すえまつの観てきた!クチコミ一覧

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雷ノ鳥

雷ノ鳥

劇団カルタ

インディペンデントシアターOji(東京都)

2025/11/07 (金) ~ 2025/11/09 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★

鑑賞日2025/11/08 (土) 18:00

価格3,800円

もしこれが映画だったりドラマという形式だったら、あるいは掛け値なしの称賛をしていたかもしれない。だけどこれは小劇場の舞台だ。あきらかに「詰め込みすぎ」の感が否めなかった。
場面の切り替わりが本当に多いし、登場人物が多すぎて誰が誰やらわからないし、早口で、大声で、聞き取りづらい場面が多々あった。休憩をはさんだ第2幕あたりからようやく話の骨子がみえてくるのだが、逆に言えば第1幕は本当に必要だったのかよくわからない。回想のようなダイジェストで十分だったと思う。
ちなみに「雷ノ鳥」というタイトルが回収されるのも第2幕の後半だ。
この舞台を観た収穫としては、「小劇場でやる意味」だ。建築で言えば小劇場は「住宅建築」に似ていると思った。住宅は「居住空間」という意味において本質的であり、「人間が生きるために必要なすべてのものがある」といっても過言ではないが、社会全体においてのすべてではない。
同様に、小劇場も(映画など映像作品を含む)「劇」という仮想空間において「人間を描写するために必要なすべてのものがある」と言っても過言ではないのだろうが、その空間のすべてではないということだ。
削ぎおとして削ぎおとして、これ以上削ぎおそすものがない、というくらい純粋なものだけにしたものが小劇場という形式に適する、ということを知った。その意味においては小劇場ほど「最初から最後までよくわからなかったけどなんかよかった」という表現が成立する場所もない。例えば住宅建築においては意味の分からない空間だらけなのは許容されるが、市役所において意味の分からない空間だらけでは全く許容されないのと同様に。
本自体は悪くないと思う。この劇を通して言いたいことがわかったうえにおいてはエンタメとして普通に面白かった。だが場所が悪かった。

白貝

白貝

やみ・あがりシアター

浅草九劇(東京都)

2025/10/08 (水) ~ 2025/10/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2025/10/12 (日) 17:00

価格4,000円

Xの感想にあふれる「登山ばっかしてた」はそのとおりすぎた。中盤にその理由が明らかになり、終盤にドーンとなるのだが(語彙力)、これが笠浦節の平常運転なのだろう。
観客に「墓場までしゃべるな」と強要する以上、DVDは出ないだろうし、だからこそのロングランだと思う。
きっと「あるアルル」みたいに細かく分析したらいろんなネタに溢れているのだろうが(例えば登山計画など)、今回は台本が明かされることもないだろうし、DVDも出ないだろうし、何回か見たところで一字一句、役者の挙動を全て覚えることは常人にはできないことなので、明かされることはないのだろう。あるいはそう思わせて何もないのかもしれないけど。
笠浦は怖い。

七月の歯車

七月の歯車

guizillen

APOCシアター(東京都)

2025/08/27 (水) ~ 2025/08/31 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2025/08/30 (土) 18:30

価格3,800円

これは「非共感」の物語である。誰もが失礼で遠慮がなく配慮もない。だが、その配慮のなさが不運なことにうまく「昭和感」(文字通りの昭和ではなく過去の常識としての)とリンクしてしまい、古臭い空気感に見えてしまうのが残念だった。
そのせいで「ささらない」人も出てしまっている。
本自体は興味深いので、リライト希望。

Toi et more

Toi et more

サンカク計画

水性(東京都)

2025/08/08 (金) ~ 2025/08/09 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2025/08/09 (土) 18:00

価格4,000円

「昨日を0とした場合の明後日」の方を観劇。稽古から観た。
へーこうやって演出ってつけられていくんだな、というのが素直な感想。将来演劇関係に進みたいけど学校には通えない、という人には大変勉強になるのではないか。役者が演出からの指摘を受けて修正する仕方も面白い。すぐに正確に直ることもあれば、そうじゃないこともあった。しかしなんだかんだいって本番ではきちんとブラッシュアップされていた。さすがというべきだろう。
とはいえ、1日だけというのはさすがに無理があったと思う。せめて演出家に事前に台本を渡して、照明やBGMやSEをあらかじめある程度FIXした状態で臨む形にしたほうが良かったと思う。それでも方向性としては興味深く、成功していると言ってもいいだろう。
役者が台本を持ってそれを読みながら演技をするという「リーディング上演」は、やはり私のような観劇初心者には違和感があった。よくあるそうだが、真剣に演劇関係の仕事をしたい人はともかく、気軽に初心者が観れるものではないと思う。

テン9

テン9

ペキニーズ・ドットコム

OFF OFFシアター(東京都)

2025/07/15 (火) ~ 2025/07/20 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2025/07/15 (火) 19:00

価格3,300円

ここ最近、実話を元にした演劇の功罪をずっと考えてきたのだが、これを観ると本当に救われるような気がした。たとえ実話とは異なる「捏造」であったとしても、「演劇」の力はそんなものではないはずだ!!史実は越えられる。創作はそれだけの力がある、と高らかに宣言しているかのようである。
「演劇」の力を私たちが信じなくて、だれが信じるというのか?それは決心であり、信仰の表明であり、作者が常に自分に言い聞かせてきたことの言語化なのだろう。それを実際に作品として昇華させた作家の力量に脱帽した。

ネタバレBOX

劇、劇自体(劇の裏側)、劇中劇、という重層的な構成になっており、観客までまきこんでしまうことで、我々も「(本作品の)劇の観客」を越えて、「劇自体の観客」「劇中劇の観客」の重ね合わせがなされる。しかも「劇中劇」の役者名はそのまま役者本人になっており、中間領域の役割を果たしている。
楽屋が丸見えになっていることも特筆で、非常に多層構造になっており、一度観ただけでは足りないほどの濃密さがある。
すごいモノを観た。
花と龍

花と龍

KAAT神奈川芸術劇場

KAAT神奈川芸術劇場・ホール(神奈川県)

2025/02/08 (土) ~ 2025/02/22 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2025/02/09 (日) 14:00

価格8,800円

実験的な舞台だったんだと思う。自分はなんとか焼きそば1つとビールを1本買えたが、売り切れで買えなかった人も多そうだった。
舞台上で買い物をし、飲食し、あるいは自分の席で飲食しながら舞台を観ようとする。まるで「闇市」だなと思った。ある種のうしろめたさと活気。
しかしながら、ひろびろとした桟敷席はともかく、通常の1階の座席で焼きそばとビールを飲むのは隣の人にとても気が引けた。音がどうしてもしてしまう。
観客、地域のお店、役者の境目が「闇市」的な雰囲気の中で不思議に混ざり合い、ある種の活気として認識され、それが上演内容のイメージともマッチして独特の世界を形成することには確かに成功していたが、やっぱりどこかに中途半端なところがあった。現代劇場でできる限界なのだろう。

廃グランド・ホテル別館

廃グランド・ホテル別館

システム個人

小劇場 楽園(東京都)

2025/06/25 (水) ~ 2025/06/29 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2025/06/29 (日) 17:30

価格3,800円

主人公の立場である化け狸の動きや考えがどうしても理解できなかった。まるで性向や行動原理を物語の進行に合わせているかのようであった。とはいえその物語の進行自体は素晴らしいものがあり、それでいて主人公以外のキャラクターの濃さと実力派ぞろいの役者による怪演で笑いの絶えない舞台だった。
※言うまでもないが化け狸を演じた役者が下手だったということはまかり間違ってもない。徹頭徹尾本の問題である。
ところで、回収されないままの伏線がいくつか残ったまま終わっており、続編の余地を残す今風なつくりでもあった。

『パンとバラで退屈を飾って、わたしが明日も生きることを耐える。』再々演ツアー2025

『パンとバラで退屈を飾って、わたしが明日も生きることを耐える。』再々演ツアー2025

趣向

スタジオ「HIKARI」(神奈川県)

2025/05/09 (金) ~ 2025/05/11 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度

鑑賞日2025/05/11 (日) 16:00

座席1階1列3番

価格4,000円

あまい洋々の結城真央氏がいう「「とある現実」を材料にして、ルポやドキュメンタリーなどノンフィクションとして世間に出されること、ドラマや小説などフィクションとして世間に出されること、どちらにも搾取性や暴力性」をこれほど感じる作品もない、と個人的には感じた。
過去に親や大人に虐待を受けたりいじめにあって心を病んでしまっている人、あるいはそれに近い経験があった人にはオススメできない。逆に、そういう人たち(虐待サバイバー)に「かわいそうな人」と同情の目を向ける人、もしくは「確かに不幸なことはあったがいつまでも過去に囚われて乗り越えることができない努力が足りない人」と批判的な目を向ける人ならば、この話はとても理解できるし、納得のいく素晴らしい劇に見えることだろう。
とはいえ、中庸な発想が自然にできる人ならば、「言いたいことはわかるけど、そういうもんだろうか」という違和感は感じてくれると信じたい。

ネタバレBOX

「こうあるべき」というのに散々タコ殴りにされて病気になった人のことを劇中で、優しくしているつもりで実はさらに「こうあるべき」でタコ殴りにしている劇です。
あるアルル

あるアルル

やみ・あがりシアター

北とぴあ ペガサスホール(東京都)

2025/04/30 (水) ~ 2025/05/06 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2025/05/04 (日) 13:00

座席1階5列

価格3,500円

とにかく緻密に計算されつくしていて、綻びが見当たらない。感想を書こうと分析をかければかけるほど、我々をあざ笑うかのようだ。なんだかすごいモノを観たと感じた。日本有数の英才が戯曲を書くとこうなるのか、というのが正直な心境だ。
強い主題やメッセージ性があるわけではない。わけのなからなさもない。いうなれば単純だ。だからこそその深淵に驚いてしまう。こんなに美しい円環があんなにコンパクトにまとまるなんて、本当にすごいことだ。
ところで、配役全てが重要な役割を担っており、主演と助演が曖昧。こんなに役者全員が輝いている舞台もなかなかない。これで再演をほとんどしないというのだから、よほど今後の作品に自信があるのだろう。作品が次々生まれるというのなら、再演をしている暇などないからだ。

ネタバレBOX

これは他の方の分析で判明したことだが、「あるある仙人」の住所は劇場の住所と同一であることは劇中ですぐわかる。が、舞台の場面の日時を追っていくと16年前→10年後→6年後と実はこの戯曲は今年を舞台にした話であることが分かり、なんと夜、昼、夕方、という場面はこの舞台の上演時間と日付に完全に一致することが判明した。
すなわち観客もまたこの舞台(=「あるアルル」)に導かれている、というメッセージになっている。
この戯曲は上演台本が無料で公開されたことで話題になったが(特に演劇関係者内で)、上記のことは上演台本を読み込むことで判明する事実である(例えば10年後であることは劇中で明示されていない)。
作者もまた「あるアルル」に導かれてつくったに過ぎず、だから見せているんだよ、と言っているかのようだ。
本当にすごいモノを観た。
ハッピーケーキ・イン・ザ・スカイ

ハッピーケーキ・イン・ザ・スカイ

あまい洋々

インディペンデントシアターOji(東京都)

2025/03/13 (木) ~ 2025/03/16 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2025/03/13 (木) 19:00

価格3,800円

noteの感想にも書いたが、鬼気迫るリアリティが断片的にセリフなどに出てくるが、その間のつながりに違和感を感じてしまう。
「タイポグリセミア現象」のようにとりあえず筋が通っていれば一応物語として成立するし、そもそも違和感のない演劇なんてあるのか?と言われれば全くその通りだし、気にしたら負けといえばそうなのだが、この「違和感」をわざと現出させている可能性もあるので、何とも言えない。
あの物語上のアイドルの歌唱とパフォーマンスははたして必要だったのか?印象としては「これって必要なの?」と思わせることが狙い、とも思えなくもない。少なくとも「虚構」の物語であることを強調する効果は確かにあった。

19→

19→

劇団サンカヨウ

スタジオ空洞(東京都)

2024/12/28 (土) ~ 2024/12/29 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2024/12/29 (日) 14:00

座席1階1列2番

価格1,500円

完成度の高さにビックリした。劇団サンカヨウの次回作に期待したい。

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