満足度★★★
ネタばれ
ネタばれ
ネタバレBOX
宮沢章夫の【子どもたちは未来のように笑う】を観劇。
セックス、妊娠、出産、障害児、
そして子供を持たないという選択...。
それぞれのエピソードとリーディングを交えながら、子供を作るという事について論じていく物語である。
鳥籠のような出口が狭いセットで綴られる様々な出来事。
まるでそれは狭い我々の国土の様でもあり、自由を失った我々の姿でもある。
そしてその中で右往左往する我々の姿。
テーマを先に持ってきて、それを論じていく芝居ながら、主義ありきの退屈な芝居にはならず、短い物語の羅列と多種多様な小説をリーディングしながら、観客もテーマについて自ずと問いかけてしまう芝居でもあった。
流石、宮沢章夫である。
お勧めである。
満足度★★★
ネタばれ
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ネタバレBOX
マームとジプシーの【ドコカ遠クノ、ソレヨリ向コウ 或いは、泡ニナル、風景】を観劇。
JR福知山線の脱線事故をモチーフにした、記憶を辿る物語である。
今作は初期の作品の焼き直しであり、俳優も一般から公募していたようだ。
ここ最近では、以前に行っていた反復を使った表現方法を止めて、違う形で物語を語っていたのだが、今作は初期作品なのだろうか?昔の方法論に立ち返っていたようだ。
脱線事故に乗り合わせていた乗客のほんの少し前の瞬間から事故までの間の出来事を、何度なく繰り返される反復動作に嫌がでも当時の事故を思い起こさせる。
過去の作品で、何故そのような事が起こったのか?という確信に迫る程、必要なまでに反復で描いた作品もあったが、今作は事故の惨劇を風化させないというメッセージを記憶に置き換えている。
そしてその記憶も物語を通してだけではなく、五感を通していく感じさせてくれる技法には、武者ぶるをしてしまうほどだ。
過去にこれだけの演劇があっただろうか?
それほどまでにこの劇団は、とんでもないのである。
お勧めである。
満足度★★★
ネタばれ
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長塚圭史の戯曲【イヌの日】を観劇。
演出は、ゴジケンの松居大悟。
好きだった女の子、むかついた奴など同級生四人の男女を防空壕に15年も好奇心で監禁してしまった少年・中津。
そこに閉じ込められてしまった男女には、食料などをちゃんと供給されているからか、立派な大人に成長しているのだが、社会との接点がない為か、中身は子供のままである。
そしてある日、中津の友人・孝司が彼らの世話をする事になるのだが、この異常な状態を阻止しようと、監禁された彼らを逃がそうとするのだが......。
作・演出の長塚圭史版は観ていたのだが、すっかりその事を忘れてしまい、観終わった翌日にやっと気が付いた?という体たらく。
だがその当時は、それほど印象になかった作品であったようだが、演出家が変わって時間を得て観て見ると、戯曲が放っているメッセージにはゾッとしてしまうほどだ。
今作は15年も監禁された異常な状態の中で、監禁する側、された側の心理状態を描くのではなく、人間が生きてく上で取得する道徳、教育、社会性などを得る事が出来なかった者が社会にどれだけ悪影響を及ぼすのか?という警告が戯曲の裏に隠してあったようだ。
常に観終わった感が充実する長塚圭史の戯曲だが、その裏を読みとらなければ大損をしてしまうカラクリには気をつけなければいけない。
傑作戯曲である。
満足度★★
ネタばれなし
アマチュア劇団?という感じは否めないが、扱っている内容が興味深いのが特徴的だ。
ややチャリT企画に似ているかも?
満足度★★★
ネタばれ
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ネタバレBOX
玉田企画の【あの日々の話】を観劇。
大学サークルで総会を終えて、カラオケをしている男女の話し。
毎度の事ながら、男女の関係を妙な空気感で見せている。
密室劇で、ポツドールにやや似ていて、好きだけど告白出来ない?性交したいけど出来ない?というモヤモヤな男女の気持ちを、現代口語演劇で表現している為か、観ている観客はたまらなく面白い。
呑気な恋愛物かと思いきや、平田オリザの様にほんの少しだけ社会背景を見せてくれる辺りは抜群である。
何時観ても外さない劇団である。
お勧めである。
満足度★★★
アンポは?
蜷川幸雄亡き後、革命劇をやる劇団はこれで皆無か?と思っていたが、
いましたねぇ~。
素晴らしい!
満足度★★★★
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平田オリザの新作【ニッポン・サポート・センター】を観劇。
サポートセンターでは、DVや家庭貧困などの無料相談を行っていて、
職員の他に、近所のボランティアの人達も交代で手伝いに来ている。
様々な問題を抱える職員達とボランティアの活躍?を描いている。
解決する事のない数々の問題を、起承転結の境目のない構成で語られていて、開演のベルと共に始まる事もなく、開場と共に舞台では既に俳優が演じていて、客電が落ちることなく、客席が埋まった辺りから徐々に物語が始まっていく。
そしてそこで起きている顛末を、覗いて見ているような錯覚?に落していくのが平田オリザの見せ方だ。
今作もサポートセンター内だけのドタバタ劇のようでありながら、何気ない会話の中から、世界での日本の立ち位置を感じらせてくれる辺りの戯曲とそれをさらりと演じている俳優の上手さは大したものである。
そして大切な事を語っている俳優がずっと後ろ姿で、それを聞いている俳優しか見せない手法は何時もながらである。
劇場に来て、芝居を観て、非日常を経験した!という往来の演劇体感が全くない代わりに、独自のものを作り続けている平田オリザは、我々に別な演劇体感させてくれる。
傑作であり、お勧めであり、面白い演劇である。
満足度★★★
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新宿梁山泊の【新・二都物語】を観劇。
唐十郎の原作で、前作【二都物語】の続編だ。
朝鮮海峡を渡ってきたリーランの物語で、金守珍が描く唐十郎の世界観は話を大きく広げていくのが特徴のようで、大陸をまたいだ話だけに、そこを焦点にしたようだ。
唐十郎の戯曲の良さは、混沌を背景に、誰もが持っている秘め事のような恋愛行為の喜びに浸れるのだが、金守珍は全くそこへは行かず、ダイナミズムを主体にした恋愛物ので攻めてくる。
大きく好みは分かれるだろうが、個人的には全く受け付けないが、これが金守珍の世界観であるのならば、誰も文句は言えないのである。
幸子を演じた女優さんの力強さは群を抜いていた。
お見事!
満足度★★★★
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扉座の【郵便屋さんちょっと】を観劇。
今作は殆ど観る事が不可能なつかこうへいの初期の作品で、絶頂期の彼にもろに影響を受けた横内謙介の作品である。
立ち退きで困っている菜の花郵便局と女性局長。
そこに局長の腹違いの兄・ジョン・センジロウがハリウッドから助けにくるのだが、それによって暴かれる郵便局で行われていた数々の愛の不正と機密。
そしてそれを狙うヤクザ(童貞軍団)と神奈川県警が入り乱れ、壮大な市井の人々の愛の物語が始まるのである。
とても分かり安い勧善懲悪になっていながら、多数の登場人物の背景を自虐ネタでさらりと説明する上手さと、それを伏線として利用する展開の持って行き方には何時もながら圧倒される。
そして時代背景は現代なので、時事ネタは満載である。
こんな説明をすると中身のないただの娯楽作品に思われがちだが、やはりつかこうへいの「人を愛する」という事がテーマになっているので、
やはり熱く、涙してしまう。
そして今作があったからこそ「熱海殺人事件」という傑作が出来あがったと言っても過言ではない。
様々な人達がつかこうへいの亡霊を追っているが、直接関係していなかった横内謙介こそ彼の事を一番理解しているかも知れない......。
お勧めである。
満足度★★★
ネタバレ
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チャリT企画の「アベベのべ2016」を観劇。
政治と物語を上手い具合に交わらせる事が出来る劇団。
それも時事問題を見事に絡ませるのが得意なのだが、それを物語に上手く乗せて、カタルシル?までなかなか行き着けないのが難点ではある。ただ分かりづらい時事ネタを、観客に分かりやすく、興味を持たせようとする狙いは上手くいっているのは確かだ。
そしてそこに行ったら傑作を簡単に作る事が出来るだろう。
今作はそこそこの出来ではあるが、過去に「ネズミ狩り」という傑作があるのだから、今後も期待しよう。
満足度★★
ネタばれ
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木ノ下歌舞伎の【義経千本桜~渡海屋・大物浦】を観劇。
またも歌舞伎である
平安時代末期、源義経は平清盛との源平合戦で勝利を収める。
がしかし、兄・源頼朝に不信感を抱かれ、謀反を疑いまでかけられてしまい、仕方なく都落ちの為に九州に逃れるが、道中に立ち寄った船宿には平清盛の子孫・平知盛が復讐の牙をむいて待っているのだった.....。
平安時代の不安な世の中を、現代の政治、文化と重ね合わせていき、複雑な時代背景などもさらりを描き、小気味良い演出で攻めてくる。
そして戦乱の時代に産み落とされた己の人生、運命な抗いながらも復讐に向かう平知盛の人生は何ぞや?をクライマックスに期待したのだが、どうも今作はそこに焦点を持って行かず、戦っている平知盛を見守る家族、復讐をされた側の源義経の見解、そして復讐を成し遂げられなかった後の平知盛の無念さを描いている。
このような描き方は悪くはないが、物語の展開としては、どう読んでも復讐を最後の大詰めに持って行っているのに、突然違う方向から描き始める辺りから、徐々に観客は失望感を感じ始めてしまう。
折角、観客全員が物語の転に乗り出しているのに、何故ここで観客を路頭に迷わせる流れに変えてくるのかが理解不可能である。
そして転の波に転げ落ちた観客は思うである「この演出家は何がしたいの?」と。
そして終わりにかけては、源義経から見た世界を描くというのも意味が分からずという感じだ。
観客は観たいのは、平知盛の無念の人生観なのだ。その人生観を徹底的に描く事が木ノ下歌舞伎なのだと。
そう残念ながら、今作は演出家の演出ミスなのである。
満足度★★★★
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串田和美の【東海道四谷怪談】を観劇。
故・中村勘三郎から20年来続いているコクーン歌舞伎である。
今作は通し上演を前提に作られた北番である。
誰もが知っている東海道四谷怪談は、お岩と伊右衛問との呪い?呪われた?という話に終始しがちだが、
本来は、江戸城・松の廊下で、浅野内匠頭(塩治判官)が吉良上野介(高師直)に起こした刃傷事件が発端になっていて、
その背景を知らずに、今作を観てしまうと面白さが半減してしまうというカラクリがある。
当時は今作と仮名手本忠心蔵を二日間かけて上演して、
一日目~忠臣蔵(前半)~四谷怪談(前半)
二日目~忠臣蔵(後半)~四谷怪談(後半)~忠臣蔵(最後)
という形態で上演していたらしく、そこに大いなる意味があり、表の仮名手本忠臣蔵、
裏の東海道四谷怪談という事がテーマになっており、表と裏の意味を知ってこそ、面白さが更に増していくのである。
そして刃傷事件でお家断絶になってしまった浅野内匠頭(塩治判官)が吉良上野介(高師直)を討ち入る日までの約二年間の物語である。
今作を観て始めて知ったお岩と伊右衛問の関係、お岩は伊右衛問に殺されたんではなく、偶然死んでしまったという事実、
伊右衛問は根っからの悪い奴ではなく、元々はお岩を愛していたという事実、
そして直助というもう一人の主人公で出てくる事によって見えてくる吉良上野介(高師直)への討ち入り計画、
直助が惚れた女はお岩の妹?などなど驚愕の事実が満載の作品である。
まさしく今作こそが鶴屋南北の戯曲の面白さを垣間見れる作品ではあるが、
そこに串田和美という演出家が手を加える事によって、更に奥深く迷宮な世界が見えてくるのである。
そしてこの因果応報の因を探る事が今作の最高の面白さであろう。
大傑作である。
満足度★★★
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イキウメの【太陽】を観劇。
ウィルスにより、夜しか生きられなくなってしまったゾンビ人間と辛うじて生き残った少数の人達の戦いを描いている。
ゾンビ人間は、感情喪失を失った代わりに、永遠の若さと肉体を得る事が出来るようになった。
そして人口増加と社会は往来の安定を取り戻しているようなのだが、実のところは.....。
決してゾンビ芝居ではないのだが、汚染によって隔離されてしまi,
閉じ込められてしまった街、そして風評被害、差別と今の時代を先読みしたかのような内容である。
2011年に初演らしいのだが、時が経てば経つほど、今作のテーマを真摯に受け止めてしまうようだ。
特に経済の安定こそが、生きてく上での最重要事項?という今の資本主義社会にどっぷりつかっている我々に警告を発している作品だ。
見応えがあり、お勧めである。
満足度★★
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女性作家が愛を描くと妄想以上に歪んでしまうのは何故だろうか?
満足度★★★★
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唐組の【秘密の花園~改訂の巻】を観劇。
演劇史に残る傑作の再演である。
日暮里の古びたアパートに住む夫婦のキャバ嬢・いちよとポン引き夫・大貫。
そこへ間男・アキヨシは、夫婦が抱えた負債の手助けの為に、自分の給料を届けているのである。
大貫はそんなアキヨシの行動を見て見ぬ振りをしながら、金を当てにしているからか、三角関係に甘んじてしまうのである.....。
間男・アキヨシの愛の物語である。
日暮里駅前にある一本のうるしの木、長い坂道、46段ギア自転車、
場末のキャバレー、望郷の港、古びた共同便所、菖蒲湯ともう現代では体感すら出来ない、既に忘れ去ってしまった空想と現実。
そして詩の様な台詞のオンパレードで、アキヨシの愛の妄想の扉を開けてくれるのである。
だがそんな妄想も、現実にはいちよから愛を得る事は出来ないアキヨシの悲しみ、そして永遠の愛を得るには、お互いが結ばれない事が一番だどアキヨシ以上に観客が気が付いてしまう辺りに、大いなる悲しみの答えを見出してしまうのである。
今作は男の物語であり、一度でも間男を経験した事のある紳士諸君なら、必ずラストには涙するであろう。
そして何故、何時の時代も女は男の下を去っていくのだろう?という疑問に取り付かれてしまうのである。
魂を揺さぶられる程の傑作中の傑作である。
お勧めである。
満足度★★★
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モダンスイマーズの【嗚呼いま、だから愛。】を観劇。
一年ぶりの新作である。
四コマ漫画家のブス顔・多喜子は、夫・一貴のセックスレスに悩んでいる。
そんな中、クリスチャンの稲葉夫婦のフランス行きのお別れ会を
漫画編集者、アシスタント、女優の姉とマネジャーで行うのだが、そこで互いの夫婦間、男女間が一気に爆発してしまうのである.....。
男女が一緒に生きて行く上で、精神的な信頼を得ていながら、更に肉体的充足感を得ないと安心出来ないのが人間の性なのだろうか?という考えに持っていくのが本題でもあるのだが、そうなのだと「思う?思わない?」は観客自身の問題として、今作では、男女間の違いや考えを提示はしているのだが、ブス顔・多喜子からすると「思う!」という答えが正しいようである。
あくまでも多喜子の感覚と感情で語られる物語に、違和感を感じてしまう観客がいるのは間違いないのだが、その違和感を夫・一貴と一緒に観て行けるかどうかが今作にのれるかどうかであろうか?
ただあくまでもブス顔・多喜子側から描かれた物語というのは間違いないようである。
満足度★★★★
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山内ケンジの【ザ・レジスタンス、抵抗】を観劇。
今作は城山羊の会ではなく、山内ケンジと青年団の合同公演である。
大手の車会社で働いている部長の周辺では、会社の不祥事、国会デモ、原発問題と大変な事が起きているのだが、そんな彼のもっぱらの悩みは己のインポについてであるようだ.....。
何時も通りいやらしい、愛の物語である。
人間が社会で生きて行く上で必要な本音と建前を下に、言葉を一語、一語を噛み砕いていくような丁寧さと、相手との距離感、空気感を上手に描いていく手法は相変わらずで、昔の作風に戻ったという感じの今作である。
岸田戯曲賞を取った前後作は、作風に違う風を吹きこんでいたようで、出来には厳しい物があったが、今作ではそんな事は一切なかったようだ。
特に部長と医師との会話での衝撃的な名セリフ、ワグナーのオペラ、トリスタンとイゾルテの【愛の死】で、クライマックスで決めてくるかと思わせといて、人を食ったような終わり方と商業演劇では味わう事が出来ない演劇的興奮が満載の作品である。
今作は【あの山の稜線が崩れてゆく】以来の傑作である。
お勧めである。
満足度★★★★
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FUKAIPRODUCE羽衣の【イトイーランド】を観劇。
アングラ風な妙ジ―カルと言われているミュージカルを行う劇団。
交尾するはずのない爬虫類のカップルのオスとメスから、男女8組の不倫カップルの話へと、今作は全面的にミュージカルをしているのである。
特に始まって直ぐに、これはクライマックスか?といわんばかりのディズニーばりのミュージカルで圧倒して、
それ以降は切なすぎる男女のエピソードで畳み掛けてきて、更に歌と踊りで哀愁を漂わしてくるのである。
もう涙、涙、涙で、永遠と結ばれないカップルに、老若男女の観客の全ての涙腺が緩んでしまうのである。
そして毎度の事ながら、ディズニーには決して出来ない、ミュージカルのお約束事を破れんばかりの締めの悪い終わり方で、幕が閉じるのである。
今作は羽衣の最高傑作であろう。
お勧めだが、本日が千秋楽であったのが涙であろうか?
満足度★★★
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月刊・根本宗子の【忍者、女子高生(仮)】を観劇。
前二作が大当たりなだけに、今回も期待大だ。
バツイチながら、三人の息子と一人の娘を育てあげた母は、
高齢ながらも、娘の高校の担任(20代)と結婚をしてしまう。
そして家族が一同に集まった辺りから少しづつ、この家族が最も大事にしている絆というものが、世間的にはかなりズレている?と感じてくるのである.....。
母親に溺愛されている息子達は、妻をおざなりにしても母親を愛している。だがそれに憤りの感じた妻たちと娘は、一致団結をしていくという展開を軸に、母親の視点、妻の視点、娘の視点とあくまでも女性側から家族の在り方と家長制度について問うている。
男性思考の長期的展望、解決、論理間というものはなく、あくまでも女性思考の短期的思考、感情の温度差を下に描いているので、見慣れている家族間のドラマとは一線を画しているのが、この作家の面白さだ。
そしてそれをコメディーとして描きながらも、後半は男性作家以上のカタルシスを感じさせてくれるのが毎回の面白い所以である。
何時もながら女性観客が多く、満員である。
前二作越えはやや無理のようであったが、お勧めである。
満足度★★★★
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平田オリザの【カガクするココロ】】【北限の猿】
の二本立てを観劇。
両作とも国立大学の研究室の控室での話し。
研究室では、猿を人間に進化させるというプロジェクトが進んでいる。
だが控室では、研究について熱い議論をしていると思いきや、
浮気相手の妊娠、自殺未遂、就職など自身の事や他人の噂話で花が咲いているのである。
つかこうへいが描く二重構造とは全く別なのだが、研究室と控え室で起こっている出来事を二重構造として描いている。
ただあくまでも研究室で起きている出来事は、会話の内容からでしか察する事が出来ないので、観客はその背景を埋めながら、控室で話しているどうでも良い日常会話の数々から、二重構造を一つに組み合わせていくという観賞法が必要となっていくのである。
そして西洋演劇を否定して生まれた現代口語演劇なので、観たい場面の俳優の顔が全く見えない時が多々あったり、観客に感情移入させない作劇法でもあるので、観客は傍観者になるしかないのである。
そしてそこの意図に気がついて瞬間、平田オリザの現代口語演劇を延々と観ていたい!と思うのである。
再演だが、お勧めである。