兎、波を走る
NODA・MAP
東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)
2023/06/17 (土) ~ 2023/07/30 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/06/20 (火) 19:00
野田秀樹の新作だが本作も刺激的だった。(3分押し)126分。
アリスに加えピーター・パンやチェーホフにブレヒトも出てくる仕掛けは壮大。前半はエンターテインメントを意識し、後半で社会性のある話題に繋ぐ手法は、ここしばらくの野田のパターン。本作ではアナグラムも出てきて『ゼンダ城の虜』を思い出してしまった。シャッターのような仕掛けや鏡を使う美術も見事だが、八百屋舞台は大変だろうなぁ、とか思った。
『工場』『夜景には写らない』
世田谷シルク
座・高円寺1(東京都)
2023/06/14 (水) ~ 2023/06/18 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2023/06/16 (金) 14:00
『工場』を観た。いろいろと考えてしまう。95分。
「日本に似たある国」の工場の分析課に、「移民」の男がやってくる。言葉の問題や習慣の違いから起こるいろいろだが…、の物語。描かれている出来事は、ありそうだな、と思えるが、今はこんな風に対応しないよな、とも思う場面も少なくないけど、多分それは堀川には問題ではなくて、異文化との接触はこういう風に進むかもしれない、という例を示しているように思う。後半、別のタイプの新たな移民や吃音者の登場があり、個々に対応されることなんだろうな、と思った。堀川は2008年から観ているのだが、パフォーマンス寄りの演劇者であることを改めて確認した。
M.O.S.ヤングタウン
かるがも団地
SPACE EDGE(東京都)
2023/06/15 (木) ~ 2023/06/18 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/06/15 (木) 19:15
期待の劇団の新作だが、本当に面白い。(4分押し)104分。
10年ほど前の南大沢第一中学校、という設定で、中学生を中心にその周辺の人々のあれこれ。実話ベースじゃないか、と思わせるリアリティながら、笑わせる要素も大きく楽しく観られるけれど、切ない要素もシリアスな要素もしっかりある秀作。子どもの話をやっているようで、実は大人の世界の縮図的な作品で、ケストナーの「飛ぶ教室」を思い出した。
本劇団は初めて観てから4作観たが、どれも星5つ。希有な劇団である。私が笑えないシーンでも笑う客がいてちょっと興醒め。教師・諏訪役の大西薫の黒板の消し方がプロ!
#33経済3篇
JACROW
新宿シアタートップス(東京都)
2023/06/08 (木) ~ 2023/06/18 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/06/14 (水) 19:30
『ざくろのような』を観た。2015年に初演、2019年に再演された作品の再々演で、初演も再演も観てる。114分。
3作同時上演の中でも、最も面白いと思う。松下による三洋の買収劇を題材にした作品だが、こんなことがあったかもしれない、と思わせるリアルさが見事で、手慣れた役者陣がしっかりと上演し、とてもよい舞台になっている。小平の健闘は言うまでもないが、谷仲のコミカルな演技は見事だし、福田と堤の会話のシーンがなんだかジーンときた。終盤の小平と狩野の討論シーンには見入ってしまった。
#33経済3篇
JACROW
新宿シアタートップス(東京都)
2023/06/08 (木) ~ 2023/06/18 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2023/06/13 (火) 19:30
『焔』を観た。2018年に初演の作品の再演で、初演は観てない。(3分押し)108分。
EV車開発を題材にした3作同時上演で、時間的には最後となるということだが、イオン電池開発に伴う改竄を扱う。企業って、ここまでやるんだよね、というストーリーを手慣れた役者陣が丁寧に描く。全員が熱演だと思うが、堤千穂の演じたキャラクターが微笑ましい。エンディングのシーンの対比が興味深い。
#33経済3篇
JACROW
新宿シアタートップス(東京都)
2023/06/08 (木) ~ 2023/06/18 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2023/06/13 (火) 17:30
『つながるように』を観た。18分の小品。
今回同時上演の『さくろのような』{2015年初演・2019年再演)のスピンアウトで本作も2020年に上演だが、『ざくろ…』は観てるが本作は観てない。『ざくろ…』の主人公である技術者の夫婦のその後を描く。ちょうどコロナ禍が始まった中国での不条理やら葛藤やらを扱った二人芝居だが、劇団員の二人がしっかりとした演技を見せて、短いけれども楽しめる作品だった。コロナ初期の状況を描いてて、笑ってる客が多いが、私は笑えない。当パンを読む限り、中村は本作をオマケにしか思っていない気がする。
あなたがわたしにくれるもの(がたり)
やみ・あがりシアター
王子小劇場(東京都)
2023/06/07 (水) ~ 2023/06/11 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
実験公演と銘打っての104分。面白い。
amazonの欲しいものリストに出演者(と照明・音楽スタッフ)がリストを載せ、プレゼントしてくださる「モノ」を小道具に舞台を作る。ベースの物語は同じだが、日々増えるモノで展開が微妙に変わり、おそらく徐々に長くなるんだろうなぁ…。企画もさることながら、ベースの物語が面白く、企画をユッタリ楽しむことができる。録音・撮影・録画OKというのも太っ腹だが、衣類のプレゼントは実際に着る、アルコールのプレゼントは実際に呑む、というシバリも興味深い。
先日の猿博打でも思ったが、笠浦は天才だ!
楽園
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2023/06/08 (木) ~ 2023/06/25 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2023/06/08 (木) 19:00
□字ックの山田佳奈が新国立に初めて書き下ろし。面白い。106分。
沖縄らしき村の祭事に集まる女性7人の物語。古くから行なわれている祭祀だが、事情を良く知らない若い移住者(豊原江理佳)も交えなければ実行できないという事情や、村長選の最終盤で対立する陣営が一緒にいることなど、問題が噴出する材料は多い。「区長」が認めた「東京の人」(土居志央梨)が取材に入ろうとするのを「村長」の娘(清水直子)が止める、や、親子(中原三千代・西尾まり)の生々しい出戻り論争、など、あるある、な展開が続くが……。祭司である「司さま」(増子倭文江)だけが世俗から離れて祭祀を実行しようとする様子が興味深かったのだが、何と言っても余所者である豊原が正論をブチかますところが見事。名前でなく役割で呼ばれる女性達だが、最後に名乗ろうとするところで終わるシーンが美しい。
死んだら流石に愛しく思え
MCR
ザ・スズナリ(東京都)
2023/05/26 (金) ~ 2023/06/04 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/06/04 (日) 14:00
2015年に初演、2019年に再演された作品の再々演・最終版で、再演を観ている。スゴイ!(2分押し)127分。
実在のシリアルキラーを題材に、刑事による取調べでの回想という形で、どんなことをしてきたのかを描く。笑えるように作ってはいるが、笑えない話。映画にもなっているらしいが、映画をベースにしたのかどうか、知りたいなと思った。悲惨な話ではあるが、劇団のレパートリーとなりそうな気もする。美しいエンディングさえも悲惨だなぁ。
Q&Q
y/n
アトリエ春風舎(東京都)
2023/05/26 (金) ~ 2023/05/29 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2023/05/29 (月) 13:00
初見のユニット。レクチャー型パフォーマンスとQ&Aという興味深い上演形だった。(4分押し)50分(6分休み)19分。
橋本清が1人で登場し、日本国憲法や教育基本法、学習指導要領等の資料に関して話したり、自分の体験を(そう思わせる語り口で)話したりする50分。その後少しの休憩の後、観客からのインターネットアンケートに寄せられた質問に答えるという、非常に興味深い型式。教育に関する話題は、あるある、な話から、ちょっと型にはまっているな、と思えるところまで玉石混交な所はあるけど、面白くはあった。何を語るかを選ぶというのは、何を語らないかを選ぶことでもある、という当たり前を改めて感じたが、歯止め規定を語って背景を語らないのは意図的か無意識か、気になる。
コスモポリタン
U-33project
王子小劇場(東京都)
2023/05/24 (水) ~ 2023/05/28 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2023/05/25 (木) 19:00
本ユニットは4回目。切ないファンタジー。(3分押し)87分。
女子校生の中井かなの夢は「宇宙の果てを見てみたい」ということ。転校生の沼袋も同じ夢を持ってることを知った中井は…、の物語。本ユニットは女子高生の物語を扱うことが多く、本作も女子高生役の8人の夢を語って進むが、今回は軸になる中井に感情移入できなくて、ちょっとピンと来ない感じが残念だった。
「なんもできない」「チキン南蛮の夜」
くによし組
OFF OFFシアター(東京都)
2023/05/16 (火) ~ 2023/05/21 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/05/21 (日) 17:00
2度目の『#チキン南蛮の夜』。64分。
初演も観てて、今回も初日に観たが、なんで笑ってばかりだったのか、と後悔するばかりだった(;/_;)。可奈子の抱える切なさが爆発してて、笑えるけれど、笑いながら泣く、みたいな作品。不安定な可奈子を小野寺ずるが演じ、落差の大きさをしっかり演じた。結果的に初日と楽日に観たのだけれど、初日はちょっとおっかなびっくりと演じていたように思う小野寺が、楽日には神がかりとも言える域に達し、見事な作品だった。
Wの非劇
劇団チャリT企画
駅前劇場(東京都)
2023/05/17 (水) ~ 2023/05/21 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/05/21 (日) 15:00
ふざけた社会派の真骨頂。面白い。(3分押し)94分。
笑いの要素が大きく入っているので観ていられるが、実は結構厳しいセクハラ・パワハラシーンが続く。ちょうど今話題になっている(事前に意図したわけではなかろうが)ジャニーズの性被害を軸に、芸能界のさまざまな「ありそうな」ハラスメント案件をふんだんに盛り込んで、ちょっと深刻になったりした後で、笑わせて終わる。笑わせられるが笑えない話だと思った。
「なんもできない」「チキン南蛮の夜」
くによし組
OFF OFFシアター(東京都)
2023/05/16 (火) ~ 2023/05/21 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/05/21 (日) 13:00
2度目の『#なんもできない』。(7分遅れて入場)84分。
とにかく生きづらさを抱えたモノに対する國吉の優しさに、ちょっと泣けてしまった。私が観た中で唯一の男優だけのくによし組だが、フライヤーに書いてあるストーリーとはちょっと違った展開で、徐々に物語の意味が分かるあたりは國吉らしい物語である。終盤の展開には泣けてきてしまうのだが、役者陣も丁寧に役割を演じて、心が締めつけられるような作品だった。
「なんもできない」「チキン南蛮の夜」
くによし組
OFF OFFシアター(東京都)
2023/05/16 (火) ~ 2023/05/21 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/05/18 (木) 19:30
『なんもできない』を観た。すごく深く重い内容をポップに演じる。観るべし!観るべし!観るべし!74分。
何かを掘ってる男たちが抱える様々な問題が徐々に明らかになって驚く作品だった。明確には言わずにセリフから背景を察することができる脚本が見事だ。社会問題への関心があるのかとも思わせ、以前観た『人人』とも通じる所があるように思った。私が知る限りでは初の、男優だけの芝居というのも珍しいが、角のある人間、という、人間ではないモノが出てくる当たりは、いつものくによし組。
「なんもできない」「チキン南蛮の夜」
くによし組
OFF OFFシアター(東京都)
2023/05/16 (火) ~ 2023/05/21 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/05/17 (水) 19:30
『チキン南蛮の夜』を観た。最高傑作と思う作品がバージョンアップした。面白い。観るべし!観るべし!観るべし!(3分押し)64分。
2018年に上演された作品の再演で、初演も観ている。國吉の最高傑作だと思ってる作品。初演では私は笑っているだけだったが、本作では加奈子の抱える切なさが前面に出て、ちょっと悲しくなるような部分もある。小野寺ずるを起用したことが効果を持っているのだろうか。インコのピー助を演じた渋谷裕輝が大柄で、力関係がよく分からなくなるという効果もあるように思う。
星15くらい付けたい。2018年に上演されたときは、新御徒町の古民家カフェで、平日5ステージだけということで観られる人が限られていたと思うが、今回は劇場でまだまだやるので、是非とも多くの人に観て欲しい。
"A Midsummer Night's Dream" 夏の夜の夢
演劇ユニット Willow's
王子小劇場(東京都)
2023/05/11 (木) ~ 2023/05/14 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2023/05/11 (木) 19:30
初見のユニット。シェイクスピアをメインとしたユニットらしい。(5分押し)114分。
今どき、シェイクスピアをやるのは現代的なアレンジをすることが多いが、本作はそのバランスがよくない印象。どこが、という説明はできにくいのだが、方向性が一定していない感じが残る。古典的なセリフと現代的なセリフを交えるあたりもフツーだが、古典的なセリフは元々が美しいだけに、噛む役者がやや目立つのは残念。
あたらしい朝
うさぎストライプ
こまばアゴラ劇場(東京都)
2023/05/03 (水) ~ 2023/05/14 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2023/05/10 (水) 19:30
2020年に春風者で上演された作品をリライトして上演。不条理系で不思議な感触。70分。
初演も観ていて50分だったのが70分になったが、かなり変わった印象。軸になる3人は初演と同じで初演ではいなかった2人が加わった。哀しい話だと思うが、本劇団の作風により気持ちよく観ていられる。
小瀧万梨子の肩のアルジャーノンがカワイイ、っていうか、アルジャーノンを操作する小瀧がカワイイ。
おまおまいういう
綾門優季+三橋亮太
アトリエ春風舎(東京都)
2023/05/04 (木) ~ 2023/05/07 (日)公演終了
実演鑑賞
鑑賞日2023/05/07 (日) 16:00
小難しい芝居をやるんじゃないか、と思って行ったのだが、予想通り小難しい芝居だった。38分(場面転換2分)31分。
『え待って…』は女子3人の不条理系会話劇。よく分からない感触に満たされてします。
『蹂躙を…』はパーカッションに合わせたダンス系で始まり、1人(郡司麻衣)によるパフォーマンス要素が大きいのかと思ったが、セリフも膨大で後半は演劇的かと思う。エンディングは美しい。郡司の身体能力の高さは見事。
MAN STANDING vol.2
サブテレニアン
サブテレニアン(東京都)
2023/05/05 (金) ~ 2023/05/07 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2023/05/05 (金) 19:00
Bチームを観た。毛色の違った一人芝居2本。前説3分+32分(場面転換2分)44分。
サテライト☆ちぐさは、中国唐時代の女流詩人・薛濤の『十離詩』。10個のモノが愛でられ堕ちる様子を描いた詩なんだそうだが、それの読み下しを語りつつ「女」の「状況」を語る。パフォーマンス要素が強い。
古い知り合いの清滝美保は『在り、居り、喋り、いま泰子』で、中原中也と同棲した女優の長谷川泰子がある場所に出かけて、インタビューでその様子を語る。一人芝居の王道的な作品だった。
初めて訪れる劇場。