
漂流
HitoYasuMi
ワーサルシアター(東京都)
2018/03/28 (水) ~ 2018/04/01 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/03/29 (木)
昨年の正月以来の同団体の劇場公演。
結論から言うと、前回より無駄なく作り込まれた作品になっており、レベルが上がったと考える。
必然性の無いセリフや、必要性の薄いエピソードが無く、その分、登場人物の内面を丁寧に描くことに注力したことが、容易に想像できる。
作風の変化については、正直、意外であったが、個人的には肯定的に捉えている。
前回は3に近い4という評価をしたが、今回は4と言い切れる内容であった。
あ、あと、他の方も指摘しているが、定刻に開演したのは、素晴らしい。

Cendrillon
チームジャックちゃん
シアターKASSAI【閉館】(東京都)
2018/03/21 (水) ~ 2018/04/01 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/03/30 (金) 19:00
座席1階2列
どうも、継母の立ち位置がよく判らない。
長女は家督を得るために義理の父を夫と共に謀殺する。それを次女に見られたことから、誰にも喋らないと誓う彼女に常に猜疑心をいだくようなる。義理の父の死によって、家督は長女夫妻のものとなるが、夫を亡くした母親(こちらは実の親のはずなのだが)を、蔑むような態度に出る。
現在の法律では、継母が家督一切を相続するだろうし、ましてや実母であれば、それほどまでに排除したりすることはないと思うのだけれど。

ウルトラヒーローバトル劇場! 第29弾
博品館劇場
博品館劇場(東京都)
2018/03/30 (金) ~ 2018/04/01 (日)公演終了
満足度★★★★
私の観た回はいつになく子どもが多かった。いつもの大きいお友だちもいましたが、久しぶりに子どもたちの「がんばれ〜」の声が大きかった気がして安心しました。ウル友さんが博品館は初めてと言うお子さんを連れて来ていましたが、日頃はフィギアの大きさのウルトラマンや怪獣が巨大(フィギアに比べたら)なので怖がっていました。それもだんだん慣れていくのでしょうね。ずっと観ているので、ついつい新しい巨大ラスボスにしてよ!なんて思ってしまいますが、世代交代していくので大丈夫なのかな。

焔~ほむら~
JACROW
駅前劇場(東京都)
2018/03/28 (水) ~ 2018/04/01 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/03/30 (金) 15:00
座席I列11番
インパクトのある冒頭シーンを見せた後は従来と較べて穏やかなタッチで進み「日曜劇場JACROWバージョン」か?(笑)と思わせて、しかしいつの間にやら不穏なナニカが漂い始めている、みたいな。そしてそれはいつものようにハッキリしたものでなく、喩えて言うなら前作までは物語の傍らを流れていた「どす黒い液体」が今回は気化して「気体」になり空間に漂っている感覚?
で、「マトモな感覚を保っている(ように見える)人」とか「ズルい企みをする小悪党(?)クラス」とかはいるものの、明確な「悪役」がいない、どころか各人物の立場・心情がワカってしまい「一体誰のせいなんだ!」のまま終わるのが何とも言えず、それはある意味リアルで現実世界に近いかも?
そう言えばここ半年~1年の間に霞ヶ関方面の事案で報道を賑わせた言葉もいくつか出てきたっけな(笑)

山歩き
イナセナ企画
赤坂エノキザカスタジオ(榎坂スタジオ)(東京都)
2017/12/13 (水) ~ 2017/12/17 (日)公演終了
満足度★★★★
まず、日本ではお目にかかれない作品であろう。
日本の演劇は、日本の現代に対するマクロな視点が抜け落ちている。現代の個人を描いた作品はゴマンとあるが、現代の社会に向き合ったものは、中々、ない。社会的な対立に踏み込む恐れもあるからだろう。
が、同作は、ネット社会やグローバル化、それに伴う新たな形のナショナリズムの勃興など、諸問題を炙り出している。
テレビやラジオ、勿論、ネットなどなかった時代に、演劇が担っていたであろう風刺や、警鐘といった役割が、今でもドイツではちゃんと意識されていることが理解できた。
私自身の演劇に対する向き合い方に、一石を投じてくれた作品でした。

荒天~こうてん~
劇団黒胡椒
上野ストアハウス(東京都)
2018/03/29 (木) ~ 2018/04/01 (日)公演終了
満足度★★★★
狭い舞台の半分は生オケで臨場感たっぷり。 愛を知らない男の愛とはまるでストーカーのようだった。終わり方がなんだかスッキリせず もしかしたら続編ありかな・・・(真白の子供が花魁になって父に復讐とか妄想)と思ったりして。

小栗上野介忠順
劇団め組
劇場MOMO(東京都)
2018/03/28 (水) ~ 2018/04/01 (日)公演終了
満足度★★★★★
正直 小栗上野介のことなんて何も知らなかったが この芝居を見て彼こそ英雄でしょ!!と思いました。何処まで史実も基づいているのか調べてみようかなとも。 岡田以蔵同様 今回も若手?チームを見ましたが 菅原さんはもうしっかりとめ組の看板ですね。とても良かったです。

丹青の三方一両損
深川とっくり座
江東区深川江戸資料館小劇場(東京都)
2018/03/30 (金) ~ 2018/04/01 (日)公演終了
満足度★★★★★
とても面白かったです!落語の「三方一両損」を知らなかったので、意味が分かった時は、落語の面白さを再認識しました。
役者さん達の演技は、動きも表情も豊かで、観ていて楽しい気持ちになりました。大満足でした!

ヤシの木
トリコロールケーキ
北とぴあ カナリアホール(東京都)
2018/03/21 (水) ~ 2018/03/25 (日)公演終了
満足度★★★★★
とにかくシュールな世界観にハマってしまいました。巧みな女優陣に混じって、作演出の今田さんが何か言う度に面白い。どうしてこんな演劇を発想できたのか不思議です!

徒花
teamキーチェーン
d-倉庫(東京都)
2018/03/28 (水) ~ 2018/04/01 (日)公演終了
満足度★★★★★
「笑い」や「デフォルメ」には一切頼らないドラマ“力”。
水が高い所から低い所へと流れるが如く、主人公達の抗えない運命が徐々に見えてきたとしても、この目で彼らの行く末をしっかりと見届けたい!と強く思いながらの観劇でした。
私にとっては1年チョイぶりのteamキーチェーンさんですが、その進化ぶりは目ざましく、若くしてここまで円熟した公演を打つまでに達していたとは・・・驚きです。
事件勃発前、和やかな日常シーンからもう既に漂う哀しい予感・・・その理由は舞台上手にもあるのですが、それ以外でも何かあったはず・・・一体何が隠し味なのか、後々まで残る不思議感・・・以前の公演でも似たような感覚になった記憶が蘇りました。
その後の展開は、もう一気にストーリーの波に飲み込まれるしかなく・・・
主演以外の役者さんの存在感もどんどん肉付けされ、作品がより大きく、より豊かなものへと成長していく醍醐味。
これだけの豊富な人材は劇団の財産であり、見事に活かしきったのは劇団の力量があっての事。
東野圭吾張りの面白さだったなーと思いつつも、仮にその小説をそのまま表現したからといって同等の面白さが保証されるものではないのが舞台の難しさ。
やはり良質なストーリーがあって、更にそれを最大限に引き出す演出と演技力が伴わなければ中々到達できない生舞台の底意地悪さを見事にクリアーしていたのだなーと納得しつつ、今夜は回想に浸りたいです。

焔~ほむら~
JACROW
駅前劇場(東京都)
2018/03/28 (水) ~ 2018/04/01 (日)公演終了

海賊
NBAバレエ団
東京文化会館 大ホール(東京都)
2018/03/17 (土) ~ 2018/03/18 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/03/17 (土)
大好きで応援していた宝満直也くんが、新国立劇場バレエ団からこちらに移籍しました。
その初めての作品で、彼は悪役のボスパシャ・ザイードを演じ、振付助手も担当しました。
この新製作の海賊では、パシャ・ザイ-ドもたっぷりとダンスがあり、すご嬉しかったです。
演技力もあり、キレキレダンスの彼は、とてもかっこいい悪役でした。なので、逃げ出したいギュルナーレ(佐藤圭さん)はここにいてもいいじゃないのぉと、思って観てました(笑)
振付はどこを担当されたかは知らないですが、男性ダンサーさんの踊る場面がたくさんあって、大満足でした。迫力があり、盛り上がりました。
宝満くん、新国立劇場バレエ団を辞めたのはバレエ団にとって大きな損失だと思います。彼ほどの才能を生かしきれなかったのは、残念としか言いようが無いです。でも、彼が選んだ新天地で、彼の持ち味をたっぷりと生かし、これから世界に通用する振付師、ダンサーになっていただきたいと思います。応援します!
奴隷アリが、なんと!新国立劇場バレエ団のプリンシパルの奥村康祐くんでした。すごいことですよ!
我らの王子が奴隷あせるしかし、ダンスシーンたっぷりで、そのクオリティの高さを、しっかりと見せ付けてくれました。
品のよさと輝きは隠せないので、どこかの王国の王子が幼い頃に誘拐されて、奴隷になったのね・・・・と、お友達と話してました。
しかし、まさか奥村くんのアリを観れるなんて!至福でありました。
申し訳ないほどにこの二人しか観ていなかった私ですが、新しいものを作り出したバレエ団のエネルギーに拍手です。
ちょっと欲を言えば、主役二人の女性ダンサーさんの衣装がとても似ていて、わかりにくい感じでした。
もっと変化があったほうが、良かった気がします。

平穏に不協和音が
演劇企画集団LondonPANDA
小劇場 楽園(東京都)
2018/03/29 (木) ~ 2018/04/01 (日)公演終了
満足度★★★★★
見てきましたー.
めっちゃ良かったですー.
仙台公演もあるらしいので,オススメします!
日常をあれだけ見事にすくい上げた脚本もすごいですし,
それを芝居で再現する役者さん,演出さんもすごかったです.

アメージング八犬伝
サムライ・ロック・オーケストラ
ディファ有明(東京都)
2017/04/28 (金) ~ 2017/04/29 (土)公演終了
満足度★★★★
今回の演目は「アメージング八犬伝」もちろんあの「南総里見八犬伝」が元になっているので、ヒーローはそれぞれの玉を持つ8人です。そして自分の得意な武器(?)をもって玉梓やその家来の魑魅魍魎たちと戦うという、サムライにはぴったりの演目でした。ヒーローたちがかっこいいのはもちろんですが、玉梓や蜘蛛女、蛇や化け猫もその身体能力がすごかったです。原作ファンの私としては、八房もちゃんと登場させてほしかったですがあの長い物語を全部と言うのは無理でしょうね。

曖昧な犬
ミクニヤナイハラプロジェクト
吉祥寺シアター(東京都)
2018/03/22 (木) ~ 2018/03/25 (日)公演終了
満足度★★★★
舞踊のほうでなく演劇舞台であるミクニヤナイハラを観るのは昨年の吉祥寺に続き二度目。nibrollは何度か観て既にお気に入りだが、こちらは実験的「演劇」である。以前NHKで放映された『青ノ鳥』、DVD『五人姉妹』を映像で観たが、このプロジェクトはかぶりつきで、息がかかる距離で観たい、と思った。今回は「台詞はまくしたてながら走る」ノリを離れ、比較的穏やかに発語していた。いずれにせよ台詞がミソなのに変わりなく、矢内原美邦が自身のテキストで勝負したパフォーマンスという事になる。舞台成果は、この時の自分の注意力では台詞を「追う」のが精一杯、パフォーマンス全体を見渡せず。昨年と今年、吉祥寺シアターの後方の席は「遠く」感じてしまった。一回り小さな劇場空間で狭い思いをしながら観てみたい。

わが家の最終的解決
SOLID STAR
シアターサンモール(東京都)
2018/03/28 (水) ~ 2018/04/01 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/04/01 (日) 17:00
Aga-risk Entertainmentが2年前に初演した大傑作。前半は登場人物にアガリスクのメンバーの残像が重なりましたが、後半は今回のメンバーのペースにぐいぐい乗せられました。人類の黒歴史の時代を愛と友情とその場の取り繕いで乗り切るという猛毒と大爆笑の2時間。モンティーパイソンも彷彿。

トリスケリオンの靴音
サンライズプロモーション東京
赤坂RED/THEATER(東京都)
2018/03/28 (水) ~ 2018/04/08 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/03/29 (木) 19:00
赤澤ムック演じるロックンロール姉ちゃんが大迫力。最近、脚本や演出が多い人なだけに、久しぶりに生の演技を見ることが出来て感激。ちょっと泣ける話。

ハムレットマシーン
OM-2
日暮里サニーホール(東京都)
2018/03/22 (木) ~ 2018/03/24 (土)公演終了
満足度★★★★
東独の演劇人として伝説的に轟くハイナー・ミュラーの代名詞的作品を、初めて目にする。絶えずよぎる「旧作品を今やることの限界」への懸念と、演劇史に刻まれた作品に触れることの期待を、ともに燻らせつつ座席に着いた。
OM-2は二度目になるが、いずれ抽象的な舞台になる事は覚悟の上で、「お茶を濁す」のでなく前傾で表現に向かう作品になっているかどうか・・境界を超えられるのかどうかを見ようとする自分がいた。
某評論家と同姓同名の中心的俳優が登場。と、いきなり金属バットでテレビや冷蔵庫を叩き始める。ステージでギターを壊すジミヘンやら鍵盤にナイフを突き立てるキースエマーソンが頭をよぎる。・・60~70年代の前衛表現は破壊にあり、(冷戦を淵源とする)構造は自分らを囲う目に見えない堅固な壁であって、「壊す」表現は「壁」の発見・再認識を促す運動的意義があった訳だった。
一般論を続ければ・・いま物を叩き壊す行為が、プロテストの行為として飲み込みづらいのは、今の時代は様々なものが本質のところで壊され、または壊れている。破壊の向こうに、何か(希望)があるとは考えにくい時代なのである。とすると破壊は「贅沢な遊戯」の類か、出口を失った自暴自棄のイメージしか浮上しない。
ただし、この公演のパフォーマンスは「一般論」からの把捉を許さない毅然とした何かがあった、ような気がする。そう思いたい? いや実際、目を離させず飽きさせず、興味の持続を可能にしたのは、役者の仕事に拠るところが大きい。そして演出・・円形に囲んだ客席のその後ろを自転車が走る。冒頭、中央に巨大な壁があって電話で会話する男女の片方は見えない。やがて巨大壁は吊り上げられ天井に張り付く。当日パンフにもあるタイトル付の数場面が、それぞれ異なる趣向で展開する。この構成からして詩の構成に似て断片的だが、それぞれ視覚・聴覚、また触覚を刺激する印象的な情景が作られ、場面に潜む美学的なメッセージを読み解こう(感じ取ろう)と味わうことになる。
『ハムレットマシーン』は今年の「現代劇作家シリーズ」(d倉庫)に取り上げられ(OM-2公演もその関連企画)、ハムレットマシーン特集年である。テキストは翻訳本で15頁程度。詩的で難解な、隠喩に満ちて皮肉の利いた、シェイクスピアのテキストや社会状況をいじり倒したような文章だ。どの役がどの台詞を言うように指定したいわゆる戯曲でもなく、H・ミュラーがこれを演劇として世に出して評価されたならば、(テキストとしては現代批評性において評価はされようが)上演の形態に特徴があったのではないか・・とは想像である。
ストーリーは編まれておらず、ベースとなる「ハムレット」以上のどんなストーリーを貴方は欲するのか?と反問されそうな勢いで従来の戯曲様式を平然と踏み倒し、ただただ言葉が連ねられる。これを読み解いてからでなければ判らない舞台、とは演出の敗北だろうが、高度に「現在的」な原文を、上演することとは上演する「現在」へ翻案するという事であり、演出家にとっての難物であると同時に挑戦しがいのある山であるのかも知れない。
「観る」自分は、何か言語で表せる「意味」に読み替えようとするが、文脈のみえない示唆的な場面を「意味」に読み換えることは(原作を結局読まなかったし)できなかった。感覚的な刺激の中からサブリミナル効果のような「意味」的なものを感覚的に感じ取っていて、眠っているのかも知れない。

春暁-しゅんぎょう-
野生児童
「劇」小劇場(東京都)
2018/03/29 (木) ~ 2018/04/02 (月)公演終了
鑑賞日2018/03/29 (木) 19:00
価格3,000円
中国人である母が統合失調症になってしまった家族の話にして「半分事実・半分フィクション(冒頭の主宰曰く)」というしんどい内容に加えて徒に時制をシャッフルするのでその度に「いつに飛んだ?」と考えさせられて疲れた。
現在以外に主人公ポジションである次女の大学時代、高校時代、少女時代、まだ彼女が生まれる前で長女のみの時期、両親の馴れ初めなど決して少なくはない過去を細切れに何度も出して見る側を混乱させるのは効果的とは思えない。
そんな内容に加えて公開ゲネプロとはいえタイムスケジュール管理が恐ろしく杜撰で開演前にストレスを与えられたこともあり「So what?」に終わったのは残念。

ブラインド・タッチ
オフィスミヤモト
ザ・スズナリ(東京都)
2018/03/19 (月) ~ 2018/04/01 (日)公演終了
満足度★★★★
通し券があれば毎日観たい芝居だった。
その理由は置いて・・
二人芝居。観客にとっても、視線を散らす事のできない濃縮された時間だが、開幕から力みなく、いつしか誘われた。
燐光群の、というよりは、坂手戯曲の調子であったと、体言止めや「である・だ調」の頻出に改めて思うところなれど、会話で状況が立ち上がるストレートプレイのモデルのような作品である。刑務所の面会室のボード越しでなく生身の再会を十数年ぶりに果たした男女二人が、新たな二人の結婚生活を始める一軒家にやってきた、その瞬間からの恐らく何ヶ月間かの物語。関係の物語だ。
少し遠めの過去と、ある事に関する真相が、徐々に顕現してくる。まずは場を認識させ、近い過去を類推させ、二人の距離を推測させる、言わばベールが剝がれて行く過程がうまい。
男は「運動」の中で、ブラインドタッチというバンド(二人組み)の片割れとしてライブ活動をしていたが、騒乱事件(抗議する市民と機動隊との衝突)に巻き込まれ、騒乱を主導したとしてバンドのもう一人の男と共に有罪となり服役する。よりリーダー的存在とされて冤罪で服役する片割れを残して、彼は再審の結果16年目に釈放された。
男と知り合って間もなかった女は、二人を救出する運動に打ち込み、その過程で男と結婚した。女は男との関係について、また相手への配慮について、言葉にし得る限り言葉にし、二人の間の信頼関係が続くことを前提にあらゆる事を話題にする。それは男の社会復帰への道を伴走しようとする行為であり、男は女に応答するべく、言葉を紡いでいく。
その中心にあるらしいのは、音楽、ピアノであった。
女は新しく借りた部屋にピアノを置いている。運動の世界では著名なバンドであったブラインド・タッチの一人が解放された・・男の釈放は「運動界」ではそう認識される。だが沖縄の集会に招かれ、ジョイント演奏を乞われたと女に告げられた瞬間、彼は演奏を強く拒む。
理由はひどく納得できる衝撃的なものだった。即ちバンドを主導していたのは譜面が読める獄中の片割れであり、曲の主軸は彼が演奏し、男のほうは破壊的な音の介入をして掻き回す役であった。譜面も読めない。
この告白への女の反応がよい。少なからず動揺して一瞬視線が宙を泳ぎ、「事実」の確認のための質問を続けた後、女を支えていた何かが脆く崩れそうになる予感が走るが、女は彼との関係を続ける方途を探るのだ。
借りた一軒家の庭に、男は離れを作り始め、暗転のたびに基礎、柱、全体と出来上がっていく。ほぼ囲いができたある暗転の後、なぜか女がその部屋に閉じこもっている。「独居房」的に使った感想を言う。「あなたはよくこれで何年も耐えられたわね。」
場面は前後するが、話題は性的な事柄に及ぶ。つまりは、何でも話題にする女のある種の意志の表れだ。と、男はアレが「できない」事を女に詫びる。女は自分が悪いという。私の方が年上である事を言い、何かの団体の○○さんとはやれたのかと訊くと、男は強くは抗わず、認める。「一緒に住む意味とは」「結婚とは」「繋がる事について」・・。
女は自分が出て行く、と言う。男が自分のほうこそ、と。すると女は「この部屋の家賃もあなたの救出支援活動のカンパが財源。あなたに住む権利がある」と明快に答える。執着を断ち切った、突き放した語りの後ろに、女の内にある情熱を、観客は仄かに感じ取る。女は男へ介入し続ける。男の意固地な拒否をみて、怪我を装うために指に包帯を巻きはじめる。「これは二人の新婚旅行だね」と知人に言われた沖縄行きを断行する決意を示すと、男は渋々首をタテに振るのだった。
会話の前後関係まで覚えていないが、女は男のその「演奏」に対するこわばりまでも最後は溶解して行く。ある一言が確か、あった。が忘れた。いやそれは女が弾くピアノの音だったか。。
「離れ」の壁を引ん剥くと、そこにはもう一台のピアノがあった。女はそれを貯金をはたいて買った自分用のピアノだという。男には、男のために買った、部屋に置かれたピアノを「あなたはそのピアノを弾いて」と、あてがう。
無言の間。男は、ピアノへと近づき、手を伸ばしてみる。その意味するところを観客が回顧する間もなく、二人は「演奏」を始めるのだった。