tetsuの観てきた!クチコミ一覧

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曲がれ!スプーン

曲がれ!スプーン

ヨーロッパ企画

ABCホール (大阪府)

2010/02/26 (金) ~ 2010/03/07 (日)公演終了

映像鑑賞

満足度★★★★

U-NEXTの配信で観賞。

人知れず、喫茶店に集まった超能力者たち。
何とも地味な能力をそれぞれお披露目していく中、インチキ超能力者や、TV番組のカメラマンがやってきてしまい……。

久々に映画版を再見するタイミングで予習として鑑賞した。

映画と異なり、喫茶店のワンシチュエーションで展開される物語や、主人公だった女性カメラマンが脇役になっていたのが面白かった。

正直、内容としては、こじんまりとしたコメディ会話劇であり、小道具の仕掛けなども控えめなため、舞台として生で観るからこその楽しさがある作品だなぁとは思った(実際、かなり、集中力が途切れ、何度かに分けて鑑賞した)。

とはいえ、ヨーロッパ企画の近作を観劇している身としては、お馴染みのメンバーが揃っているだけで楽しく、劇団の原点が垣間見える作品だったし、各々の能力が活かされるクライマックスは、さすが上田誠脚本らしい伏線回収だなぁと感激。

映画とあわせて観ることで、舞台と映画という表現の違いを考えたり、より楽しめる作品だなと思った。

校舎、ナイトクルージング

校舎、ナイトクルージング

ロロ

武蔵野芸能劇場 小劇場(東京都)

2025/07/08 (火) ~ 2025/07/13 (日)公演終了

映像鑑賞

満足度★★★★

いつ高シリーズ vol.3から入り、そのタイミングでvol.1&2の再演版オンライン配信を知ったため、鑑賞。

深夜の校舎に集まった高校生たち。
幽霊が出るウワサを聞いて、やってきた男女3人組と不登校の女子、そして、不思議ちゃんの女の子。
昼の校舎を想像する彼らの、少し変わった青春の一コマを描く。

不登校の女子生徒が録音した音声から、目に見えない世界を想像する設定が魅力的。

自分のいない昼休みの教室に思いを馳せる二人の女子の様子がとてつもなく、エモーショナルで演劇的だった。

また、雨穴ネタを放り込んでいたり、再演版ならではの魅力があった。

vol.3に続き、将門の登場回なので、『月光の囁き』や『うる星やつら ビューティフルドリーマー』など、映画ネタへの言及が多くて、テンションが上がる。

ビューティフルドリーマーがループものという流れで、『ファーストキス F1RST KISS』を挙げているのも再演版ならではだなと。

基本はありふれた青春ものでありつつも、後半にかけて、ファンタジックな設定が浮き上がるなど、『サマーフィルムにのって』に近い肌触りも……。

なにはともあれ、教室という「場所」から、そこに存在しない「人物」や「日々」を想像するというのが、いかにも三浦直之さんらしい物語だなと思った。

六本木歌舞伎『地球投五郎宇宙荒事(ちきゅうなげごろううちゅうのあらごと)』

六本木歌舞伎『地球投五郎宇宙荒事(ちきゅうなげごろううちゅうのあらごと)』

松竹

オリックス劇場(大阪府)

2015/08/15 (土) ~ 2015/08/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

母の提案があり、家族4人で鑑賞。

海老蔵&中村獅童の二人を主演に迎え、演出・三池崇史×脚本・宮藤官九郎コンビが手掛けた異色SF歌舞伎。

"歌舞伎"とはいいつつも、単純明快なストーリーで娯楽性も高く、かなり観やすかった記憶。

演出×脚本コンビの過去作『大帝の剣』テイストでSWパロディを行うというトンデモ舞台ではあるものの、子供ながらに大満足な作品だった。

冒頭、楽屋裏のセットで主演二人がふざけた作品のアイデアを思い付くという再現風コントから引き込まれ、タイトル通り、(大きな幕を用いて)地球投げを行う衝撃のラストシーンまで一気に引き込まれた。

子役時代の加藤清史郎という抜擢も見事で、そのチャーミングさが、主演二人のコミカルな掛け合いに彩りを添えていた。

カジュアルな演目で歌舞伎ファンを増やそうという狙いを持った海老蔵さんのチャレンジ精神、(子役だった加藤さんを筆頭に)当時の役者陣にしか産み出せない空気感と、今となっては再現が出来ない部分も多く、そういう点でも、舞台ならではの魅力が詰まった娯楽作だった。

ちなみに、これは全くもっての余談だが、兄は、偶然、真横の席が当時の職場の上司になってしまい、とてつもなく気まずそうだった。

すれちがう、渡り廊下の距離って

すれちがう、渡り廊下の距離って

ロロ

STスポット(神奈川県)

2016/11/10 (木) ~ 2016/11/20 (日)公演終了

映像鑑賞

満足度★★★★

個人的な「時をかける少女」ブームから、『ダンスナンバー 時をかける少女』に辿り着き、その監督・脚本が手掛けた作品ということで、過去に配信されたものを鑑賞。

とある高校の屋外にある渡り廊下。
そのベンチで待ち合わせをしている男子高校生を中心に、男女四人が繰り広げる可笑しくて愛おしい青春会話劇。

『転校生』『ほしのこえ』と映画ファンにはテンションが上がるタイトルが登場しつつ、それが作品のテーマに紐付いているのが良い。

伝言ゲーム、糸電話の糸の気持ち、ひもQといったセリフやアイテムが示す"(物理的・精神的)距離"が作品の核になっており、そこから青春特有の恋愛や友情が描かれるのが面白かった。

不思議キャラな白子さんが、あまりにもキャラ立ちしていて、シリーズ他作も早く観たくなった。

昭和島ウォーカー

昭和島ウォーカー

パルコ・プロデュース

東京グローブ座(東京都)

2008/11/02 (日) ~ 2008/11/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

ヨーロッパ企画25周年記念興業で、イノッチがサプライズ登場したことから、本作の存在を知り、気になったためにDVDを購入し、鑑賞。

ロボットが日常生活に溶け込み始めた近未来。
その製造の下請けを担当する田舎の町工場に、亡き工場長の一人息子が帰ってきた。
ある失敗から大きな危機に陥った工場を立て直すため、作業員たちはある作戦を実行する。

全編を通して面白いかというと、まずまずというのが本音だが、クライマックスでそれを上回る感動と興奮があるため、鑑賞後の満足度は高かった。

クライマックスで「実は工場のメンバーにはこんな秘密が……」なサプライズがあったり、ラストに舞台装置が登場したりと、脚本はいかにも「ヨーロッパ企画」の上田誠さんという感じ。

"あるもの"を自立させ、みんなで操縦するラストシーンは素晴らしく、メンバー全員が揺れにあわせて動く"集団行動"は、まさに「見えないものを見せる」演劇の真髄でグッとくるものがあった。

また、この演出や前述のサプライズ展開などは、上田さんの(現時点における)新作『リプリー、あいにくの宇宙へ』にも通ずる要素で、そこにこそ、作家性があるのだなと感じた。

また、DVDでは特典映像の内容が濃かったのも嬉しかった。

舞台裏メイキングでは、ラスク工場を営む上田誠さんの父が楽屋挨拶にやってくる様子が映されているのだが、「工場のことに感心なかった子がなぁ」と泣きながら喜んでいる姿に感動した。

また、公演の様子を見ながら、次回作の構想を練る上田さんに、出演者である京野さんがお姫様役を要望するエピソードも印象的。

「それなら、全く身支度が整わないマリオ(イノッチ)との舞台をやるのはどうか」と上田さんが提案するのだが、のちに彼が映画マリオの吹替監修を務めることを思うと感慨深いものがあった。

また、上田さんと同じくヨーロッパ企画の劇団員である角田貴志さんは『映画 すみっコぐらし ツギハギ工場のふしぎなコ』を手掛けることになるが、そこはかとなく、設定に近いものを感じた。

ジャズ大名【愛知公演中止】

ジャズ大名【愛知公演中止】

KAAT神奈川芸術劇場

神戸文化ホール(兵庫県)

2024/01/07 (日) ~ 2024/01/08 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

かつての職場の知人が出演しており、当時の同僚である演劇友達と鑑賞。

ジャズの魅力にとりつかれた江戸の人々。
彼らはその熱狂から次第に踊り狂い、ついには……。

正直、物語にはかったるいところも感じたし、話運びもスゴい惹き付けられるわけではないのだが、異常なクライマックスで、そんなものは全部吹っ飛んだ。

周囲でとんでもない事態が起こっていても気づかず、狂ったように踊り狂う人々の姿は、まさしく筒井康隆作品の真髄で、滑稽かつ恐ろしい。

まさに、演劇史に残る狂気の傑作という他ない。

間違いなく、生演奏と共に浴びるべき作品だったし、20分に渡る終盤の力強いジャズセッションは、配信では成し得ない体験だった。

また、主演の藤井隆さんが鑑賞前のイメージ通り、最高なのは言わずもがな、ゆるふわ殿様な千葉雄大さん、物語の語り手となる富田望生さんが「富田劇場」とも言える大活躍で、役者陣の魅力が大いに発揮された奇作だった。

ジャングル・ジャンクション

ジャングル・ジャンクション

エクステ

新開地アートひろば(兵庫県)

2025/02/23 (日) ~ 2025/02/24 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2025/02/24 (月)

友人が出演しており、共通の知り合いでもある妻と共に観劇。

ラブストーリーに刑事もの、SFヒーローの物語が交錯?!
物語の展開をかき乱された主人公たちのドタバタ劇が始まる。

舞台装置・セットがほぼなしの演劇を久しぶりに観たので、自分の想像力がかなり試される時間になった。

とはいえ、"そこにないもの"を確かに存在させる演者の力量、濃すぎる登場人物がひしめき合うキャラ合戦としての面白さには圧倒させられた。

本音を言えば、バカでか声量の演技に慣れておらず、個人的にかなり体力を消耗したし、混沌としたストーリーテリングにも集中力が途切れそうにもなったが、クライマックスで鳥肌。

作者という存在が浮き上がり、メタ的に"物語の登場人物"を肯定する物語には心を掴まれた。

また、そのメッセージは、劇団"エクステ"が高校生の演劇WS「High School Project(通称:ゴーハイ)」を出発点に、そのOBで結成されたという経緯にもきちんと結びついて良かった。

まさしく、作者=大塚雅史(劇団エクステ主宰)、登場人物=出演者(エクステ劇団員)という構図が成り立っており、ここにグッとくるものがあった。

原作の『ウォルター・ミティにさよなら』(作:高橋いさを)、その戯曲化『ジャングル・ジャンクション』(作:成井 豊+真柴あずき)の素晴らしさもあるのだとは思うが、劇団が6年振りの作品として本作を選んだこと、そして、上記のメッセージを実直に語っていることに大きな意義があり、そういう意味で、"劇団エクステ"にしか出来ない作品になっていたのが良かった。

K-POPが多用され過ぎ(しかもキャッチーな楽曲が繰り返される)、バカでか声量による圧迫感など、自分が演劇初心者なだけに受け入れづらい要素も多かったのだが、それを持ってしても余りある感動に満ちた観劇体験だった。

走れ☆星の王子メロス

走れ☆星の王子メロス

新開地アートひろば

新開地アートひろば(兵庫県)

2024/06/21 (金) ~ 2024/06/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

かつての職場で働いている友人の誘いを受け、同じく当時の職場で出会った妻と観劇。

名作『星の王子様』と『走れメロス』が合体?!子供でも楽しめるエンターテイメントを発表する団体"to R mansion"が送る摩訶不思議なファンタジー演劇。

正直、原作は『走れメロス』を学生時代の授業で読んだぐらいの記憶なので、両作の翻案としての完成度は良くわからなかったが、それでも十二分に楽しめた。

また、演劇でありながら、むしろサーカスに近いエンターテイメントとしての面白さを特化した作劇は唯一無二で、個人的には強い衝撃を受けた。

基本的には児童ファンタジーや童話的な物語が描れるのだが、クライマックスでおじさん(植本純米さん)が歌唱するパートで不覚にも号泣。

約40年にわたり、演劇と共に人生を歩んできた役者本人が「なぜ、それでも走り続けるのか」と歌う場面には、フィクションを越えたリアルが重なるほどの哀愁があり、とてつもない声量と音圧にも心を動かされ、号泣してしまった。

自分にとっては、演劇の新たな可能性を強く感じられる貴重な観劇体験になった。

切り裂かないけど攫いはするジャック

切り裂かないけど攫いはするジャック

ヨーロッパ企画

梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ(大阪府)

2023/10/20 (金) ~ 2023/10/22 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

演劇好きの友人に誘われ、観劇。

19世紀末のロンドン。
探偵が「切り裂かないけど攫いはするジャック」の正体を探る異色ミステリーは、誰もが予想外のクライマックスへ……!?

ヨーロッパ企画でも、特に推しの永野さん&藤谷さんがメインで、自分ために作られたような作品だった。

物語の語り手を変えたり、話運びが停滞しそうなタイミングで大事件が起きたりと、工夫を凝らした構成で、気づけば終わっていた。

なんといっても、攫いはするジャックとは誰なのか?という謎が明かされる中盤の"ある瞬間"における劇場のどよめき具合が忘れられない。

舞台全体が見渡せる観客ならではの気付き、事件の目撃者になったような衝撃と後ろめたさ、それでいて、滑稽さ(とほんのり怖さ)を感じさせる"あの瞬間"にこそ、"演劇"ならではの面白さがあったように思う。

クライマックスに登場する大がかりな舞台装置のバカバカしさも含め、上田誠脚本の秀逸さを堪能した。

中世ヨーロッパを舞台にしたミステリーコメディという異色設定を見事に我が物としたヨーロッパ企画には拍手喝采で、劇団の私的ベスト演劇といっても過言ではない傑作だった。

ネタバレBOX

オープニングにおける主人公の自分語りを、他の登場人物でも繰り返す"反復"演出がシンプルながらも楽しい。
きっと、私UFOを見た。

きっと、私UFOを見た。

ヨーロッパ企画

京都四條南座(京都府)

2023/11/21 (火) ~ 2023/11/21 (火)公演終了

映像鑑賞

満足度★★★★

ここ数年で見事にヨーロッパ企画のファンになり、その流れで本劇も配信にて鑑賞。

ヨーロッパ企画の25周年を記念したアニバーサリー作品。本人役を演じる劇団員たちが、タイムマシンに乗って、これまでのヨーロッパ企画の軌跡を振り返りつつ、日の目を見なかった"幻の台本"の数々を上演。そして、記念すべき劇団第一作「ところで、君はUFOを見たか」を経て、最新作「きっと、私UFOを見た。」が披露される。

割と劇団ファンとしては新参だが、それでも、過去作を包括するようなタイムスリップ演劇に大満足。

というか、なんなら、ヨーロッパ企画版『アベンジャーズ/エンドゲーム』みたいなことをやっていて、本当にこれは観て良かった。

そういう点からも劇団初心者には勧められないが、ヨーロッパ企画ファンにとっては文句のつけようのないスペシャルな舞台だった。

例えるのであれば、結婚式のおめでとうムービーや在校生が卒業生に送るお祝い映像に近い愛おしさと遊び心があったと言えるのかもしれない。

さらに、『夜は短し歩けよ乙女』の中村壱太郎さんがゲストとして登場したり、直近のヨーロッパ企画による傑作『切り裂かないが攫いはするジャック』のセルフパロディがあったり、松居大悟監督と上田誠監督の思わぬ過去についての再現エピソードがあったりと、個人的には、めちゃめちゃテンションが上がる要素が多数。

ヨーロッパ企画メンバーが本人を演じるメタ構造が最高なのはもちろん、思わぬ形で怒涛の伏線回収が行われるクライマックスには興奮した。

なんらかの形で、また映像として見たい気持ちはありつつも、それがないことにこそ、大きな価値がある気もする大傑作だった。

ネタバレBOX

取りこぼされた無数の作品群が再演され、それらが最後の作品に文字通り"繋がっていく"演出は、伏線回収の匠"上田誠"さんの真骨頂だと思った。
神州無頼街

神州無頼街

劇団☆新感線

オリックス劇場(大阪府)

2022/03/17 (木) ~ 2022/03/29 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

友人に誘われて、劇団☆新幹線の作品を初観劇。

舞台は幕末。
恐ろしい権力者を倒すために立ち上がった町医者とその相棒。
二人の男が繰り広げるアツイ冒険譚。

前日、寝不足だったため、中盤辺りで眠くなってしまったけれど面白かった。

なによりも宮野真守が良すぎる。

アニメキャラのようなコミカルな動きと美声に顔芸。

冗談抜きで日本のジム・キャリー(それも映画『マスク』時代の)を見た。

友人曰く、『髑髏城の七人』のストーリーを発展させたような展開だったとのことで、改めて、そちらも鑑賞したいと思った。

ネタバレBOX

登場人物たちがバタバタと退場していく、クライマックスには辛いものがあったが、希望のあるラストには救われた。
夜は短し歩けよ乙女

夜は短し歩けよ乙女

「夜は短し歩けよ乙女」製作委員会

COOL JAPAN PARK OSAKA・WWホール(大阪府)

2021/06/26 (土) ~ 2021/06/27 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

大学時代、演劇に取り組み、原作&主演・久保史緒里さんのファンでもあった友人と共に観劇。

舞台は京都。
冴えない男子大学生が、憧れの女性"黒髪の乙女"に好意を抱いたことから、摩訶不思議な出来事を体験していく恋愛ファンタジー。

アニメ映画版があまりにもカオスな出来だったため、物語へのハードルはかなり下がっていたのだが、「こんなに面白い話だったのか?!」と驚くぐらいに素晴らしい演劇だった。

プロジェクションマッピングを駆使したOPにおける主人公のモノローグに始まり、ヒロイン・久保史緒里さんのポエトリー・ラップ、豪華な舞台装置に、生き生きとした登場人物たち(出演者のプロフィールを活かしたファンサービス的演出もあり)が繰り広げるコミカルな物語。

上田誠さんの演出が見事に作品世界と結びつき、奇跡的な化学反応が起こっていた。

本作をきっかけに、上田誠さんが手掛ける演劇作品にハマっていったというのもあり、個人的にも大きな意味を持つ作品になった。

特に印象的だったのはクライマックスの展開。

風邪が蔓延した世界でヒロインを助けようと奮闘する主人公の姿に、コロナ禍真っ只中の観劇当時、どれだけ強く胸を打たれたか。

思いもしない形で原作の物語に新たな価値が付与された本作は、まさしく「演劇」にしかできない作品となり、配信ではなく、リアルタイムで体験することが出来て、本当に本当に良かったと思う。

ちなみに、その点では、主人公でも、ヒロインでもなく、竹中直人さんに一番泣かされたのも忘れ難い思い出。

『裏ゾッキ』というドキュメンタリー映画では、本作出演の竹中直人さんが、コロナ禍により、自身の監督作が不遇の扱いを受け、苦悶する姿が映し出されていた。

それを踏まえて観劇したのもあり、コロナ禍が明けていない当時のご時世で、本公演が開催できたこと、その尊さを噛み締めざるを得ないカーテンコールで、スタンディングオベーションの会場の中、涙を滲ませる竹中直人さんにもらい泣きした。

たぶんこれ銀河鉄道の夜

たぶんこれ銀河鉄道の夜

ニッポン放送

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2023/03/17 (金) ~ 2023/04/02 (日)公演終了

映像鑑賞

満足度★★★★

上田誠作品のファンだったため、配信にて鑑賞。

憂鬱な社会生活に嫌気が差した女性。
彼女が辿り着いたのは、不思議な乗り物"銀河鉄道"だった。
そこで疎遠になった女友達と再会する彼女だったが、乗り合わせた人々と共にデスゲームに巻き込まれ……。

銀河鉄道でデスゲーム、しかも、ネプリーグみたいなやつまでやらされるというトリッキーな展開な笑い転げながらも、シリアスなクライマックス、切ないラストの畳み掛けに、気づいた時には落涙していた。

ちょうど、『銀河鉄道の父』を鑑賞した後のタイミングというのもあり、その精神性を引き継いだであろう内容に感銘を受け、原作、ひいては宮沢賢治さんに強い興味を持った。

総じて、コメディではあるのだが、ラストで切ない友情物語へと反転する様が凄まじく、これまで観た上田誠作品の中でも異色の構成で、今もなお、その衝撃は強い。

一方で、この点からは、コメディ色や娯楽性を追求する上田さんが、名作の脚色においては、あくまで「原作の精神性」を第一と考える思想が垣間見える作品でもあった。

鴨川ホルモー、ワンスモア

鴨川ホルモー、ワンスモア

ニッポン放送

サンケイホールブリーゼ(大阪府)

2024/05/03 (金) ~ 2024/05/04 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

上田誠作品を一緒に行くのが恒例になった演劇好きの友人と観劇。

"ホルモー"なる謎の競技を行うサークルに参加することになった男子大学生。
そこでは京都を代表する大学が各々の看板を背負い、しのぎを削るアツい勢力争いが繰り広げられていた。
本気で珍妙な競技に取り組む彼らの姿を甘酸っぱい恋模様も交えて描く、青春恋愛ファンタジー。

過去に映画版を観たうえで観劇したが、『夜は短し歩けよ乙女』初見時と同じく、「この話こんなに面白かったっけ?!」となった(観劇後にも映画を改めて観て楽しんだが、やはり演劇版はそれを上回る面白さ)。

原作のみならず、その関連作品の要素も取り込んだという本作ゆえに、内容は盛り沢山で満足度は高い。

ホルモーという競技に興じる学生の物語を映画版とは異なり、群像劇として描いているのも紛れもなく、本作の勝因。

異なる語り口により、次第に物語の全容が明かされていく構成が素晴らしく、同じ場面を繰り返す冒頭とラストで印象が全く異なるという鑑賞体験にも、それが凝縮されていた。

また、青春ラブストーリーとしての面白さも大きな魅力。

とりわけ、ツン"ユル"なサークル員・楠木ふみ(演:清宮レイ)が告白をする場面が最高すぎて、観客席からも純粋にドキドキしてしまった。

あの場面とラストシーン、そして、モニターを活用したホルモーたちの大乱闘だけでも、鑑賞代の数倍の価値はある作品だった。

続・時をかける少女

続・時をかける少女

2018「続・時をかける少女」製作委員会

東京グローブ座(東京都)

2018/02/07 (水) ~ 2018/02/14 (水)公演終了

映像鑑賞

満足度★★★★

時かけオマージュありという上田誠脚本の新作『リライト』の予習もかねて、DVDにて観劇。

かつて未来人"ケン・ソゴル"の力を借り、時をかけた女子高生・芳山和子。
記憶を抹消された彼女の前に彼が再び現れた……。
ある依頼で、平成初期、バブル、学生運動の時代と、過去の日本へタイムスリップすることになった和子は、かけがえのない青春の日々を駆けめぐることに。

王道の青春恋愛SFかと思いきや、平成あるあるネタが満載のドタバタコメディで驚いたが、面白かった。

なんといっても、上田誠×オールナイトニッポン コラボの初回として、のちの舞台にも通ずる「淡い青春ラブコメ要素」が確立されているのも良い。

切ないラストでは終わらず、しっかり娯楽作として、コミカルなオチをつける辺りに、上田誠さんの作家性を感じた。

また、時代あるあるで笑いをとる辺りには上田誠節が炸裂。

2010年代(スタバ・インスタ・スノウ)、90年代(コギャル、たまごっち、バブリーダンス)、80年代(暴走族・ローラー族、たけのこ族)、60年代(機動隊、フォークゲリラ)で、様々な固有名詞を詰め込んだ脚本もさすがで、この辺りには創作にあたり、資料のリサーチは欠かせないという上田さんの生真面目さが光っていた。

そして、何といっても、主演・上白石萌歌によるED曲が至高だった。

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