これが過去(現在の原発問題「みえない雲」に象徴されるのも含め)を振り返り未来を見つめるという暗示のように思える。

    全体の雰囲気はモノトーン、そしてゆったりとしたテンポである。音楽もメロディだけを奏でるといった落ち着いたものと不穏なものをシーンに応じて流す。それが抒情性を感じさせる効果でもあるようだ。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2018/03/26 10:44

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