満足度★★★★★
中身が濃くて、
それでいて緩い感じが素敵です。
ネタバレBOX
暴対法の趣旨から反社会勢力にピザを販売してはいけないというピザマッチョ呉店における事例を通じ、ヤクザに人権はあるのかを問う問題作。
アマヤドリの広田淳一とのアフタートークで、情に流されてぶれた店長と人権を理知的に考えるバイトの違いを改めて認識しました。
人権が制約されることを本人が容認する自由はあっても、他人の人権を制約することはできないという、人権と自由についても考えさせられました。
ピザ屋の独特の口調、基本立ち芸の緩さ、面白かったです。
それでもヤクザは毎日何かを食って、何かを着て、どこかに住んで生きている、ですね。
満足度★★★★
活劇譚
背景に様々な要因がありました。
ネタバレBOX
宗教弾圧に立ち向かうためとして、豊臣の残党に担がれて一揆の象徴として立ち上がった女天草四郎の殺陣多めの活劇譚。
南総里見八犬伝のような仲間探しの旅から始まり、戦を起こし、敵味方とも様々な思惑によって裏切ったり裏切られたりがあり、仲間たちは死に、豊臣の生き残りか単なる捨て子だったのか、少なくとも突然この地に現れた救世主ではなかったことが分かった彼女は、多くの死者を出した罪を償う気持ちを持ちながら生きていこうと決意するに至りました。
オランダとポルトガルが背後に絡んでいたり、九州を外国に渡してでも本州で豊臣家を再興しようとしたり、スケールの大きな話でした。
大柄で丈夫な武士だとしても、切られても全くリアクションがなかったのには一瞬驚きました。生きるための知恵というか農民の身勝手さも際立っていました。
満足度★★★
【[ビートル]バージョン】観劇
痛い。どこをターゲットにしているのか。
ネタバレBOX
30くらいになった作家がこれまでの自伝を書くに当たり中学生時代が曖昧で書けずに悩んでいたところ、同級生が現れ励まされながら考えていくうちに、当時仲の良かった女子中学生が鉄砲水で死んだこと、そしてその原因がダム開発決定前に土建業者が森林を伐採したことにあったことを鮮明に思い出し、これまで封鎖していた心の闇を認識し、改めて前向きに生きていこうと決意する話。
素舞台を強調、全員が白っぽい服を着て、樹木なども役者が演じる手法でした。前説で、カーテンコールの合唱のときには手を振るよう観客は要請されました。
15周年記念で、2000年の作品の再演とのことでしたが、樹木が後ろに去っていく様などは子供っぽく、若手劇団なら微笑ましくて良いのかもしれませんが実際に中年役者がやっているのを見ると見ていて辛く、題材も子供向けのような感じで、15年程経っての再演となると、このような演出ではどこをターゲットにしているのか中途半端に思えました。
素舞台等に拘るのではなく、主人公のように新たな段階に進展していってほしいと思いました。
満足度★★★★★
グッジョブ!
遊び心たっぷりで、なおかつそれぞれ素晴らしかったです。
ネタバレBOX
旗揚げ準備公演とあってか、山森信太郎氏が複数の作家・演出家さんによる四つの様々なジャンルの作品に登場する遊び心たっぷりのお祭り的短編集。
『大口上』 ゲストとともに山森信太郎氏が口上。
『大迷惑』(脚本・演出 釘本光(HOTSKY)) 12年前に一声掛けなかったために友人を自殺で失った男が、生活に困っていそうな女性に有難迷惑かもしれないけれど、それでも一声掛けてみようと思い立つ話。
(大転換) お芝居ではありませんが、舞台をひっくり返したりして如何にも地方の旧家の座敷を組み立てる様は素晴らしく見応えありました。
『大怪獣』(脚本・演出 柳井祥緒(十七戦地)) 漁船が何艘も沈没した網本の家で真相が明らかになっていく、如何にも十七戦地らしいミステリー。
『大便意』(脚本 白坂英晃(はらぺこペンギン!) 演出 保坂萌(ムシラセ/ごはん部)) 大事な時に下痢を催す男の悲惨なコメディ話。頑張ったのに、結局は漏らしたことで彼女を取られてしまいました。可愛そうですが笑いました。
『大學まで出したけれど…』(脚本 古川健(劇団チョコレートケーキ) 演出 日澤雄介(劇団チョコレートケーキ)) 昭和19年、一人の若者が出征する前夜の話。家族と許嫁を残し、死を覚悟して出征する男の心情を何の捻りもなく描いた話。
人情派、土着的怪奇風ミステリー、お下劣コメディ、歴史の一ページ、それぞれ特徴ある作品で楽しませてもらいました。素晴らしかったです。
満足度★★★★★
あるある的な
面白さ
ネタバレBOX
新部長を決めた日に毎年行われるカラオケオールに参加している大学サークル部員たちの一晩の話。
サークル内の古臭い常識、童貞が分かって上級生と一年生の立場が逆転するなど、いかにもありそうなところが面白かったです。
やれるやれると期待して、結局は童貞を告白しただけに終わった上級生の虚しさ、徒労が光っていました。
OB、OGが出てくるところはこれまでの合宿型コメディと同じでした。
満足度★★★★
中抜き
可
ネタバレBOX
赤線廃止前夜の娼婦たちの悲しみ、情念を、お七を題材に今日的要素も取り入れながら描いたような話。
赤線が廃止されても娼婦が帰れない理由として実家が立ち入り禁止地区というのがあり、ドキッとしました。
ただ、商店街の一部が燃えて大型開発を目論む商店街のおっちゃんたちが笑うというシニカルコメディシーンで終わるのを見ると、長々と女の情念を演じていたのは何だったんだという気がしました。
満足度★★★
少し拍子抜け
わがまま企画だから仕方ないのかもしれませんが。
ネタバレBOX
彦星と織姫が自分たちの轍を踏まないようにと、時代を超え、男女の恋を応援する話。屋台のソース焼きそばは、一組のカップルの仲直りアイテム。
わがまま企画という企画が如何なるものか、今一つ趣旨が分かっていませんが、これは本公演ではない、稚拙でも許されるんだと言わんばかりのように感じました。
ラストの赤い糸は、どう考えても引っ張らなくても奥さんは帰ってきたでしょう。
馬に惚れ込んだライオンの種を超えた恋の話は唐突でしたが、それがベトナム女性と彼女を別の韓国軍兵士から守ってくれようとした韓国軍兵士の話に繋がるのかと思うと考えさせられるものがありました。ただ、米軍ではなく、韓国軍にしたところは、嫌韓か、生々しさを感じました。
満足度★★★
ドタバタではなく
バタバタ
ネタバレBOX
コメディアン好きの一般女子、自分の妹がコメディアンを好きになったら許さないと思っている男、しかもその男はコメディアン、出会いの場は演芸場なので普通に芸人が好きになる芸人の男女、彼らが相思相愛になったり、一方的に好きになったり振られたり、最後は乱闘になるみたいな恋愛模様を描いたハチャメチャストーリー。
チラシの二人が主役とも思えず、群像劇と言ってしまえばそれまでですが、ただバタバタしているだけの焦点のぼけた作品でした。
お金が無くて転がりこんで来た伝説の芸人と呼ばれた男は本当に凄いのか、あの陰気な雰囲気では分かりませんでした。説明台詞ではなく、一発見せてほしかったです。
そんなときはいつも、恐らく出たがり作演の弊害ではないかと思ってしまいます。
満足度★★★
難解
そろそろリオフェスももういいかなと思ってしまいます。
ネタバレBOX
先日観た青年団リンク キュイの『不眠普及』と共通するところがあるように、時系列的にみるとキュイが影響を受けたのではないかという風に感じてしまいました。
そして、『不眠普及』と同じく、題名に反して眠たくて眠たくて仕方ありませんでした。
満足度★★★★★
女子会最高!
とても贅沢。知的で、脳に心地良い刺激を受けました。
ネタバレBOX
『DOG』(作:オノマリコ)は擬人化で不思議、『だるまかれし』(作:モスクワカヌ)は発達障害者の脳内情景、『絶対恋愛王政』(作:坂本鈴)は次元を超えた恋、『幻燈』(作:黒川陽子)は活弁風藪の中。
特に、『絶対恋愛王政』は徹底的バカバカしく、ラムちゃんは典型的日本人的三次元で、二次元派のアニメ研究会部長が惚れ込むのも納得がいきました。生徒会長(という職)も一つのコスプレというフレーズも心に響きました。
『だるまかれし』の戦争で手足を失くした夫と『幻燈』の赤ちゃんは茶色のぬいぐるみ的素材で作られていて、自ら意思表示をしない者の共通性のようなものを感じました。
満足度★★★★
甲斐性なし
ちょっと工夫が必要だと思われるところもありましたが面白かったです。
ネタバレBOX
妻の義理の妹が帰ってきたことがきっかけになって、絵描きを目指し、弁当屋を営む妻と結婚しても手伝いもしない甲斐性なしの男の身に降り注いだサイコホラー的な最悪の出来事を、男が今殺しかけの女に語り聞かせる話。
はやしぶうたろうへの改名は末期的症状かと思いました。そうしたらアダチさんも足立クソ次郎になっていて、本当にやけくそになっているのかと思いましたが、次回公演会場も押さえてあるようだし、今回の複雑なストーリー構成も素晴らしかったし、安心しました。
加藤美佐江さんは今回はオナベ役でしたが相変わらず面白く、人形的動きは最高でした。顔を近づけた役者を笑わせる才能は唯一無二です。
足立さんのオナベ役は、後でああそうだったのかと気づかせるためにも股間を目立たなくさせる工夫が必要だったと思いました。
満足度★★★★★
ド迫力
全員の力が集中していいカンパニーでした。
ネタバレBOX
女子中学生だったときも、先生をしている今も、刃傷沙汰は起きるしもうぐじゃぐじゃだったという話。
最初なんかは大声で叫ぶものの、劇場の広さの関係からかよく聞き取れず、でもそんなことはどうでもいいような気がし、中学生にもなって神様云々なんて反吐が出そうでしたが、全体に迫力がありました。
客席通路での演技は目の前でドキドキしました。
黒木華が好演した『重版出来』なんかを見ても、絵が上手いだけでは漫画家になれないのは分かっていますが、なぜ漫画家への道を捨てて先生になっちゃったんだろうって思います。
『幕が上がる』では黒木華演じる吉岡先生は役者へ転じました。山田佳奈さんもサラリーマンから演劇へ転じました。同級生が漫画家になったことを知ると心穏やかではないでしょう。アラサーの彼女はどうするんだろうと気になります。
満足度★★★★
意外な展開
本格的ストーリーでした。
ネタバレBOX
死んだ友人のために、途中でストップした自主映画の続きをやって完成させようと企画した男と仲間の、自立というか再出発の話のように進みつつ、実は友人が死んだんじゃなくて、彼自身の方が交通事故に遭い、意識不明のまま3年間目が覚めなかったことが明かされる話。
そう来たかって感じの驚きでした。
そして、身動きしていなくても、周囲の人の会話は聞こえている場合があるということでした。注意しなければと思います。
撮影現場の状況などが分かって参考になりました。思い通りに行かない人生も表現されていました。
ただ、工事現場などで行われていたと思われた会話がベッド回りの会話だったということを説明するために色々な会話がベッド回りで再現されたため冗長になり、上演時間が2時間15分ぐらいになってしまいました。全ての種明かしをする必要はないと思いました。
満足度★★★★
ちょっと意外
面白かったですが
ネタバレBOX
世帯主の住居としての家と一部お金に寄生する子供と親たちを面白おかしく描いた話。
終活の話であり、就活の一つの形でもあり、パートナーの役割の話でもあり、最後は上手く行きました。頼られるうちが花かもしれない的な終わり方に、親が死んだらどうするんだといった徹底的引きこもりの話かと思っていたので若干意外な感じがしました。
本音の表現の仕方は素敵でした。
満足度★★★★
【Wキャスト:アイスリボン】観劇
つかこうへい七回忌追悼公演らしくありました。
ネタバレBOX
上演前に秦建日子さんが七回忌を迎えるつかさんとのエピソードを話され、しんみりしつつ、秦さんの数奇な運命に驚かされました。
リオオリンピック前から始まる2016年バージョンではありましたが、いかがわしい雰囲気のあった女子プロレスをスポーツとして確立させようとした時代の話。
犯罪が絡み、刑事が出てきて、基本大声、つか作品らしい作品でした。
千種スペシャルのキンタロー。はいい演技をしていましたが所詮大声演劇での話、他のお芝居で通用するかは別です。それでも、終盤の長台詞辺りではジーンと来ました。
満足度★★★
『不眠普及』観劇
さもありなん
ネタバレBOX
セックスによって感染するウイルス性の不眠症が蔓延しつつある社会の、その元凶となった可能性のある女性の話。
男性が感染した場合は、不眠症の度合いは女性に比べてさほどでもないとのことでしたが、さもありなん、眠くて眠くて仕方ありませんでした。
満足度★★★★
『止まらない子供たちが轢かれてゆく』観劇
直接民主主義による過半数の危うさ
ネタバレBOX
先生があてにならなく、学級裁判が秘密裏に行われるようになった学校の学級裁判に関わる児童、親、先生たちの話。
口が立ち、煽り上手な児童に乗せられて決してしまうことに、EU離脱を決めたイギリスの国民投票を思い、直接民主主義の過半数による決定の危うさを痛感しました。アメリカの大統領選挙もさることながら、将来行われるかもしれない我が国の憲法改正の国民投票の際にも、そしてその前提ともなる参院選に関しても、国民は煽られることなく、冷静に、後悔することの無い判断をしてほしいと切に思います。
満足度★★★★
光のカーテン
素敵でした。
ネタバレBOX
幅の狭い光に照らされた身体や物体と周囲の闇を利用した、例えば手のひらが身体から離れて遠くに行ったりして、観客に不思議感覚を与えるパフォーマンス。ストーリーとしては、指輪を忘れてプロポーズに大失敗した男が、絵から飛び出した少年らの助けを借りて再度挑戦するというメルヘンチックなお話。
すぐ近くで見ているのに闇から突然現れ、スーッと消える、素敵でした。
腕が伸びるなら猿之助さんのワンピースにも使えたらいいのにと思いつつ、新橋演舞場ではマ、無理かなと。
満足度★★★★★
通りすがりの私
井戸端会議をチラッと見聞きしたような感じです。後ろ髪を引かれつつも歩みを止めることはありません。
ネタバレBOX
谷田貝という地方都市にある生活困窮者やDV被害者からの相談に乗るMPO法人ニッポン・サポート・センターの相談室に隣接するロビーを舞台に、相談者、職員、地域のサポーターの人々の日常を数時間定点観測した話。
離婚を考え夫の元を逃げ出した女性については、追いかけてきた夫と相談室で冷静に話し合うところまでは進展しました。ある職員の夫が女子中学生を盗撮したとして逮捕された事件については、飲み込んだSDカードが排泄されたとの連絡が来ました。ある商社マンはアフリカで理不尽な児童労働を目の当たりにして精神を病んで地元に戻ってきて職を求めていましたが、着ぐるみの仕事を紹介されました。新しく、発達障害の女性が相談に来ました。
つまらないダジャレがあり、役所からの出向者はゆっくり歩き、ありがちな日常です。そして、先ほどの案件はどう解決されていくのか、あるいはこじれるのか、通りすがりの私たちには知る由もありません。当然のことです。
高橋源一郎氏を迎えてのアフタートークで、寅さんをモチーフにしたとのこと、ロビーはとらや、奥の相談室の方はタコ社長の工場と聞いてびっくらこきました。
満足度★★★★
出口なし
復帰おめでとうございます。
ネタバレBOX
企業誘致と観光開発を目的に建設中だったものの、観光目玉の滝が大雨によって崩壊したことで頓挫した鉄道路線の途中駅のホームと隣接するアパートの2階を舞台に、小説家になれない男と介護士になれなくなってしまった女を軸にして、思うようにいかない人たちとそんな人間世界を応援するような、ただ見ているだけのような死神みたいなものを描いた話。
部屋が2階部分だとは少し分かりづらかったですが、前面に線路があり、美しいセットでした。
登場人物の中に鳴神という名字の人がいたので不思議には思ってました。歌舞伎を思い出していましたが、そういうことでした。自身の案件実現に熱心だったのに頓挫したアフリカン寺越さんの復帰が喜ばしくて、そちらの方に気を取られていましたが、鮒田直也さんの作風からするとSFっぽいのが特徴でしたね。精神的に押しつぶされるだけでなく、身体的にも押しつぶされてしまうとは。
そもそもですが、地方で、今の時代に鉄道を建設しようとする企業があるのかという点は疑問でした。
先が見えてしまう人、実現不可能と思わず積極的な人、どちらが幸せなのでしょう。障がい者の女性を捨てるというフレーズが痛く、繋がり心に刺さりました。乙武夫婦が離婚するそうです。同じようなフレーズが聞こえてくるかもしれません。
障害を負った女性の声が大竹しのぶさんの声のようで、迫力がありました。