人皮の本と舞い天狗 公演情報 劇団回転磁石「人皮の本と舞い天狗」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    熱は感じる
     取り敢えず、時空の定かならぬ場という設定である。「奇病」が流行っているが、罹患者は誰もそれと気付かない。だが、その病に罹ると、目が霞み、口がきけなくなり、気短かになって陽光を嫌うようになるという。

    ネタバレBOX

     たまねき博士の下にこんな話を持って来たのは頼朝と名乗る男。弟、牛若丸が罹患しているので診察して欲しい、と頼みに来たのだ。彼は、病をウツロと呼んだ。
     だが、どうやらウツロは、相当に流行っているらしい。そして、この病に掛かる者達に共通していたことは、総ての罹患者がある種の本に影響を受けているらしい、ということであった。そして、その本を入手した者には、一種の導師が、ゲーム感覚で洗脳を施すのだ。洗脳された人々は、内実を失い、形態だけを保つ皮膚のような存在になりながら、その内実を空虚な導師のプロパガンダに支配されるのだ。そして、自分達とは異質の実体を伴う者を見付けてはそれを異形の者と見做して排除しようとする。詰り、殺そうとするのである。彼らは、異形の者を天狗と呼び、天狗と呼ばれていたのは、牛若丸であった。
     ところで、頼朝が、成人してからの名であるのに対して、弟が牛若丸、と幼年の名であることは、恐らく、鞍馬山で修行したとされるその幼少年期の史伝の影響で天狗が出てくるのは、無論、牛若に教えた大天狗を表していよう。牛若は弟子筋であるから烏天狗なのである。
     まあ、この辺りのパズルは解けるのだが、たまねき博士と玉葱の関係、人の臭いと生命の系を為す象徴としての女性性というものの連携が普遍的な所で見えてこない。従って、牛若との関係も表層に留まる。役者陣、関係者の熱は感じたが、もう少し、民族の古層に分け入り、鋭いメスを揮って欲しい。

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    2014/03/29 11:21

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