ヒネミの商人 公演情報 ヒネミの商人」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
1-8件 / 8件中
  • 満足度★★★★★

    この感覚
    モヤっとした心の奥底に沈殿するような、「認めたくない」何かを見せつけてられてるかのような、この感覚が秀逸ですね。

  • 満足度★★

    消えた町の日常
    「遊園地再生事業団」立ち上げから間もない時期に初演された
    作品の再演。初演と比較しようもないのだけど、宮沢氏の近作と
    比較すると、かなりの部分で「物語」というフォーマットが残って
    おり、不思議な気がしました。ここではうっすらとした形で提示
    されていたものが、後年では、明確なストーリーと交代するように
    前面に出てているように思います。

    ネタバレBOX

    「ヒネミ」(日根水)という架空の町に過ごす人たちと、そこに「外からの
    人」として赴任してきた銀行員、渡辺のある一日を描いた本作。とはいえ、
    特に大事件が起こるわけでもなく、風変わりな日常の様子が
    描き出されます。

    「ウルトラ」という正体不明の物品、「サルタ石」を捜し求めてさまよい続ける
    正体不明の女、贋札製造をにおわせる印刷工場の主人。不可解なもの、
    謎を秘めたものはたくさん出てくるのですが、その秘密が明かされることは
    なく、淡々と進んでいく作品は、どこか脱臼したような、気の抜けたような
    登場人物のやり取りと共に始まり、そして終わりを迎えます。

    最近の作品と比べた場合、今と比べて、登場人物同士の会話が大きく
    ウェイトを占め、演出もいわゆる従来の演劇に則っています。加えて、
    宮沢氏の近年の作品の特色である、「ドキュメンタリー」「メディア」との
    親和性はまだ希薄で、会話の端々に差し込まれる「批評性」「テーマ性」も
    少なくとも目に見える形ではほとんど現われません。

    どこかゆるゆるとしていて、始まりと終わりの境目が曖昧な、「ポスト会話
    劇」の作風は『五反田団』に通じるものがあると思いました。時折、とぼけた
    冗談が入ってくるところとか特に。そういう作品が好きな人には、いわば
    「親」「源流」を知る意味で触れる価値はあると感じます。
  • 満足度★★★★★

    生き字引
    20年振りの再演とは思えないほど普遍的な作品。古典とまでは言いません、ただ面白いと思わせてくれました。音響照明が特に良かった。

    ネタバレBOX

    もう少しだけ短いと良かったようにも思えますが、この時間くらいが不穏さ加減としても良いのではないでしょうかね?

    ほぼシンメトリーな舞台美術に関してはちょっと難。もうすこし見せ方があったのではないでしょうか?
  • 満足度★★★

    再演だけど初見。
    初演が21年前の作品、の割りには感覚が今に通じてる部分が多かったような。具体的にその感覚が何か、と問われば上手く言えないんだけど。
    お金の価値と何気ない日常会話だらけの生活と、ほんのちょっとの出来心を淡々で、ふわふわ見せられた感じ。
    黒電話と、会話している時にたまに聞こえる効果音のような低い音楽が印象に残った。
    自分の理解度が低いため、宮沢さんの作品は好みが分かれるけど、今作は好き。
    約110分。

    ネタバレBOX

    道に迷い続ける女性、何かの示唆のように急に重くなる石と徐々に狂っていく渡辺、自我が強そうな叔母さんとか。
    「ウルトラ」って、表沙汰には出来ない物なんだろうなー、なんかそれも不気味でした。
  • 満足度★★★★★

    あれやこれや
    なんですよ。背中に何か…、こういの何て言うんだっけ…、そう!感想もこういうの何て言うんだっけと思わせる…好き。色々なことを試してくれる遊園地再生事業団だから、宮沢章夫でなければできない公演だと感じました。満足。

  • 満足度★★★★

    21年ぶりに観劇。若手演劇人必見!
     本作が再演されると聞き、飽き性な宮沢章夫のこと、ガラッと趣向を変えてくるかと思いきや、意外や脚本・演出とも大きくは変わっておらず、お蔭で、「こんなギャグ、あったあった(笑)」などと懐かしさに酔い痴れながらこの大傑作を観るという幸せな105分を過ごすことが出来ました。
     初演にも出ていた中村ゆうじと宮川賢が同じ配役で出ているほかは全て新キャストというこの座組で、かの大傑作をその妙味を損なうことなく再現したのは立派。
     それどころか、初演には当時の小劇場界屈指のコメディエンヌ・ふせえりが出ていたこともあり、コメディとしての出来映えは初演に劣るものの、“カネにまつわる怪異譚”としての完成度は再演のほうがむしろ勝っているくらい。

    数々の“小さな不思議”が時に笑いを生み、時に背筋をゾクリとさせるとても宮沢作品らしいこの傑作を、可能ならば演劇を始めて間もない若い人達に観て欲しい。
    というのは、最近の若手演劇人の作る劇には、宮沢章夫の影響がほとんど感じられないからだ。
    それは無理からぬことでもあって、ここ10年ほどの宮沢章夫はスタイルにばかりこだわった分かりづらい劇を作り続け、客を楽しませることを第一義とする真っ当な劇を作ってこなかった。
    なればこそ、最近の若手演劇人は宮沢章夫の芝居など観たことがなく、影響を受けようにも受けようがなかったのだ。
    そのため、本谷有希子くらいの世代を最後に、宮沢章夫の影響を大なり小なり感じさせる演劇人は出てきておらず、宮沢イズムは今世紀の半ばを待たずに死に絶えようとしている。
    これはまずい。
    もろに影響を受けてもいいし、ピンとこずにスルーしてもかまわないので、若き演劇人は何はさておき本作を観るべき。そして宮沢章夫という偉大な演劇人の名前を頭に刻み込むべきだ。
    自分で書いておきながら「神格化が過ぎるのでは?」との疑念が頭をよぎりもするが、いちど宮沢章夫を通過してから演劇を創作するのと、宮沢章夫をくぐらずに作劇にあたるのでは、出来上がる劇の水準が大きく違ってくるはず。
    宮沢章夫という人はそれくらい凄いのだ。
    あまたいる演劇界の後輩たちにもっともっと影響を与えるためにも、宮沢章夫は本作のように実があって面白い作品をまた作り始めるべきである。

    劇の感想に戻ると、役者ではノゾエ征爾、宮川賢、そして舞台となる印刷店の奥さん・美智を演じた笠木泉が印象に残った。
    美智の夫と仲のいい写真店店主を演じた宮川賢は、あれから約20年の時を経て枯れた味わいが加わり、初演時よりもずっとずっと“商店街のオヤジ”っぽくなっていて劇世界により馴染んでいたし、笠木泉は初演で美智を演じたふせえり同様に快活で明るく、ふせえりにない品と気高さをも感じさせ、当方は憧れの眼差しでその姿を追い続けた次第。スラリとした美しい立ち姿とよく通る澄んだ声にも魅了された。

    ノゾエ征爾についてはネタバレにて。

    ネタバレBOX

    ノゾエが演じるのは、日根水(ひねみ)という田舎町にできた大銀行の出張所に中央から転勤してきて、預金や借金を勧めるため町の商店を回っている営業マン。
    コミカルな中盤までは営業にきた印刷店で次々に物を失くしてパニクる様を持ち前のトボけた演技で面白おかしく表現して笑いを誘うが、終盤に至り、中村ゆうじ演じる印刷店主が紙幣の偽造をしていると知ってからはショックのあまり正気を失い廃人と化していく。
    この狂いゆく演技がとても真に迫っており、ノゾエのこの繊細な演技にも支えられ、今回の再演は同じ役を山崎一が演じた初演よりもずっとずっと見応えある一作に仕上がっていた。

    ここまで褒めておきながら星を4つにとどめたのは、先述の通り、本作をコメディとして観た場合、出来が初演よりも劣るため。
    初演では大ウケしていた「メランコリー」や「ウルトラ」にまつわるやり取りが“ややウケ”に終わっていたのをはじめ、初演で湧いたシーンがさほどウケていなかったのは、再演では笑いよりも怪異性に重きを置いたせいか?
    なんにせよ、それらのシーンが爆笑を取ったところで劇の大勢に影響はないはずなので、それらのシーンもちゃんと笑えるように演出して欲しかった。
  • 満足度★★★★

    ネタばれ
    ネタばれ


    ネタバレBOX

    遊園地再生事業団の【ヒネミの商人】を観劇。

    田舎の小さな印刷屋では、近所のおじさんが入り浸っていたり、親戚同士の保証人問題、子供たちの学校行事の練習、銀行員の挨拶回りなどの日常的な風景が展開する。
    ほぼ【男はつらいよ】の世界に近い感じだ。

    だが宮沢章夫が描く日常は決して演劇的ではなく、市井の人々をリアルに描いている。
    そのリアルとは何か?
    それは何故か?片方の靴をなくしてしまった銀行員、何故か?余分に印刷物を作ってしまった社員、学校行事の練習している子供たちが、練習をそっちのけで、溶けそうなアイスをどうするか困ってしまったり、道に迷ってしまい、同じ道をひたすら往復している人など、物語として観るとちょっと変?だと思える当たり前の日常をクローズアップしながら物語は展開していく。
    我々の普段の生活では気がつかない日々は、沢山の無駄と余分の集合体であり、実はそれが非日常的であり、不条理だとも感じさせてくれる。
    それを物語に乗せてしまうと不条理演劇だと思いがちだが、そこに日常のリアリティーとして持っていく辺りが今作の狙いと宮沢章夫の世界観なのだろう。
    平田オリザの口語演劇であり、城山羊の会の世界観でもあるのだが、
    宮沢章夫は、彼らよりもかなり以前からこのような手法を取り入れていたとは驚きである。


  • 満足度★★★★

    次はきっともっと面白い。
    初演当時、平田 オリザさん率いる青年団の「静かな演劇」、ク・ナウカの宮城 聰さんの「二人一役」などと列を同じくする、新しい作劇法で創作されたとても面白い舞台だ、という噂だけは聞いていました。
    まだぎりぎり大学生で日常のほとんど8割以上を芝居を作ったり観たり手伝ったりして生きていた頃です。

    それから21年が経っての初観劇。
    いわゆる「エンゲキテキ」ではないさまざまな表現手法が観客に与える違和感、居心地の悪さを再確認しつつ、自分にとっては、それがもはやお馴染みの表現になってしまったことも強く実感しました。
    そしておそらく、これまでさまざまな形で「ヒネミの商人」の影響を受けた数多くの舞台を体験してきたのだなあ、と感じました。

    作品は十分に面白かったのだけれど、どうにももやもやする・・・素直に言えば、もっと先へ走っていってくれても喰らいついて行くのになあ、などと贅沢なことを思いながら劇場から出てきたのでした。

    昨年の秋に観た、おなじ遊園地再生事業団の「夏の終わりの妹」が与えてくれたもどかしさと疾走感、あのエキサイティングな感覚が、「ヒネミの商人」から21年経った宮沢さんの、いまの表現なのだとすれば、この再演は宮沢さんにとって、そして彼のフォロワーである多くの演劇関係者や観客やもう一度己の足場を踏みしめてみる機会だったのかも知れません。そしてこれからもっと面白い作品が生み出されるのでしょう。

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