満足度★★★★
次はきっともっと面白い。
初演当時、平田 オリザさん率いる青年団の「静かな演劇」、ク・ナウカの宮城 聰さんの「二人一役」などと列を同じくする、新しい作劇法で創作されたとても面白い舞台だ、という噂だけは聞いていました。
まだぎりぎり大学生で日常のほとんど8割以上を芝居を作ったり観たり手伝ったりして生きていた頃です。
それから21年が経っての初観劇。
いわゆる「エンゲキテキ」ではないさまざまな表現手法が観客に与える違和感、居心地の悪さを再確認しつつ、自分にとっては、それがもはやお馴染みの表現になってしまったことも強く実感しました。
そしておそらく、これまでさまざまな形で「ヒネミの商人」の影響を受けた数多くの舞台を体験してきたのだなあ、と感じました。
作品は十分に面白かったのだけれど、どうにももやもやする・・・素直に言えば、もっと先へ走っていってくれても喰らいついて行くのになあ、などと贅沢なことを思いながら劇場から出てきたのでした。
昨年の秋に観た、おなじ遊園地再生事業団の「夏の終わりの妹」が与えてくれたもどかしさと疾走感、あのエキサイティングな感覚が、「ヒネミの商人」から21年経った宮沢さんの、いまの表現なのだとすれば、この再演は宮沢さんにとって、そして彼のフォロワーである多くの演劇関係者や観客やもう一度己の足場を踏みしめてみる機会だったのかも知れません。そしてこれからもっと面白い作品が生み出されるのでしょう。