盲人達 公演情報 錬肉工房「盲人達」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

     演劇という表現形式に於いて最も難しい事とは何か? それは、公演が常に新古に於いて斬新でなければならないことである。

    ネタバレBOX

    人は生まれ幼少期を経て子供になり思春期を過ぎて若者に成長し大人の仲間入りをする。其の後、大人としてかなり長い時を過ごし老いて死ぬ。この何れの時期に於いても芸事を発表するプロとして生きる場合に要求されるのは、その時々に於ける華である。子役として舞台に立つ年齢は、業界によって異なるが、歌舞伎等は3歳位から舞台に立つこともあるようだ。何れにせよ歌舞伎役者が映画に出演したりすると一目でそれと分かる程質の高い立ち居振る舞いをするのは、演劇好きなら誰でも気付くことだろう。基本的に舞台俳優は単なるTVタレント等より遥かに演技の質が高い。映画にしろ、TVドラマにしろ、映像でしか仕事をしていないタレントの演技は極めて例外的に豊かな才能を持つ俳優を除いてレベルが低い。それをフォローしているのがカチンコによるカット撮影であり編集やエフェクトである。これに対して演劇は舞台上で上演回毎に異なる一回こっきりの勝負である。無論、本番の公演までに役者陣は台詞を仕込み、役と格闘し、他の役との関係を考え、己の役の意味を深く考え己の身体を調整しつつ役作りをする。  
    一方、稽古の時と実際の上演時とは矢張り大きく異なるのが、観客の反応による演者たちへの影響である。台詞そのものは変わらないにせよ、間の取り方や声調の差によって観客の受け取るものも随分違ってくる。このようなことが実際の舞台上演では毎回起こっているので、何が絶対に正解か等ということは無い。だが、スタンディングオベーションを受けるような作品に共通しているのは、演者と観客が当に一体となったか否かにある。演ずる側の方向性が同化を狙うか異化を狙うかの差があっても上に挙げたことは変わらない。
     さて、今作は原作がメーテルリンクである。今作のタイトル作品は初めての人でも「青い鳥」は大抵の人が知っていよう。あの童話の原作者であり、ノーベル文学賞受賞作家でもあった。今作の日本上演は自分の知る限り、静岡で活躍する極めて優れた文化事業集団・SPACが上演したことがある。自分自身は今作のSPAC公演を拝見していないが、かつて何度か拝見したSPAC作品からは極めて知的でシャープな演出に感銘を受けた。
     この演出という観点に関して、今回の公演は、エッジが利いているとか、差異化すべき点をキチンと差異化しているといった作品のメリハリをつけるような創意は感じられなかった。(一、二例を挙げておくと、出演役には1人耳の不自由な役があり、他の役は目の不自由な人々役なのだが、この差がキチンと表現されていなかったし、照明のトーンも殆ど変らず現代の時代状況からは冗長に感じられる台詞と相俟って淀んだようなトーンだった為、鵺的だった等)これらの点が残念である。出演している演者にご高齢の方々が多かった点でプロンプターの役割が多かった点も惜しまれる。以上挙げたような点が災いして今回の上演には斬新さが欠けていたように思う。

    0

    2021/07/03 15:24

    0

    1

このページのQRコードです。

拡大