満足度★★★
jorroというよりポツドール
現代の若者の生態の定点観察、その見せ方はポツドールの模倣かと思ってしまうほど。オリジナリティがほしいなぁ。98分。
ネタバレBOX
見えない部分承知の上の作り込んだネットカフェのセットはすごいが、話も作り過ぎたためにリアリティは薄れ、展開の必然性も感じず。セット上部にチャット内容を表示するアイデアとかも面白いんだけど。
jorroのように場の展開から自然と言葉が出る感じではなく、逆に轟音での暗転、聞こえない会話等細かい点までポツドールの手法を使っている感じ。同じ事をしていては絶対本家を超えることはできないので、このカンパニーが何をしたいのかを見せてほしいところ。
満足度★★★
再演時より初演の影がちらつく
若い劇団員が個性出しつつ伸びてるだけに彼らに合わせて脚本を書き直しても良いのでは、と思った。アンコール込み115分。
ネタバレBOX
特に渡邊安理に中村恵子の、大内厚雄に西川浩幸の振舞いが見え隠れするのが痛々しい。他の役者も実年齢と役年齢のズレが大きい感じ。高部あいちゃんは可もなく、不可もなく。最近の話題の小ネタを笑いのつかみとして仕込むくらいなら、もっとやることあるんじゃないかなぁ、成井さん。
最後のシーン、タイトル繋がりで流れる曲を井上陽水さんの「少年時代」から、小田和正さんの「風のように」に変えたのも、イマイチ曲とシーンが合っていなかったような。
満足度★★★★★
理由ありの人達の日常の、
ちょっとした事から動き出す事態を、わずかな幸せと間違った一途さと猜疑心と笑いとを取り混ぜて展開。112分。
ネタバレBOX
長期雇用の保障もなく、機械のように動いて働き、感覚さえも麻痺し始めてる期間工達。些細なきっかけで投じられたひとつの波紋は極端に狭い世界の中で妄想を膨らませ、行動に及ぼさせ。それが事実と重なったとき、話は加速度をつけて転がって。
決して観てて清々しい感じの芝居ではないけれど、各々のもつキャラの面白さ、暗転毎の時間の流れ具合、撒いた小ネタの回収、わかりやすいものまで含めた大小さまざまなどんでん返しと飽きさせることなく見せてくれる。隔離された何もない寂しい環境下で、何かにすがってるからやっていけてるのか、やっていけないからすがってしまうのか。男達の行動のバカバカしさは憂いをも含んで…。
満足度★★
主人公と友人との対話の形で
話を進ませる。長い小説の中から話を絞って提示したため起伏も少なくなり、平板な印象。暗すぎる照明も△。105分。
ネタバレBOX
内容は「先生と私」と「先生と遺書」をピックアップして構成。役者に合わせて設定年齢も上げた部分もあるせいか印象もかなり違う。ちょっと落ち着き過ぎかなぁ。他の話も混ぜて展開も増やしてほしかった気もする。
満足度★★★★
色々な仕掛けで楽しませて。
見てビックリなだまし絵のようなセットにパズルのように間のピースが埋まるにつれ明らかになる全景と見せ方が上手い。120分。
ネタバレBOX
上手斜め奥に伸びる八百屋舞台で喫茶店の1階と2階を表現。椅子の置き換えだけで下から上、上から下を見せる手法はその発想だけでも特筆もの。
店内での淡い恋物語と見せかけて、最初に見せた話の間のシーンを埋めていくと浮き出てくる一筋縄ではいかない愛の形いろいろ。中でも森下亮氏のキ○ガイぶりがすばらしい。エピソード達を細くさりげなく繋げる架空の恋愛映画の存在がスマートでかわいらしくもあり。
終盤、全ての話にカタをつけるべく、テンポがゆっくりになりすぎて少し冗長になってしまったのは惜しい。
満足度★★★★
惹かれてしまう対象は…
民話や童話や現実の人。主人公の意を決する態度に対し、周囲のささやかな優しさが心に浸みて希望を与えて。85分。
ネタバレBOX
このプログラムは志賀さんの語りで麻生さんの演技、が注目。劇中のキャラと語り手が会話してしまうのもちょっと小粋な手法。
この日は原田さんがお皿を割ってしまうというハプニングも発声。その場の見事なフォローと転換時に箒とチリトリで片づけて、何事もなかったかのように対処したスタッフワークも見事。
満足度★★★★★
男優陣の空気が物語を作る。
志賀、川本、三浦各氏の在り方がそれぞれの話の雰囲気や色を確立し、それが見事に融合して1つの作品に。70分。
ネタバレBOX
志賀さんのキャラの垣間見えるお茶目な部分と、川本クマの大人(野性)への成長との葛藤が個人的に見どころ。
朗読はAからDへ各プログラムのテーマに沿いながらプログラム順に構成されているのに対し、オリジナルストーリーはこのDプロの話からAプロに続いていくように構成されている。僕が観た順番がB→A→D→Cだったので、前半・後半ともオリジナルストーリーの流れがすんなり入ってきて、これはこれでよい順番だったと思う。
満足度★★★
近未来でも家族関係を描いた
人と人との物語。宮越昭司さんの圧倒的存在感が芝居を支えてる。設定はそれほど活きていたようには思えず。98分。
ネタバレBOX
(本当にネタばれしています。)
あらすじ。地球温暖化、海面上昇でで東京も海抜が低い地域は水没し、洪水もあって壊滅状態。多くの人々は青森に難民として流入。駅裏のスラム街に住む難民達は小泊の大照神社の宮司の息子の家族を語り、ひと芝居を打つことに。これが成功すれば3年は住宅に住めるのだから…。
会話の端々から設定の世界は見えてくるものの、その中で生きている人達の背景の提示が少ないため、人の物語としての深みが足りないような。宮司の息子はなぜ逃げ出したのか、なぜ戻ってきたのか、妻役の女性が受けた傷は等々。なによりなぜこんなワザとらしい芝居をするのか?
東京に出て29年音信不通の息子が見つかり、宮司が最後に会いたいからと頼んで連れてきてもらう。息子は父を喜ばせるために、事業で成功し、結婚して子宝にも恵まれた大家族で幸せな生活をしているのを見せ、その晩安楽死させる薬を注射するミッションを担って神社に戻ってくる。それが全て父からの依頼だとも知らずに。
このせっかくの二重構造も出てくる人々が背負ってる人生が見えにくく、上辺の過剰な芝居ばかりが鼻につくため、肝心の核心が弱く感じてしまう。ちょっともったいない作りだったかなぁ。
話は少しでも青森の地図と地名(小泊、青森市、野辺地、小川原湖等)がわかってるとイメージが湧きやすいかも。
満足度★★★★
ホールの制限がある中で、
真っ先に取り上げがちなエロやバイオレンスを除いても、若者の生態を新しいスタイルで見せる表現法に長けている。102分。
ネタバレBOX
個人的には、最後まで一人で、電話と携帯だけのコミュニケーションでもよかったかなぁ、と観ている途中で思ったり。
現代のニートに反映された人間失格は道化さえもできず、虚栄心だけは強く、なんの行動も起こせない姿に今の若者の誇張ではないと思わせるリアルさと原作以上の堕落を感じた。
ラストの一場前、元カノの言葉より想像された、もし行動を起こしていたら、のシーン。それは事態を知ってたから考えることができたのであって、最後結局昼過ぎまで何もせずに寝過ごしてしまっている事実が、余計に彼のダメさ加減を強調する結果となり、話の落とし処としてはこれでよかったかと。
満足度★★★
母と三姉妹の生活の中での
女性同士の微妙な関係を、女性の作家の視点で丁寧に描いている。暗転の変わり身や変化のつけ方は上手く。98分。
ネタバレBOX
母の教え子の登場で、バランスが崩れ、少しずつ実情が見えてくる話の構成は○。
次女の感受性の強さがちょっと気になったりもしたが、それよりも女性達に比べて男性キャラの描かれ方が少し記号化されてたように思えたのは△。
ファザコン姉妹の結実しない男関係は、亡き父が種をまき、大きく育った実をつけない枇杷の木に投影されてるよう。
満足度★★★★
いつもの雰囲気は変わらず、
淡々と読まれる便りから広がる話やわかるいろいろなこと。その世界はちょうど期間内の展示ともリンクするように。30分。
ネタバレBOX
島だよりの便りの内容は、むかし島だった向島の話。昭和の思い出やその言葉の端々からこの地のさらに前のことが想像されて。
柳澤さんのキャラの、便りは"しまださん"からの"しまだ"より、の勘違いが最後まで活きる構成もなかなか。
満足度★★★
三谷+ボードビルの作品みたい
必要以上に過剰なドタバタと都合よい出捌けはテレビ的というか、新喜劇っぽいというか。緩急の緩のドラマが○。125分。
ネタバレBOX
テレビで見るような出演者を生で観られることに価値を求めてもよい舞台かと。それでも伊東四朗さんの存在感は流石だし、息子の伊東孝明さんの演技もはなかなか。
満足度★★★
描きたい話はわかったけど、
核にしたい話は提示が足りず、笑いを取るだけの枝葉の話は膨らませすぎとバランスが悪く、結果メインの話が弱く。95分。
ネタバレBOX
基本線は母娘の関係性なのに二人に関するシーンも情報も少なすぎ。使用人達や同級生は記憶にあるわけでなく、最後まで関わるわけでもないのに、主たる母娘を置いて彼らだけの話の展開が多いのは劇団員への配慮か小手先の笑いが欲しいからなのか?おかげで親子の関係性は説明だけ。娘と花、母と娘の対比を重要視するならもっとやり方はあったハズ。
満足度★★★★★
短編小説をそのままの勢いで
日本版。筒井作品的狂気をシンプルだけど秀逸な美術と巧みな演出で一気に見せる。映像と影の使い方も見事。70分。
ネタバレBOX
原作の小説を、まさにそのまんま舞台化した印象。筒井作品に免疫がないとかなり毒気は強く感じるかも。1976年の小説ということで、入場時のBGMからその時代を感じさせる。
ロンドン版は演出も全然違うそう。チケットもまだあるようなので比較してみるのも面白そう。
満足度★★
ユニットR「吸血鬼」
生音と薄暗い照明で雰囲気をさらに引き立てて。話はさすがにアングラなので理解しがたいものが。105分。
ネタバレBOX
ブラックライトやマッチ・蝋燭等を使い、明かりの強弱の変化に特徴が。話も村人や吸血鬼二人の土地に縛られる業と外来に対する敵視の構図くらいまでがなんとなく。それでも場内は多めに作られた座席が満員と支持されていることは間違いなくて。
満足度★
設定の世界観が生きてない。
チラシに書かれた設定が舞台上で確立できてない上にぶつ切りのエピソードが次々提示されるだけだと65分でも長く感じる。
ネタバレBOX
各々のエピソードが有機的に絡んで話が展開していくだけでも印象が変わったと思うのだけれど。野鳩のような意識的なヘタウマ芝居もレベルが一定じゃないのでバラバラな感じで△。
楽前とはいえ必要以上にチケットを出して、定員以上に客席を詰めるのはいただけない。ちゃんとチケット代を払って観に来ているのだから、客に対しても十分なクリアランスは確保すべき。想定の定員を守るのも制作の役目かと。
満足度★★★★
脚本の完成度をまざまざと、
見せつけられる作品。伏線含め、ドラマの展開にグイグイ引き込まれてあっという間。ダブルキャストは星組の方を観劇。88分。
ネタバレBOX
女子高生役の出演者は同年代も多いのか初々しいが声量がない子も多く、レベルはバラバラ。その中で、長谷川桃や鈴木オルガが発声もしっかりしているし、台詞も多く、かなり重要なポジションを担っていただけに月組でのキャストが気になったり。
満足度★★★
一緒にいるって楽しいこと。
どこから来たのか分からないけど、ひとりで住む家にひょっこりやってきた客人との話2編。心が温まる感じ。75分。
ネタバレBOX
ほとんどの男子はコスミスミコのキャラに目を奪われてしまうのでは?と思うくらい小橋めぐみ嬢が小動物的?小悪魔的?かわいさを熱演。話としては女同士だからの距離感の描き方がよい。もうひとつ、子供なのに大人な口ぶりのえび男くんと、大人だけどどこか大人になりきれてない私(女)の関係性が○。生演奏のピアノの音はより自然にやさしく話に乗って。
満足度★★★★
ちょっと大人のファンタジー
人じゃない生き物とのふれあいの、童話ともいえないスタンスの話3編。語り+演技というスタイルもしっくりと。75分。
ネタバレBOX
再演の「神様」はさすがに一番形ができあがってる感じ。全体的にコミカルなつくりは肩の力を抜いて観られる。他のプログラムとも関わり合うオリジナルの手紙が挟まれた本の話の在り方・繋がり方も○。
満足度★★★★★
徹底したエンターテーメント
歌舞伎の筋を普通にわかるように構成し、笑わせ、じっくり見せ、大詰の迫力と全て見応え十分に仕上げてる。205分。
ネタバレBOX
因果は巡る、とか金は天下の回りものを主題にした関係性や展開が複雑な話なのだが、それもただ観てるだけですんなり入り込める敷居の低いつくりに感服。
芝居内での揃い踏みのパロデイ、時事的な自虐ネタ、シーンの繰返しでこみ上げる笑い、モノマネ、生犬等見て沸かせるシーンと、静かに見せて聞かせるシーンのギャップの作り方が上手く、その上最後は立ち回りと雪の量で圧倒する展開は最後のスタンディングオーベーションも納得。