満足度★★★★★
「震災後」のために
「震災前」に公演が決定していた、「震災後」のための作品。とてもいいものを観た。
天災というのは唐突すぎて、いっぺんにの中にいろんな詳細を持ってかれたあとは、しばらくそれどころじゃない時間に懸命になる。今現実はまさにその渦中だろう。
けれどいつか彼らには、持ってかれたこまごまとしたものを取りに行く時間が必要になるはずだ。
この作品が描いてるのはそんな、彼らたち自分たちが必要になる「これから」だ。
しかし何より、重みのある題材を取り上げつつも、それをありがちな胡散臭さや湿っぽさとして見せないところがいい。
高野文子やこうの史代のマンガの読後感のような、あるいはマームとジプシーのような、言葉のたおやかな折り込みと女性的な繊細さ。
噛み締める程に旨味がでる味わい深い乾物のような作風は、決して理解しやすいものではないので、明快な物語が好きな人にはつまらないと思う人も少なくないだろうが、好きな人にはたまらないと思う。
役者は言葉の使われ方の妙も相まって印象に残る人ばかりだったが、特に双子姉妹の演技と声は今まで観て来た中でもかなり上位の気になる役者。音楽も好きだなあ。
まあとにかく観ていっぺんにファンになった。最近ここにレビューしてなかったのだが久々に書きたくなるほどによかった。いい劇団だ。
次回予告に高野文子の中編「奥村さんのお茄子」が入っていたので、観に行けたら行きたいなあ。