テント演劇 B1F52LLLLLLLLLLLLLDDDDDDDDDDDDKKKKKKKKKKKKK 公演情報 劇団身体ゲンゴロウ「テント演劇 B1F52LLLLLLLLLLLLLDDDDDDDDDDDDKKKKKKKKKKKKK」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    今作は2025年度、東京芸術大学卒業制作品である。

    ネタバレBOX

     演劇は書物や諸芸術が受け手を必要とし受け手に受容されて初めて完結するから、今回はキャンパス内にテントを設営、このテント内で上演する運びになっている。提示されるのは近未来のディストピアだ。オープニングで地球全球で起こった核戦争の経緯が伝えられる。実際に我々が体験してきたことに繋げてみれば、一時使える核兵器として新聞紙上でも騒がれた戦術核に関する記事が目についた。が、今作に登場するのは更に小型化された核兵器と考えられる。
     としても核兵器の側に立てば条件の良い(天候など)であればそして被災者が十全な防御施設に護られて居なければ瞬時に数万の方々が命を落とす威力を持っていることは想像に難くない。使用する側は水爆等の被害に比べれば卑小と判断するのは目にみえており、そのように各国の責任者が考えてどんどん敵地を攻撃した結果、人類のみならず、地球上の殆どの生き物が命を絶たれた後の話として紡がれる。生き残った生き物と謂えど残留放射性核種からの被ばくを避けることは当然できないばかりではない。生きる為にはエネルギーを確保しなければならない生き物である我々は、食糧を得なければ生きてゆけないから役に立たない者、無用と見做される者達には一切食料を与えることができない。ではどうすれば核戦争後の自分達生き残りが、生きてゆけるか? もっとも明快な答えは1つ、余計者を抹消することである。今作では、未だこの世界に生き物が溢れていた時代には食料自給率は可成り高く、何か大きな自然災害や複合災害等が出来しない限り命を失うようなことは極めて稀であったが、描かれている世界では異なる。食べる物が無い、というのが日常だから役立たずや無用な者は処分される。処分する者らが感情を動かすことは一切無い。既に生き残る為の“愛”が定式化されて絶対的な支配力を各生き残りの思考の総てを縛っているからである。このようにして生き残ったこのコロニーは一説によれば既に1億年を経たと言われている。感情が失われて既に長い年月が経っているのである。そんなコロニーにも問題はある。教育システムが存在し学校がある。教師は極めて論理的であり、物知りである。放射性核種の多くは既にその悪影響を減衰していたが無論ウラン238のように半減期が45億年以上という核種も存在しているから被ばくの危険が皆無になったという訳ではない。また近親者同士の子孫は放射性核種の悪影響が仮に無くても奇形児等の出生率が高くなることは生物学上の常識である。こういった客観情勢がコロニー存続を絶え間なく脅かしていたことも事実なのであった。
     一方、このコロニーには以下のような祖先神話が存在していた。現在の彼ら蟻は(大多数は彼女らだが)、彼らの祖は蜂であったというものである。ところが羽を失くした蜂が居た。その蜂は地上に降り地下深くに潜り巣を構築し、自らに似た翅の無い蜂即ち蟻として生きるようになったのだという。生殖は女王蟻となった個体と翅を持つ雄蟻とが交尾することで行われる。女王と交尾する、或いは交尾候補となった雄蟻以外の雄は総て処分されるのは既に述べた通りである。
    処分する者達に感情は無いからごく機械的に命は奪われ殺害者達に何の痛みも無い。アウフヘーベンされ根本原理として機能する“愛”が普遍であると信じられている以上、この行為に疑義を感じる者は存在しないのである。然し乍ら近親者同士の交接は奇形を生み易い。つまり血が濃すぎると遺伝的にマイナスの結果を生じ易いという事実は避けられない。そこで授業に遅刻しそうになると何故か歌われる、そしてその歌詞に何となくウキウキさせられることの理由を探すうち、このコロニー以外の生き残りと関係を持たねばならない、という意見が生じた。だが度重なる核戦争を生き延びた者の絶対数は未だ少数であり、他の生き残り達が何処でどのように生きているのか? 正確に知る者は居ない。また、仮に生存者が居たとしても自分達と同じ蟻なのか? 或いは全く異なる生き物なのかも知ることができなかった。このような状況にも拘わらずコロニーの存続の為、血の更新は絶対達成せねばならぬ目標である。そこで取り敢えずは自分達のコロニーの近在各所に偵察隊を派遣して情報収集や、実際に見付かった場合は身柄の確保とコロニー参加者として協同することは不可欠となった。無論、若い個体であることが必要であり唯一、産む能力を持つ女王と交接できなければならない。今作では、そのような雄の個体が見付かり転校生としてコロニーに迎え入れられる。然し、コロニーの趨勢は今迄述べてきた通り。外界を一切知らなかった蟻達の前に現れ転校生として迎えられた生き物の正体が自分達と同じ生き物であるか否かという根本的問題に正解が出ている訳でもない。遅刻しそうになった時に体内の何処からか湧き上がる歌の意味する処も正解と思える答えであるか否か確定できない。五里霧中の状態でコロニーは如何様な展開を遂げるのか? また単体でコロニーに参加することとなった転校生のアイデンティティーは自任し得るのか? 等々の問題は未解決のままである。今作はこのような問いを孕んだディストピアSF演劇と観た。極めて面白い。

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    2026/02/08 16:05

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