ヒネミの商人 公演情報 遊園地再生事業団「ヒネミの商人」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★

    消えた町の日常
    「遊園地再生事業団」立ち上げから間もない時期に初演された
    作品の再演。初演と比較しようもないのだけど、宮沢氏の近作と
    比較すると、かなりの部分で「物語」というフォーマットが残って
    おり、不思議な気がしました。ここではうっすらとした形で提示
    されていたものが、後年では、明確なストーリーと交代するように
    前面に出てているように思います。

    ネタバレBOX

    「ヒネミ」(日根水)という架空の町に過ごす人たちと、そこに「外からの
    人」として赴任してきた銀行員、渡辺のある一日を描いた本作。とはいえ、
    特に大事件が起こるわけでもなく、風変わりな日常の様子が
    描き出されます。

    「ウルトラ」という正体不明の物品、「サルタ石」を捜し求めてさまよい続ける
    正体不明の女、贋札製造をにおわせる印刷工場の主人。不可解なもの、
    謎を秘めたものはたくさん出てくるのですが、その秘密が明かされることは
    なく、淡々と進んでいく作品は、どこか脱臼したような、気の抜けたような
    登場人物のやり取りと共に始まり、そして終わりを迎えます。

    最近の作品と比べた場合、今と比べて、登場人物同士の会話が大きく
    ウェイトを占め、演出もいわゆる従来の演劇に則っています。加えて、
    宮沢氏の近年の作品の特色である、「ドキュメンタリー」「メディア」との
    親和性はまだ希薄で、会話の端々に差し込まれる「批評性」「テーマ性」も
    少なくとも目に見える形ではほとんど現われません。

    どこかゆるゆるとしていて、始まりと終わりの境目が曖昧な、「ポスト会話
    劇」の作風は『五反田団』に通じるものがあると思いました。時折、とぼけた
    冗談が入ってくるところとか特に。そういう作品が好きな人には、いわば
    「親」「源流」を知る意味で触れる価値はあると感じます。

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    2014/03/27 16:47

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