manetの観てきた!クチコミ一覧

1-16件 / 16件中
うさぎとシーラカンス。

うさぎとシーラカンス。

SCARLET LABEL

駅前劇場(東京都)

2015/02/26 (木) ~ 2015/03/03 (火)公演終了

満足度★★★★

キャッチコピーのセンセーショナルさに比して、真面目で内省的なストーリー
脚本はクロムモリブデンの葛木英。
演出は花組芝居の堀越涼。
主演がメトロファルスの伊藤ヨタロウに秋山・オシリーナ・莉奈。
それから拙者ムニエルの加藤啓。
かてて加えてハコが駅前劇場。

…このカオス感がすごいよね。

ソレナリに期待して行ったんですが、思った以上にアタリでした。
ホンも装置や音を含めた演出も役者陣も、この作品が駅前劇場というイワユル小劇場空間で演じられているコトも…失礼ながら思っていたよりずっと素晴らしかった秋山莉奈のヒロインも。

キャッチコピーのセンセーショナルさに比して、きわめて真面目で内省的なストーリー、ゼロ年代的にはアリガチダヨネーで終わらせられそうな諸々をがっつり成立させてしまう小劇場のチカラを感じさせてくれる芝居でした。

楽日は狙いすましたように三月三日の雛祭りです。
まだチケットあるようです。オススメします。

完熟リチャード三世

完熟リチャード三世

柿喰う客

吉祥寺シアター(東京都)

2015/02/05 (木) ~ 2015/02/17 (火)公演終了

満足度★★★

「新キャラでーす(棒」
柿喰う客 女体シェイクスピア007完熟リチャード三世。
通常3時間超で演じられる大歴史劇のリチャ3を、7人の女優さんが80分で駆け抜ける疾走感と力技と色気のスペクタクル!
相変わらずのこのシーン切ってくか!なショートカットとこの台詞こうしちゃいますか!な名訳ぶりが素敵。

とはいえ…このシリーズ、003から観ているのだけど、今回は流石の中屋敷さんでもリチャ3はこうなるかぁ、な印象かも。

面白いんだけど、厨二妄想自己陶酔悪役志願なリチャ3は小劇場演出ではわりとメジャーな感じがするし、
正直そういうのは夢の遊眠社「三代目、りちゃあど」で上杉祥三さんが演じた名演を観ているから、
もっと違う換骨奪胎が観たかった…なんて、贅沢言い過ぎですね、はい。

胎内

胎内

reset-N

渋谷 EN-SOF TOKYO http://en-sof.jp/(東京都)

2014/11/07 (金) ~ 2014/11/10 (月)公演終了

満足度★★★★

絡む。
学生時代から観続けている夏井孝裕さん、再起動準備公演と銘打っての数年ぶりの公演。

個人的なキーワードは、「絡む」かな。

小さなラウンジに裸電球ひとつ。
薄暗いが故に澄まさざるを得ない耳に刺さるテキストと熱を持った断片としての肉体。
三好十郎氏の1949年の作品だそうだが、きはめて現代的というか、いろいろ身につまされてしまう。

椅子席よりもたぶん桟敷が吉。

暴走ジュリエット/迷走クレオパトラ

暴走ジュリエット/迷走クレオパトラ

柿喰う客

あうるすぽっと(東京都)

2014/10/17 (金) ~ 2014/10/26 (日)公演終了

満足度★★★★

やられた。
「暴走ジュリエット」のタイトルに偽りなし。
綺麗で可愛く美しい女優12人によるスタンピード。

アタマに浮かんだコピーは
「ジュリエット14歳、ロミオ16歳。ふたりはまだ恋を知らない」みたいな?

柿喰う客、そして中屋敷さんは、ほんとうにいろいろなアプローチをしている劇団のひとつだと思うけど、この女体シェイクスピアシリーズの「長編芝居をナナメの角度から切って一言で表す」発想と技術には毎回呆れる(褒めコトバ

ちなみに、この作品。これまで以上に、戯曲で読んだことがある方、演ったことがある方にオススメします。なんてゆーか、とりあえず佐藤健と石原さとみに観てもらって感想を聞いてみたいキモチ。

まだ空席あり、観て損なし。

来週金曜日には「迷走クレオパトラ」観に行きます。

ヒネミの商人

ヒネミの商人

遊園地再生事業団

座・高円寺1(東京都)

2014/03/20 (木) ~ 2014/03/30 (日)公演終了

満足度★★★★

次はきっともっと面白い。
初演当時、平田 オリザさん率いる青年団の「静かな演劇」、ク・ナウカの宮城 聰さんの「二人一役」などと列を同じくする、新しい作劇法で創作されたとても面白い舞台だ、という噂だけは聞いていました。
まだぎりぎり大学生で日常のほとんど8割以上を芝居を作ったり観たり手伝ったりして生きていた頃です。

それから21年が経っての初観劇。
いわゆる「エンゲキテキ」ではないさまざまな表現手法が観客に与える違和感、居心地の悪さを再確認しつつ、自分にとっては、それがもはやお馴染みの表現になってしまったことも強く実感しました。
そしておそらく、これまでさまざまな形で「ヒネミの商人」の影響を受けた数多くの舞台を体験してきたのだなあ、と感じました。

作品は十分に面白かったのだけれど、どうにももやもやする・・・素直に言えば、もっと先へ走っていってくれても喰らいついて行くのになあ、などと贅沢なことを思いながら劇場から出てきたのでした。

昨年の秋に観た、おなじ遊園地再生事業団の「夏の終わりの妹」が与えてくれたもどかしさと疾走感、あのエキサイティングな感覚が、「ヒネミの商人」から21年経った宮沢さんの、いまの表現なのだとすれば、この再演は宮沢さんにとって、そして彼のフォロワーである多くの演劇関係者や観客やもう一度己の足場を踏みしめてみる機会だったのかも知れません。そしてこれからもっと面白い作品が生み出されるのでしょう。

片鱗

片鱗

イキウメ

青山円形劇場(東京都)

2013/11/08 (金) ~ 2013/11/24 (日)公演終了

満足度★★

面白かった・・・かい?
正直、コレが舞台じゃなくて映像作品だったらもっと怖くて面白かったろうと思わせるのが残念(でも怖いの苦手なので映画だったら観にいかない)。
生身の役者が目の前で演じるホラー作品は怖がる気持ちに客席の自分を持って行くのが難しいよね。アバンタイトル的なパートが一番怖くて、後はひたすら左脳で観てしまった。

…まあ、それ以前にハナシも演出、照明、音響の手法もありきたりなホラー映画のソレなので、あのやり方で「ホラー演劇」ってムリあるかもなあ。

ネタバレBOX

ほめるところを探すと「水」ですね。水音と飛沫、水溜り。あれは「ナマだからこそのリアリティ」が五感にショックを与えてくれる。
失禁リア王

失禁リア王

柿喰う客

吉祥寺シアター(東京都)

2013/09/05 (木) ~ 2013/09/17 (火)公演終了

満足度★★★

ワイドショー「リア王」
さて柿喰う客「失禁リア王」@吉祥寺シアター。
驚異の90分で唄って踊って駆け抜けるリア王。
キャラ立てされた人物の、ダイジェストで語られる悲劇の、ハンパなきワイドショー感が、ある意味でタイヘン心地よい。ラストカットの深谷さんに平幹二朗の幻影を見られたら一人前www

フルサイズでリア王を観たヒトにチョーオススメします!

COVER / Rose+

COVER / Rose+

reset-N

ザ・スズナリ(東京都)

2010/11/12 (金) ~ 2010/11/14 (日)公演終了

満足度★★★★

明日、二本観るなら、
できれば「Cover」を先にした方がよいかと。

なぜかといえば「Cover」のほうが「短編」だから。

70分程度の小品であることはもちろんだが、端的な脚本、明快で軽妙な演出、日常性の高い(とてもオシャレな)装置、などまさに短編小説的なつくりの作品なので。

「サイン」や「knob」、「キリエ」「黎明」などの作品と方向性を一にしたreset-N作品の大きなテーマである「断絶(伝わらない関係)」を描いている作品だが、「個」対「個」、「個」対「他」よりも大きな関係性に物語を広げていくことなくまとめられている。傾向の似た作品としては「Valencia」ぐらいだろうか?

わたしが観劇したのは、初演のみ(再演時には東京を離れていたので)であるが、役者がまったく変わっても、当時感じた印象とあまり大きな違いを感じることなく観ることが出来た。

いっぽうで「Rose」は「Visions of Tokyo」にはじまり「繭」、「青」などの作品につながる、「個」の関係を「社会」のあり方に広げていくメッセージ性の強い作品群のひとつ。

すごくかっこいい、大好きな作品で、すごくお奨め。
哀切に満ちた「絶望を経て、届かぬことを半ば知りながらも、断絶を越えて、なお届けたい強い想い」を舞台上に現出させる役者陣の「物語るチカラ」に圧倒される重厚な中編である。

この作品も一人を除いてキャストが全員入れかわっているが、その効果によって大きな印象の変化があった。
だから、今回の再演は、初演を観ていない人はもちろん観た人にもとてもお奨めなのです。

初演で鶴牧万里と長谷川有希子が演じた男女は原田、田中の両名により演じられた。
reset-N得意の「胸に響く台詞を紡ぎ出すすごい装置」と化した初演のふたりに比して、今回の二人が演じた男女は若干不器用に演じられたが、それ故か、より「現実感のあるキャラクター」として造形されていたように感じる。
その結果どこかファンタジックでヒロイックで硬質なドラマに(正直、初演の時には鶴牧さんのあまりのかっこよさに不覚にも泣いてしまったのだが、それでも)「血の通ったやわらかさ・しなやかさ」が加わったように思うし、それを受けての久保田演じる男の台詞や立ち振る舞いに現れる情感もまた、より深く明確に表現されていたと思う。

また、綾田、山田、および柿喰う客からの客演である玉置玲央の三人(初演では原田紀行、生田和余 、平原哲)が生みだす若い3人の温かみ、心地よさも特筆すべきである。
脚本家に思わず「出番が少なくてもったいない」ので「原稿を追加」させた玉置玲央の白眉とも言うべき演技は言うまでもないが、綾田と山田の二人が作り出した「男女のあらたな関係」こそ、物語に与えた影響は大きいのではないだろうか。

個人的には「(これもreset-Nではおなじみの)共依存にも似た庇護・保護」の関係を感じさせた初演の原田、生田のふたりとは大きく異なる「どこか同じ欠落を持つ仲間」としてのふたり、という印象だろうか。追加された玉置のシーンともあいまって物語の「絶望とその先の希望」がはっきりと見えたように感じた。

全体に初演と比して「ぬくもりとやわらかさ」を感じさせた今回の「Rose+」。

それはフランス留学から帰国後(多大な代償を払いつつも)「曖昧さ、眠り、そして悔恨、しかしながら」「眠るために目醒める」という内相的な2作品と「視野」という実験作品を経て、「青」を生み出した、夏井さん自身の変化なのかもしれない。

いずれにしてもあと一日、13:00「Cover」16:00「Rose+」19:00「Cover」。
価格破壊の1演目2000円である。

観て損はない、絶対。

そのとき橋には誰もいなかった

そのとき橋には誰もいなかった

オーストラ・マコンドー

アサヒ・アートスクエア(東京都)

2010/11/06 (土) ~ 2010/11/14 (日)公演終了

つらかった。
観客の視点がもてない脚本、トータルでの世界観を打ち出すことなく個別の演技指導程度しか出来てないであろう演出、役者がそろっての稽古がほとんど出来ていないが故かそういう事を意識できない役者が主演だからかは知らないが個々の演技やビジュアルでは見るべきものがあってもひとつの舞台に出演するものとしてのアンサンブルがまったく取れていない役者陣(特に主演の男女は「舞台俳優として」の訓練がまったくといっていいほどされていない印象)、無用なエフェクト、無意味で大仰な装置(飛び降りが出来る開帳であることも含め)。

決定的なのは物語を「見せる」「見る」双方に「お仕事だから」「お義理だから」感があふれているコト。

神様に一番近い場所

神様に一番近い場所

LIVES(ライヴズ)

赤坂RED/THEATER(東京都)

2010/10/06 (水) ~ 2010/10/10 (日)公演終了

満足度★★★

なるほどねえ。
正統派コメディーを唄った総出演者数32人という小劇場的にありえない人数による(しかもほとんど全員が板についているという!)ドタバタ人情話。

お話そのものは面白いけれど、舞台装置も照明も普通、音響はありきたり、イケメンも美女もいない(というと失礼だが)えらく話題性に欠けそうな舞台ながら連日満席らしいのは、個人ベースでそれなりに客が呼べる役者が集まっているからなのでしょう。

実際、ひとりひとりにきちんと見せ場を作り、力量のある役者が要所要所をきちんとまとめていくことで、大人数であるがゆえにともすればgdgdになりがちな散漫でドラマ性に欠ける構成を補って、いいお芝居を作っていました。

・・・気になったのは受付陣に「日本語が不自由でKYな人材」が多かったことかな? 当日入りでいいお席をいただいておいて言うことじゃないですが、受付誘導にはお客様に気を使った態度や、せめてそれなりの敬語が使える人材をおいた方がよいのではないかと思います。

パーティーが始まる

パーティーが始まる

TOKYO PLAYERS COLLECTION

王子小劇場(東京都)

2010/08/03 (火) ~ 2010/08/08 (日)公演終了

満足度★★★

ほどよくあまずっぱくてあおくさい。
えーと、みんなの思い出の中にある「学生劇団のオリジナル演劇」の理想がここにあります。「ソコを狙ってやってる」ことは明白にしても、ステキな「若さ」の奔流に圧倒されます。

自意識過剰な勘違いと押し寄せる不安を空回りする膨大なエネルギーでシェイクした、恥ずかしさのあまりに客席に椅子を投げたくなるくらいに甘酸っぱくて青臭いカクテル。

トシヨリ悪酔い必至。



「視野」

「視野」

reset-N

アサヒ・アートスクエア(東京都)

2010/06/11 (金) ~ 2010/06/14 (月)公演終了

満足度★★★★

硬質なガラスの欠片。
初日観劇。
入場すると座布団を渡され「全席桟敷です。お好きな場所でご覧ください」と言われる。
言われてみてもどこが舞台でどこが客席やら皆目見当がつかず、うろうろとしてみながら無難そうなあたりに腰を下ろす。
腰を落ち着けてみると、立っていても高い二階吹き抜けの空間がおそろしく高く感じる。

ここで既に観客(私)はreset-Nの生み出す空間の魔術に掛かってしまっている。


今回は、reset-Nの作り上げてきたいくつかの特徴的で印象的な断片を折り重ねて提示されたような印象。

絶望をめぐるスラップスティック 。

「スラップスティック」は「体を張ったどたばた喜劇」のことである。
だが、大概のスラップスティックコメディでは、演じている側にとっては深刻なトラブルなり、ディスコミュニケーションなりが発生している状況を観ている側が外から眺めて大笑いしているのだ。
「観客であることの安堵」そのことに気づかされるスラップスティックはきわめて切ない。

「初めてのreset-N」なお客様にとてもお勧めかもしれない。
もちろん初めてでない私にも十分に面白く、示唆にとんだ作品であった。

どうにかスケジュールをやりくりしてもう一度観に行こうと思う。
今度はまったく無難じゃない観客席で、観たことのない視野を探しに。

青

reset-N

ザ・スズナリ(東京都)

2010/02/10 (水) ~ 2010/02/14 (日)公演終了

満足度★★★★

うん、reset-Nですね(喜
宣伝コピーに曰く、
「東京、遠くない未来。
急激な移民社会への変化の中、外国人排斥のレイシズムが日本を覆っていた。」
・・・なんだか変な風にタイムリーな話題になってしまったことで、観る側の目にいろいろなフィルターが掛かってしまいそうな怖さはあるけれど、「reset-Nの原点に戻った」というこの作品を私は素直に面白かったと、評価したい。

たしか「現代に生きる「個」と「社会」の関係を描き続ける、reset-N」というフレーズを思いついたのは『Rose』のときでしたか。今回も「個(自)」と「個(他)」、「個」と「ちいさな社会」、「個」と「大きな社会」の関係が丁寧に重層的に積み上げられていくなかで、希望と絶望とが透明な哀切によって照らし出されています。

それにしても・・・毎度ながら鶴牧さんの首の後ろには「押すとかっこいい台詞がすらすら出てくるスイッチ」がついているんじゃないかと思うよ。

古くからのファンとしては、ひさびさに「これがreset-Nです」と言われて納得の行く作品でした(初日ならではのギリギリ感も含めてw

アンチクロックワイズ・ワンダーランド

アンチクロックワイズ・ワンダーランド

阿佐ヶ谷スパイダース

本多劇場(東京都)

2010/01/21 (木) ~ 2010/02/14 (日)公演終了

満足度★★

微妙に懐かしい。
展開はイカニモなロジカルアングラ風。
舞台の使い方はイカニモな90年代小劇場風。
目新しいものは無いし面白いとも言わない。
比較的早めの辺りから展開は読めるのだが、役者陣の力量で飽きさせない。

難解だという感想が多いのは、すっきりとした「解答」があると思い込んでいる「受験脳」「TVドラマ脳」で見ているからなのかな?

マリー・ド・ブランヴィリエ侯爵夫人

マリー・ド・ブランヴィリエ侯爵夫人

DULL-COLORED POP

新宿シアターモリエール(東京都)

2009/08/14 (金) ~ 2009/08/17 (月)公演終了

満足度★★★★★

濃厚。
うーんと、おおあたりっ。
普段小劇場だけしか足を運ばないヒトにはどんなだったか知らないけどねー。

なんか現実に戻ってくるのタイヘンだったわ。

残念ながらDULL-COLORED POPという演劇集団は「同じことは2度やらない」っぽいのでコレは伝説の舞台になっちゃうんだろうなー。

といいつつ、ちょっぴりてゆーかすごーく再演に期待だ。

ネタバレBOX

上演時間2時間15分(途中休憩10分)の二幕劇。

舞台は17世紀フランス、実在した殺人鬼マリー・ド・ブランヴィリエ侯爵夫人を描いたストレート・プレイ。ということで全てのキャストがきっちりとドレスをまとい、高々と髪を結い、あるいはキュロットで、あるいはサン・キュロットで舞台を歩きます。

圧倒されるのは紡ぎだされる台詞の数々。

「おとうさま、おとうさま。ああ、なんていうことかしら。私の心は悲しみとおののきで張り裂けそうですわ」
「いいや、今は悠長に嘆き悲しんでいる場合じゃない、早く神父様を・・・父上が息を引き取るその前に、最後の告白を聞いていただかなくては」
「まあ、なんてことをアンリ!パメラ、パメラちょっと来てちょうだい」
「いやいや、君だってそうとうにお盛んだそうじゃないか。ああん、ゴオダン・ドサントクロワ?」

とまあ、全編がこんな調子(セリフはイメージです)。

色とりどりの薔薇のような絹のような、古い葡萄酒のような言葉たち。

特に主人公のちょっとカンの狂った調子の高音と後半で対立する死んだ主人公の弟の妻(つまり未亡人。仲村みうに似ててちょっとドキドキした)のよく響くエロティックな低音のバランスがすごく心地よい。
この二人だけが正規のメンバーらしいけど、さもありなんって感じ。

あと、大塚秀記氏演じる「主人公の良人(侯爵)」と原田紀行氏演じる「侯爵の遊び仲間で主人公の愛人」、「侯爵の愛人」達の場面がイカニモな退廃貴族とそのとりまきを演じていてものすごく秀逸でした!

・・・20代の頃、六本木の俳優座で、銀座の日生劇場で味わったあの「新劇」そのものといった濃厚なコトバに圧倒され、目の前がくらくらします。

一方で、セットはモリエールのギャラリーや楽屋口をフル活用しての簡素な構成。たぶんカミシモの出ハケとギャラリーからの階段以外には、テーブルと数脚の椅子だけという、このシンプルな舞台セットと衣装や芝居とのギャップを敢えて作り出し、しかも不自然に見えないように、さらには二階ギャラリーから一階の舞台までの高低差を存分に生かした演出と照明はまさに小劇場のもの。

うーんとね、小劇場で「同ジヨウナちゃれんじ」を見た記憶としては98年の惑星ピスタチオ「大切なバカンス」@新宿・紀伊國屋ホールぐらいかな?故(!)平和堂ミラノさんの作品で夏のフランスの田舎を舞台にした万華鏡のようなお話だったな。

・・・いや実は、もうひとつこういったバランスで組み立てられている舞台があるのを知っているような気がする。

東宝ミュージカルだ・・・ただし唄わないけどww

「エリザベート」や「レ・ミゼラブル」の虚構と惑溺と省略をそのまま新宿の小さな芝居小屋に濃縮してのけたそんな舞台。てゆか、実はところどころで「あ、コレ『マリー・アントワネット』で見たぞ」的な絵には出くわしたんだ。

でも、アレ(帝国劇場)をココ(シアターモリエール)でやっちまえるってのは並大抵の力量じゃないよー。

最初はどこから「ふつうの小劇場芝居」に戻るんだろうと思いつつ、20分も経つ頃「ああ、コレずーっとこのまま行くんだ」と気付いた時の衝撃。そして休憩を挟んで二幕という小劇場ではありえない構成に「狂気を帯びた本気さ加減」を感じつつ酔いしれた2時間15分。
なんか現実に戻ってくるのタイヘンだったわ。
眠るために目醒める

眠るために目醒める

reset-N

王子小劇場(東京都)

2009/06/25 (木) ~ 2009/06/30 (火)公演終了

満足度★★★★

確かな深化を感じる、が。
フリのお客さま、演劇ファン、小劇場ファン、演劇関係者(役者、演出家、脚本家、スタッフなど)、そしてreset-Nという集団に関わっているヒトビト。それぞれの立場によってかなり異なった反応がありそうな・・・というのが率直な感想。おそらくは演劇関係者こそ見たらたまらなく面白い作品のような気がします。

10年来の(でも1年振りの観劇となった)reset-Nファンである私としては、そこここに現れる「知っていれば笑うしかないリアリティ」をもてあましてしまったが、その一方でコレまで観て来た、そしてreset-Nが評価されてきた方向性とは若干軸足を異にするものの萌芽を感じ取れた作品であることを高く評価したい。

演出家自身の思いを代弁する台詞に見られる「なんぼなんでもというほどの生硬さ」や「旧来のreset-Nらしさを感じさせるスタイルがかえって空回りしている部分」も散見されるが、この作品には「これまでにない、これからのreset-N」への期待を感じる。

このページのQRコードです。

拡大