kikiの観てきた!クチコミ一覧

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岸田國士 短編四作品上演

岸田國士 短編四作品上演

劇 えうれか

ギャラリー・ルデコ 5(東京都)

2015/12/08 (火) ~ 2015/12/13 (日)公演終了

満足度★★★★

繊細な時間
こじんまりした空間。ヴィオラの生演奏。短い物語の中でそれぞれの時代と人物を繊細に描き出していく演出が印象に残った。
『ぶらんこ』の、いかにも日常的な朝の風景を過ごす夫婦が夢の記憶を共有している雰囲気と、『恋愛恐怖病』に登場する女の自意識と恋慕にゆれる様子が印象に残った。

従軍中のウィトゲンシュタインが(略)

従軍中のウィトゲンシュタインが(略)

Théâtre des Annales

こまばアゴラ劇場(東京都)

2015/10/15 (木) ~ 2015/10/27 (火)公演終了

満足度★★★★

そのまなざしが……
この舞台のテーマは哲学だ、と言ってしまうと、難しいと思われるかもしれない。けれどそんなことはまったくなくて、戦場の緊迫した空気や他の兵士たちとの確執や交流、そして何より、そこにはいない懐かしい大切な友との精神的な交歓が物語を牽引する。

緊張感に満ちた戦場の空気の中で、しかし彼を悩ませているのは死への恐怖ではない。手に取れないものを追う思考は、時には現実から何かを得、時に何かを与える。

俳優の心身が演じる役柄と密接に呼応し、物語は張り詰めたまま進んでいく。

クライマックスの暗闇に、ときおり閃光がひらめく。ガタガタと音をたてる世界に、客席で身体を硬くする。迫り来る敵襲に否応なく高められた緊張感と見えない舞台上を動く兵士たちの息遣い。

そして、明るくなった舞台の上で、ルートヴィヒが到達した思想。それを理解した、とは言わない。けれどたとえば、彼について書かれた本を手に取ってみようか、と思ってみたりもする。

それは、もう会うことのできない友に向けた彼のまなざしが、印象に残ったからかもしれない。

マクベス - Paint it, Black!

マクベス - Paint it, Black!

流山児★事務所

座・高円寺1(東京都)

2015/08/14 (金) ~ 2015/08/23 (日)公演終了

満足度★★★★

混沌の面白さ
物語の舞台をベトナムに移し替えたマクベスは、歌や群舞を含めた詩的な印象と、狂言回し的に登場する3人だけでなく全部で17人もいる魔女たちのうごめく様子、客席が揺れるほど迫力ある大人数での殺陣など、多くのみどころに加えて、現代に通じる批評精神のこもったチカラ技ともいえる舞台だった。

男性が演じる魔女の歌声が、観終わったあとも長いこと耳に残った。

「贋作幕末太陽傳」

「贋作幕末太陽傳」

椿組

花園神社(東京都)

2015/07/10 (金) ~ 2015/07/21 (火)公演終了

満足度★★★★

重なる想い
夏の風物詩ともいえる椿組のテント芝居。今回は鄭義信氏の作・演出で、映画を題材にした群像劇だった。

つぶれかけた映画館。映画の撮影現場。少年時代の思い出。笑いと郷愁、そして映画への愛情を重ねながら描く風景はどこか懐かしさを感じさせた。

チャンバラ ~楽劇天保水滸伝~

チャンバラ ~楽劇天保水滸伝~

流山児★事務所

ザ・スズナリ(東京都)

2015/01/17 (土) ~ 2015/01/25 (日)公演終了

満足度★★★★

そうか!
休憩を含め2時間40分という長尺で、生演奏や立ち回りもたっぷりの盛りだくさんな舞台。

パワフルで、したたかで、滑稽で、猥雑で、哀切で、アナーキーで、
そうか、これをひと言で言うとアングラってヤツなのかな、と思ったりする。

2010年に亡くなった山元清多氏の初期の名作戯曲をゆかりの4団体が参加し、ご出演予定であったが上演前に亡くなった斎藤晴彦さんと、お2人の追悼公演となった。

山元さんの弟子である鄭さんが演出されたということで、鄭さんのカラーも色濃く感じられて、どの辺りまでがもともとの戯曲にあったものなのか、たとえばあの人形劇の部分などはどうか、などと言うことが気になった。

人形劇から繋がるあのラストがあるとないとでは、ずいぶん印象が変わるだろう、などと考えたりもした。

天邪鬼

天邪鬼

柿喰う客

本多劇場(東京都)

2015/09/16 (水) ~ 2015/09/23 (水)公演終了

満足度★★★★★

濃密な時間
ひと目でウソだとわかる虚構らしい虚構。独特のリズムで放たれるマシンガンのようなセリフ。身体性の高いステージング。

象徴性の高い物語にどっぷりひたる、たった90分とは思えない濃密な時間だった。

ネタバレBOX

子どもたちのイマジネーションが具現化し、戦争の道具となる。生き延びるために続けざるを得ない「ゴッコ遊び」の桃太郎が、撃ち倒すべき鬼とは何だったのか。

いやそれ以前に、少年たちのリーダー「あまの・じゅんや」とは何者だったか。彼だけが、内部被爆を受けず、桃太郎やシンデレラであり続けることを迷わない。

幾重にも重なり続ける虚構は、それなしには生きられなかった少年の叫びなのかもしれない。

しかし、膨大な「言葉」が紡ぎ出す神話めいた物語の意味を追おうとする前に、生身の役者の放つ熱に圧倒される。

象徴性の高い物語の中で描かれたある種の「痛み」は、観客が目を背けることを許さない。
マクベス

マクベス

パルコ・プロデュース

PARCO劇場(東京都)

2015/07/12 (日) ~ 2015/08/02 (日)公演終了

満足度★★★★★

ほぼひとり芝居のマクベス
精神病院という枠組み。そこでマクベスを演じ始めるひとりの男。

これまでに何度も観ているはずの『マクベス』が、まったく別の緊張感と切実さを感じさせる舞台となっていた。

こういう演出ができるんだなぁ、芝居ってホント面白いな、そんなことを思うと同時に、二十数人の登場人物(とその膨大な台詞)を演じきった佐々木蔵之介さんの熱演が印象に残った。

藪原検校(やぶはらけんぎょう)

藪原検校(やぶはらけんぎょう)

こまつ座

世田谷パブリックシアター(東京都)

2015/02/23 (月) ~ 2015/03/20 (金)公演終了

満足度★★★★★

人間ってヤツは……
陽気なふてぶてしさと哀切さが同居する主人公の印象、劇中で語られる早物語の完成度、時代の風俗も織り込んだ物語の面白さなど多くの見どころがあったが、それ以上に、人間というモノのおろかさやみにくさ、あるいは業(ごう)とでもいうしかない何かが感じられて、何度も冷たいものが背筋を上っていくような気がした。

再生ミセスフィクションズ

再生ミセスフィクションズ

Mrs.fictions

新宿シアター・ミラクル(東京都)

2015/03/27 (金) ~ 2015/03/30 (月)公演終了

満足度★★★★★

珠玉!
『伯爵のおるすばん』以来1年数ヶ月ぶりのMrs.fictions単独公演は「再演とかしない村」出身の彼らが禁を犯して挑んだ(!?)再演作品集でした。

それぞれ趣向を凝らした(作・演出・キャストすべて初演通りだったり、外部演出家を起用したり、別メンバーの戯曲のリメイクだったり)ラインナップに加えて、インパクトの強い怪人ビジュアルのチラシや怪人カードみたいなチケット、予約者全員に公演DVDプレゼントなど、いろいろと面白い試みもあり、企画力の確かさを感じました。

かねてから評価の高い『東京へつれてって』や『お父さんは若年性健忘症』の安定感はもちろん、登場人物のチャーミングさが印象的な『ねじ式』、奇妙な味わいでじわじわとしみてくる『まだ僕を寝かさない』など、まさに珠玉の作品集だったと思います。

スポケーンの左手

スポケーンの左手

シーエイティプロデュース

シアタートラム(東京都)

2015/11/14 (土) ~ 2015/11/29 (日)公演終了

満足度★★★★

キャストに惹かれて……
予習不足のまま客席に座った。

舞台は、どうやら安ホテルの一室。部屋には、落ち着かない様子の年配の男がひとり。男はカーマイケル。ずっと昔に失くした左手を捜している。トビーというヤクの売人が、ガールフレンドのマリリンとともにカーマイケルに左手を売りつけようとしていた。ホテルの従業員 マーヴィンも妙な男で、そういう4人がホテルの一室で繰り広げる物語。

それぞれがそれぞれの思惑で、食い違ったり騙そうとしたり脅したりしながら進んでいくストーリーは、ややひりひりするテイストながらしっかりと笑いを誘い、最後まで緊張の緩まないストーリーに引き込まれた。

ネタバレBOX

暴力の予感に自然に身体が硬くなる。そういう、ひりひりするようなやりとりが続く……かと思えば、そんな中でも随所で笑いが起こる。
バラバラに投げ出されたようないくつかの過去やさまざまなモチーフが、微妙に関係しあって笑いを誘ったりもする。

変な奴らばかりなのに、予想だにしなかった後味のいいエンディング。カーマイケルとマーヴィンのほのかな友情めいたものが印象に残った。
サヨナラサイキックオーケストラ

サヨナラサイキックオーケストラ

ITOH COMPANYプレゼンツ

シアター風姿花伝(東京都)

2015/11/03 (火) ~ 2015/11/08 (日)公演終了

満足度★★★★

世界の終わりに屋上で。
「世界の終わりは、いつも夏。」という魅力的なフレーズどおり、小惑星が地球に衝突する当日に集められた、へなちょこ超能力者たちの物語。

何度もクスッと、あるいは声を立てて笑ううちに、しだいに切なさが胸に積もって、壮大さとは無縁な人々の弱さや孤独が愛しくなる。

初日に拝見した後、脚本の中嶋さんと演出の上野さんによるアフタートークにまんまとつられて、11月6日に2回目の観劇。キャラクターそれぞれのバックボーンを踏まえてから観ることで、いっそうせつなく感じられた。

ネタバレBOX

観ていて一瞬だけ希望的なラストもありうるかと思ったりするけれど、考えてみれば、彼女の見た未来の光景はありえないものだし、着実に近づいてくる終末を動かすすべはやはりないのだ。
それでも、いや、だからこそ、目の前のささやかな勇気や優しさが大切に感じられる気がした。
アフタートークでは、この戯曲が書かれた経緯や中嶋さんと上野さんの演出方法の違いなどについてのお話を伺えて楽しかった。
帰還の虹

帰還の虹

タカハ劇団

駅前劇場(東京都)

2014/07/23 (水) ~ 2014/07/28 (月)公演終了

満足度★★★★

骨太な物語
戦時下でも描くことをやめなかったある画家の物語。
彼の友人たちや彼の妻、若い画学生など、登場人物それぞれの輪郭が鮮明で、どういう行動が正しかったのか、などという安直な評価ではくくれないそれぞれの葛藤を描いていく。

画家が描こうとしたもの、画学生が描きたかったもの、それぞれにそれぞれの真実があるのだろう。

見応えたっぷりの骨太な作品だった。

肥後系 新水色獅子

肥後系 新水色獅子

あやめ十八番

小劇場B1(東京都)

2014/07/23 (水) ~ 2014/07/27 (日)公演終了

満足度★★★★★

嘘と真実
複数の時間軸を行き来しながら描く、どうしようもない男の嘘と真実。
女子高演劇部の人間関係や劇中劇で描かれる戦時中の描写、神社で自死した高校教師を取材する女など、どの場面も繊細かつ鮮やかで、登場人物それぞれの想いが愛おしい。

現実と虚構のあわいにある、ほの暗い空間。
そいういう雰囲気が心地よくて、いつまでもそこにとどまっていたい、と思ってしまう。

もしもいま、好きな劇団や好みの作り手の公演がすべて同じ日に重なったとしたら、選ぶのはこのユニットかもしれない。
若々しさと老成した雰囲気。儚さとしたたかさ。そして、嘘と真実。この小さなユニットが、これからどこへ向かうのか、本当に楽しみだ。

少年十字軍

少年十字軍

Studio Life(劇団スタジオライフ)

シアターサンモール(東京都)

2014/02/08 (土) ~ 2014/03/02 (日)公演終了

満足度★★★★

歴史と虚構
骨太な歴史ドラマを、繊細かつ幻想的に描いて、3時間を長く感じさせない舞台だった。

若手中心のキャストを、ベテランが多くの役を演じて支え、物語に広がりを持たせていた。

面白かったので、ダブルキャストのもう一方が気になったり、原作を読んでみようと思ったりしている。

独り芝居『審判』

独り芝居『審判』

多田直人案

吉祥寺シアター(東京都)

2014/01/15 (水) ~ 2014/01/19 (日)公演終了

満足度★★★★★

名作……
言語に絶する体験を語り続ける1人の男。
ときに激し、ときに涙ぐみ、ときに冷笑し、しかし、揺れ動きながらも務めて平静かつ理性的であろうとする。

久しく感じたことのない緊張感と集中力。
張り詰めた空気が会場中を支配し、200人近い観客が、眼をそらすことも身じろぎさえできずに、
ただただ息をひそめて1人の男の言葉を受けとめ続けた2時間15分。

壮絶な内容以上に、それを語る男の意志と、演じる役者の覚悟に圧倒された。

ミュージカル「ブッダ」

ミュージカル「ブッダ」

わらび座

THEATRE1010(東京都)

2013/05/07 (火) ~ 2013/05/12 (日)公演終了

満足度★★★★

『ブッダ』
冒頭から、異国情緒あふれる音や光、そして人々の動きに引き込まれる。

言葉での状況説明はほとんどなく、人々の営みが、大河のように目の前を流れていく。

洪水、戦争、病気、老い、死。それを見つめるシッダールタの目線を共有するかのように、観客もとまどいながらそれを見つめていく。

舞台上での物語の進行はわかりやすいとは言えない。けれど、その混沌がある意味この世界そのものなのかもしれない、などと思ったりもする。

ネタバレBOX

さまざまなものを見つめ、受け入れていくシッダールタと対比させるような、獣の血を引くタッタ(原作とは設定が異なる)の荒々しい生き方が印象に残る。

タッタだけではなく、シッダールタの周りでさまざまな人々の想いがつづられる。

シャカ族とコーサラ国のいきさつや、コーサラ国の王子の葛藤。
女盗賊の聖者への恋慕。
シッダールタの妻の誠実。
乱暴な巨人のうちに秘めた優しさ。
そして何より、シッダールタの周囲でうごめく市井の人々。

悩み、迷うことが生きることなのか。さまざまな問いかけ、そして助けを求めて差し伸べられる人々の手。

それらすべてを包み込む、シッダールタのまなざし。ラストの彼の歌声が、さまざまな混沌や苦しみを浄化するように聴こえた。

主役のシッダールタを演じる戎本さんの澄んだまなざしと、タッタ役の三重野さんの野獣の眼と荒々しい動きが印象に残った。

また、美術、衣装やメイク、舞台上での楽器演奏なども見応えがあった。
おるがん選集 3

おるがん選集 3

風琴工房

くらしのアトリエ ひらや(東京都)

2013/04/27 (土) ~ 2013/05/06 (月)公演終了

満足度★★★★

さまざまな愛
会場は高円寺の駅から10分ほど歩いた住宅街の小さな民家を改装したカフェ(?)。

空気まで共有するような空間で演じられるそれぞれの愛の物語。息をつめるようにその世界に身を浸した。

ネタバレBOX

「物語が、はじまる」公園の砂場で拾ってきた雛型と暮らす女と雛型の間の、恋に似た慕情。女と恋人とのどこか歯がゆい関係と別れ。奇妙な寓意を含みつつ進む時間と生々しく繊細な感情が、手の届くくらいの距離で描かれていく。ダイニングテーブルの下に横たわる女と雛型。タオルケットからはみ出す女の髪と雛型の手が妙に生々しくてドキドキした。

「痩せた背中」ただ好きだから、離れたくないから。ちゃぶ台がひとつ置かれただけのごく平凡な風景。身内の葬式で実家に帰り、喪服に着替える男。完成しない編み物をいつまでも続ける女。現在と過去が重なって、狂うほど誰かを待つ女の想いが特別なものではなく共感できるものとして描かれていく。

窓の外から聞こえる車の音や鳥の鳴き声、犬が吠える声さえ、効果音のように聞こえた。
たいせつなきみ

たいせつなきみ

NAO-TA!プロデュース

ザ・ポケット(東京都)

2013/04/24 (水) ~ 2013/04/29 (月)公演終了

満足度★★★★

泣いて笑って……
観終わってふと思いました。この舞台の主役は、舞台には登場しないお父さんとお母さんかもしれないなぁ、と。

お父さんの残した亡き妻への言葉。娘たちへの想い。当たり前の家族の当たり前の愛情が、しみじみと胸に響きました。そしてこれからもきっと、三姉妹のかたわらで見守ってくれることでしょう。

個性的な登場人物がそれぞれ必死で生きている様子が愛しくて、泣きながら笑い、笑いながら泣いてしまう、忙しい舞台でした。

淡仙女

淡仙女

あやめ十八番

セーヌ・フルリ(東京都)

2013/04/17 (水) ~ 2013/04/21 (日)公演終了

満足度★★★★

濃密な空間……
ほの暗い濃密な空間で紡がれる、ある家族の物語。……それも一筋縄ではいかない、過去と現在、現実と虚構の重なる不思議な空間でした。

登場人物の一人ひとりの想いが、観終わったあとにじんわりと胸に残ります。

誰かを大切に思うこと、幸せでありたいと思うこと。たくさんのイメージの積み重ねが、さまざまなことを考えさせる舞台。これを観ることができてよかったです。

ミュージカル「アトム」

ミュージカル「アトム」

わらび座

新宿文化センター(東京都)

2010/06/19 (土) ~ 2010/06/27 (日)公演終了

満足度★★★★★

観てよかった……!
誰もが知っている鉄腕アトムをひとつの象徴として、ウエストサイドストーリーばりの対立と愛の物語を、歌とダンスで描いたミュージカル。

横内謙介氏のハートウォーミングなストーリーとラッキィ池田氏による楽しくて力強いダンス、甲斐正人氏の親しみやすく美しい楽曲、そして役者陣の安定感のある演技や歌によって、シンプルなテーマが胸に迫る素敵な作品となっていたと思う。

アズリを演じた三重野葵さんと神楽坂役の椿千代さんの静かな中に強さを感じさせる演技、そして圧倒的な歌唱力が印象に残った。

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