満足度★★★★
青く光る鏡面の床に白いイスとテーブル。上手奥には音響卓とオペレーターがいて、白い衣装の男女が登場する抽象空間です。作・演出の瀬戸山美咲さんご本人であろう女性劇作家(占部房子)とその夫(浅倉洋介)の家、または彼女の脳内あるいは宇宙空間であるようにも受け取れました。
原子力とそれを研究する人、作った人、使った人について調べ、思考の海に深く潜るうちに、瀬戸山さんは言葉を扱う劇作家であるご自身の責任を問うことになったのだと思います。その苦闘の過程がさらけ出されました。瀬戸山さんがたどり着いた絶望的な境地と、そこから這い上がる姿を観て涙が絞り出され、終演後はしばらく席を立てませんでした。瀬戸山さんの勇気に感銘を受けました。ありがとうございました。
私は過去にミナモザ『ホットパーティクル』(2011年9月)を拝見したことがあり、今回も冒頭あたりから“セルフ・ドキュメンタリー”であることがわかったので、その心構えで観ることができました。手紙を読み続ける時間が長く、朗読劇のように見えるのは改善の余地ありではないでしょうか。この上演を土台に新しい“物語”を立ち上げる機会を見計らってもらえればと期待します。
主人公を演じた占部房子さんは瀬戸山さんの苦悩を自身のこととして受けとめ、心を尽くして全身で演じてくださっていたように思います。浅倉洋介さんは包容力のある物静かな夫役で、柔和ながらずっしりとした存在感に説得力がありました。私が知らなかった浅倉さんの一面を発見できました。