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みんな鳥になって

みんな鳥になって

世田谷パブリックシアター

世田谷パブリックシアター(東京都)

2025/06/28 (土) ~ 2025/07/21 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

第一幕105分休憩20分第二幕85分。

今年No.1の作品かも知れない。間違いなく見逃したら後悔する。今、この世界状況で今作を日本で上演することは偶然ではなく必然。運命的なものを感じた。
ワジディ・ムアワッドが2016年に発表した作品。レバノン・ベイルートに生まれ内戦を逃れて8歳の時、一家でフランスに亡命。元々レバノンはフランスの統治下だった為、フランス語圏。だが15の時、滞在を拒否されカナダのケベック州へ一家で移住。ケベックの公用語もフランス語。カナダ国立演劇学校を卒業後、劇団を設立。2007年、国立劇場の芸術監督に就任。到頭2016年、自分達を追い出したフランス・パリの国立劇場の芸術監督に就任。その一作目である今作は彼にとって最大のヒット作となった。「ふじのくに⇄せかい演劇祭2020」にて『空を飛べたなら』のタイトルで公演予定だったがコロナにより中止。到頭本邦初公開。原題は『tous des oiseaux』(全ての鳥)、英訳では『Birds of a Kind』(ある種の鳥)、今回の日本語タイトルは『みんな鳥になって』。

照明が神懸かっている。ちょっと並のレヴェルではない。

現代の『ロミオとジュリエット』。ニューヨークの大学図書館、遺伝学・量子論・統計学を学ぶドイツ系ユダヤ人エイタン(中島裕翔〈ゆうと〉氏)はイブン・ハリカンによって書かれた「ワファヤット・アル・アヤン」(13世紀イスラムの人物辞典)を座ろうとしたテーブルに見付ける。偶然とは思えない程、この図書館に一冊しかないその本は彼が訪れる度待ち受けている。そしてそれを使って博士論文を書いているアラブ系アメリカ人美女ワヒダ(岡本玲さん)。そのどうしようもない美しさに理性が吹っ飛び思わず話し掛けてしまう。もう自分でも何を言っているのか解らないが本能的に必死になって。それを黙って眺めていたワヒダはくすくす笑い出す。何処か踊れる場所に行かない?

遺伝子の入れ物である46本の染色体、血族から受け継いだDNAに書き込まれている設計図。先祖から受け継ぐ情報は生物学的なものだけ。記憶や経験が遺伝する訳じゃない。最先端の科学を学び、遺伝情報を理解したインテリジェンスな若者達は旧来の迷信や因習など打破できる。民族の歴史など乗り越えられる。もうそんな時代じゃないんだ。

エイタンはワヒダを紹介する為、ドイツから敬虔なユダヤ教一家である家族を呼ぶ。ユダヤ教にとって重要な儀式、「過ぎ越しの祭り」。そこで待っていたのは絶望的なまでの家族からの罵倒。怒りに打ち震えるエイタンは科学的にこの不条理を分析し解明しようと決める。

ワジディ・ムアワッド作品は『森 フォレ』しか観ていないが、その時感じた手塚治虫感を今作でも強く感じた。とにかくストーリーが面白い。
まさに日本を代表する役者陣が世界の芯を握り締めたトップ現代作家の作品と格闘。今こそ観るべき作品。イスラエルとアラブ(パレスチナ)の憎悪の歴史に正しい解答はあるのか?この作品の中にその答があるのか?今作は映画化して世界中の人に観せるべきだと思う。
必見。

ネタバレBOX

世田谷パブリックシアターだと当り前のように前田亜季さんが出ているものだと思っていた。今回いないことに驚く。

第一幕終了時点では最後まで観たらこの問題の解決策に辿り着ける気がして興奮した。一体それはどんな答なのか?

エイタンは家族に対して不信を感じ、密かに全員のDNA鑑定をする。(このあくまでも科学的に分析するスタンスが素晴らしい)。父母との親子関係は証明されたが祖父とは血縁関係がないことが判明。80年代に離婚して一人イスラエルに暮らす会ったこともない祖母に自分のルーツを問い質そうとワヒダとイスラエルに向かう。ヨルダン国境のアレンビー橋(キング・フセイン橋)を越えてイスラエルの国境検問所へ。世界一厳しいとされる入国審査で足止めを食うワヒダ。先に抜けてバスに乗ったエイタンはパレスチナ人による自爆テロに遭い昏睡状態に陥る。遠い異国で一人ワヒダはエイタンの祖母やドイツの家族に連絡を取る。

エイタンの父、ダヴィッド(岡本健一氏)が物語の中心人物。凄まじい役作り。ぐうの音も出ない。

エイタンの母、ノラ(那須佐代子さん)。ユダヤ人メイク、髪型、眉毛、着こなし、徹底している。よく研究しているなあ。「私はただの雌犬よ!!」

イスラエル女兵士エデンが松岡依都美さんだと気付いた時の衝撃。凄い配役。

アル=ワッザーン(ワザーン)は伊達暁氏。「火の鳥」のように時空を超えて人間達の営みを俯瞰しているよう。

エイタンの祖母、レア(麻実れいさん)は『ガラスの仮面』の月影先生。劇薬。

エイタンの祖父、エトガール(相島一之氏)はクライマックスの独白の迫力。口から勝手に言葉が迸るような怒涛の告解。

まるで岡本玲さんの通過儀礼のように化物役者陣との対決が続く。この中で生き抜くのは凄まじい。リアル『ガラスの仮面』だ。ワヒダはファム・ファタール(運命の女)。出逢う者出逢う者の人生に対し劇的に火を点ける。エイタンとの別れのシーンは『もののけ姫』だ。

Hey! Say! JUMPの中島裕翔(ゆうと)氏は『ウェンディ&ピーターパン』が印象深い。このメンバーに組み込まれるのは相当キツかった筈。よくやった。ラストに繰り返される台詞の意味。作家のこの問題に対する決意表明だと思った。「決して慰めたりはしない」。この問題に対して感傷的なものなど必要ない。慰めの言葉も要らないしこちらからかけることもない。有るのはこの地獄と向き合う人間の覚悟だけ。この地獄と自覚的に向き合う強い気持ちだけ。人類は憎悪を乗り越えることができるのか?きっと無理だろう。だがしかし、だがしかし···。

ワヒダが博士論文のテーマに選んだのはアル=ワッザーン(ワザーン)。
ハッサン・アル=ワッザーンはスペインのイスラム教徒の家に生まれモロッコで育ち外交官となる。1518年頃、旅の途中で海賊に襲われ奴隷としてローマに拉致、教皇レオ10世に献上される。洗礼を受けキリスト教に改宗、翻訳や辞書作成、北アフリカ全域を旅した経験を「アフリカ誌」として著した。
ワッザーンの好んだ話に「税を免れる鳥」がある。鳥の王に税を要求された鳥が海に逃げ魚と暮らす。今度は魚の王が税を要求するとまた空に戻っていく。まるでイソップ寓話の「鳥と獣とコウモリ」のような話だ。

レアがエトガールとダヴィッドとの別れを決めた事件。
1982年9月、レバノンで起きたサブラー・シャティーラ事件。イスラエルが隣国レバノンに侵攻し、親イスラエル政権としてバシール・ジェマイエル大統領を誕生させるもすぐに暗殺されてしまう。その報復として民間人しかいないパレスチナ難民キャンプに突入、二日間で三千人以上を無差別に虐殺した。こんな事をやっている国でダヴィッドを育ててはいけない。

「過ぎ越しの祭り」に隠したアフィコーメンを子供達に探させ、見付け出すとプレゼントが貰える儀式がある。マッツァー(小麦で作られたクラッカー)を割り、布で包んで家の何処かに隠す。それをアフィコーメンと呼ぶ。ダヴィッドはどうしてもそれを見付けられなかった。

どれだけ科学が発達し全てをデータで分析することができてもそれだけでは切り離せないカルマのようなものがある。ワヒダもエイタンも理性や知性では否定した筈の“それ”に抗えないことを知る。どれだけ頭で考えても心がついていかないのか。

※ここから余談。
紀元前586年、ユダ王国が新バビロニア帝国によって滅ぼされ、それ以来ユダヤ人が独立した国を持つことはなかった。西暦135年、ローマ帝国の支配下にあったユダヤ属州が大規模な反乱を起こすも本拠地であったエルサレムが陥落し凄惨な敗戦。ユダヤ教の根絶を考えたローマ帝国はユダヤ人をこの地から追放=ディアスポラ(離散)。住む土地を失ったユダヤ人達は地中海世界や中東、欧州各地に散らばり共同体を形成。だがキリスト教社会では「キリストを十字架に掛けた連中」とユダヤ人は差別され続けた。土地を所有することも許されず就く職業にも制限。キリスト教では禁じられ侮蔑されていた金融業(金貸し)を営むことに。各地のユダヤ人同士で築かれた信頼関係から、離れた地の取引でも信用が置け重宝された。ユダヤ人金融ネットワークは外国為替業務や証券の発明など現代の金融業務の礎を築くこととなる。18世紀、フランス革命後、徐々にユダヤ人も欧州各地で一般市民と認められるように。

第一次世界大戦に敗れたドイツは巨額の賠償金を支払わねばならず、経済はハイパーインフレ、世界恐慌と相まって失業率40%、治安は悪化、社会不安は増大。アドルフ・ヒトラー率いるナチス党は戦争に敗れた理由をユダヤ人と社会主義者の裏切りによるものだと喧伝。「背後からの一突き」だと。国民の全ての不満や怒りをユダヤ人への憎悪に転換させた策略は当たり、1933年に政権を握る。
1935年ナチス・ドイツがニュルンベルク人種法を制定。ユダヤ人との結婚を禁止し全ての公職から追放、公民権を奪う。そこから迫害は加速し「ユダヤ人問題の最終的解決」として強制収容所に送り込み大量処刑、ユダヤ人の絶滅を計画。1945年5月連合国に敗れるまでに600万人のユダヤ人を虐殺=ホロコースト。

19世紀末から20世紀初頭にかけてロシア帝国でのユダヤ人虐殺=ポグロム(ロシア語で破滅の意味)が多数発生。自分達を守ってくれない国家体制に絶望したロシア系ユダヤ人達はパレスチナに移住を始める。現在のイスラエル建国の礎に。
当時イギリスが統治していたパレスチナ。1918年の調査ではアラブ人(=パレスチナ人)70万人、ユダヤ人5万6千人が居住。ユダヤ人の大規模な移民が始まるとアラブ人(=パレスチナ人)との間に何度も武力衝突が起きた。
イギリスが統治を終了し新国家を作ることに。1947年国際連合は「パレスチナ分割決議」を採択。パレスチナを二つの民族による二つの国家に分けることに。だがかなりユダヤ人側に有利な土地分割だった為、内戦に突入。1948年イスラエル建国宣言。それを認めない周囲のアラブ連盟5ヶ国は即宣戦布告、第一次中東戦争に。アラブ側15万人、ユダヤ側3万人という圧倒的不利の中、イスラエルは勝利。国連決議より広大な地域を占領した。その後第四次まで戦争が繰り返されるが米英の軍事的援助を受けたイスラエルは全てに勝利、国土を広げ続けた。

イスラエルにはアメリカの利権が絡んでいる。アメリカにとって中東で安定して石油を確保する為にもイスラエルの存在は大きい。かつてアメリカの国務長官は「中東に家を構えたアメリカの分家」とイスラエルを呼んだ。

ユダヤ人の物語はこの世の仕組みが暴力でしかないことを知った者達の話。暴力によってローマ帝国から住む土地を奪われ、暴力によって差別迫害され強制収容所に入れられ虐殺された。絶滅から自分達を救い出したものは連合国側による暴力だけであった。ノルマンディー上陸作戦など現実的な暴力だけがナチス・ドイツを打ち倒した。決して対話や祈りなど平和的なものではない。この世界で生きていくには暴力で勝つ以外に方法はない、と追い込まれたユダヤ人はひたすらその道を突き進む。世界中から嫌われ憎まれ罵られても、もうこの道を引き返すことはできない。ロシアと同じく暴力で敗北するか核爆弾を使用して道連れにするかまで追い詰められている。もう善悪などそこにはない。ここまでやってしまったのだ。世界と和解など不可能だろう。

観劇後、BLANKEY JET CITYの「不良の森」を聴いているような気分。

静かな森の奥で壁にもたれて
揺れる草を見ている少女もいつかは知ってしまう
都会を流れゆく濁った水のように汚れた心があることを
でもそれは美しいことなのか ことなのか
花がこがれる

花がこがれる

アユカプロジェクト

シアター風姿花伝(東京都)

2025/07/03 (木) ~ 2025/07/06 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

Aチームを観劇しました。
劇場入口から癒される香りが漂い、花が溢れるセットも素敵でした。
ファンタジックで意外性もあるストーリーで、面白かったです。
不思議な雰囲気に、役者さん達の熱演も加わり、夢の世界に入り込んだ感覚になりました。
素敵な時間を過ごしました。

はぐらかしたり、もてなしたり

はぐらかしたり、もてなしたり

iaku

シアタートラム(東京都)

2025/06/27 (金) ~ 2025/07/06 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

7/5観劇

MY TYPE~早乙女琴子の場合

MY TYPE~早乙女琴子の場合

東京夜間飛行

in→dependent theatre 1st(大阪府)

2025/06/28 (土) ~ 2025/06/29 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

感想遅くなりました。印象としては良くできたお芝居でした。とても面白かったです。語りもエピソードもうんうんという感じで拝見でした。楽しい時間ありがとうございました。

~喜楽に落語~ ハルカス寄席

~喜楽に落語~ ハルカス寄席

近鉄アート館

SPACE9(大阪府)

2025/07/01 (火) ~ 2025/07/24 (木)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

桂かい枝さんが良かったです☆

しおり記念日

しおり記念日

いきるひ

SPACE9(大阪府)

2025/07/05 (土) ~ 2025/07/06 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

前半だれたけど、後半盛り返しが素晴らしい!
流行りのLGBT系だけど、とても上手く表現出来ていたと思いました!

父と暮せば

父と暮せば

こまつ座

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2025/07/05 (土) ~ 2025/07/21 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

『父と暮せば』は黒木和雄の映画で観て成程と思った。2018年、山崎一氏&伊勢佳世さんの舞台を俳優座劇場で観て度肝を抜かれた。いや映画の比じゃない、これは舞台で観ないとヤバイ奴だ。2021年紀伊国屋サザンシアターにて同キャストで再演。その時は二回観た。(今思えばもっと無理してでも回数観るべきだった) 。2022年、ゴツプロ!presents 青春の会第二回公演としてシアター711にて佐藤正和氏&中薗菜々子さんで観た。同じ戯曲でもこんなに変わるのか、と奥深さに唸った。
そして今回、松角洋平氏&瀬戸さおりさんの布陣。山崎一氏&伊勢佳世さんではもう観れないのか···、との想いはあるが。こまつ座通ってる連中からすれば瀬戸さおりさんの評価は絶大だろう。一体この名作をどう解釈するのか?

流石の出来。皆泣いていた。超満員じゃないのは残念だが。今日は初日、ここから先は伸び代しかない。何処まで行くのだろう?楽しみ。

ちょうどジェームズ・キャメロンが広島長崎の原爆映画を製作し自ら監督することを発表。「まるで観客が被爆を実体験するかのように徹底的にリアルに描く」と宣言。「この地獄に観客は耐えられるだろうか?」。世界中が初めて原爆の怖ろしさを知る機会になるのかも知れない。それを経験した日本人達が遺した膨大な作品群。『父と暮せば』もまた新たに再評価されることは間違いない。

必見。

ネタバレBOX

やはり井上ひさしの武器は笑い。とにかく観客を笑わせて安心させてからぶち込むのが真骨頂。重要なのは笑いのリズム。
はぐらかしたり、もてなしたり

はぐらかしたり、もてなしたり

iaku

シアタートラム(東京都)

2025/06/27 (金) ~ 2025/07/06 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2025/07/05 (土) 13:00

座席1階

iakuの横山拓也らしい、一つ一つのプロットがきれいに結ばれた会話劇だった。こういう緻密な戯曲がiakuの魅力の一つで、それがいかんなく発揮された力作だった。

出だしはオムライスだ。夫は妻が作るウインナーがたくさん入ったオムライスが好きなのだが、なぜか今回は入っていなった。妻にそれを告げると「絶対に入れた」という返事で雰囲気は険悪になる。夫はそんなことでけんかするつもりはなく「ただ事実を言っただけ」なのだが、妻はそうは受け取っていない。
物語はオムライスを起点として、この夫婦の娘や、コンビニの駐車場で車にぶつけられた男と「ひき逃げだ」と世話を焼いた女性など、登場人物の人間関係がクモの糸を広げるように少しずつ拡大していく。客席ではそれを「こういうことなのか」と確認しながら、それぞれの人物に展開されていく予想外の物語に見入っていく。
男女のすれ違いや思いもかけぬ展開、有名コーヒー店でのちょっとしたアイテムなど、とても気の利いた戯曲だ。ちょっとしゃれたラブストーリーということもあるのだろうか、関西弁は出ず舞台は東京っぽい。笑いのポイントはたくさんあるが、登場人物のキャラクターのぶつかり合いで引き出されるものが多く、よく工夫されていた。ただ、これだけのナイスな戯曲なのだから、タイトルはもう一工夫あってもいい。

最初に登場する夫婦は夫が小松台東の瓜生和成、妻がばぶれるりぐるの竹田モモコというなかなかの豪華メンバーだ。客席はほぼいっぱいだったが、端の方には空席も。人気のiaku、さらに出演メンバーもいいのになぜなんだろうと思った。まだ見ていない人は上演は明日まで、一見の価値あり。

骨と肉

骨と肉

JACROW

シアタートラム(東京都)

2025/06/19 (木) ~ 2025/06/22 (日)公演終了

実演鑑賞

大型家具販売店での父娘のお家騒動を描いた 2017年初演を改定再演。115分。6月22日までシアタートラム。そのあと7月6日まで愛知。

https://kawahira.cocolog-nifty.com/fringe/2025/07/post-857952.html

未来へつむぐ

未来へつむぐ

つむぎジャパン

国立オリンピック記念青少年総合センター・カルチャー棟・小ホール(東京都)

2025/07/04 (金) ~ 2025/07/05 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

戦後80年、このような反戦をテーマにした公演が多く上演されることだろう。謳い文句は「平和への約束、忘れてはならない過去がある、だから未来のために今を生きる」である。勿論「特攻を美化してはいけない。しかし特攻の事実は絶対に風化させてはならない」ともある。
物語は説明通りで、令和に生きる少女がタイムリープして、戦時中 それも知覧基地へという設定は既視感がある。例えば、映画「その花が咲く丘で、君とまた出会えたら」などを観たことがある。

この公演の制作は丁寧で、それだけに訴える 力 も強い。当時の衣裳や所作、特に特攻隊員たちのキビキビした動きはリアル。一方、隊員たちの世話係として派遣される知覧高等女学校の生徒、通称 なでしこ隊の少女たちの礼儀正しさ。特攻隊員となでしこ隊の微笑ましい交流、しかし 間もなく特攻命令が…。その結末は既に知っているだけに、心情をどのように表現するかが見所。少しネタバレするが、知覧特攻平和会館や桶川飛行学校平和祈念館に展示されている手紙、それを1人ひとりが 遺書代わりに台詞(言葉)として述べ 消え(退場し)ていく。その姿が凜々しくも痛ましい。

実際、戦争を生き延びた方々も少なくなり、戦後世代が背負うものが問われているような。世界を見渡せば、どこかの地域や国が紛争/戦争をしているのも事実。だからこそ この公演を行う意味がある。
ただ説明の笹木美和の いじめ という孤独の中で、という思いを特攻隊員だった曾祖父に繋げるのはピンとこない。彼女が 謳い文句にあるような思いを抱く切っ掛けに共感出来れば、もっと好かった。
(上演時間2時間 休憩なし)

ネタバレBOX

舞台美術は、中央を一段高くした兵舎内。場景に応じて、上手に女学校の教師 桐谷康江の家や下手に櫓のような高台ー軍司令の視察現場を現す。上部 後景はスクリーンで、特攻や焦土と化した街の映像を映す。シンプルなセットであるが、特攻隊(特殊任務)という秘匿性と閉塞感を表している。また、客席通路を使った動きは、兵舎のある知覧の街と地続きの場所(土地)があることを表し、日本の至る所で悲惨な状態にあることを連想させる。

説明にある 美和の いじめは、lineの画面表示から無視されていること。劇中では、直接 対人からの いじめは描かれていない。死にたいほどの苦悩なのか、その深刻さが伝わらない。その気持ちで戦時中へタイムリープして特攻隊員ー自分の曽祖父との交流を通して、辛さを忘れる大事な何かを知りたい一心で向かう、にしては表面的すぎる。しかも辛さを忘れる? それを糧にして 考え行動することが大切なのではないか。

特攻隊員となでしこ隊員の淡い恋、しかし観客は すでに悲しい結末であることを知っている。交流が微笑ましければ、それだけ感情を揺さぶられ嗚咽が漏れる。場内のあちこちで啜り泣きの声が聞こえる。その なでしこ隊の生き残り 班長の三浦真紀が語り部となって当時(戦時中)と現代を繋ぎ、単に過去の記録に止めない。当時を知る者の生の記憶を伝える、そこに 公演の真骨頂がある。

演技は勿論、音響・音楽そして照明技術も上手い。なでしこ隊員の歌や独唱、サクソフォーンの演奏などの音楽。空爆などの迫力ある音響も効果的。また先にも記したが特攻隊員の一人ひとりをスポットライトで照らし、ピアノの曲を流し その中で心情を激白させる。遺書代わりであるから夫々の個性が際立つような台詞(言葉)が印象的だ。衣裳も特攻隊服を着る所作、なでしこ隊の絣モンペなど、細かい所まで配慮した演出が好い。
次回公演も楽しみにしております。
ひとくず

ひとくず

映像劇団テンアンツ

本多劇場(東京都)

2025/07/04 (金) ~ 2025/07/09 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 必見! 華5つ☆ 途中休憩を挟み長尺の大作だが余りに夢中になって時を図るのを忘れた。追記7月8日11:55

ネタバレBOX

 私事で恐縮だが私自身が多少複雑な環境下で育ったので幼児期のある期間親権下になかった。70年以上経た現在でもトラウマであることに変わりはない。ただ許すことを覚えたに過ぎない。更に若い頃かなり長期間地域の住民運動に関っていたから様々なタイプの人々と関りを持っていた。こういう人々の中には虐待を受けていた人たちも多かった。そして子を虐待した親のそのまた親も子を虐待していたというケースが実に多いのが実情であるという事実を観てきた。
 オープニングでホリゾントに浮かび上がる観覧車の光彩が都会の夜に浮かび上がる時、何という侘しさ、妙な切なさが胸を撃つか! これはこの後のシーン、マリとカネマサの少女・少年期が交互に描かれる、母に取り付いた男によるそれぞれの虐待の有様を予め暗示しているように見える。マリとカネマサの左手に残る無数の根性焼きの跡。更にマリの胸にはアイロンで焼かれたケロイドが残り、カネマサには失明の危険を伴う頭部の負傷があった。カネマサの母、マリの母は、何れも自らの子が傷付けられることを防げなかった。但しカネマサの母は息子を庇おうと抵抗した実績は持っていた。この点がカネマサが弱者を庇い続け、優しさを持続する靭さを保持し得た原因かも知れない。極めて残念なことであるが、今作で描かれているように虐待に走る親と、それを止められない親に共通する圧倒的共通点は、現に虐待している親は、虐待されて育った親であり、その親もまた虐待されて育っているので、子供の愛し方を知らない、否寧ろ子供の愛し方が分からないという事実なのである。
 兎に角、脚本に人の心を撃つ力がある。作・演が上西 雄大さん1人なので細かい処迄虐待という不条理に抗う強い念が一貫している。キャスティングも良い。殊に少女時代のマリを演じた役者さんのまっすぐな演技が作品の錨のように機能し、所轄の刑事らのカネマサ(鴉)に対する深い人間性評価は剣持さん演じる元名刑事・桑島を通じて随所に鏤められ、カネマサの犯した殺人事件や窃盗事件に関しても何とか見逃してやってくれ! との気持ちを観客に呼び覚まし一瞬たりとも緊張感が途絶えることが無いなど芸達者な役者陣が各々いい演技をしている。
 終盤、カネマサ逮捕に至る場面でも、それを執行したのは、本署の連中であり所轄署は蚊帳の外で関与出来なかったが、カネマサがマリの誕生日に買ったプレゼントは桑島の計らいで渡すことができたばかりでなく、カネマサ、マリが分かれの挨拶を交わすこともできた。一方で現実に殺人という重罪が裁かれるという現実の厳しさをも同時に描いて作品のリアリティーを担保する点も流石である。観客もこの劇団のファンが多いようであるが、それも当然と頷ける良い作品であり、劇団である。
此岸と彼岸の間

此岸と彼岸の間

獏天

劇場MOMO(東京都)

2025/07/01 (火) ~ 2025/07/06 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

広いとは言えない舞台でたくさんの役者が入り乱れての立ち回りはとても迫力があった。
怒りに満ちた怒涛のセリフのため聞き取りづらいところが多いことや前半の設定がわからないまま進んでいく状況が少し残念だった。

金曜はダメよ♡

金曜はダメよ♡

トツゲキ倶楽部

「劇」小劇場(東京都)

2025/06/25 (水) ~ 2025/06/29 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2025/06/27 (金) 19:00

新作ホラー映画製作のため3人の若手脚本家が集められたがプロデューサーから「あれはダメ、これもダメ」と制限がつけられ……な物語。
その試行錯誤中の脚本の内容を舞台上の演技で見せる別チームがいて、な構造は舞台や映像表現でままあるが、その架空の(?)メンバーの意思が次第に現実界の面々に伝わり始めるのが妙案でトツゲキ倶楽部らしいところ。
倉田江美や小松左京の作品にも通ずるこういうシカケ、好きなんだなぁ。
あと、オープニングで流れる「あの曲」、知っているとニヤリだよね♪

ひとくず

ひとくず

映像劇団テンアンツ

本多劇場(東京都)

2025/07/04 (金) ~ 2025/07/09 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

杮落とし観劇
遂に劇団念願の本多劇場での公演
おめでとうございます

お話は説明通りで不器用な登場人物たちの
幸せをつかもうと足掻く落涙の物語でした
休憩入れての3時間半もの長丁場ながら
目が離せない内容でありました

ただ入場時の混乱があり
開演が30分以上遅れてました
でも待ってる観覧客さん方も
大人しく待っていたトコが
愛されてる劇団だなァと思えました

ネタバレBOX

金田も虐待されていて左手には
タバコを押し付けられた火傷痕があり
母親を蔑ろにし自分に暴行を加えていた
男を刺殺した前科があり
生計は空き巣であり
その仕事先で鞠と出会うのです
その鞠にも酷い火傷痕があり
胸のアイロン押し付けでの傷跡話は
実話から引っ張ったと思うけど
ホント酷いです
で鞠の母親も虐待受けてた為に
子供の愛し方が解らず日々を享楽的に
過ごしていたのだが
金田との出会いで鞠含めて3人で
何とか幸せに生きていこうとするが
人並みの鞠の誕生日に
金田の殺人がバレての逮捕となり
プロローグの刑務所の出所シーンへと
繋がって迎えに来た鞠母娘が
車椅子に乗った金田の母も連れてきて
再会するところで終演です
金田母が不器用に息子を愛して
ひたすらアイスを差し出すのが
胸に染みました

基本は大人になった鞠が当時を振り返り
過去シーンが時系列順に上演されていきます

ヒール役の方々の存在感も上手く
慣れた感ありました

劇団の始まりは
大阪の焼肉屋2階15席スタートだったそうで
朧よりは良さげかなー
渋谷のマンション地下7席だったもんな
グッジョブ

グッジョブ

や印企画

シアター711(東京都)

2025/07/01 (火) ~ 2025/07/06 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

デザイン事務所内の群像劇みたいな
人間模様が楽しめた約100分の作品
いろいろと要素を詰め込みながら
綺麗にまとめてあって見応え満足でした

ネタバレBOX

社長を含めて従業員数7名の
小さなデザイン会社が経営の屋台骨となる
クライアントの仕事を取れるかどうか
というジョブ話に亡き先代社長の息子が
一人前になれるかーと
神さま達が絡んでくる話も入り
笑いを取りながらも
七夕祭りまでの3週間を乗り切る話です
先代社長の詣でが祭りと同時で
締めとなるのでした
トレマーズとバック・トゥ・ザ・フューチャーの同時上映を観に行った僕のその後の話

トレマーズとバック・トゥ・ザ・フューチャーの同時上映を観に行った僕のその後の話

カワモとメイメイ企画

阿佐ヶ谷アルシェ(東京都)

2025/07/02 (水) ~ 2025/07/06 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

中々のものだ。バイバイの「ワレワレノモロモロ」等で川面女史の創作的側面をチラ見はしていたが、田中氏原案(自らの半生を記した)、脚本・演出川面の舞台は出来として予想をかなり上回った。
トークにて、川面氏は個人のリアルなエピソードを劇化したいらしく、その感性はもしやバイバイで岩井作品のリアルを元にした創作と舞台製作で育まれたものか、と想像した。
役者のチョイスも秀逸である。アルシェという狭小空間にも合っていた。
手脚の長い菊池明明を、武器として用いていた。二人のコンビは以前春風舎でケラ作品をやったのに遡るが、あの気合の入った本域芝居をやっただけで演劇的ポテンシャルが知れるという代物で。
今後もこのユニットで(不定期でも良いので)活躍を期待する。

平田俊子作品連続上演『夜の左側』『ガム兄さん』

平田俊子作品連続上演『夜の左側』『ガム兄さん』

流山児★事務所

Space早稲田(東京都)

2025/06/23 (月) ~ 2025/07/21 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

まずは「夜の左側」、平田俊子という作家を再発見の時間であった。台詞が面白い。秀逸。
「ガム兄さん」がかつて書かれた脚本で、今作は当時のアパート住いの男が今もそこにいた、という設定と読めるようだ。が特にその事に言及するわけではなく踏まえる必要もない。人生とはかくの如し、の一言で足りる。が、劇中に執拗に言及される「あいつ」が、過去作に実際に登場するというなら興味がある。ゴドーのように観客が目にする事のない存在としてあっても良いのだが、一点、あいつは男なのか女なのか、混乱しそうではあった。仮想のあいつはその時々で違うのか、自分の生涯に決定的な影響を与えた存在が、一人ではないとの含意か、人生の末期にあって混濁した記憶の中の「誰か」を通して自分の人生を捉え返すという事なのか、またはそのどれもか。。
何より塩野谷氏の存在感である。流山児氏は「必ず噛む」が予測内だし立ち方と発声の構えが決まってるので予測内、にしてはどうにか芝居に貢献できていた。龍昇氏も常に変わらないが笑わせる。伊藤女史も役目が判っておる。玄人ばかり揃い踏みの初々しい芝居。

KYOTO

KYOTO

燐光群

ザ・スズナリ(東京都)

2025/06/27 (金) ~ 2025/07/13 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

坂手氏オリジナルと思い込んでいたが翻訳物であった。燐光群の場合翻訳劇はほぼ「本邦初」であるが、本作も非常に興味深く観た。
CO2排出制限目標を出した京都議定書はそれなりに有名だが、今はSDG'sを経てさらに進んだ段階にあるとは言え、意識の面では「慣れ」に拠るものか、相対的に低くなった気がする。ネットの深化によって陰謀論やフェイク、オカルティズムも、様々な「あり得る事実」の一つ程度に光を浴び、等しく無視できるものとなる。現実を捉える感覚が変質し、玉石混淆に存在する有象無象の言説に埋もれて、平準化されると、CO2問題も一旦カッコに括り、「夏は暑い!」けれど「それはそれ」で終ってしまう。
異常気象(以前はこの語句だった気がするが今は「気候変動」?)の問題、実は産業と結びついている眉ツバな分野と自分などは疑う一人だったが、京都議定書を扱うなら脱酸素を「善」とする前提だろうと推測しつつ、温暖化とCO2の因果関係に関する研究がどう絡んで来るのか、芝居の行方を眺めた。

科学の領域の話である「温暖化とCO2の関係」については、劇中ある研究成果に言及されるが、脚光を浴びたその主張は反対勢力の巻き返しにあい、学者は地位を失墜させられる事になる。
本作で「科学的裏付け」について触れられたのはここのみであった。
が、この作品のテーマは別の所にある事が見えて来る。物語としての面白さを語りたいが(今書き始めると長大になる事間違いなし)、日を置いて書いてみる。

花がこがれる

花がこがれる

アユカプロジェクト

シアター風姿花伝(東京都)

2025/07/03 (木) ~ 2025/07/06 (日)公演終了

実演鑑賞

面白かったです。

未来へつむぐ

未来へつむぐ

つむぎジャパン

国立オリンピック記念青少年総合センター・カルチャー棟・小ホール(東京都)

2025/07/04 (金) ~ 2025/07/05 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

最高!圧巻!何もかもよかったです。満点の舞台でした。知覧の特攻隊の話はある意味ベタですが、でも、すごく新鮮ですごく腹にドスン!とくる話と演技でした。中盤あたりから周りからすすり泣く声がしてきましたし。劇中の歌とサックス、最高でした。音響も抜群で聞き惚れました。サックスを吹いているシーンで完全に涙腺崩壊しました。あと、私の真横に下村元文科相大臣がいたことにビックリでした。下村さんの最後のスピーチもよかったし、戦争経験者の話もズシンときました。最高の時間でした。

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