Hanger Boy 公演情報 おぼんろ「Hanger Boy」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    コクーンを目指すなら
     衣装やメイクのセンスが素晴らしい。音響、照明も効果的だ。話の内容としては、やや単調に過ぎた。リリックではあったが。こういう作品なら稲垣 足穂流のテイストを出すのも面白いかも知れない。口上の言い方、論理の展開も上手い。パフォーマンスも上手だ。然し、イマイチ、インパクトが弱い。
     言葉に比重を掛けるより、身体そのもの、存在そのものを叩きつけるような荒々しさがあっても良い。それから、コクーンを目指すなら、ただ、倍々云々ではなく、チケットが入手しにくい飢餓感を、観客が持つような発売方式も考えるべきだろう。そういうテクニックも必要である。コクーンを目指す、ということで今回の評価は少し厳しい。頑張れ!!

    ネタバレBOX

     随分先の未来の話。鉱山の地下で掘削用に作られたX2号は、長年の就労でポンコツ化。スクラップに出されるが、すんでの所で主人に買い取られる。だが、ローラーで片足を潰されかけた為、片足は不自由だ。主人は画家で大邸宅に住んでいるが、X2号の仕事は、主人の脱ぎ散らかした衣類を自らがハンガーになって管理することである。
     製造されて初めて地上に出た時には、色のある世界や太陽の眩しさ、月の冷たく銀色に光る美しさに感動したX2だったが、主人が出掛けている間も退屈はしない。たくさんの絵を見たり、主人との会話を思い出したりして時を過ごすからだ。主人との約束は、クローゼットを開けないことだ。暫くは、平穏な時が続き、徐々に、この生活にも馴染んできたX2だったが、或る時、ドーンと物凄い音がして、邸が身震いした。主人は、これは、月の寿命が尽きて、向こうの山の裏側へ落ちる音だと説明してくれた。同時に、窓のカーテンは締め切ろうとも。X2はおとなしく主人の言う通りにした。主人の描いた絵には、山の向こうの景色もあった。大きな丸いものの傍に馬が居た。X2はこの絵が好きで、丸い物は何なのかを訊ねた。それは、死んだ月なのだということだった。
     ある時、主人は、山の向こうへ出掛けなければならないと告げた。餞別に赤い衣を呉れた。ロボットに寒暖は余り関係ないのだが。
     ところで、月は何故落ちてくるのか? ずっと始めのうちは静かだったのに。そんなことを考えていたX2号はある時、机に突っ伏して泣いている主人を見た。月が落ちた。それで彼には、主人が泣くことが、月が落ちる原因だと納得されたわけである。
     主人が出掛けて長い時が経った。月は、益々、良く落ちるようになっていた。そして、終に月は邸を直撃した。邸の壁、天井は崩れ落ち、X2も下敷きになったが、大した故障もなく抜け出すことが出来た。だが、邸は崩れて殆ど瓦礫と化していた。その中に、クローゼットが見えた。X2はクローゼットを覘いて見た。其処に在ったのは、ハンガーに掛けられた主人の服だった。
     目を外側に転じると、其処は、大きな鉄の残骸が散乱する荒野で、所々、炎をその赤い舌を延ばしており、主人が出掛けた時と同じ服を着た人間が、赤いオイルを流しながら倒れていた。時折、ダダダダダッというような音も聞こえる。彼は、不思議な事に寒さを感じるようになっていたが、主人を探しに山の向こうへ出掛けることにした。主人が寒がっていたら、貰った衣を主人に着せてやろう、と。「ああ、面倒臭え!」

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    2013/10/07 02:41

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